残り27km地点で1級山岳サン・ベルナール・ドゥ・トゥベ峠が登場するドーフィネ最終第8ステージはTTスペシャリストのスタフ・クレメント(オランダ、ラボバンク)が勝利。総合争いではアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、ケースデパーニュ) がカデル・エヴァンス (オーストラリア、サイレンス・ロット)の抵抗を最後まで許さず、連覇を達成した。

美しい湖を横手に見ながら走る集団美しい湖を横手に見ながら走る集団 (c)CorVos第8ステージはラスト27km地点で平均勾配が8%に達する1級山岳サン・ベルナール・ドゥ・トゥベ峠が登場するコースプロフィール。グルノーブルへは下ってのゴールとなるため、総合優勝上位3人にとって勝負を争うには難しいが、最後まで逆転の可能性を残していた。

レースは中盤逃げたベアト・グラブシュ(ドイツ、チームコロンビア)の動きから始まった。TTスペシャリストのグラブシュは、巨体から発するパワーを生かしながら後続メイン集団に6分近い差をつけて独走で逃げ続けた。

2分差ほどで28人の中グループがグラブシュを追う。メンバーは以下の通りだ。この中にはリーダージャージ擁するケースデパーニュのペレイロとチームメイトを含んでいた。

<逃げた28人>
オスカル・ペレイロ(スペイン、ケースデパーニュ)
ホセイバン・グティエレス(スペイン、ケースデパーニュ)
シャビエル・サンディオ(スペイン、ケスデパーニュ)
スタフ・クレメント(オランダ、ラボバンク)
ユベール・デュポン (フランス、アージェードゥーゼル)
セバスティアン・ジョリー(フランス、 フランセーズデジュー)
アントニー・ジェラン(フランス、 フランセーズデジュー)
イゴール・アントン(スペイン、エウスカルテル・エウスカディ)
イニャキ・イサーシ(スペイン、エウスカルテル・エウスカディ)
ステファヌ・オジェ(フランス、コフィディス)
マルコ・ヴェーロ (イタリア、クイックステップ)
マールテン・ワイナンツ(ベルギー、クイックステップ)
シリル・ゴティエ (フランス、Bboxブイグテレコム)
ウィリアム・ボネ(フランス、BBoxブイグテレコム)
クリスチャン・ククス(ドイツ、 チームミルラム)
ピーター・ベリトス (スロバキア、チームミルラム)
ダニエーレ・リーギ(イタリア、ランプレNGC)
ベアト・グラブシュ(ドイツ、 チームコロンビア)
アダム・ハンセン(オーストラリア、 チームコロンビア)
フランティセク・ラボン (チェコ、チームコロンビア)
ニコライ・トルソーフ(ロシア、カチューシャ)
アレクサンダー・クチンスキー(ベラルーシ、リクイガス)
ベナト・インチャウスティ(スペイン、 フジ・セルヴェット)
ユルゲン・ヴァンホーレン (ベルギー、サクソバンク)
ティモシー・ダッガン(アメリカ、 ガーミン・スリップストリーム)
アレクサンドル・ディアチェンコ (カザフスタン、アスタナ)
ブレント・ブックウォルター (アメリカ、BMCレーシング)
アレクサンドル・モース (スイス、BMCレーシング)

ティモシー・ダッガン(アメリカ、ガーミン・スリップストリーム)とスタフ・クレメント(オランダ、ラボバンク)が逃げるティモシー・ダッガン(アメリカ、ガーミン・スリップストリーム)とスタフ・クレメント(オランダ、ラボバンク)が逃げる (c)CorVos残り31km、最後の峠への上りが始まると同時にグラブシュが捕まると、チームメイトのアダム・ハンセン(オーストラリア、チームコロンビア)がカウンターアタックをかけて飛び出す。それに続いたのがティモシー・ダッガン(アメリカ)だ。そしてハンセンがきつくなり、代わりにステフ・クレメント(ラボバンク)がジョイン、2人の逃げが始まった。

後方からは昨ステージで逃げ切りを決めたダヴィ・モンクティエ(フランス、コフィディス)が抜け出て前の2人を追う。

峠に入ってマイヨジョーヌ集団でも動きがあった。今日もまたカデル・エヴァンス(オーストラリア、サイレンス・ロット)がアタックをかけて逃げを狙う。

エヴァンス、コンタドールを含むマイヨジョーヌ集団が形成されるエヴァンス、コンタドールを含むマイヨジョーヌ集団が形成される (c)CorVosしかし、やはりそれは許されなかった。エヴァンス、アルベルト・コンタドール(スペイン、アスタナ)、ロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク)、ヴィチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス)、デーヴィッド・ミラー(イギリス、ガーミン・スリップストリーム)、ヤコブ・フグルサング(デンマーク、サクソバンク)、ピエリック・フェドリゴ(フランス、Bboxブイグテレコム)、そしてアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、ケースデパーニュ)で構成されたマイヨジョーヌ集団は、互いを牽制しつつ最後の勝負どころに挑んだ。

エヴァンスがアタックを繰り返す。しかし、バルベルデは堅実にそれをマーク。コンタドールは動きを見せないが、淡々と2人を逃がさずに着いていく。

3位を守ることに終始したアルベルト・コンタドール(スペイン、アスタナ)3位を守ることに終始したアルベルト・コンタドール(スペイン、アスタナ) (c)CorVos峠は手前2kmほどが緩い勾配になっており、勝負はそこまでに決することが無かった。バルベルデは峠を越えながらコンタドールの肩を叩き、「お疲れ様」の合図。ここで総合争いは終了した。

ゴールまで残り20kmあまり。逃げ切るには距離が長いが、総合争いの終了したマイヨジョーヌ集団はすでにペースを上げる意欲は無かった。ダッガンとクレメントはタイムトライアルのように逃げ続ける。クレメントは2年前の世界選手権個人タイムトライアルの銅メダリスト。逃げは得意だ。

そしてゴールまで8kmを切ったところで思わぬ選手が追いついた。セバスチャン・ジョリー(フランス、フランセーズデジュー)だ。2人に合流し、3人の協力体制が敷かれた。

ティモシー・ダッガン(アメリカ、ガーミン・スリップストリーム)をスプリントで下したスタフ・クレメント(オランダ、ラボバンク)ティモシー・ダッガン(アメリカ、ガーミン・スリップストリーム)をスプリントで下したスタフ・クレメント(オランダ、ラボバンク) (c)CorVosそしてゴールまで1.3kmでジョリーが猛然とアタック。大きな差を開いたが、残り1kmを切て追い詰めてきたクレメントとダッガンがパスする。そしてそのままの勢いでクレメントが先頭固定のままフィニッシュまで突き進んだ。

2006、2007年オランダTTチャンピオン。そして2007年世界選手権シュツットゥガルト大会個人TT3位TTスペシャリスト、クレメントのパワーはダッガンを圧倒していた。ロードステージでのメジャーな勝利はこれが初といっていい。

そしてマイヨジョーヌ集団は2分ほど遅れてフィニッシュ。その瞬間、バルベルデのマイヨジョーヌが確定。ドーフィネリベレ2年連続優勝が決まった。

スタフ・クレメント(オランダ、ラボバンク)のコメント
「勝てると思っていた。ジョリーがアタックしてからも打ち負かせる自信があった。スプリントでレースに勝つなんて本当に久しぶりのことだ」





ドーフィネ覇者バルベルデのツール・ド・フランス出場は未確定



アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、ケースデパーニュ)を祝福するカデル・エヴァンス (オーストラリア、サイレンス・ロット) アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、ケースデパーニュ)を祝福するカデル・エヴァンス (オーストラリア、サイレンス・ロット)  (c)CorVos繰り返すエヴァンスのアタックをいなし、バルベルデはドーフィネで2度目のマイヨジョーヌを手にした。喜びを語るとともに、迫るツール・ド・フランスへについては、TNA(イタリアアンチドーピング裁決機関)が下したイタリアでの2年間のレース出場停止処分という裁定によって今置かれている状況への不満を口にした。

バルベルデは次のように語っている。
「チームメイトはまた今日も素晴らしい仕事をしてくれた。今日のレースは危険なものになる可能があった。だからすべての力を注ぐことが必要だったんだ。だからこそこのハイレベルなレースに勝つことが出来た。100%信じてサポートしてくれたチームにもう一度感謝するよ。今までいくつもの浮き沈みがあったが、カタルーニャ一周での勝利が僕にドーフィネへのモチベーションをくれたんだ。プロツアーレースでの連勝は意味が大きい。この難しい期間にも僕をサポートしてくれるチームや周囲の人々にとっても。次のゴールはスペイン選手権だ。
アルベルト(コンタドール)は自分自身のレースをした。彼は3位を守り、注意深く走った。僕のこの2度目のドーフィネの勝利は僕にとって大きなものだ」。

ドーフィネリベレの最終表彰台は来月のツール・ド・フランスを写すドーフィネリベレの最終表彰台は来月のツール・ド・フランスを写す (c)CorVosこの勝利はツール・ド・フランス主催者へのメッセージ?と聞かれると
「そうだ。僕は怒りを表面には出さないが、僕を出場停止にしようとすることに不正義があることは明らかだ。最後には僕の望むように決着することを望んでいる。僕はまだ望みを持っている。でも不幸なことにそれは僕の手にはゆだねられていないんだ。僕はまだツール・ド・フランスのスタートに立つ希望を持っているよ」。

イタリアを通過する今年のツール・ド・フランス2009。そしてイタリアが下したイタリア国内でのバルベルデのレース出場停止処分。UCIやツール・ド・フランス主催者らがどのような判断を下すかは分からないが、バルベルデのツールへの準備は完璧なものになっている。



イエローでなくグリーン。ポイント賞カデル・エヴァンス (オーストラリア、サイレンス・ロット) イエローでなくグリーン。ポイント賞カデル・エヴァンス (オーストラリア、サイレンス・ロット)  (c)CorVos

ドーフィネ・リベレ2009第8ステージ結果


1位 スタフ・クレメント(オランダ、ラボバンク) 3h30'17"
2位 ティモシー・ダッガン(アメリカ、ガーミン・スリップストリーム) 
3位 セバスティアン・ジョリー(フランス、フランセーズデジュー)+2"
4位 アダム・ハンセン(オーストラリア、チームコロンビア)+1'31"
5位 アレクサンダー・クチンスキー(ベラルーシ、リクイガス)+1’33"
6位 イゴール・アントン(スペイン、エウスカルテル)+1’56"
7位 ダヴィ・モンクティエ(フランス、コフィディス)+1’56"
8位 ダニエーレ・リーギ(イタリア、ランプレNGC)+1’58"
9位 ユベール・デュポン(フランス、アージェードゥーゼル)+1’58"
10位 マールテン・ワイナンツ(ベルギー、クイックステップ)+2’05"

個人総合成績


1位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、ケースデパーニュ) 26h33'15"
2位 カデル・エヴァンス (オーストラリア、サイレンス・ロット) +16"
3位 アルベルト・コンタドール(スペイン、アスタナ) +1'18"
4位 ロバート・ヘーシンク(オランダ、 ラボバンク) +2'41"
マイヨジョーヌに身を包んだアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、ケースデパーニュ)マイヨジョーヌに身を包んだアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、ケースデパーニュ) (c)CorVos5位 ミケル・アスタルロサ(スペイン、 エウスカルテル) +3'40"
6位 ヤコブ・フグルザング(デンマーク、サクソバンク) +4'08"
7位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス) +4'21"
8位 アイマル・スベルディア (スペイン、アスタナ)   +5'05"
9位 デーヴィット・ミラー (イギリス、ガーミン・スリップストリーム) +5'28"
10位 クリストフ・ルメヴェル (フランス、フランセーズデジュー) +6'19"

ポイント賞


カデル・エヴァンス(オーストラリア、サイレンス・ロット)

山岳賞


ピエリック・フェドリゴ

チーム総合成績


アスタナ


text:MakotoAYANO
photo:CorVos

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