イタリアの名門ブランド、カレラ・ポディウム社が放つ2013年ロードモデルの最高峰に位置するのが「カレラSL」だ。今回のインプレッションではフレーム重量730gを達成し、同社のブランドネームが冠されたこの超軽量マシンにフォーカスを当てていく。

カレラ CARRERA SLカレラ CARRERA SL (c)MakotoAYANO/cyclowired.jp

イタリアはロンバルディア州を本拠地に、1989年にスタートしたカレラ・ポディウム社。エディ・メルクスやフェリーチェ・ジモンディといった伝説的な選手たちと共にヨーロッパのロードレース黄金期を支え、引退後もカレラやLPRブレーキなどのチームマネージャーを務めてきた名選手、ダヴィデ・ボイファーヴァ氏が中心となって設立されたブランドだ。

革新的なシステムやデザインを積極的に取り入れるカレラ社。イタリアレース界との関わりも非常に深いボイファーヴァ氏が代表を務めるだけあって、同社のバイクは常にプロレースの場面で使用され、その性能を鍛え上げてきた。中でも1995年、マルコ・パンターニによってツール・ド・フランス第10ステージ、ラルプ・デュエズの頂上ゴールを制したことは白眉として挙げられるだろう。

異なる断面形状を流麗に繋ぎ合わせた「ラウンド to スクエア形状」異なる断面形状を流麗に繋ぎ合わせた「ラウンド to スクエア形状」 ヘッドコラムは1-1/8、1-1/4とスマートにすることで軽量化を狙うヘッドコラムは1-1/8、1-1/4とスマートにすることで軽量化を狙う ストレート形状のフォークは60トンカーボンを採用し、330gと軽量に仕上がるストレート形状のフォークは60トンカーボンを採用し、330gと軽量に仕上がる


カーボン素材が登場し始めた1997年にはカーボンバックのアルミフレームを世界に先駆けて開発するなど、常に時代の先を行くバイク造りを、イタリア国内生産にこだわって行なってきた。近年では曲線を多用した有機的なフォルムの「フィブラ」を発表。その独創的なバイクデザインは大きな賞賛を得た。

そんなカレラ・ポディウム社が2013年モデルのフラッグシップとして登場させた全く新たなマシンが、今回のテスト車両である「カレラSL」だ。カレラのブランドネーム、そして Super Leggera(超軽量)の頭文字が与えられた旗艦の重量は、フレーム単体で730g。この重量にはカレラの誇るテクノロジーが凝縮される。

トップチューブから緩やかに繋がるシートチューブトップチューブから緩やかに繋がるシートチューブ 若干のスローピングが設けられたトップチューブ。クリア塗装も美しい若干のスローピングが設けられたトップチューブ。クリア塗装も美しい


60トンカーボンをメインに使用するフレームは薄く、指で押すと簡単にたわむほど60トンカーボンをメインに使用するフレームは薄く、指で押すと簡単にたわむほど 大口径スクエア断面のダウンチューブは剛性確保に貢献大口径スクエア断面のダウンチューブは剛性確保に貢献


カレラSLがメインテーマとするのは、軽量であること。そして重量を増すことなく、剛性と信頼性を高めること。それを実現するために、カレラSLは「ラウンドtoスクエア」デザインに法って形作られる。フレームは微妙に丸みを帯びたスクエア断面のチューブをメインとし、部分的に丸断面形状を用いることでテーマの実現を図っている。

ボリューム溢れる前三角と左右非対称のチェーンステーに対し、シートステーは扁平形状の極細仕様という最新のトレンドを取り入れた。シートステーは衝撃吸収を担い、その他の部分でパワーを受け止め剛性アップを狙っていることがフレームの外観から判断することができる。

ワイドなBBシェルへと接続されるチェーンステー。長方形断面の迫力あるフォルムだワイドなBBシェルへと接続されるチェーンステー。長方形断面の迫力あるフォルムだ 左右非対称とされたチェーンステー。路面追従性とパワーの伝達効率の向上に貢献する左右非対称とされたチェーンステー。路面追従性とパワーの伝達効率の向上に貢献する


カレラSLに採用されるカーボン素材はT-800HM-HS 60とT SHM XN60の2種類だ。T-800をメイン素材にモノコック構造を用いることでフレーム単体重量730gという超軽量バイクを形作る。各チューブは極薄に成形され、特にトップチューブは簡単に指で押した部分がたわむほど。それほどまでに過激な仕様だが、独自の「ソリッドカーボン」製法で耐久性は十二分に確保されているという。

プレスフィットボトムブラケット、インナールーティングのケーブルなど最新の規格を導入する一方で、上下異型のテーパードコラムは1-1/8"、1-1/4"と比較的スマートにすることで軽量化を狙っている。フレームと同じく60Tのハイモジュラスカーボンで成形されるフォークの重量は330gだ。

それ以外のパートと比較して非常に薄く作られるシートステーそれ以外のパートと比較して非常に薄く作られるシートステー BBはプレスフィットを採用。BBシェルも曲線を多用したボリューム感のある仕上りだBBはプレスフィットを採用。BBシェルも曲線を多用したボリューム感のある仕上りだ ダブルステー形状のシートステー接合部も美しい造形を見せるダブルステー形状のシートステー接合部も美しい造形を見せる


2013年シーズンはベルギーのプロコンチネンタルチーム、アクセントジョブへの機材供給が決定したカレラ社。これからビッグレースで走るカレラSLの姿を見ることもできるはずだ。

カレラの歴史において、ブランドネームを背負ったバイクはこのカレラSLただモデルのみ。それが意味するのは果たしてどのようなものなのだろうか。テストライダー両氏が検証する。





―インプレッション

「危うさを意識させない自然なフィーリング。ロングヒルクライムにベスト」戸津井俊介(OVER-DOバイカーズサポート)

手で押すとたわんでしまうほど薄いチューブを使用したバイクですが、いざ乗ってみるとヨレてしまったり変に硬すぎてバランスが悪かったりすることも無く、危うさを意識させない自然なフィーリングがあるバイクです。左右に振っても、踏んで進ませようとしても、フレームの特徴である軽さは乗り味に活かされています。これだけフレームが軽いとフォークとのバランスも悪くなりがちなものですが、ちぐはぐな感じも無く、「高度にエンジニアリングされているな」と感じました。

諏訪さんも言っていましたが、超軽量にも関わらず、乗ってすぐに感じられる剛性感があります。トルクを掛けて踏んでいってもフレーム自体が破綻しませんね。かなり踏み味が硬いので、上級者的な乗り方ができる方にこそ向いているのではないでしょうか。ダンシングしても横にブレる感覚も無く、軸さえずらさなければ前に非常に良く進んでくれました。

「危うさを意識させない自然なフィーリング。ロングヒルクライムにベスト」戸津井俊介(OVER-DOバイカーズサポート)「危うさを意識させない自然なフィーリング。ロングヒルクライムにベスト」戸津井俊介(OVER-DOバイカーズサポート)

重ためのギアで掛けていった際のギアの掛かりやスピードの伸びは際立つポイントですね。ある程度のスキルは求められますが、丁寧にクランクを回すことが出来れば回転系で上りをこなすことも可能だと感じます。ただ、どちらの場合でも絶対的な脚力が必要です。

下りでも思った通りのラインをトレースできましたし、ホイールの恩恵もありますがスピードに乗ってからの持続性も高いですね。ただ一つ言うと、軽さのぶんだけ走りの色の密度が希薄なイメージがあります。乗り味や走りの深みといった「テイスト」を重視する方には物足りなく感じられてしまうかもしれませんね。

薄くパリパリしたイメージなのですが、道路がひび割れている所でダンシングしても路面追随性が悪いわけではありません。極上の乗り味とは決して言えませんが、レースバイクに求められる通り一遍の快適性は備えています。横つぶしのシートステーや左右非対称のチェーンステーが活きているのでしょう。レース全般に使えなくは無いですが、やはりこの特長が活きるのはヒルクライムでしょうか。軽量ホイールやパーツをアッセンブルして、淡々と長い距離の上りをこなしていく走りがベストだと思います。

全体のまとまりも良いですし、高級感も感じられますね。カンパニョーロのEPSコンポーネントが似合うバイクってあまり無いのですが、このバイクは性能・ルックス共にベストなマッチングです。
脚力がある前提での話ですが、人が乗っていないバイクを求める方、所有感を満たしたい方に向きますね。



「非常に剛性が高く、ハイレベルなライダーに向くバイク」諏訪孝浩(BIKESHOP SNEL)

「非常に剛性が高く、ハイレベルなライダーに向くバイク」諏訪孝浩(BIKESHOP SNEL)「非常に剛性が高く、ハイレベルなライダーに向くバイク」諏訪孝浩(BIKESHOP SNEL) 率直に言って「非常に硬いピュアレーシングバイク」という第一印象を抱きました。フレーム730gという超軽量バイクですが、”薄皮感”が走りでも感じられ、踏み心地にとても硬さがあります。脚力のあるライダーにこそ向いたバイクであって、正直なところサイクリング用途や脚の無いライダーでは乗りこなすことができないと感じました。

このバイクの正しい走らせ方は、ギアを掛け、トルクで踏む事だと感じます。私の脚力では踏み切る事ができなかったのですが、そのような雰囲気を感じましたね。パワーライダーに向く性格だと思います。ただペダリングスキルが必要かと言うとそんな事もありません。全体的に癖は感じられませんでした。

踏みこんですぐに感じられるダイレクトさ。それがこのバイクの魅力でしょう。ハンドリングもピーキー寄りですが比較的ニュートラルで、安心感もありますね。

シートステーを薄くしていますが、恐らくこの部分が効いているのか、路面からの突き上げはあまり感じませんでしたので、単純な乗り心地は良いと言えます。踏みごたえはあるのにお尻には衝撃が来ない、不思議なイメージがありました。

奇をてらわないシンプルなフレーム形状で、クリア塗装も綺麗に仕上がっていますね。カッチリとしたバイクを作ることで定評のあるカレラですから、とても好感の持てるポイントです。

今回のテストバイクにはカーボンのディープリム、ボーラULTRAが装着してありましたが、例えばこれをハイペロンのようなロープロファイルのカーボンホイールに組み替えれば少し踏み応えも和らぐかもしれません。反対にカッチリしたホイールを入れれば、スプリンターや短時間のクリテリウムの場面には強力な武器となってくれるはずです。ボーラとの相性は良かったですね。

軽量バイクなので、ヒルクライムでの絶対的なアドバンテージは高いはずです。しかし踏み応えがかなり強いので、軽量ライダーには少し厳しいかもしれません。全ての場面においてレースを走っている方、それもただ参加しているだけでなく、レース上級者に向くバイク。今の国内レースで言うならば、JBCFのE1かP1カテゴリーの方などにベストでしょう。

カレラ CARRERA SLカレラ CARRERA SL (c)MakotoAYANO/cyclowired.jp


カレラ カレラSL
■フレーム素材:T-800HM-HS、60T SHM XN60
■フォーク:60T HS1-1/8-1/4
■フレーム単体重量:730g
■価 格:399,000円(フレームセット、税込)





インプレライダーのプロフィール

戸津井俊介(OVER-DOバイカーズサポート)戸津井俊介(OVER-DOバイカーズサポート) 戸津井俊介(OVER-DOバイカーズサポート)

1990年代から2000年代にかけて、日本を代表するマウンテンバイクライダーとして世界を舞台に活躍した経歴を持つ。1999年アジア大陸マウンテンバイク選手権チャンピオン。MTBレースと並行してロードでも活躍しており、2002年の3DAY CYCLE ROAD熊野BR-2 第3ステージ優勝など、数多くの優勝・入賞経験を持つ。現在はOVER-DOバイカーズサポート代表。ショップ経営のかたわら、お客さんとのトレーニングやツーリングなどで飛び回り、忙しい毎日を送っている。09年からは「キャノンデール・ジャパンMTBチーム」のメカニカルディレクターも務める。

OVER-DOバイカーズサポート


諏訪孝浩諏訪孝浩 諏訪 孝浩(BIKESHOP SNEL)
バイクショップSNEL代表。自転車歴26年、過去にオランダのアマチュアチームに3シーズン在籍しクリテリウムに多数参戦。オランダクラブ内クリテリウム選手権3位など。
2008年3月に東京都大田区にショップをオープン。オランダで色々なショップを見てきた経験を元に、独自のセンスでショップを経営中。主にシクロクロスをメインに参戦し、クラブ員の約半数がシクロクロスに出場している。

BIKESHOP SNEL


ウェア協力:biciBISLEY 


text:So.Isobe
photo:Makoto.Ayano
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