テクニカルなコーナーと粗い路面のコースが目立った個TTの第9ステージ。TT王者カンチェラーラを下したのは、総合候補者でありながらステージ初優勝のブラドレー・ウィギンズ。総合2位のエヴァンスを2分近く突き放した。

初ステージ優勝・総合1位のブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ)

スタート台を駆け下りるブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ)スタート台を駆け下りるブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ) photo:Cor Vosこういう瞬間がツールでの勝利に役立つ。プレッシャーのかかる状況で自分自身の冷静さを保つことが大切だ。昨日の記者会見で、僕が取り乱したとみんなが言うけど、そんなことはない。僕は自分の思いを述べただけだ…。使った言葉以外は謝罪するつもりはない。でも、このレースは好きだし、このスポーツも好きだ。今日のような瞬間で、これまでの努力がすべて報われる。

これまでにチームがしてきた仕事と僕がチームですべきことについては、とても自信がある。気弱にはなりたくない。前にも言ったとおり、僕はオリンピックという素晴らしい学校を体験している。僕はオリンピックでトラック競技や団体追い抜きの決勝戦に出場した経験がある。こういう競技、つまりタイムトライアルがとても得意だ。ノウハウもある。だから自分の走りをしている。タイムやタイム計測で気が散ることはない。

マイヨジョーヌを着て走るブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ) マイヨジョーヌを着て走るブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ)  (c)Makoto.AYANO目標はパリでマイヨジョーヌを着ることだ。そのために僕らはトレーニングしてきた。自分のわがままでマイヨジョーヌを着る時期を選べるなら、理想的なのは最後のタイムトライアルの日、パリでの最終日の前の日だ。しかし、マイヨジョーヌを獲得する時期はつねに選べるわけではない。だから、マイヨジョーヌを獲得した瞬間は、とても誇らしかった。そのうえ第7ステージ以降キープできた。さらにもう1日が加わる。

シッティングのまま登りをこなすブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ)シッティングのまま登りをこなすブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ) photo:Cor Vos僕たちはマイヨジョーヌを確保したまま、明日の素晴らしい休養日を満喫する。そしてレースは続く。今後は簡単ではないだろう。今年のツールでは、ちょっとした順位の上下もあると思う。でも、僕たちは確実に好位置にいる。

今日は素晴らしい日だった。最初のペダルの1回転で行けると思った。すべてが素晴らしく感じた。僕は冷静だったし、僕の得意なタイプのレースだった。今日1日は、しっかり集中できて、なおかつリラックスしていた。それがよかった。

僕はこのスポーツに過剰な期待はしない。ただ、自分の行為に集中するだけだ。予測はしないようにしている。それは失望したり、驚いたりすることになるだけだから。

これが今の現実だ。さらに1日、この現実が続く。今日はツール・ド・フランスのよくある1日で、僕はたまたま素晴らしい順位で終えることができただけだ。これが夢の正体だし、ツールに関するすべてだ。坂道を転がり落ちるときの音は、僕が出場したいくつかのオリンピックの決勝戦と比べても凄まじい……輝かしいだろう? これがすべての子どもたちが夢見ること、ツールで優勝することだ。


スカイの公式リリースより

ブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ)がマイヨジョーヌを受け取るブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ)がマイヨジョーヌを受け取る (c)CorVos単に僕はその場所まで出かけて、自分自身に集中して、自転車に乗っただけだ。すべてに少しモヤがかかったようにしか覚えていない。自分がステージ優勝したこともほぼ忘れて、総合成績の争いについて考えていた——カデル(エヴァンス)やヴィンチェンツォ(ニバリ)などの選手に用心していた。

表彰台に上がったブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ)表彰台に上がったブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ) (c)CorVosマイヨジョーヌを着用して乗れたことに満足しているし、精神的にも1日着用できたことで満足できた。坂道から転げ落ちるときの音は凄まじかった。段階を追って落ちるということは許してもらえない。現時点では、やっと一息つけて、マイヨジョーヌを獲得した自分を誇らしく思う。

明日、休息日を迎えることは僕たちにとっても幸運だ。わずかな時間でも身体を休めてから、僕たちは2日後にレースに復帰できるからだ。

僕たちはスタート以来、これまでやってきたことを続けているだけだ。僕とクリス(フルーム)は、ほとんどのステージでショットガンのように駆け抜けてきた。これはレースがスタートしてからの目的だった。昨年、僕が落車したとき、僕らには代替プランがなかった。僕たちはこれまでやってきたことと、クリスを現在の順位にキープさせることをできるだけ続けていくつもりだ。僕たちがこれからどこに向かうのかを考えながら、現在の状況を受け入れていくだけだ。


ステージ4位で新人賞を奪還したティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシングチーム)

新人賞を奪回したティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシングチーム)新人賞を奪回したティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシングチーム) photo:Makoto.Ayanoマイヨブランを着てすぐに「このジャージがないと寂しい」と思った。でも、目的はまだ変わらない。僕たちでカデル(エヴァンス)にマイヨジョーヌを獲得させることだ。僕たちは自分たちの力で戦わなければならないし、タイムを取り戻すには実行すべきことも多い。(今日カデルがタイムを失ったことは)とても残念だ。

でも、なにが起こるかわからない。僕とターラマエの競争を見たはずだ—。僕は3分も彼に遅れていたけれど、不意に新人賞に返り咲いた。カデルは戦士だ。彼は1インチ、1秒を求めて戦うはずだ。僕はまだ、カデルがパリでマイヨジョーヌを着ることになると信じている。

水を開けられたカデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム)水を開けられたカデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム) (c)Makoto.AYANO落ち着いて、気を抜かないようにしなければと思う。これまでやってきたことを続けるだけだ。カデルはまだ絶好調だから、タイムを取り戻すと思うよ。

カデルが少しタイムを失うことは予想されていた。彼が思っていたよりも多くのタイムを失った。でも、状況は何も変わってないと思う。昨日見たと思うけど、スカイは1日中ハードなレースコントロールをした後で、少し弱体化した。

そして、カデルがブラドレー(ウィギンズ)にアタックしかけると、ブラドレー自身が追走せざるを得なかった。ぼくらがスカイを再び孤立させることができたら、カデルはアタックを続けられる。僕はカデルがウィギンズに勝てると考えている。僕はカデルに付き添って、ベストを尽くすよ。


ステージ優勝候補だったファビアン・カンチェラーラ(スイス、レディオシャック・ニッサン)

前半の平坦路を行くファビアン・カンチェラーラ(スイス、レディオシャック・ニッサン)前半の平坦路を行くファビアン・カンチェラーラ(スイス、レディオシャック・ニッサン) (c)Makoto.AYANOタイムトライアルはいつも同じだ。完全に集中して全てを出し尽くす必要がある。それが僕のやりかただ。昨日のステージの疲れで、身体が本当に痛かった。厳しいステージだったので、今日はスタート後はすべていつも通りにやろうと自分に言い聞かせた。他の選手たちは気にしなかった。僕は自分のタイムトライアルをやっただけだ。

ステージ3位に入ったファビアン・カンチェラーラ(スイス、レディオシャック・ニッサン)ステージ3位に入ったファビアン・カンチェラーラ(スイス、レディオシャック・ニッサン) photo:Cor Vos自分の結果に満足している。僕たちにとって最も重要なのは、現在の実力を出し切ったことだ。たったひとりでこの「トンネル」を通ってきたけど、やっとゴールで光が見えた。チームや家族、沿道のファンたちのサポートのおかげだ。そのおかげで、自分の力をさらに引き出せて、最後まで走り続ける手助けをしてくれた。

(スカイが1位・2位を独占したことについて)ステージ優勝を狙う走りとツール総合優勝を目指す走りは別だ。スカイのパフォーマンスが上がり続けてきたのは、彼らがハードに仕事し続けてきたことになる。ハードワークの証明だ。僕たちもハードに仕事をこなしてきた。

(レディオシャック・ニッサンは)総合16位までに6人が残っていて、それぞれが全力を出している。スカイは山岳ステージとともに過酷なツール・ド・フランスを経験することになるだろう。今は誰もが休息日での回復を楽しみにしている。そして、次の2週間で起きることを目にすることになる。ツールはまだ終わっていない。


チームスカイのショーン・イェーツ監督

ウィギンズに遅れること35秒で2位になったクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ) ウィギンズに遅れること35秒で2位になったクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)  (c)Makoto.AYANOブラドレーとフルーミー(フルーム)は彼らが約束したもの、そして1年中ずっと目指してきたものを実現した。それは最大限の能力を引き出すこと。そして、これまでイギリスの自転車界ではなされなかったこと、これ以上は無理だと思われていたことだ。

私たちは1年中続けてきたことを繰り返している。私たちはひとつひとつを着実に進めてきた。他のすべてのレースと同様に、同じテーマをひたすら継続してきた。

私たちの目的はパリでマイヨジョーヌを着用することだ。これはブラドレーの総合順位を脅かされるという意味ではない。私たちはできるだけ最善の方法を選択していくつもりだ。まだ残り11ステージある。ステージ優勝していないチームも多い。彼らは必ず仕掛けてくるだろう。


コメントはプレスリリース、チーム公式サイト、選手個人サイト、TVインタビュー、twitterなどより。


text: Taiko.YAMASAKI + Seiya.YAMASAKI
photo:Makoto.Ayano,CorVos

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