全日本選手権ロードが今週末に広島で行われる。ツール出場を決めた新城をはじめ、土井、清水都貴そして宮澤が参戦、ナショナルチャンピオンジャージは誰が獲るのか。ラストレースの岡崎は?そして沖美穂引退後の日本女子界、新女王は萩原か針谷か、そして片山も参戦、混戦が予想される。エントリーリストから各クラスを展望する。

06年U23を制した新城幸也。同じ広島の地でふたたび同じポーズでゴールできるか06年U23を制した新城幸也。同じ広島の地でふたたび同じポーズでゴールできるか photo:Hideaki.TAKAGI出場全選手が目標とする全日本選手権。完走するだけでも栄誉とされる国内最高峰の大会だ。今年は全5クラス386名が参加する。会場は広島県中央森林公園。コースは1周12.3kmで、前半は下り基調でカーブが多いものの、後半は「三段坂」を中心とした上り、下ってからゴールへは緩い上りだ。平坦区間は少なく総合力の問われる名コース、スピードのあるオールラウンダー向きだ。またこのコースは雨が降るとパンクしやすい。天気予報では曇りだが、雨天時のパンク対策のためのタイヤの選択と準備は必須だ。
なお、エントリーリストを文末に添付している。

注目のエリートは、中盤までは各チームのアシスト勢が動き、終盤にエース級が動くのが通常だ。昨年のような混迷はないだろうが、単騎で参戦の新城・宮澤の動きがカギだ。それに清水、西谷、土井・鈴木、佐野らがどう絡むのかが注目だ。それでもやはり大本命は新城だ。

女子は今までどおりの力を発揮すれば萩原に分があるが、ほか選手の台頭が著しく、優勝候補が10人近く挙げられるほど混戦だ。

ヨーロッパで実績を上げ、ステージレーサーとしてレベルアップした土井雪広ヨーロッパで実績を上げ、ステージレーサーとしてレベルアップした土井雪広 photo:Hideaki.TAKAGI各クラスのスタート時間
(カッコ内は便宜上の区分)
・ジュニア全日本選手権(ジュニア)6月27日(土)8時00分
・    同     (U17)    同     同
・全日本アマチュア自転車競技選手権大会(U23)6月27日(土)12時00分
・全日本自転車競技選手権大会(女子)6月28日(日)8時00分
・    同      (エリート) 同    11時00分

男子エリート
なんといっても一番の注目は、7月4日から始まるツール・ド・フランスへ出場する新城幸也(Bboxブイグテレコム)だ。ここ広島では06年にU23で出場して圧勝、相性もいい。チームメイト無しの単独出場だが、それを上回る力で死角がない。チャンピオンジャージを着てツールに出場したいところだろう。

そして土井雪広(スキル・シマノ)が帰国、出場する。チームのツール出場選手発表は翌29日にオランダで行われる。もちろん優勝してこの日を迎えたいところだ。なお、別府史之はエントリーしていない。

宮澤崇史、チームがどうあれ、全力で結果を出すだけだ宮澤崇史、チームがどうあれ、全力で結果を出すだけだ photo:Hideaki.TAKAGI宮澤崇史(アミーカチップス・クナウフ)は5月のツアー・オブ・ジャパンにようやく出場できたが、チームが機能していない状況は変わっておらず、今後の推移を見守りたい。本来の実力を発揮できれば優勝候補筆頭だ。

国内チームではまず清水都貴(EQA梅丹本舗グラファイトデザイン)だ。スピードも身につけ今や日本を代表するオールラウンダーだ。加えてチームも福島晋一、このレースで引退する広島出身の岡崎、そして完全復調した増田に中島、菊池という万全の体制で臨む。展開しだいで福島、岡崎、増田が狙えるのも強みだ。昨年までのチームメイト・新城とは協調体制をとらずに、スポンサー獲得のため優勝を狙うと考えるのが自然だ。むしろ宮澤と協調するのかもしれない。

シマノレーシングは、鈴木真理、現チャンピオン野寺秀徳を中心に個人の戦力とチームワークで2連覇を狙う。1週間前の西日本ロードでは絶好調のチームだけにマークは厳しいが国内活動チームの意地を見せるだろう。スキル・シマノの土井とは状況によって協調体制をとるだろう。

愛三工業レーシングチームは西谷泰治を中心に展開する。昨年のアジア選では己を捨ててアシストに徹したが、全日本では徹底マークされ沈んだ。トラック・ワールドカップ優勝の盛一大を筆頭に強力なアシストで、地元広島で悲願の優勝を狙う。

日本を代表するオールラウンダー、清水都貴。優勝して勢いをつけたい日本を代表するオールラウンダー、清水都貴。優勝して勢いをつけたい photo:Hideaki.TAKAGITEAM NIPPO-COLNAGOは佐野淳哉を中心に戦うだろう。1週間前の西日本ロードでは真鍋和幸が絶好調だったが、全日本では廣瀬敏、山下貴宏らとともに佐野を支援するだろう。もちろん展開しだいでは真鍋や廣瀬が最終局面でアタックする姿が見られるかもしれない。

チームブリヂストン・アンカーは飯島誠と普久原奨を中心に、フランスで活躍する伊丹健治が日本のレースでその力を発揮できるかがカギだ。トラックレースで北京オリンピックへ出場した飯島は、この全日本ロードでもトップグループで活発に動くだろう。

マトリックスパワータグ・コラテックは辻善光を中心に戦う。3週間前の全アマトラックではスクラッチで全日本チャンピオンに輝いた。向川尚樹ら献身的なチームメイトのアシストで頂点を狙う。

宇都宮ブリッツェンは清水良行と廣瀬佳正を中心に戦う。清水は西日本ロードで好走した。06年の広島全日本で逃げ続けた廣瀬の実力と豊富な経験でトップを狙う。なお、長沼隆行は同日開催のJサイクルツアー富士山ヒルクライムへ出場、優勝を狙う。(シクロワイアードでは富士山の現地レポートも掲載予定だ)

昨年のU23覇者、小森亮平(トレック-リブストロングU23)は20歳だがエリートに出場する。


西谷泰治、強さは誰もが認めるところ。あとは勝利だけだ西谷泰治、強さは誰もが認めるところ。あとは勝利だけだ photo:Hideaki.TAKAGIつぎにクラブチームや大学生を見てみよう。現実はほぼ単騎の走りになるため、上位入賞を目指して参戦する。
昨年の全日本でクラブチームで完走したのは2名、大塚潤(現・TEAM YOU CAN八王子)と津末浩平(現・MASSA-FOCUS-OUTDOORPRODUCTS)だ。両名とも新チームへ移籍して心機一転臨む。さらに最強の社会人ステージレーサー鎌田圭介(パールイズミ・スミタ・ラバネロ)、進境著しい伊勢直人(MASSA-FOCUS-OUTDOORPRODUCTS)、最速の店長・西谷雅史(チームオーベスト)、最強の社会人ワンデイレーサー永良大誠(グランデパール播磨)、広島出身の佐々木優也(TREK MARCOPOLO)、経験1年未満でトップレベルの仲間入りを果たした才田直人(エルドラード)ら注目どころが多い。

大学生では鹿屋体育大学の伊藤雅和、内間康平、吉田隼人をはじめ、今年の修善寺カップオープンロードと全日本学生個人TTに優勝の西薗良太(東京大学)、さらに青柳憲輝・早川朋宏(法政大学)、越海誠一・窪木一茂(日本大学)らが注目だ。

女子
タフな場面に強い佐野淳哉、今年こそ結果を出すかタフな場面に強い佐野淳哉、今年こそ結果を出すか photo:Hideaki.TAKAGIまず筆頭は萩原麻由子(サイクルベースあさひレーシング)だ。数々のタイトルを手にし怪我から復活もした萩原が本命だ。さらに西日本ロードを制した針谷千紗子(UTSUNOMIYA BLITZEN )、森田正美(チームブリヂストン・アンカー)、豊岡英子(パナソニックレディース)、西加南子(TEAM FOCUS-OUTDOOR PRODUCTS)、広島の唐見実世子らが挙げられよう。そして注目は井上玲美(チームコラテック)。先の全日本個人TTでは優勝した萩原に19秒差まで迫る2位となり、昨年から急成長してきた。そして森本朱美(スミタ・ラバネロ)がふたたび元気だ。東日本ロードではまるで練習しているかのような走りで他選手を翻弄した。

そして驚きの参戦は片山梨絵(SPECIALIZED)と荻島美香(ARAI・MURACA)だ。片山はすでに西日本ロードで2位、さらに荻島は2月の神宮クリテではスタートからぶっちぎりの優勝をしている。どちらも一流の女子選手としてMTBで、シクロクロスで世界を舞台に戦っている。なお、萩原をはじめ豊岡、針谷、森田は今までに大怪我を負っている。完全復調はまだ正直なところしていない。彼女らの回復具合もポイントだ。本命の萩原に、井上、針谷、森田、豊岡らと、さらに片山、荻島、森本らがどう絡むか、大注目なのが今年の女子だ。なお、91年から94年生まれの女子は3位まで別途表彰対象になる。

U23
女子第一人者への道を歩む萩原麻由子。ダブルタイトルなるか女子第一人者への道を歩む萩原麻由子。ダブルタイトルなるか photo:Kei.TSUJIコンチネンタルチーム、クラブチームからは金子友也・平井栄一(ブリヂストン・エスポワール)、中山卓士・小坂光(UTSUNOMIYA BLITZEN)、武田耕大(Comrade Giant)、藤岡徹也(TEAM NIPPO-COLNAGO)、岡豊洋・竹之内悠(TREK MARCOPOLO)、涌本正樹・澤田賢匠(マトリックスパワータグ・コラテック)、外勢健一朗(ダイハツ・ボンシャンス飯田)、若杉厚仁(spacebikes.com)が参戦。いずれも実業団レースなどで活躍している。

大学生では全日本学生ロードを制した木守望と広島出身の中村弦太の京都産業大学勢が元気だ。さらに鹿屋体育大学の広島出身・野中竜馬、野口正則、湯浅徹(明治大学)、兼平純(日本大学)、十時正嗣・入部正太朗(早稲田大学)、福田高志(大阪経済大学)らが参加。
BSとマトリックス、京産、鹿屋あたりを中心に動くだろう。

観戦に行こう
着実に力をつけてきた井上玲美。全日本個人TT2位の実力発揮なるか着実に力をつけてきた井上玲美。全日本個人TT2位の実力発揮なるか photo:Kei.TSUJI会場は広島空港から近い。空路ならば、空港から歩けない距離ではないがタクシーが一番だ。高速道路なら山陽道本郷または河内インターが近くだ。観戦はスタート/フィニッシュラインから1kmほど手前までの区間と、自転車で公園の外へ移動して最高地点でするのがいいだろう。コース上の歩行、走行はできないので注意。選手を名前で呼んで応援しよう。何よりも励みになる。なお、スタート前の選手やスタッフは集中している。全日本選手権だけは特別だ。選手と触れ合うのはこの時間帯は避けよう。

会場内に飲料の自販機はあるが限られているので、食事も含めて持ち込みをお勧めする。トイレは既設、仮設ともにある。日差しや雨を避ける場所が無いので、帽子や雨具(傘でなくカッパがベター)の準備も忘れずに。

テキストライブ 実況配信


全日本選手権エリートおよび女子のレースが開催される当日・日曜日は、レース会場となる広島・中央森林公園からテキストライブにてレース展開を実況・配信します。お楽しみに。
(コース上の電波状況が非常に悪いため、迅速で安定的な更新が確約できない可能性がありますことを予めご了承ください)



text:高木秀彰、photo:高木秀彰、辻啓
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