ブエルタ・ア・エスパーニャ開幕を控えた8月14日、「ビスケー湾の真珠」を舞台にクラシカ・サンセバスティアン(UCIワールドツアー)が開催。ゴール9km手前でアタックを成功させたルイスレオン・サンチェス(スペイン、ラボバンク)が、自身2度目の大会制覇を果たした。

クラシカ・サンセバスティアン2012コースプロフィールクラシカ・サンセバスティアン2012コースプロフィール photo: clasica-san-sebastian.diariovasco.com熱狂的な自転車ファンを有するバスク地方最大のワンデーレースとして知られているクラシカ・サンセバスティアン(UCIワールドツアー)。「クラシカ(クラシック)」の名を冠しているが、今年で開催32回目。比較的その歴史は浅い。

ビスケー湾を望む風光明媚な山岳地帯を進むビスケー湾を望む風光明媚な山岳地帯を進む photo:Cor Vosレースの舞台となるサン・セバスティアンは、ビスケー湾に面した港湾都市。バスク語名はドノスティア。「ビスケー湾の真珠」と形容されるバスク地方随一のリゾート地であり、フランス国境から僅か15kmしか離れていない。

山がちなバスク地方の内陸部を駆け抜ける234kmはアップダウンの連続で、後半に2回通過する1級山岳ハイスキベル峠(平均勾配5.8%・登坂距離7.8km)と2級山岳アルカレ峠(平均勾配6.3%・登坂距離2.7km)が大会の名物。最後のアルカレ峠はゴールから15kmしか離れていない。

レース序盤から逃げるアドリアン・パロマレス(スペイン、アンダルシア)とハビエル・アラメンディア(スペイン、カハルーラル)レース序盤から逃げるアドリアン・パロマレス(スペイン、アンダルシア)とハビエル・アラメンディア(スペイン、カハルーラル) photo: clasica-san-sebastian.diariovasco.comツール・ド・フランスやロンドンオリンピックを好調のままに終えた選手、ならびにブエルタ・ア・エスパーニャ出場を控えた選手が挙って出場。バスク最大のタイトルをかけて、序盤から熱いレースが展開された。

アタック合戦の末、35km地点で飛び出したのはアドリアン・パロマレス(スペイン、アンダルシア)とハビエル・アラメンディア(スペイン、カハルーラル)の2人。スペインのプロコンチネンタルチームに所属する2人に10分を超えるリードを許したメイン集団は、モビスターやカチューシャが先頭で目を光らせながら、後半のハイスキベル峠とアルカレ峠に備える。

ハイスキベル峠の登りをこなすアレクサンドル・ヴィノクロフ(カザフスタン、アスタナ)らハイスキベル峠の登りをこなすアレクサンドル・ヴィノクロフ(カザフスタン、アスタナ)ら photo: clasica-san-sebastian.diariovasco.com1回目のハイスキベル峠登坂が始まると、モビスターがペースアップ。逃げていたパロマレスとアラメンディアは捉えられ、そこからカウンターアタックで次々に選手が飛び出す展開に。リクイガス・キャノンデールやモビスター、チームスカイが積極的にレースを動かしたが、決定的な動きは生まれない。

やがて2回目のハイスキベル峠でメイン集団は人数を減らし、そこからセルジオルイス・エナオモントーヤ(コロンビア、チームスカイ)やゴルカ・イサギーレ(スペイン、エウスカルテル)ら5名がアタック。登坂力に長けたエナオモントーヤは、最後のアルカレ峠で独走を開始した。

集団を振り切ってゴールするルイスレオン・サンチェス(スペイン、ラボバンク)集団を振り切ってゴールするルイスレオン・サンチェス(スペイン、ラボバンク) photo:Cor Vos後方ではモビスターが追走を組織し、そこからホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)がアタックする。しかしロドリゲスの動きは徹底的にマークされ、ゴール地点サンセバスティアンの街に至る下りで先頭エナオモントーヤは吸収。30名ほどに膨れ上がった集団の中から、ラスト9kmでLLサンチェスが飛び出した。

LLサンチェスは一気に後続との距離を広げ、そのまま独走開始。後方ではロドリゲスやリッチー・ポルト(オーストラリア、チームスカイ)がカウンターアタックを仕掛けたが、ラボバンクのバウク・モレマ(オランダ)らがチェックに入る。牽制も手伝って、追走集団のスピードは上がらない。

表彰台、左から2位サイモン・ジェランス(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)、優勝ルイスレオン・サンチェス(スペイン、ラボバンク)、3位ジャンニ・メールスマン(ベルギー、ロット・ベリソル)表彰台、左から2位サイモン・ジェランス(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)、優勝ルイスレオン・サンチェス(スペイン、ラボバンク)、3位ジャンニ・メールスマン(ベルギー、ロット・ベリソル) photo:Cor Vos先頭LLサンチェスのペースは最後まで落ちず、7秒のリードを保ってゴール。サイモン・ジェランス(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)が追走集団のスプリントで競り勝って2位。ジャンニ・メールスマン(ベルギー、ロット・ベリソル)が3位に入った。

2010年に逃げグループ内のスプリント勝負を制したLLサンチェスが、自身2度目のクラシカ・サンセバスティアン制覇を果たした。ゴール11km手前で仕掛けて勝利したツール・ド・フランス第14ステージと同じ、得意の勝ちパターンだ。

「ライバルたちのコンディションも良く、1回目の勝利(2010年)よりもマークが厳しくて難しいレースだった。でも自分もチームもモチベーション高くレースに挑んでいたし、今日は戦略が上手く行ったんだ」。今シーズン7勝目を飾ったLLサンチェスは語る。勝利数の中には、パリ〜ニース、ツール・ド・ロマンディ、そしてツールのステージ優勝が含まれている。

LLサンチェスは8月18日に開幕するブエルタを欠場する予定。「残りのシーズンは、世界選手権、ヴァッテンフォール・サイクラシックス、GPプルエー、GPケベック、GPモントリオールを目指して闘っていく。どのレースも自分向き。まだまだシーズンは終わらないよ」。

また、ロンドンオリンピックで金メダルを獲得したアレクサンドル・ヴィノクロフ(カザフスタン、アスタナ)は、五輪のデザインが入ったオリジナルジャージを着用し、ゴールデンバイクで出場。キャリア最後のUCIレースを35位で終えている。

選手コメントはラボバンク公式サイトより。

クラシカ・サンセバスティアン2012結果
1位 ルイスレオン・サンチェス(スペイン、ラボバンク)            5h55'34"
2位 サイモン・ジェランス(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)       +07"
3位 ジャンニ・メールスマン(ベルギー、ロット・ベリソル)
4位 クリストフ・ルメヴェル(フランス、ガーミン・シャープ)
5位 バウク・モレマ(オランダ、ラボバンク)
6位 マウロ・サンタンブロジオ(イタリア、BMCレーシングチーム)
7位 マッズ・クリステンセン(デンマーク、サクソバンク・ティンコフバンク)
8位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)
9位 シャビエル・フロレンシオ(スペイン、カチューシャ)
10位 ディエゴ・ウリッシ(イタリア、ランプレ・ISD)

text:Kei Tsuji
photo:Cor Vos