レース序盤の25km付近から独走を開始した與那嶺恵理(チーム・フォルツァ!)が独走を続けて優勝。ジュニア世界選手権ポイントレースチャンピオンと逃げて、激しい競り合いの末に優勝した小橋勇利(松山工業高校/ボンシャンス飯田)。両レースともに熱い戦いに。

女子国際140km 独走する與那嶺恵理(チーム・フォルツァ!)女子国際140km 独走する與那嶺恵理(チーム・フォルツァ!) photo:Kenji.NAKAMURA

70km独走で優勝の與那嶺恵理(チーム・フォルツァ!)

女子国際140km 與那嶺恵理(チーム・フォルツァ!)と萩原麻由子(あさひレーシングチーム)が表彰待ち女子国際140km 與那嶺恵理(チーム・フォルツァ!)と萩原麻由子(あさひレーシングチーム)が表彰待ち photo:Hideaki.TAKAGI女子国際140km 與那嶺恵理(チーム・フォルツァ!)が優勝女子国際140km 與那嶺恵理(チーム・フォルツァ!)が優勝 photo:Hideaki.TAKAGI女子国際レースは100km、本島北端の国頭村奥やんばるの里がスタート地点。出走した40名で有力候補は、日本チャンピオンで来年からイギリスのプロチーム DTPCホンダへ移籍する萩原麻由子(あさひレーシングチーム)、全日本ロードと同個人TTで2位の與那嶺恵理(チーム・フォルツァ!)が筆頭。さらに09年の覇者ウォン・ワン・ユイ・ジェイミー(香港)、08年の覇者テン・シャオ・チア(台湾)と強豪が並ぶ。

勝負の地点は早かった。20km地点過ぎから始まる普久川ダムへの上りで與那嶺が抜け出し独走を開始。そこからゴールまでの70km超を独走で逃げ切った。後続はウォン、萩原、上野みなみ(鹿屋体育大学)、金子広美(イナーメ・アイランド信濃山形)の4人が追走し、一時は1分30秒あった差を詰めて、9秒差でウォンを先頭にゴールした。

国際女子クラスでこのような長距離の逃げ切りで優勝を飾った例は過去になく、初めての独走勝利と言えるだろう。

與那嶺を4人が追走し差を縮めていく段階で、市民210km、140km、100kmの各先頭集団さらにジュニア国際の3位以下の、合計45人の集団が間に入ったため、4人の追走は思うように走ることができなかった。先頭の與那嶺も最終的に45人の集団に抜かれてその後方でゴール。さらに9秒差で4人がゴールした。

追走の4人は強力だった。ロード&個人TT日本チャンピオンの萩原、アジア選個人TT2位で個人追抜きを3分47秒で走る上野、日本のトップヒルクライマーで平地のスピードもある金子、そして09年覇者のウォン。
45人の集団が間に入っていなければあるいは違う展開があったかもしれない。だが「上りで與那嶺さんが強く逃げられてしまった。私は付いていくことができなかった」と萩原が言うように、強さは圧倒的。そしてまだ70km以上を残して独走を開始した勇気は賞賛されていい。

優勝した與那嶺恵理(チーム・フォルツァ!)のコメント
「萩原麻由子さんら他の選手達は最初はついてきていたけれど、ローテーションを要求しても先頭を代わってくれる気配がなく、やがていなくなってしまった。最初から行くと決めていたので、そのまま走りました。だから後方でどんなレースがあったかわかっていないんです。羽地ダムに入る時点で逃げている時のタイム差は1分30秒。後方は男子の集団と混走になったりしていたようです。私は一人でずっとタイムトライアルをしている状態で、羽地ダムを越えたら30秒まで差を詰められてしまいました。後方集団でドラフティングがあったとしか思えない。男子と混走状態になってしまえば仕方がないとはいえ、本当はもっと差を付けて勝ちたかったんです。今回は最初から一人で逃げて勝つことを考えていたので、タイム差をできるだけ開こうと考えていました。でもゴール前は前の男子集団がスプリントを始めてしまったので、私は離れて後方でゆっくりゴールしました。だから女子の2位以下の4人との差は9秒差にまで縮まってしまいました」

前日にコーチの武井享介(チーム・フォルツァ!)氏は「(與那嶺)恵理は5分の差をつけて勝つ」と断言した。それほどに練習をつんできたし集中力も高めてきた。レースで圧倒的な力と勇気を見せ、自転車競技の経験が1年半にも満たない與那嶺のさらなる飛躍に期待だ。

女子国際100km
1位 與那嶺恵理(チーム・フォルツァ!)3時間06分32秒
2位 ウォン・ワン・ユイ・ジェイミー(香港)+09秒
3位 萩原麻由子(あさひレーシングチーム)
4位 上野みなみ(鹿屋体育大学)
5位 金子広美(イナーメ・アイランド信濃山形)
6位 ユアン・ティン・イン(台湾)+2分07秒


世界チャンピオン相手に完璧な勝利の小橋勇利(松山工業高校/ボンシャンス飯田)

ジュニア国際は本島北部の国頭村道の駅をスタートし、普久川ダムへの上りを2回こなすハードなコース。
1回目の普久川ダムへの上りを経て小橋とリャンを含む6人の逃げに。後方からは中野尻祥と岡本隼の和歌山北高校コンビが追走する。4人になった先頭に追走2人が30秒差にまで迫るが再び離れ、先頭集団での勝負に。先頭はさらに減って小橋とリャンの2人だけに。後方は5分以上差がつく。お互いにマークしあいながらもゴールまでの距離を縮めていく。「イオン坂」を越えてからさらに2人の牽制が強くなり、トラックのスプリントレースのように加減速を繰り返す。最後はゴールまで200mでスプリントを開始した小橋がリャンに競り勝った。

ジュニア国際140km 小橋勇利(松山工業高校/ボンシャンス飯田)が世界チャンピオンのリャン・チュン・ウィン(香港)を抑えて優勝ジュニア国際140km 小橋勇利(松山工業高校/ボンシャンス飯田)が世界チャンピオンのリャン・チュン・ウィン(香港)を抑えて優勝 photo:Hideaki.TAKAGI
ジュニア国際140km 小橋勇利(松山工業高校/ボンシャンス飯田)とリャン・チュン・ウィン(香港)が競り合うジュニア国際140km 小橋勇利(松山工業高校/ボンシャンス飯田)とリャン・チュン・ウィン(香港)が競り合う photo:Hideaki.TAKAGIジュニア国際140km 小橋勇利(松山工業高校/ボンシャンス飯田)が優勝ジュニア国際140km 小橋勇利(松山工業高校/ボンシャンス飯田)が優勝 photo:Hideaki.TAKAGIジュニア国際140km 戦い終えた小橋勇利(松山工業高校/ボンシャンス飯田)と世界チャンピオンのリュン・チュン・ウィン(香港)ジュニア国際140km 戦い終えた小橋勇利(松山工業高校/ボンシャンス飯田)と世界チャンピオンのリュン・チュン・ウィン(香港) photo:Hideaki.TAKAGI小橋は昨年に続いておきなわ2連覇を達成。国内ジュニア世代を代表する選手として、結果だけを見れば妥当かもしれない。だが激しいマークを振り切って抜け出し、そして2人での勝負に持ち込んだ。その相手はジュニアトラック世界選手権のポイントレース覇者。香港でワン・カンポー、コー・ホーティンに続く3人目の世界チャンピオンなのだ。その世界チャンピオンにスプリントで競り勝った意義は大きい。

リャンはそれ以外にもアジア選手権では個人TT1位、ロード3位、1kmTT1位、3kmIP1位、ポイントレース1位と香港が誇るジュニアの筆頭選手だ。もちろん小橋はそのリャンが参戦することを知って作戦を立てていた。

優勝した小橋勇利(松山工業高校/ボンシャンス飯田)のコメント
「リャンは平坦が強い選手で、彼と一騎打ちになることは予想していました。協調体制を取りつつ探りあいをしていました。羽地ダムの上りでアタックして差をつけたのですが、彼はシッティングでイン側を走っていて、下りと平坦で追いつく作戦でした。

30秒以上の差をつければ逃げ切れると思いましたがそこまで開かず、彼は追いついてきました。イオン坂のあたりでも5秒差くらいで僕を泳がしていました。そして追いつかれたので前へ出そうとしても当然出ない。ラスト3kmくらいで止まるくらいになりながらの牽制を繰り返してようやく彼を前に出しました。ゴール前は300mでスプリントするふりをして彼の後ろに入り、200mでスプリントを開始して勝ちました。

ラスト300mで(誘いに乗った)彼はしまった、という顔をしていました。あれほど駆け引きをしたことが無かったのでおもしろかったです。コミュニケーションをとりながら走れたのでよかったです。彼もおもしろいレースだったと言ってくれました」

レース後はリャンとお互いに英語で会話して笑顔で握手するほど。極めて高いレベルで正々堂々と戦った末に生まれた友情だ。小橋は卒業後はヨーロッパで走ることを希望している。作戦とゴールまでの距離を読む能力、勝つためのどん欲さは国内エリート選手を凌駕するものを持つ小橋。世界へ羽ばたく18歳に期待だ。

ジュニア国際140km
1位 小橋勇利(松山工業高校/ボンシャンス飯田)4時間06分08秒
2位 リュン・チュン・ウィン(香港)
3位 リュー・エン・チー(台湾)+4分17秒
4位 河津賢人(Espoir-Asia)
5位 中野尻祥(和歌山北高校)
6位 新城雄大(八重山農林高校)


今後にむけて

今大会で多く見られた複数クラスの混走状態は、この国際2クラスにも影響した。市民210km、同140km、同100kmと国際女子の計4クラスの先頭が、最終的にゴールまでにはひとつの集団になった。さらにここには国際ジュニアの3位以下も入り、合計46人の集団でゴールを通過した。国際女子は場合によっては勝敗に影響するレベルまで、国際ジュニアも3位以下の順位に影響を及ぼした。もちろん市民各クラスもしかりだ。

ここ数年は市民210kmのほうが速いため、先発するチャンピオンクラスとの時間差を広げる必要があった。いっぽうで交通規制終了時刻も考慮せねばならず難しいところだが、タイムスケジュールの見直しは検討されていいだろう。さらに各クラスの先頭集団を能動的に管理できる第三者を配置することも混走時には必要だろう。


photo&text:Hideaki.TAKAGI