ファビアン・カンチェラーラのリクエストに応えるべくしてトレックが開発したエンデュランスバイクが、DOMANE(ドマーネ)だ。今回のインプレッションでは話題のドマーネにスポットライトを当てていく。

トレック DOMANE 6.9トレック DOMANE 6.9 (c)Makoto.AYANO/cyclowired.jp

ドマーネの開発が始まったのは3年前のこと。石畳のクラシックを得意とするファビアン・カンチェラーラがトレックがサポートするチームに加入したことで、彼のためのバイク開発がスタートした。開発にあたって重要視されたのは、乗り心地を高めることはもちろんながら、より少ない入力で、より大きなパワーを生み出すこと。

トレックは実際のパヴェに近い路面をアメリカ国内の実験施設に再現し、試験機にも応用するなど徹底的にテストを繰り返した。そうしてドマーネは、振動吸収性とパワー伝達性能を高いレベルで両立させた純レースマシンとして2012年シーズン春のクラシックでデビューを果たした。

マドンに比べ20%増加したフォークレークを生み出すフロントフォークマドンに比べ20%増加したフォークレークを生み出すフロントフォーク マドンから引き継ぐE2テーパーヘッドチューブマドンから引き継ぐE2テーパーヘッドチューブ 先端が後方へとオフセットする構造を持つ先端が後方へとオフセットする構造を持つ


ドマーネに採用された革新的な技術が、シートポスト下のチューブ集合部とフロントフォークに搭載されるIsoSpeed(アイソスピード)テクノロジーだ。シートチューブをトップチューブとシートステーから切り離し、ピボットリンクを介して前後方向にしなる革新的な構造に。またフロントフォーク先端を後方へオフセットさせることにより、高い安定性を生み出すことに成功している。

これらはフレームを縦方向にしならせることで路面追従性を高める考えだが、フレーム剛性を落とさずに達成するのは容易なことではない。そしてもうひとつの特徴的なテクノロジーがPower Transfer Construction(パワートランスファー・コンストラクション)だ。

シートチューブを独立させる画期的な構造を持つシートチューブを独立させる画期的な構造を持つ ボリュームのあるヘッドチューブ回りの造詣ボリュームのあるヘッドチューブ回りの造詣


トップチューブからシートステーまでをしならせることで振動吸収性を高めているトップチューブからシートステーまでをしならせることで振動吸収性を高めている デュオトラップセンサーもマドンより受け継ぐ構造の一つだデュオトラップセンサーもマドンより受け継ぐ構造の一つだ


これはヘッドチューブからダウンチューブ、BB、そしてチェーンステイにかけての、ライダーのペダリングパワーを受け止めるフレーム下側部分を強固にし、パワーロスをなくして推進力に繋げるというもの。マドンから受け継ぐE2テーパーヘッドチューブとのコンビネーションで、じつにマドンよりも高い横剛性を実現している。

さらにマドンと比較して長いホイールベースや低めのBBハイト、寝たヘッドアングルなど「エンデュランスジオメトリー」を採用することで、長距離や悪路においても快適なライディングを可能とした。

ドマーネのベースとなるのは、マドンにも採用されるハイパフォーマンスな600 Series OCLV Carbon素材だ。快適性を求めたバイクは、カーボンのグレードを落とすことで耐久性を増すことがある。しかし軽量な最高峰グレードの素材をドマーネに採用したことは、トレックの高いカーボン加工技術の表れと言って良いだろう。

ボトムブラケットはBB90方式を採用するボトムブラケットはBB90方式を採用する フレームに統合された専用マウントのチェーンキーパーがチェーン脱落を防ぐフレームに統合された専用マウントのチェーンキーパーがチェーン脱落を防ぐ


その他フレーム細部の工夫も見逃すことはできない。マドンから受け継ぐ内蔵ケーブル加工はコンポーネントの性能を阻害しないルーティングとされ、泥や砂などの厳しい状況下においてもシフト・ブレーキ性能とエアロ効果を確保している。

またフレームに統合された専用マウントのチェーンキーパーや、BB90やデュオトラップセンサーなど、マドンでスタンダードと化した構造を取り込むことで、ドマーネの完成度は高められているのだ。

デザイン上でも独立するフォルムとされたシートチューブデザイン上でも独立するフォルムとされたシートチューブ フレーム素材は600 Series OCLV Carbonだフレーム素材は600 Series OCLV Carbonだ スマートなルックスのリア形状スマートなルックスのリア形状



開発に長い期間をかけて生み出されたハイパフォーマンスエンデュランスバイク、ドマーネは現在開催中の世界最大のレース、ツール・ド・フランスの舞台も闘っているマシンだ。2人のテストライダーがこのドマーネをどのように評価するのか興味は尽きない。早速インプレッションをお届けしよう。




―インプレッション

「様々なシチュエーションに対応できる万能型のレースバイク」  金子友也(YOU CAN)


第一印象は、地面にシッカリと吸い付いて走ってくれる自転車だと感じました。まるでサスペンションが付いているかのようなしっかりとした安定感が好印象でした。自転車自体の直進性がすごく高いので、自転車が綺麗にまっすぐ進んでくれるイメージがありました。

あのカンチェラーラが踏むだけあってBB廻りの剛性もしっかりとあり、フレームに柔らかいという印象は全くありません。謳い文句通り、振動吸収性能は相当高いレベルです。しっかりした剛性感がありながらも地面に吸い付き、かつトルクを掛けた時には反応良くスッと前に出てくれる。この感覚は凄いと感じるものでした。

走行中に路面からの突き上げが全くありませんし、アタックをかけるような踏み方をしてもバイクが暴れるようなイメージはありませんでした。ヘッド廻りの剛性もしっかり確保されている事もあり、車体の操作性もかなり高いと感じました。

「様々なシチュエーションに対応できる万能型のレースバイク」「様々なシチュエーションに対応できる万能型のレースバイク」

ハンドリング自体はかなり直進安定性が高い方向だと思いますが、コーナーでは、ある程度のクイックさを持っていました。下りの高速域やタイトターンなど、どんな場面でも車体の持つ地面に吸い付く感覚のお陰で全く恐怖感を覚える事はありませんでした。

BB廻りの剛性の高さに由来し、踏んで進むポイントと踏み外すポイントがはっきり分かれていると感じました。この事から登りに関しては、リズムで淡々と登っていくと堅さに邪魔されずに進む事が出来ると思います。ギアを掛けてグイグイ登ると、脚力不足の場合には脚に跳ね返ってくる部分があるかもしれません。

例えばレースシーンに於いて、単独で抜け出して長距離を逃げ続けるような場面では、高い巡航性が味方してくれるはずです。更に、全く突き上げを感じないほどの振動吸収性による疲労の少なさはかなりのアドバンテージになるでしょう。パリ・ルーベを視野に開発されただけあって、この乗り心地の良さは他にはないかもしれませんね。

バンピーな路面でギアを掛けて行っても、リアタイヤがガッチリと食い付いて進んでくれると感じました。。おそらくチェーンステー廻りの創りが優秀だと予想します。平坦系のレースには今回のテスト車両に入っているカーボンディープリムでピッタリだと思いますし、反応の良いカッチリ系のホイールを入れてもフレームが負けることはないので、スピードの強弱を要するシーンにも対応できると考えられます。

ある程度、綺麗なペダリングができれば、とても素直にグングン進んでくれる自転車だと思います。乗り心地の良さに騙されそうになりますが、これは完全にレースバイクでしょう。様々なシチュエーションに対応できる万能型のレースバイクだと思います。かなりの長距離を高速域で淡々と走るような場面ではかなり頼りになる車体で、相当の長距離をこなせるフレームだと感じました。


「このフレーム性能には値段が付けられない位の価値を感じる」村上純平(YOU CAN)


「このフレーム性能には値段が付けられない位の価値を感じる」「このフレーム性能には値段が付けられない位の価値を感じる」 この乗り味は、フルサスペンション付きのロードバイクですね。こんな感じのロードバイクは本当に初めての体験でした。衝撃吸収性に関しては事前の予想をはるかに上回るレベルで、いままでに乗ったロードバイクの中では断トツと言っても過言ではありません。

だからと言って、振動吸収だけに特化している訳ではなく、ヘッド廻りの剛性はかなり高めで、ダンシングでの振りに対してもキビキビと対応してくれるし、BB廻りの剛性感もトップクラスと言って良いでしょう。

振動を吸収する形状のシートポストが、ペダルに対する入力の逃げに全く関わらないのも驚きでした。トップロードモデルと全く変わらない剛性を発揮しながらも、振動だけを吸収する車体の構造にはただただ感心させられます。ダッシュも巡航も相当高いレベルに仕上がっていますね。

この車体なら、どんなレースシーンでも対応できてしまうと思います。試乗前は勝手に、エンデューロバイクというイメージを持っていましたが、これは完全にレースバイクだと断言していいでしょう。

この車体がパヴェを攻略するために開発されたのがヒシヒシと伝わってきました。ここまで振動吸収性の高いロードバイクは初めての体験です。フロントの衝撃吸収性能もさることながら、特筆すべきはリアの吸収性能でしょう。まるでシートポストにサスペンションが付いているかのような錯覚を覚える程です。下りのコーナリングもしっかり安定してくれるので、安心して下って行けました。

レースユーザーは勿論、ツーリングやロングライドなどの楽しいロードバイクライフを求めるユーザーも、どちらも共に十分満足させてくれるバイクとだと思います。

この車体の様々な部分が、パヴェに対応する為の工夫が施されていますが、その中でも衝撃吸収材付きのハンドルバーは面白い取り組みで感心させられました。ハンドルからの衝撃は一番ダイレクトに感じやすい部分なので、バーテープの二重巻などに頼らずに、ハンドルの構造自体で取り組む発想は素晴らしいと思うし、この効果も確実に感じ取れました。

日本ではパヴェと同じようなシチュエーションはまず存在しないので、普段の荒れた路面程度は全く問題無くこなしてくれますね。車体の軽さと振動吸収性により、長距離をこなした時の身体の疲労感は、一般的なロードバイクに比べて、断然少ないことが予想できます。

この自転車を一言でお伝えするには”フルサスロードバイク”という表現が私には最もしっくりきます。凄くイイ自転車だなというのが正直な感想です。キビキビとした反応の良さと乗り心地の良さという、これまでの概念では相反すると考えられていた要素を実現したこのフレーム性能には、値段をつけられないくらいの価値を感じます。

トレック DOMANE 6.9トレック DOMANE 6.9 (c)Makoto.AYANO/cyclowired.jp
トレック DOMANE6.9 完成車(2013モデル)
カラー:Trek White/Chi Red/Onyx Carbon
フレーム:600 Series OCLV Carbon, E2, BB90, performance cable routing, DuoTrap compatible, Ride Tuned seatmast, IsoSpeed
フォーク:Trek IsoSpeed full carbon, E2
サイズ:50, 52, 54, 56, 58, 60, 62cm
ホイール:Bontrager Race X Lite, Tubeless Ready
タイヤ:Bontrager R3, 700x25c
コンポーネント:Shimano Dura-Ace 11s
サドル:Bontrager Affinity Race X Lite, carbon rails
シートポスト:Bontrager Ride Tuned Carbon seatmast cap, 20mm offset
ハンドルバー:Bontrager Race X Lite IsoZone, OCLV carbon, VR-CF, 31.8mm
ステム:Bontrager Race X Lite, 31.8mm, 7 degree
ヘッドセット:Cane Creek IS-8 integrated, stainless cartridge bearings, sealed, alloy, 1-1/8" top, 1.5" bottom
バーテープ:Bontrager Gel Cork tape
価格:プロジェクトワンにて購入可能 完成車ベース価格¥467,000~ フレームセットベース価格¥385,000~



インプレライダーのプロフィール

金子友也(YOU CAN)金子友也(YOU CAN) 金子友也(YOU CAN)

1987年11月27日生まれ。高校から競技を始め、チームユーキャン、ブリヂストンエスポワール、チームブリヂストンアンカーに所属し、国内、アジアツアー、ヨーロッパレースに参戦。全日本選手権U23で6位、フランス第2カテゴリー優勝。西日本実業団選手権BR-1優勝、実業団in石川JPT 9位などの実績を持ち、ヒルクライムレースや暑い天候のサバイバルレースが得意。2012年4月からバイシクルショップユーキャンに勤務。

村上純平(YOU CAN)村上純平(YOU CAN) 村上純平(YOU CAN)

鹿屋体育大学時代に全日本選手権U23で優勝。翌年からシマノレーシングに4シーズン在籍し、うち2シーズンはオランダを拠点に活動。主な戦歴はツールド北海道2010総合5位、ツールドフィリピン第2ステージ2位、ツールド台湾2011第1ステージ4位、ツールドおきなわ2011山岳賞など多数。引退後自転車に携る仕事・選手時代に得たものを生かせる環境を求めユーキャンに入社。自転車の「楽しみ」を提供するとともに、ジュニア育成にも取り組む。

YOU CAN(ユーキャン)


text:So.Isobe Kenji.Degawa
photo:Makoto.AYANO
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カテゴリー: Book
メーカー: 八重洲出版
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