7月1日に開催されたツール・ド・フランス2012第1ステージ。アルデンヌクラシックさながらのアップダウンに富んだコースでペーター・サガンが圧勝。爆発力としたたかさが光った。

リエージュ市内のスタート地点に集まった198名の選手たちリエージュ市内のスタート地点に集まった198名の選手たち photo:Makoto.Ayano

逃げグループが踏切でストップ逃げグループが踏切でストップ photo:Makoto.Ayanoツール・ド・フランスはプロローグを経て、この第1ステージからマスドレースへ。プロローグが行われたベルギー・リエージュをスタートし、その南部に広がる丘陵地帯を駆け抜けてリエージュ近郊の街セランへと戻る198kmをコースは走る。

逃げを容認したプロトン。レース前半は穏やかなペースで進行した逃げを容認したプロトン。レース前半は穏やかなペースで進行した photo:Makoto.Ayanoグランツール前半はスプリンターに向く平坦コースが続くのがセオリーだが、丘陵地帯を走るコースには無数の細かいアップダウンが続き、カテゴリー4級の山岳ポイントが計5つ設定される。特にゴールへと続く4級のコート・デュ・セランは平均勾配4.7%・登坂距離2.4kmと、まさにアルデンヌ・クラシックさながらだ。

7月1日、ワロン地方の旗がたなびくリエージュの街中から全198名の選手たちがスタート。5時間弱に渡る戦いの火蓋が切って落とされた。

アップダウンをこなしていくヨアン・ジェーヌ(フランス、ユーロップカー)ら6名アップダウンをこなしていくヨアン・ジェーヌ(フランス、ユーロップカー)ら6名 photo:Makoto.Ayanoリアルスタートが切られると同時に、ツール・ド・フランスの大舞台を待ちわびていたアタッカー達が一斉に大会のファーストアタックをかけ、結果6名が集団から飛び出すかたちに。長いツールの初日とあってか、集団はこの動きを容認し、今大会初の逃げが決まった。

逃げグループを形成したのはヨアン・ジェーヌ(フランス、ユーロップカー)、パブロ・ウルタスン(スペイン、エウスカルテル・エウスカディ)、マキシム・ブエ(フランス、アージェードゥーゼル)ニコラ・エデ(フランス、コフィディス)、アントニー・ドゥラプラス(フランス、ソール・ソジャサン)、ミカエル・モルコフ(デンマーク、サクソバンク・ティンコフ)の計6名。

メイン集団が補給ポイントを通過するメイン集団が補給ポイントを通過する photo:Kei Tsuji途中踏切でストップをしながらも、逃げ集団はローテーションを繰り返して先を急ぐ。この日は大会初の山岳ポイントが設定されているため、逃げ集団内では山岳ジャージ争いが激しく展開された。第1山岳はモルコフ、第2山岳はウルタスン、第3山岳は再びモルコフが獲得した。

メイン集団をコントロールするレディオシャック・ニッサンメイン集団をコントロールするレディオシャック・ニッサン photo:Makoto.Ayanoメイン集団では11km地点でロバート・ハンター(南アフリカ、ガーミン・シャープ)やトニ・マルティン(ドイツ、オメガファーマ・クイックステップ)らが絡む落車があったものの再びプロトンに復帰した。TT世界王者に不運が続く。

プロトン先頭はマイヨジョーヌ要するレディオシャック・ニッサン勢がコントロールし、余裕をもって逃げる6名とのタイム差を調整していく。

迎えた116.5km地点の中間スプリントポイントを1位通過したのはジェーヌ。メイン集団内でもスプリンターチームがトレインを形成してポイントを争った結果、マシュー・ゴス(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)が7位通過。マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームスカイ)がこれに続いた。

続く139km地点の第4山岳は争った末にモルコフが再び先頭通過を果たし、今大会初の山岳ジャージを確定させた。

ラスト2kmの激坂をクリアするペーター・サガン(スロバキア、リクイガス・キャノンデール)やシルヴァン・シャヴァネル(フランス、オメガファーマ・クイックステップ)、ファビアン・カンチェラーラ(スイス、レディオシャック・ニッサン)ラスト2kmの激坂をクリアするペーター・サガン(スロバキア、リクイガス・キャノンデール)やシルヴァン・シャヴァネル(フランス、オメガファーマ・クイックステップ)、ファビアン・カンチェラーラ(スイス、レディオシャック・ニッサン) photo:Kei Tsuji残り距離が近づくにつれてメイン集団は徐々に先頭とのギャップを詰めていく展開に。

タイム差は残り50kmで2分、残り30km地点で1分を割り込み、ゴール勝負を狙う各チームが終盤に向けての体勢を徐々に整えていく。コース最後の登坂は地元の英雄、フィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシングチーム)にはおあえつらのレイアウト。プロトンの誰もが警戒を強める。

石畳が敷かれた急勾配の登り石畳が敷かれた急勾配の登り photo:Kei Tsuji徐々に上がっていくスピードと、次々に現れる細かいカーブとロータリー、増減を繰り返す道幅にメイン集団内では緊張感は高まっていく。ざわめき立つその中で、残り23km地点でマイケル・ロジャース(オーストラリア、チームスカイ)、ルイスレオン・サンチェス(スペイン、ラボバンク)らが落車。さらに残り22km地点でも沿道の観客と接触したことによる落車が発生し、アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)らが巻き込まれたものの全員が集団に復帰した。

圧倒的なスプリントを見せたペーター・サガン(スロバキア、リクイガス・キャノンデール)が先頭へ抜け出る圧倒的なスプリントを見せたペーター・サガン(スロバキア、リクイガス・キャノンデール)が先頭へ抜け出る photo:Makoto.Ayanoゴールに向けてジルベールの必勝体勢を敷くBMCレーシングチームやチームスカイなど、各チームが隊列を組んで激しい位置取り闘いが展開され、新城幸也(ユーロップカー)もチームのためのアシストをこなしていく。粘りを見せていた先頭6名もこの動きにはあがなえず、残り9kmほどで吸収された。

イェーレ・ファネンデルト(ベルギー)で勝利を狙うロット・ベリソル勢が高速で牽く集団は、ペースを保ったまま残り4.5km地点から始まる4級コート・デュ・セランに突入した。

上り勾配が始まると、ロット・ベリソルに代わってオリカ・グリーンエッジがハイペースを刻んでいく。サガンで勝利を狙うリクイガス・キャノンデール勢も数名を残す有利な状況を作っていく。残り1.9kmの急勾配区間ではシルヴァン・シャヴァネル(オメガファーマ・クイックステップ)がアタックをするもその勢いは持続しない。

ステージ優勝を飾ったペーター・サガン(スロバキア、リクイガス・キャノンデール)ステージ優勝を飾ったペーター・サガン(スロバキア、リクイガス・キャノンデール) photo:Makoto.Ayanoそして満を持し、残り1.5km地点からマイヨジョーヌを着るファビアン・カンチェラーラ(スイス、レディオシャック・ニッサン)が飛び出した。これをピッタリとマークしたのはサガン。続いてエドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、チームスカイ)が残り600mで合流し、勝負はこの3名に絞られる。最後はサガンが終始前を牽き続けたカンチェラーラを圧倒的なスプリントで下し、ガッツポーズを繰り出した。

サガンはツール初出場にして早速ステージ優勝を挙げる快挙だ。「シャバネルが何か企てていることはわかっていた。カンチェラーラと一緒に行けたことはとても良いポイントになった。彼は非常に強かったから後ろに着いていて楽だったんだ」ここまでのシーズンで絶好調を見せる22歳は、圧倒的な爆発力とともに、レース運びのしたたかさをも見せつけた。

落車に巻き込まれたLLサンチェスはゴール後に病院へ向かったが骨折は無し。手首を痛めたマルティンはコンディション次第で翌第2ステージの出走を決めるとしている。

マイヨジョーヌをキープしたファビアン・カンチェラーラ(スイス、レディオシャック・ニッサン)マイヨジョーヌをキープしたファビアン・カンチェラーラ(スイス、レディオシャック・ニッサン) photo:Makoto.Ayanoミカエル・モルコフ(デンマーク、サクソバンク・ティンコフ)が山岳賞ジャージを獲得ミカエル・モルコフ(デンマーク、サクソバンク・ティンコフ)が山岳賞ジャージを獲得 photo:Makoto.Ayano


翌日に行われる第2ステージは距離207kmの完全平坦ステージ。スプリンターたちの激しいゴール勝負を見ることができるだろう。


ツール・ド・フランス2012第1ステージ結果
1位 ペーター・サガン(スロバキア、リクイガス・キャノンデール)4h58'19"
2位 ファビアン・カンチェラーラ(スイス、レディオシャック・ニッサン)
3位 エドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、チームスカイ)
4位 フィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシングチーム)
5位  バウク・モレマ(オランダ、ラボバンク)
6位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)
7位 ロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク)
8位 ダニエル・マーティン(アイルランド、ガーミン・シャープ)
9位 ライダー・ヘジダル(カナダ、ガーミン・シャープ)
10位 ドリス・デヴェナインス(ベルギー、オメガファーマ・クイックステップ)
99位 新城幸也(ユーロップカー)+01′25″

個人総合成績 マイヨ・ジョーヌ
1位 ファビアン・カンチェラーラ(スイス、レディオシャック・ニッサン)5h05′32″
2位 ブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ)+07”
3位 シルヴァン・シャヴァネル(フランス、オメガファーマ・クイックステップ)
4位 ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシングチーム)+10″
5位 エドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、チームスカイ)+11″
6位 デニス・メンショフ(ロシア、カチューシャ)+13″
7位 フィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシングチーム)
8位 カデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム)+17″
9位 ヴィンツェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)+18″
10位 ライダー・ヘジダル(カナダ、ガーミン・シャープ)
35位 トム・ダニエルソン(アメリカ、ガーミン・シャープ)+31″
36位 トマ・ヴォクレール(フランス、ユーロップカー)+33″
43位 ミケーレ・スカルポーニ(イタリア、ランプレ・ISD)+37″
45位 フランク・シュレク(ルクセンブルク、レディオシャック・ニッサン)+38″
48位 サミュエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル・エウスカディ)+40″
54位 リーヴァイ・ライプハイマー(アメリカ、オメガファーマ・クイックステップ)+45″
97位 新城幸也(ユーロップカー)+02′03″

ポイント賞 マイヨ・ヴェール
ファビアン・カンチェラーラ(スイス、レディオシャック・ニッサン)

山岳賞 マイヨ・ブラン・アポワ・ルージュ
ミカエル・モルコフ(デンマーク、サクソバンク・ティンコフ)

新人賞 マイヨ・ブラン
ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシングチーム)

チーム総合成績
チームスカイ

敢闘賞
ニコラ・エデ(フランス、コフィディス)


text:So.Isobe
photo:Makoto.Ayano,Kei.Tsuji

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