通常のステージとしては今大会最短だが、道のりの半分以上が上りの第17ステージは、早めに仕掛けたフランコ・ペッリツォッティ(イタリア、リクイガス)が逃げ切ってステージ優勝を飾った。また、3位でゴールしたダニーロ・ディルーカ(イタリア、LPRブレークス)はデニス・メンショフ(ロシア、ラボバンク)とのタイム差を13秒詰めた。

独走を開始したフランコ・ペッリツォッティ(イタリア、リクイガス)独走を開始したフランコ・ペッリツォッティ(イタリア、リクイガス) photo:CorVos2回目の休息日を終え、最終決戦に突入したジロ・デ・イタリア。第17ステージは、走行距離は83kmと短いものの、中盤以降はひたすら上りが続く厳しいコースレイアウトだ。残雪のため、ゴール地点が当初の予定の標高2064mから標高1674m地点へと引き下げられ、チーマコッピ(大会最高地点)は第10ステージのセストリエーレへと移ったが、平均勾配6.9%、最大斜度13%の厳しい上りは顕在。第16ステージとともに、このステージを今大会後半戦の最重要ステージに挙げる選手が多かった。

ブロックハウスの上り中腹で通過するランチャーノ峠は、2006年ジロでイヴァン・バッソ(イタリア、当時はチームCSCに所属)がマリアローザを獲得した第8ステージのゴール地点だ。

また、第17ステージは2009年4月に地震の被害を受けたラクイラを州都とするアブルッツォ州が舞台となっている。第16ステージ終了時点で個人総合2位のダニーロ・ディルーカ(イタリア、LPRブレークス)はアブルッツォ州出身。地震の被災者を支援するディルーカ自身もそして地元の観衆も、このステージでの勝利を願っていた。
ちなみにLPRブレークスのジャージには、脇腹に「FORZA ABRUZZO(アブルッツォ頑張れ)」のロゴが入っている。

後方を伺ってからアタックを決めたランス・アームストロング(アメリカ、アスタナ)後方を伺ってからアタックを決めたランス・アームストロング(アメリカ、アスタナ) photo:CorVosレース序盤、集団の穏やかな雰囲気を破って飛び出したのが、ここまで幾度となくアタックを試みてきたトマ・ヴォクレール(フランス、Bboxブイグテレコム)だ。その後、ルッジェーロ・マルツォーリ(イタリア、アックア・エ・サポーネ)、ジュセッペ・パルンボ(イタリア、アックア・エ・サポーネ)、フェリックス・カルデナス(コロンビア、バルロワールド)、ジョヴァンニ・ヴィスコンティ(イタリア、ISD)、マッテーオ・ボノ(イタリア、ランプレ)、マウロ・ファッチ(イタリア、クイックステップ)、リカルド・キアリーニ(イタリア、LPRブレークス)、ゴンサロ・ラブニャル(スペイン、シャコベオ・ガリシア)、デリオ・フェルナンデス(スペイン、シャコベオ・ガリシア)の9名が追い付き、先頭は10名となる。

ディルーカの後方にマリアローザのメンショフが遅れずに着いていくディルーカの後方にマリアローザのメンショフが遅れずに着いていく photo:CorVos10名の背後にはヴァレリオ・アニョリ(イタリア、リクイガス)を含む5名が追走していたが、やがてLPRブレークスがコントロールするメイン集団に吸収。
両手を挙げてゴールするフランコ・ペッリツォッティ(イタリア、リクイガス)両手を挙げてゴールするフランコ・ペッリツォッティ(イタリア、リクイガス) photo:Kei Tsuji先頭10名はメイン集団とのタイム差を一時3分にまで広げたが、残り30kmを切ったあたりでメイン集団先頭に集結したサーヴェロ・テストチームのペースアップにより、ここから徐々に詰まり始めることになる。

マリアヴェルデのステファノ・ガルゼッリ(イタリア、アックア・エ・サポーネ)が2位でゴールマリアヴェルデのステファノ・ガルゼッリ(イタリア、アックア・エ・サポーネ)が2位でゴール photo:Kei Tsujiスプリントポイント通過後の山岳ポイントの付いていない上りで、先頭10名からトマ・ヴォクレール(フランス、Bboxブイグテレコム)が抜け出した。キアリーニ、カルデナス、マルツォーリ、フェルナンデスの4名が追走。続いてラブニャルが追いついて先頭が6名になった。

そして勝負所、ブロックハウスの上りが始まった。
先頭ではカルデナスがペースを上げる。ヴォクレール、キアリーニがかろうじて踏みとどまったが、やがて2名も千切れ、先頭はカルデナスのみとなった。

後続のメイン集団では、シルヴェスタ・シュミット(ポーランド、リクイガス)がアタック。カルロス・サストレ(スペイン、サーヴェロ・テストチーム)がペースを上げてこれを追う。
その動きでメイン集団が絞られ、早々にエース級の争いとなった。

シュミットが逃げていたキアリーニに追い付き、追い越した時、メイン集団からアタックしたのはフランコ・ペッリツォッティ(イタリア、リクイガス)。そしてランス・アームストロング(アメリカ、アスタナ)が単独で追い始めた。

ペッリツォッティはシュミットと合流。カルデナスを追い越してペースを上げた。
力の限り引いたシュミットはその後ちぎれて先頭はペッリツォッティ単独となった。
アームストロングは追い付きそうで追い付かない。





ディルーカから計13秒失ったデニス・メンショフ(ロシア、ラボバンク)ディルーカから計13秒失ったデニス・メンショフ(ロシア、ラボバンク) photo:Kei Tsujiメイン集団先頭はフランチェスコ・マシャレッリ(イタリア、アックア・エ・サポーネ)。ステファノ・ガルゼッリ(イタリア、アックア・エ・サポーネ)のアシストに加え、自らも新人賞争いにおいてケヴィン・シールドライヤース(ベルギー、クイックステップ)から4分13秒遅れの2位に付けている。シールドライヤースはすでにこの集団から遅れており、マリアビアンカを手にすることもありうる展開となった。
背後にリーヴァイ・ライプハイマー(アメリカ、アスタナ)、ダニーロ・ディルーカ(イタリア、LPRブレークス)、デニス・メンショフ(ロシア、ラボバンク)ら錚々たるメンバーが顔を揃えている。というより、集団が絞られ、残ったのはエース級の選手と数名のアシストという状況となった。



残り11kmの地点で、メイン集団からディルーカが抜け出した。反応したのはガルゼッリ、メンショフ、バッソの3名。
ライプハイマー、サストレは後続に取り残された。
マリアローザを含む4名は、アームストロングを抜き去ると、ディルーカを先頭にペッリツォッティを追い始めた。メンショフ、ガルゼッリ、バッソは先頭交替には加わらない。このまま引き続ければ、第16ステージ同様、脚を貯めたメンショフにゴール前でしてやられるかもしれない。そのリスクをも顧みず、ディルーカは背後を気にする様子も見せずに引き続けた。
ステージ優勝を果たしたフランコ・ペッリツォッティ(イタリア、リクイガス)ステージ優勝を果たしたフランコ・ペッリツォッティ(イタリア、リクイガス) photo:Kei Tsujiこの後ガルゼッリがいったん遅れたが、自力で追い付き、グループマリアローザは再び4名となった。

力を使い果たしたデニス・メンショフ(ロシア、ラボバンク)にはシャンパンを開けるのも一苦労だ力を使い果たしたデニス・メンショフ(ロシア、ラボバンク)にはシャンパンを開けるのも一苦労だ photo:Kei Tsuji後続の集団からはサストレがシモーニ、シュミットを引き連れ追走を始めた。アームストロングと合流し、ディルーカらを追う。

ペッリツォッティは淡々と上り続ける。マリアローザグループとのタイム差は28秒、39秒、42秒と、詰まるどころか徐々に開いていく。
先頭のペッリツォッティを、ディルーカ、メンショフ、バッソ、ガルゼッリの第2グループと、サストレ、アームストロング、シモーニ、シュミットの第3グループが追うという展開でレースは最終盤を迎えた。

ゴールまであと2kmという地点でディルーカがペースを上げた。メンショフはすぐにチェックに入ったが、ガルゼッリ、バッソは着いていかれない。
歯を食いしばってペースを上げるディルーカは、並走しようとする大勢の応援団を引きちぎる勢いでゴールを目指す。
一度は遅れたガルゼッリが先ほどと同様の粘りを見せて再び追い付いてきた。
3名でゴールを目指すも、ペッリツォッティとの差は詰まらない。

ペッリツォッティの勢いは最後まで衰えなかった。独走状態のまま逃げ切ったペッリツォッティがステージ優勝。
続いてディルーカ、メンショフ、ガルゼッリがゴール前に入ってきた。残り300mでディルーカが仕掛ける。第16ステージの光景がよぎったが、ディルーカを追ったのはメンショフではなくガルゼッリだった。ガルゼッリがディルーカをかわして2位、そしてディルーカが3位でフィニッシュ。遅れたメンショフはディルーカより5秒遅れの4位でゴールした。
サストレはペッリツォッティから1分59秒遅れでゴール。ライプハイマーも何とか追い付き同じ集団でゴールしている。

この結果を受け、ペッリツォッティはメンショフとの差を48秒+ボーナスタイム20秒の1分8秒詰め、個人総合3位に順位を上げた。また、タイム差5秒+ボーナスタイム8秒を得たディルーカはメンショフとの差を26秒に詰めている。
逆に順位を落としたのがサストレだ。2分19秒まで詰めたタイム差を再び3分30秒に広げることになった。

また、マリアビアンカ争いでは、フランチェスコ・マシャレッリがシールドライヤースより2分6秒先着。逆転こそしなかったが、4分13秒あったタイム差を2分7秒にまで詰めている。

ステージ優勝のペッリツォッティは「僕はジロに勝ちに来た。しかし、レベルはとても高い。ステージ1勝と総合3位になれれば、昨年よりもいい。でも4位か5位で終えるなら満足しないだろうね。今僕らの目標はローマのポディウムになった。ヴェスヴィオではバッソと僕はまたトライするよ。今日のサストレのように、他の選手だって悪い日が来るものだ」と語ってる。

また、タイム差を詰められる結果となったメンショフは「いや、今日重要なことはディルーカについていくことだった。遅れてしまったのはリズムが狂っただけ。普通のことだ。ゴール前のコースも知らなかった。大丈夫、何も心配することは無いよ」とコメント。
第19ステージについては「今、僕が置かれている状況はいい。総合で前にいて、ヴォスヴィオは最後の重要なステージだ。ディルーカは必ず何か仕掛けてくる。僕の目標は彼についていくことだけだ」と語っている。

翌第18ステージはスルモーナからベネヴェントまでの182kmで行われる。序盤に2つの峠を越えるが、以降細かいアップダウンはあるものの、ゴールまではおおむね平坦基調だ。個人総合争いは第19ステージに持ち越されることになるだろう。


ジロ・デ・イタリア2009第17ステージ結果
1位 フランコ・ペッリツォッティ(イタリア、リクイガス) 2h21'06"
2位 ステファノ・ガルゼッリ(イタリア、アックア・エ・サポーネ) +42"
3位 ダニーロ・ディルーカ(イタリア、LPRブレークス) +43"
4位 デニス・メンショフ(ロシア、ラボバンク) +48"
5位 イヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス) +57"
6位 マルツィオ・ブルセギン(イタリア、ランプレ) +1'54"
7位 シルヴェスタ・シュミット(ポーランド、リクイガス) +1'55"
8位 マイケル・ロジャース(オーストラリア、チームコロンビア) +1'59"
9位 カルロス・サストレ(スペイン、サーヴェロ・テストチーム) +1'59"
10位 ランス・アームストロング(アメリカ、アスタナ) +1'59"

個人総合成績
1位 デニス・メンショフ(ロシア、ラボバンク) 72h28'24"
2位 ダニーロ・ディルーカ(イタリア、LPRブレークス) +26"
3位 フランコ・ペッリツォッティ(イタリア、リクイガス) +2'00"
4位 イヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス) +3'28"
5位 カルロス・サストレ(スペイン、サーヴェロ・テストチーム) +3'30"
6位 リーヴァイ・ライプハイマー(アメリカ、アスタナ) +4'32"
7位 マイケル・ロジャース(オーストラリア、チームコロンビア) +7'05"
8位 ステファノ・ガルゼッリ(イタリア、アックア・エ・サポーネ) +8'03"
9位 タディ・ヴァリャベッチ(スロベニア、アージェードゥーゼル) +9'58"
10位 マルツィオ・ブルセギン(イタリア、ランプレ) +10'33"

ポイント賞 マリアチクラミーノ
ダニーロ・ディルーカ(イタリア、LPRブレークス)

山岳賞 マリアヴェルデ
ステファノ・ガルゼッリ(イタリア、アックア・エ・サポーネ)

新人賞 マリアビアンカ
ケヴィン・シールドライヤース(ベルギー、クイックステップ)

チーム総合成績
アスタナ

text:Reiko Tsuru
photo:Kei Tsuji, Cor Vos