いよいよドロミテの山岳地帯へとジロは突入。終盤の1級ジャウ峠で形成された精鋭グループによるスプリントをホアキン・ロドリゲスが制しステージ優勝。マリア・ローザ争いの人数が絞られる結果となった。

スタートを待つマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームスカイ)スタートを待つマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームスカイ) photo:Kei Tsuji5月23日に開催されたジロ・デ・イタリア第17ステージは、オーストリアとの国境にほど近いファルツェスをスタートし、ドロミテ山塊を走り、コルティーナ・ダンペッツォに至る186kmで争われた。

パッソ・ヴァルパローラを登るプロトンパッソ・ヴァルパローラを登るプロトン photo:Riccardo Scanferlaドロミテの名称通りコースには厳しいアップダウンの連続。カテゴリー2級のパッソ・ヴァルパローラ、1級パッソ・デュラン、2級フォルチェッラ・スタウランツァ、そして最後は1級のパッソ・ジャウを越える。コースプロフィールには平坦が表記されない厳しいステージとなり、最後はジャウ峠からのテクニカルなダウンヒルを経てゴールする。

特にゴール18km手前でピークを迎えるジャウ峠は、登坂距離約10kmで平均勾配9.3%の高い難易度を誇る。昨年大会にも登場したジャウ峠だが、今年は逆側からのアプローチとなっており、難易度ははるかに増している。

マリアアッズーラを着るマッテーオ・ラボッティーニ(イタリア、ファルネーゼヴィーニ)がパッソ・ヴァルパローラの頂上を目指すマリアアッズーラを着るマッテーオ・ラボッティーニ(イタリア、ファルネーゼヴィーニ)がパッソ・ヴァルパローラの頂上を目指す photo:Kei Tsuji今日のステージでまず総合上位メンバーのふるい落としかけられた後、平坦ステージを挟んでから最難関ステージである第19・20ステージへ向けてマリア・ローザ争いは加熱していくこととなる。

この日は最初の2級山岳パッソ・ヴァルパローラへと至る38km地点逃げが決まった。山岳賞マリア・アッズーラを着用するマッテオ・ラボッティーニ(イタリア、ファルネーゼヴィーニ・セッレイタリア)、マッテオ・モンタグーティ(イタリア、アージェードゥーゼル・ラモンディアール)、ホセ・セルパ(コロンビア、アンドローニ・ジョカトリ)、ケヴィン・シールドライヤース(ベルギー、アスタナ)ブラニスラウ・サモイラウ(ベラルーシ、モビスター)の5名が抜け出しを決める。

逃げ切り勝利、そして後ろからやってくるエースのために先を急ぐ5名は、ローテーションを繰り返しながら最大で6分弱のアドバンテージを得てヴァルパローラをクリア。山岳ジャージのリードを広げるべく、先頭でラインを通過したのはラボッティーニ。

パッソ・ヴァルパローラを通過するプロトンパッソ・ヴァルパローラを通過するプロトン photo:Kei Tsuji

逃げグループを率いてパッソ・ドゥランを登るブラニスラウ・サモイラウ(ベラルーシ、モビスター)逃げグループを率いてパッソ・ドゥランを登るブラニスラウ・サモイラウ(ベラルーシ、モビスター) photo:Riccardo Scanferla1級山岳パッソ・ジャウでメイン集団は5名に絞り込まれる1級山岳パッソ・ジャウでメイン集団は5名に絞り込まれる photo:Riccardo Scanferlaリクイガス・キャノンデールなどの牽きにより、徐々にタイム差を縮めつつあったメイン集団では次の1級デュラン峠で動きあり。エウスカルテル・エウスカディ勢がペースを上げると、ここから総合ジャンプアップを狙うミケル・ニエベ(スペイン)が飛び出した。

ニエベは一人でメイン集団との差を開いていくと、この下りで抜けだしていた先頭シールドライヤースへと合流。テクニカルな下りを飛ばしていくものの、リクイガスが牽くメイン集団は大きなタイム差を与えない。分の悪さを悟ったニエベは集団へと戻っていった。

1級山岳パッソ・ジャウの頂上に差し掛かるホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)ら1級山岳パッソ・ジャウの頂上に差し掛かるホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)ら photo:Kei Tsuji次なる峠、フォルチェッラ・スタウランツァへと突入すると一人粘りを見せていたシールドライヤースは集団に吸収。人数が大幅に絞られた集団からは、ここで総合5位につけるロマン・クロイツィゲル(チェコ、アスタナ)が苦しい表情で遅れていく。

リクイガスが高速で引き倒すメイン集団へは、下りでもクロイツィゲルの復帰は叶わず。そのままの展開で最後のジャウ峠へと突入した。

イヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)のためのペースアップにより、トーマス・デヘント(オランダ、ヴァカンソレイユ・DCM)やニエベが脱落していく集団からは、総合4位のパオロ・ティラロンゴ(イタリア、アスタナ)も遅れをとる。アスタナのエース両名はいずれも総合争いから転落してしまう結果に。

そして先頭はバッソ、ロドリゲス、ライダー・ヘジダル(カナダ、ガーミン・バラクーダ)、ミケーレ・スカルポーニ(ランプレ・ISD)、リゴベルト・ウラン(コロンビア、チームスカイ)、ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、コルナゴ・CSFイノックス)の6名。各チームエース同士の戦いが始まった。

ゴールスプリントを制したホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)ゴールスプリントを制したホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) photo:Riccardo Scanferlaバッソがペースコントロールする先頭からはヘジダルとウランが揺さぶりをかけるもののいずれも決まらず、互いに顔を見合うジリジリとした展開に。そして山頂付近でポッツォヴィーヴォがアタックすると、ウランとスカルポーニが遅れ、数10秒の差をもって下りへと入った。

ダウンヒルを不得意とするバッソは、一瞬ロドリゲスとヘジダルに先行を許すものの直線区間で復帰。そのまま先頭に立ち、自らペースをコントロールする。これが遅れていた後続2名に幸いした。ゴール手前2kmで再び6名となった先頭グループからはバッソがアタックするが失敗。

最後は緩斜面のでのゴール勝負へと持ち込まれ、ロドリゲスが伸びのあるスプリントで先行するバッソを差しきってガッツポーズ。第10ステージに続くステージ2勝目を飾った。

スプリントで2秒遅れたポッツォヴィーヴォ以外の4名はロドリゲスと同タイムでゴール。クネゴやジョン・ガドレ(フランス、アージェードゥーゼル・ラモンディアール)が1分22秒遅れでゴールする中、クロイツィゲルは11分26秒遅れの30位でゴールし、もはや総合優勝圏外へと脱落してしまった。

ステージ優勝を飾ったホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)ステージ優勝を飾ったホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) photo:Riccardo Scanferlaマリアビアンカはリゴベルト・ウラン(コロンビア、チームスカイ)の手にマリアビアンカはリゴベルト・ウラン(コロンビア、チームスカイ)の手に photo:Riccardo Scanferla


このステージで上りで他を圧倒する力を見せたのは、総合7位に浮上したポッツォヴィーヴォ。そのペースに苦しみながらも食らいついたのはヘジダル、バッソ、ロドリゲス。来る最難関の山岳2ステージ連戦を占う結果となった。


ジロ・デ・イタリア2012第17ステージ結果
1位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)
2位 イヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)
3位 ライダー・ヘジダル(カナダ、ガーミン・バラクーダ)
4位 リゴベルト・ウラン(コロンビア、チームスカイ)
5位 ミケーレ・スカルポーニ(イタリア、ランプレ・ISD)
6位 ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、コルナゴ・CSFイノックス) +02″
7位 ベナト・インチャウスティ(スペイン、モビスター) +01′22″
8位 ダニエル・モレーノ(スペイン、カチューシャ)
9位 トーマス・デヘント(オランダ、ヴァカンソレイユ・DCM)
10位 ヨハン・チョップ(スイス、BMCレーシングチーム)

個人総合順位
1位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) 74h46'46"
2位 ライダー・ヘジダル(カナダ、ガーミン・バラクーダ) +30″
3位 イヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス・キャノンデール) +01′22″
4位 ミケーレ・スカルポーニ(イタリア、ランプレ・ISD) +01′36″
5位 リゴベルト・ウラン(コロンビア、チームスカイ) +02′56″
6位 ベナト・インチャウスティ(スペイン、モビスター) +03′04″
7位 ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、コルナゴ・CSFイノックス) +03′19″
8位 パオロ・ティラロンゴ(イタリア、アスタナ) +04′13″
9位 トーマス・デヘント(オランダ、ヴァカンソレイユ・DCM) +04′38″
10位 セルジオルイス・エナオモントーヤ(コロンビア、チームスカイ) +04′42″

ポイント賞 マリアロッサ・パッシオーネ
マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームスカイ)

山岳賞 マリアアッズーラ 
マッテオ・ラボッティーニ(イタリア、ファルネーゼヴィーニ・セッレイタリア)

新人賞 マリアビアンカ
リゴベルト・ウラン(コロンビア、チームスカイ)

チーム総合成績
モビスター


text:So.Isobe
photo:Kei.Tsuji,Riccard.Scanferla