8月に現役を引退したジョージ・ヒンカピー(アメリカ)が、10月10日、過去にドーピングを行なっていたことを自身のウェブサイト上で告白した。ほぼ時を同じくして、USADA(アメリカアンチドーピング機関)は、USポスタル内でドーピングが行なわれていたと証言した元チーム所属の11名の名前を発表し、そのうち6名に出場停止処分を与えた。

ジョージ・ヒンカピー(アメリカ)ジョージ・ヒンカピー(アメリカ) photo:Makoto Ayano1997年からUSポスタルに所属し、以後ランス・アームストロング(アメリカ)のチームメイトとして同氏のツール・ド・フランス7連覇を支え、同時に17年間ツール・ド・フランスに出場(最多出場記録)したヒンカピーが過去のドーピングを打ち明けた。

8月を最後に現役を引退している39歳のヒンカピーは、自身のウェブサイトの中で打ち明ける。

「30年以上にわたって人生をサイクリングに捧げ、この世界で最も過酷なスポーツのトップシーンで闘うべく尽力してきた。(中略)このスポーツへの愛情が大きく、これまでの献身と自分に与えてくれた物の多さ故に、今日こうして過去の禁止薬物使用を打ち明けることを非常に苦しく思う。キャリアの初期は、パフォーマンスを向上させる薬物がトップサイクリストの中で広く蔓延しており、それらの薬物無しには同じレベルで闘えなかった。間違った選択をしたことを、家族とチームメイト、ファンに深く詫びたい」。

「過去6年間はパフォーマンス向上薬物に全く手を出さず、クリーンに走ってきた。禁止薬物をこのスポーツから排除するため、2006年からずっと奔走してきた。その間、私は継続的にトップレースで走るとともに、サイクリングのカルチャーが変遷し、若い選手たちに正しい選択が出来るよう促してきた」と、ヒンカピーは2006年以降の薬物使用を否定している。

ヒンカピーは声明を「私のサイクリング人生における次のチャプターが始まる。世界トップレースで勝てる若手を育成し、自信を与え、サポートすることに力を注ぎたい」と締めくくっており、今後もロードレースに携わる意向を示している。

USADAが証言に応じたアームストロングの11人のチームメイトのリストを発表

今回のヒンカピーの告白の裏には、アームストロングやヒンカピーが所属したUSポスタルを取り巻くUSADAによるドーピング捜査がある。USADAは10月10日にドーピングの証言を行なった11名のチームメイトの名前を発表した。

証言を行なった元USポスタルメンバー
トム・ダニエルソン(ガーミン・シャープ)
クリスティアン・ヴァンデヴェルデ(ガーミン・シャープ)
デーヴィッド・ザブリスキー(ガーミン・シャープ)
リーヴァイ・ライプハイマー(オメガファーマ・クイックステップ)
マイケル・バリー(チームスカイ※引退)
ジョージ・ヒンカピー(BMCレーシングチーム※引退)
フランキー・アンドリュー
タイラー・ハミルトン
フロイド・ランディス
ステフェン・スワールト
ジョナサン・ヴォーターズ

このうち現役のダニエルソン、ヴァンデヴェルデ、ザブリスキー、ライプハイマー、バリー、ヒンカピー(現役扱い)に対し、USADAは6ヶ月間の出場停止と該当期間のレース記録抹消を要求した。

9月に現役を引退したバリーは、その後すぐに過去のドーピングを認める告白を行ない、ガーミン・シャープ所属のダニエルソン、ヴァンデヴェルデ、ザブリスキーは、同時に自身の公式サイトなどを通じて声明を発表している。
ジョナサン・ヴォーターズ率いるチームガーミン・シャープは「サイクリングを浄化するための大きな一歩だ。過去にないほどクリーンになっていることを認識し、その歴史に立ち向かい、変化の時を迎えていることにプライドを持っている」とコメントしている。

また、USADAは1000ページに及ぶ調査報告書をUCIに送付。UCIもそれを受理している。報告書の中にはアームストロングがドーピング医師として追放されているフェラーリ医師に対して約100万ドルを送金した記録なども資料として含まれているという。

text:Kei Tsuji