2012年10月7日、フランス中部の平野部でパリ〜トゥール(UCI1.HC)が開催される。開催106回目を迎えるこの伝統の一戦に、日本から別府史之(オリカ・グリーンエッジ)と宮澤崇史(サクソバンク・ティンコフバンク)が出場予定だ。

逃げorスプリント 絶妙な駆け引きを生み出すレイアウト

パリ〜トゥール2012コースマップパリ〜トゥール2012コースマップ image:A.S.O.今年で開催105回目を迎える伝統のパリ〜トゥール。2005年以降UCIプロツアー(現ワールドツアー)カレンダーに組み込まれていたが、UCIとレース主催者ASOの確執により、2008年にHC(超級)クラスに格下げされた。しかしその格式は依然として高い。

今年のスタート地点は、パリの西100kmに位置するシャトーヌフ・アン・ティムレ。そこから世界遺産のロワール渓谷を南に向かい、トゥール中心部のグラモン大通りにゴールする。平坦基調のため高速化しやすいのが特徴で、2010年には平均スピードが47.730km/hをマークしている。

一見完全なるスプリンター向きのクラシックだが、過去には何度も逃げ切りが決まっている。過去24年間の闘いを見てみると、スプリント10回、逃げ切り14回と言う比率。その秘密はラスト15kmを切ってから連続する細かなアップダウンにある。

ラスト10km地点で「ボーソレイユ」の登りをクリアし、休む間もなくラスト7km地点で「レパン」が登場。いずれもスプリンターがパワーで乗り切れる短い登りだが、毎年ここで堰を切ったようにアタックが掛かる。

パリ〜トゥール2012ラスト10kmレイアウトパリ〜トゥール2012ラスト10kmレイアウト image:A.S.O.これらの短い登りでどれだけ集団を引き離したとしても、タイム差は20秒ほどまでしか広がらない。しかしトゥール郊外特有の曲がりくねった細いコースが、少人数の逃げグループに味方する。大集団は縦に長く伸びてしまい、追撃モードに入りにくい。そのため少人数で逃げる選手にもチャンスがあるのだ。

「レース終盤に連続する上り」「細く曲がりくねったコース」「ゴールまでの距離」という3つの要素が絶妙に絡み合い、逃げ切りと集団スプリントの際どいマッチレースが繰り広げられる。

ゴール地点はトゥールのグラモン大通り。「牽制しながらも逃げる選手と猛烈な勢いで追い上げる大集団のバトル」を演出する3000mの直線路が名物だが、昨年トラム敷設工事の影響で最終ストレートが660mに短縮。工事完了に伴い、今年は最終ストレートの全長が(800mまで)140m延長されている。

いずれにしても「ボーソレイユ」と「レパン」の登りからゴールまでの距離は数年前よりも短くなっている。逃げ切りを狙う選手に朗報だ。

パリ〜トゥール2012コースプロフィールパリ〜トゥール2012コースプロフィール image:A.S.O.パリ〜トゥール2012ラスト13kmプロフィールパリ〜トゥール2012ラスト13kmプロフィール image:A.S.O.


1秒のロスも許されないアタッカーとスプリンターの闘い

2011年大会、マルカートを振り切ってゴールするフレフ・ファンアフェルマート(ベルギー、BMCレーシングチーム)2011年大会、マルカートを振り切ってゴールするフレフ・ファンアフェルマート(ベルギー、BMCレーシングチーム) photo:Cor VosUCIワールドツアーレースではないため、地元のUCIコンチネンタルチームも参加可能。今年はUCIプロ14チームとUCIプロコンチネンタル9チーム、さらにUCIコンチネンタル2チームを加えた合計25チームが出場する。

昨年はレース終盤の登りでフレフ・ファンアフェルマート(ベルギー、BMCレーシングチーム)とマルコ・マルカート(イタリア、ヴァカンソレイユ・DCM)がアタックを成功させ、後続を15秒引き離して逃げ切った。

直前のバンシュ〜トゥルネー〜バンシュで優勝したアダム・ブライス(イギリス、BMCレーシングチーム)直前のバンシュ〜トゥルネー〜バンシュで優勝したアダム・ブライス(イギリス、BMCレーシングチーム) photo:Cor Vosファンアフェルマートは今年も優勝候補に挙げられるが、雨のジロ・ディ・ロンバルディアで体調を崩したとの情報も。世界チャンピオンのフィリップ・ジルベール(ベルギー)は出場しないが、BMCレーシングチームからは直前のバンシュ〜トゥルネー〜バンシュで優勝した23歳のアダム・ブライス(イギリス)も出場する。アルカンシェルに続く秋のビッグタイトル獲得に向けてアシスト陣も揃っている。

ジョン・デゲンコルブ(ドイツ、アルゴス・シマノ)ジョン・デゲンコルブ(ドイツ、アルゴス・シマノ) photo:Kei Tsujiもちろんマルカートやニキ・テルプストラ(オランダ、オメガファーマ・クイックステップ)、ラース・ボーム(オランダ、ラボバンク)、マッティ・ブレシェル(デンマーク、ラボバンク)、フアンアントニオ・フレチャ(スペイン、チームスカイ)、ヤコブ・フグルサング(デンマーク、レディオシャック・ニッサン)といった面々も攻撃的に動いてくるだろう。

集団スプリントに持ち込まれた場合はジョン・デゲンコルブ(ドイツ、アルゴス・シマノ)に注目したい。ブエルタ・ア・エスパーニャでステージ5勝を飾った23歳のジャーマンスプリンターは、アップダウンコースで行なわれたロード世界選手権で4位、バンシュ〜トゥルネー〜バンシュで3位。10月に入ってもなお好調を維持している。

注目スプリンターとしては他にもナセル・ブアニ(フランス、FDJ・ビッグマット)、ダヴィデ・アッポローニオ(イタリア、チームスカイ)、ゲラルド・チオレック(ドイツ、オメガファーマ・クイックステップ)、ジャコモ・ニッツォーロ(イタリア、レディオシャック・ニッサン)、ジミー・カスペール(フランス、アージェードゥーゼル)らが挙げられる。

日本からは、ジャパンカップに参戦予定である別府史之(オリカ・グリーンエッジ)と宮澤崇史(サクソバンク・ティンコフバンク)が出場する。直前のパリ〜ブールジュを終えた別府史之は「身体のコンディションはイイ感じよく動くし踏めてる。何よりも自転車が走ってる!」とツイート。コンディションは上々のようだ。

宮澤崇史は9月末のシルキュイ・フランコ・ベルジュで落車し、足首の捻挫と膝の擦過傷を負ったが、継続的にレース出場。パリ〜ブールジュについて、自身のTwitterで「落車の後遺症が思ったよりも深刻で動けなかった。しかし、現場ではそんな事は言い訳で、できる仕事をチームメイト同様しなければいけない。最低限の事しか出来なかったが、パリ〜トゥールでは必要とされる。短い時間だがベストを尽くす」とコメントしている。

別府史之(オリカ・グリーンエッジ)別府史之(オリカ・グリーンエッジ) photo:Kei Tsuji宮澤崇史(サクソバンク・ティンコフバンク)宮澤崇史(サクソバンク・ティンコフバンク) photo:Kei Tsuji


歴代パリ〜トゥール優勝者
2011年 フレフ・ファンアフェルマート(ベルギー)逃げ切り
2010年 オスカル・フレイレ(スペイン)スプリント
2009年 フィリップ・ジルベール(ベルギー)逃げ切り
2008年 フィリップ・ジルベール(ベルギー)逃げ切り
2007年 アレッサンドロ・ペタッキ(イタリア)スプリント
2006年 フレデリック・ゲドン(フランス)逃げ切り
2005年 エリック・ツァベル(ドイツ)スプリント
2004年 エリック・デッケル(オランダ)逃げ切り
2003年 エリック・ツァベル(ドイツ)スプリント
2002年 ヤコブ・ピール(デンマーク)逃げ切り
2001年 リシャール・ヴィランク(フランス)逃げ切り
2000年 アンドレア・タフィ(イタリア)逃げ切り

text:Kei Tsuji

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