ラスト70km地点で標高1940mの1級山岳ルクマニア峠を越えるツール・ド・スイス(UCIプロツアー)第3ステージ。しかし上りでピュアスプリンターたちは遅れず、有力選手たちが顔を揃えたスプリント勝負をマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームコロンビア)が制した。

フースホフトとフレイレを破ったマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームコロンビア)フースホフトとフレイレを破ったマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームコロンビア) photo:Kei Tsujiイタリアにほど近いスイス南部を駆け抜ける第3ステージ。ゴール地点のルミーノはイタリア国境から直線距離で20kmほどしか離れていない。アルプスの山々が連なる地域だけに山岳を避けたコース取りは難しく、この日はラスト70kmで登坂距離20kmオーバーの1級山岳ルクマニア峠が登場した。

レースはこのルクマニア峠に向けて、序盤からマルロンアリリオ・ペレス(コロンビア、ケースデパーニュ)、エンリーコ・ガスパロット(イタリア、ランプレ)、ウィル・フリッシュコーン(アメリカ、ガーミン)、サミュエル・ドゥムラン(フランス、コフィディス)の4名が逃げを決めた。

ツール・ド・スイス初勝利を飾ったマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームコロンビア)ツール・ド・スイス初勝利を飾ったマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームコロンビア) photo:Kei Tsujiこの4名とサクソバンクがコントロールするメイン集団のタイム差は最大6分まで拡大。標高1940mに達する本格的なルクマニア峠を進むにつれて天候は崩れ、選手たちが頂上を通過する頃には雨がコースを濡らす。ペレスが雨の頂上を先頭で通過し、メイン集団が3分遅れで続いた。

雨に濡れたルクマニアの下りでは落車が多発し、クリスティアン・ヴァンデヴェルデ(アメリカ、ガーミン)らが地面に叩き付けられたが全員レースは続行。落車の犠牲者の一人、レネ・ハーゼルバッハー(オーストリア、フォアアールベルク・コラテック)は27分遅れてゴールしている。

リーダージャージを着続けるファビアン・カンチェラーラ(スイス、サクソバンク)リーダージャージを着続けるファビアン・カンチェラーラ(スイス、サクソバンク) photo:Kei Tsujiやがてメイン集団の先頭にはサーヴェロやミルラム、チームコロンビアに代表されるスプリンターチームが陣取ってペースアップ。先頭4名はラスト23km地点で2分、ラスト10kmで1分リードしていたが、本格的にペースアップしたメイン集団を引き離せず、ラスト4kmで吸収された。

カウンターアタックで飛び出したライダー・ヘジダル(カナダ、ガーミン)もラスト2kmでメイン集団に飲み込まれ、チームコロンビアが主導権を握ったままラスト1kmに突入。コロンビアトレインの選手が順に離脱し、最終発射台ジョージ・ヒンカピー(アメリカ)に連れられたカヴェンディッシュが好位置につけた。

逃げに乗ったエンリーコ・ガスパロット(イタリア、ランプレ)がスプリント賞ジャージを獲得逃げに乗ったエンリーコ・ガスパロット(イタリア、ランプレ)がスプリント賞ジャージを獲得 photo:Kei Tsujiラスト200mで先に仕掛けたのはトル・フースホフト(ノルウェー、サーヴェロ)。しかしなだらかな上り勾配の最終ストレートで、大柄なフースホフトは失速。後方から弾丸のように追い上げるカヴェンディッシュがフースホフトを抜き去り、食らいつくオスカル・フレイレ(スペイン、ラボバンク)を振り切ってゴール。カヴェンディッシュがチームの働きに応える弾丸スプリントで、役者揃いのスプリントを制した。

「今日もチームは完璧に機能した。ラスト3kmの時点で4名が集団前方に残っていて、チームとしての強さを誇示できたと思う。牽引役の選手たちが完璧なリードアウトをこなしてくれたおかげで、先に飛び出したフースホフトを捉えることができたんだ」。加速性に富んだカヴェンディッシュが、強力なリードトレインに発射される。まさに鬼に金棒だ。

スプリント連続2位のオスカル・フレイレ(スペイン、ラボバンク)がポイント賞トップにスプリント連続2位のオスカル・フレイレ(スペイン、ラボバンク)がポイント賞トップに photo:Kei Tsujiツール・ド・スイス初出場のカヴェンディッシュは当然ステージ初勝利。「チームとしては(前日のアイゼルに続く)連勝だ」と、チームの活躍を喜ぶ。シーズン序盤から勝ちまくっているカヴェンディッシュは、今シーズンすでに11勝目だ。

チームがカヴェンディッシュの勝利に沸くその一方で、チームリーダーのキム・キルシェン(ルクセンブルク)は30秒遅れでゴールし、総合50位に転落している。

また、レース終盤にはリクイガスとミルラムも集団前方に姿を見せたが、エーススプリンターのダニエーレ・ベンナーティ(イタリア)とゲラルド・チオレック(ドイツ)はスプリントに絡めず、それぞれ41位と60位でゴールしている。

まだまだ総合成績は1分以内に45名がひしめく状態。ファビアン・カンチェラーラ(スイス、サクソバンク)はこの日もリーダージャージを守った。

選手コメントはチームコロンビア公式サイトより。

ツール・ド・スイス2009第3ステージ結果
1位 マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームコロンビア)4h39'27"
2位 オスカル・フレイレ(スペイン、ラボバンク)
3位 トル・フースホフト(ノルウェー、サーヴェロ)
4位 フランチェスコ・ガヴァッツィ(イタリア、ランプレ)
5位 ホセホアキン・ロハス(スペイン、ケースデパーニュ)
6位 フレフ・ファンアフェルマート(ベルギー、サイレンス・ロット)
7位 ルノー・ディオン(フランス、アージェードゥーゼル)
8位 ヨアン・オフルド(フランス、フランセーズデジュー)
9位 ヤウヘニ・フタロヴィッチ(ベラルーシ、フランセーズデジュー)
10位 ファビアン・カンチェラーラ(スイス、サクソバンク)

個人総合成績
1位 ファビアン・カンチェラーラ(スイス、サクソバンク)8h25'39"
2位 ロマン・クロイツィゲル(チェコ、リクイガス)+22"
3位 アンドレアス・クレーデン(ドイツ、アスタナ)+25"
4位 ジョージ・ヒンカピー(アメリカ、チームコロンビア)+27"
5位 トニ・マルティン(ドイツ、チームコロンビア)+34"
6位 マキシム・モンフォール(ベルギー、チームコロンビア)+35"
7位 グスタフエリック・ラーション(スウェーデン、サクソバンク)+36"
8位 ルイアルベルト・ファリアダコスタ(ポルトガル、ケースデパーニュ)+38"
9位 オスカル・フレイレ(スペイン、ラボバンク)+39"
10位 カルロス・バレード(スペイン、クイックステップ)+41"

ポイント賞
オスカル・フレイレ(スペイン、ラボバンク)

山岳賞
トニ・マルティン(ドイツ、チームコロンビア)

中間スプリント賞
エンリーコ・ガスパロット(イタリア、ランプレ)

チーム総合成績
サクソバンク