大会13日目のジロ・デ・イタリアは、再びスプリンターたちの活躍の場となった。混戦のスプリントを制したのはマーク・カヴェンディッシュ。スカイトレインが最終盤に崩れる中自力で勝利を収め、大会3勝目を挙げた。

前日に落車し、脹ら脛に擦過傷を負った別府史之(オリカ・グリーンエッジ)前日に落車し、脹ら脛に擦過傷を負った別府史之(オリカ・グリーンエッジ) photo:Kei Tsujiいよいよ迫った厳しい山岳ステージを翌日に控える第13ステージは、ここまで続いた北上を終え、ピエモンテ州の内陸部へ入っていく。イタリア半島の付け根部分、ジェノヴァにほど近いリグリア海の街サヴォーナをスタートし、内陸のチェルヴェーレへと向かう。

チェルベーレをスタートしていく選手たちチェルベーレをスタートしていく選手たち (c)CorVosコース長は121kmと、255kmで行われた大会最長の11ステージと比べても134kmも短い。コースプロフィールも前半に標高734mの4級山岳モンテゼモロが一つ控えているのみで、山頂を通過した後は緩やかなアップダウンを経由しながらゴールを目指す。

最後は2400mに渡る直線路が用意され、まさにスプリンターのためのステージだ。この日を終えるとスプリンターにチャンスが有るのは第18ステージのみ。残り少なくなったチャンスに賭けて熱いゴール勝負が繰り広げられるものと予想された。

逃げるマルティン・ケイゼル(オランダ、ヴァカンソレイユ・DCM)とフランチェスコ・ファイッリ(イタリア、ファルネーゼヴィーニ)逃げるマルティン・ケイゼル(オランダ、ヴァカンソレイユ・DCM)とフランチェスコ・ファイッリ(イタリア、ファルネーゼヴィーニ) photo:Kei Tsujiこの日はスタートアタックが決まる。マルティン・ケイゼル(オランダ、ヴァカンソレイユ・DCM)とフランチェスコ・ファイッリ(イタリア、ファルネーゼヴィーニ)の2名が真っ先に飛び出すと、集団はこの動きを容認した。

メイン集団をコントロールするFDJ・ビッグマットとチームスカイメイン集団をコントロールするFDJ・ビッグマットとチームスカイ photo:Riccardo Scanferlaすでに総合で大きく遅れている2名による逃げだが、メイン集団に許されたリードは最大で5分ほど。レース序盤から100%スプリントに持ち込みたいチームスカイが集団コントロールを担い、逃げとの間隔を調整しながらレースを進めていく。

4級山岳へと向かう地点で、メイン集団内ではレト・ホーレンシュタイン(スイス、チームネットアップ)が落車してしまう。鎖骨を痛めたホーレンシュタインは立ち上がることができず、ここでリタイアを喫することとなってしまった。

マリアローザを着るホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)マリアローザを着るホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) photo:Kei Tsuji逃げに乗った2名のうち、ケイゼルはここまでのステージで積極的に逃げている選手のひとり。昨ステージと合わせ2日連続でエスケープしたため、この日終了時点で逃げた距離の合算で争われる"プレミオ・デッラ・フーガ(逃げ賞)"トップに立つことに。

31.7km地点の4級山岳はファイッリが先頭通過。およそ5分差で通過したメイン集団では、山岳賞マリア・アッズーラを着るミカル・ゴラス(ポーランド、オメガファーマ・クイックステップ)が残る1ポイントを獲得し、着実に点数を重ねていく。

スカイ勢がタイム差を調整する先頭へは、U23世界チャンピオンであるアルノー・デマール(フランス)でスプリントを狙うFDJ・ビッグマットがフルメンバーで加わったことで先頭とのタイムギャップは徐々に縮小。残り45km地点でおよそ1分40秒差と確実なペースメイクを見せた。

タイム差が急速に縮まったことで一時集団がペース調整をする場面も見られたが、やがて残り20km地点で先頭2名を吸収。ここからスプリンターチーム、そして総合を狙うチームの危険回避のための位置取り争いが徐々に加速していく。先頭付近にはマシュー・ゴス(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)のためにアシストをこなす別府史之の姿がこの日も見られた。

チームメイトとともにメイン集団を率いる別府史之(オリカ・グリーンエッジ)チームメイトとともにメイン集団を率いる別府史之(オリカ・グリーンエッジ) photo:Riccardo Scanferlaスピードが上がり、盤石のスプリント体勢に持ち込まれていく集団からは、残り6.6km地点の緩い上り勾配でジュリアン・ヴェルモト(ベルギー、オメガファーマ・クイックステップ)、ファビオ・フェリーネ(イタリア、アンドローニジョカトリ)ジュリアン・ベラール(フランス、アージェードゥーゼルラモンディアール)の3名が一時抜け出しに成功。

しかしこの奇襲攻撃は功を奏さず、チームスカイが主導権を握る集団は残り4.6kmで3名を吸収した。

ステージ3勝目を飾ったマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームスカイ)ステージ3勝目を飾ったマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームスカイ) photo:Kei Tsujiゴールに向けて加速を続ける集団は、スカイとサクソバンクがトレインを被せ合う激しい展開に。そしてラスト1kmを通過し、スカイから主導権を握ったのはオリカ・グリーンエッジ。カヴェンディッシュはこの動きの中で左側のバリアに挟まれる苦しい展開に。

そして早いタイミングでスプリントを開始したゴスは、右側から追い上げるマーク・レンショー(オーストラリア、ラボバンク)を牽制するため若干進路を右へ振ると、このことが後ろに位置していたカヴへと味方した。目の前に空いた進路めがけて踏み直すとカヴの勢いは誰にも止められず。3勝目をアピールするガッツポーズでゴールラインへと飛び込んだ。

「クラッシュから1週間を経て、コンディションは日に日に回復しているんだ。」山岳ステージをグルペットで乗り越え、残り少ないチャンスを手にしたカヴェンディッシュは語る。カヴにとって今大会3勝目。ジロ・デ・イタリアでは通算10勝目を数える。

続けてカヴは「僕は今ポイント賞ジャージを着ている。山岳ステージになってみないとわからないけれど、タイムリミットを乗り切れれば、最終ステージのミラノまでジロに残りたいと思っているよ。」と完走への意欲を見せた。

祝福のキスを受けるマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームスカイ)祝福のキスを受けるマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームスカイ) photo:Kei Tsujiマリアローザを着るホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)がスプマンテを開けるマリアローザを着るホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)がスプマンテを開ける photo:Kei Tsuji


マリア・ローザはホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)が危なげなく守った。終盤ゴスのためにアシストをしたフミは1分32秒遅れの162位でゴールしている。


ジロ・デ・イタリア2012第13ステージ結果
1位 マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームスカイ) 3h02'07"
2位 アレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ)
3位 マーク・レンショー(オーストラリア、ラボバンク)
4位 サーシャ・モードロ(イタリア、コルナゴ・CSFイノックス)
5位 エリア・ファヴィッリ(イタリア、ファルネーゼヴィーニ)
6位 マシュー・ゴス(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)
7位 アルノー・デマール(フランス、FDJ・ビッグマット)
8位 ルーカスセバスティアン・アエド(アルゼンチン、チームサクソバンク)
9位 ソニー・コルブレッリ(イタリア、コルナゴ・CSFイノックス)
10位 マヌエル・ベレッティ(イタリア、アージェードゥーゼル・ラモンディアール)

個人総合成績
1位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)51h19’08”
2位 ライダー・ヘジダル(カナダ、ガーミン・バラクーダ) +17"
3位 サンディ・カザール(フランス、FDJ・ビッグマット) +26″
4位 パオロ・ティラロンゴ(イタリア、アスタナ) +32"
5位 イヴァン・サンタロミータ(イタリア、BMCレーシング) +49″
6位 ロマン・クロイツィゲル(チェコ、アスタナ) +52"
7位 ベナト・インチャウスティ(スペイン、モビスター)
8位 イヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)+57"
9位 ダミアーノ・カルーゾ(イタリア、カチューシャ)+1'02"
10位 ダリオ・カタルド(イタリア、オメガファーマ・クイックステップ) +01′03″

ポイント賞 マリアロッサ・パッシオーネ
マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームスカイ)

山岳賞 マリアアッズーラ 
ミカル・ゴラス(ポーランド、オメガファーマ・クイックステップ)

新人賞 マリアビアンカ
ダミアーノ・カルーゾ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)

チーム総合成績
FDJ・ビッグマット


text:So.Isobe
photo:Kei.Tsuji,Riccardo Scanferla,CorVos