4月11日、アルデンヌクラシックの初戦となるアムステルゴールドレースが開催。ゴールへと続く急坂、カウベルグでの勝負を制したのは伏兵エンリーコ・ガスパロット(イタリア、アスタナ)だった。

逃げグループを形成するロメン・バルデ(フランス、アージェードゥーゼル)やアレックス・ハウズ(アメリカ、ガーミン・バラクーダ)ら逃げグループを形成するロメン・バルデ(フランス、アージェードゥーゼル)やアレックス・ハウズ(アメリカ、ガーミン・バラクーダ)ら photo:Kei Tsuji石畳に代表される北フランスやベルギーで開催された「北のクラシック」に別れを告げ、レースシーズンはオランダやベルギー南部へ。アルデンヌクラシックと総称される、3つのメジャーレースの初戦となるのが今回行われたアムステルゴールドレースだ。

カチューシャやレディオシャック・ニッサンがメイン集団をコントロールカチューシャやレディオシャック・ニッサンがメイン集団をコントロール photo:Kei Tsujiオランダを代表するビール会社が冠スポンサーにつくこのレースは、オランダ南部リンブルグ州がその舞台。丘陵地帯を駆け巡るためにコースはカーブと厳しいアップダウンが連続する。256.5kmのコースに散りばめられる31ヶ所の急坂が選手たちを待ち構え、最後は名物のカウベルグを駆け上がってゴールを迎える。

1回目のカウベルグに向かって進むメイン集団1回目のカウベルグに向かって進むメイン集団 photo:Kei Tsujiレースは雨が路面を濡らす、肌寒いコンディションのマーストリヒトをスタート。序盤からアタックと吸収を繰り返す展開の中、ようやくエスケープが決まったのはスタートから60kmを経過してから。セドリック・ピノー(フランス、FDJ・ビッグマット)や、ロメン・バルデ(フランス、アージェードゥーゼル・ラモンディアール)ら9名が逃げグループを形成した。

集団前方でグルペルベルグに向かう土井雪広(アルゴス・シマノ)集団前方でグルペルベルグに向かう土井雪広(アルゴス・シマノ) photo:Kei Tsuji逃げグループを見送った集団がペースダウンしたことで、逃げる9名は最大で13分30秒のタイム差を稼ぎだして先を急ぐ。やがてBMCレーシングチームやレディオシャック・ニッサンが先頭に立つと、タイム差は徐々に縮小傾向となる。例年コントロールを担う地元ラボバンク勢は、この日目立った動きを見せず。

残り距離が100kmを切り急坂が連続する周回コースへと突入すると、逃げ集団とのタイム差は5分程度になり、以降この展開のまま推移することとなる。激しいペースアップが図られるのが通例だが、今年は近年稀に見る穏やかなレース展開。集団も大人数を維持したまま、次第に残りの距離が減っていく。

「1000のカーブ」と急坂が組み合わあされるテクニカルなコースでは、上りの入り口や市街地の急カーブの度にメイン集団の後方では渋滞が発生。集団を破壊するまでには至らないものの中切れが起こり、徐々に人数が絞られていく。この動きの中でカデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム)はバイクを降りた。

人数を減らしていた先頭グループは残り27km地点の急坂でロメン・バルデ(フランス、アージェードゥーゼル・ラモンディアール)がアタック。ここへアレックス・ハウズ(アメリカ、ガーミン・バラクーダ)が合流し、先頭は2名となる。

グルペルベルグを登るメイン集団グルペルベルグを登るメイン集団 photo:Kei Tsuji2人を追走するメイン集団は、激坂の名手ホアキン・ロドリゲス(スペイン)擁するカチューシャや、グリーンエッジのペースアップによって人数は40名ほどまでに絞られる。アタックも繰り返されるものの、スピードの上がりきった集団はそれを許さない。終盤の急坂セクションに向け、カーブや中央分離帯が連続するトリッキーなコースで激しい位置取り争いを繰り広げていく。

ベメレルベルグを登るメイン集団ベメレルベルグを登るメイン集団 photo:Kei Tsuji先頭2人は残り22km地点のクルイスベルグへ約45秒のタイム差を持って登り始める。続いて突入したメイン集団先頭付近には、3連覇のかかるフィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシングチーム)の姿もマッティ・ブレシェル(デンマーク、ラボバンク)もこの動きの中で脱落していった。

残り9km地点で単独先頭を逃げ続けていたバルデもここで吸収される。急坂を超え、一瞬ペースが落ち着いたタイミングを見計らってトマ・ヴォクレール(フランス、ユーロップカー)とペーター・サガン(スロバキア、リクイガス・キャノンデール)が抜け出しを図るものの成功せず。次に飛び出しを図ったのはオスカル・フレイレ(スペイン、カチューシャ)。

アムステル・ゴールドレースを制したエンリーコ・ガスパロット(イタリア、アスタナ)アムステル・ゴールドレースを制したエンリーコ・ガスパロット(イタリア、アスタナ) photo:Kei Tsuji今季限りでの引退を表明しているフレイレは、力強い走りで独走。後方はジルベールのためフレフ・ファンアフェルマート(ベルギー、BMCレーシングチーム)が必死の追走を見せる。さらにニキ・テルプストラ(オランダ、オメガファーマ・クイックステップ)もアタックし、10秒先のフレイレを追いかける展開でゴールへと続くカウベルグへと突入した。

11分31秒遅れでゴールした土井雪広(アルゴス・シマノ)11分31秒遅れでゴールした土井雪広(アルゴス・シマノ) photo:Kei Tsujiメイン集団の先頭でカウベルグを登るのはジルベール。激しい上りバトルが繰り広げられる中でダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレISD)とラーシュペッテル・ノルダーグ(ノルウェー、チームスカイ)が接触し落車。チャンスを失ってしまう。

ジルベール、サガン、イェーレ・ファネンデルト(ベルギー、ロット・ベリソル)、ガスパロットがわずかに集団から先行する形で残り75mでフレイレを吸収。調子の上がらないジルベールが遅れていく前で、サガンを交わしたガスパロットが先頭でゴールを切った。

表彰台、左から3位ペーター・サガン(スロバキア、リクイガス・キャノンデール)、優勝エンリーコ・ガスパロット(イタリア、アスタナ)、2位イェーレ・ファネンデルト(ベルギー、ロット・ベリソル)表彰台、左から3位ペーター・サガン(スロバキア、リクイガス・キャノンデール)、優勝エンリーコ・ガスパロット(イタリア、アスタナ)、2位イェーレ・ファネンデルト(ベルギー、ロット・ベリソル) photo:Kei Tsuji「2年前のアムステルでは惜しいレースとなってしまったけど、今日はとてもレースに集中できていた。チームは一日中僕のために走ってくれた。素晴らしい動きだったよ。ジルベールはあまり調子が良くなかったように思うね。多分スプリントを開始するのが早すぎた。サガンも強かったけど、勝利することができた。とてもハッピーだ。」

レース後嬉しさを爆発させるガスパロット。2010年大会で3位に入っているダークホースが自身のキャリア最大となるタイトルを手に入れた。

後半エースのための位置取りに力を尽くした土井雪広は11分31秒遅れの140位でゴール。土井はレース後のブログで
「(エースを)良いポディションで連れて行くことだけに集中し、ラスト20キロはもう出し切り状態でした。 僕の体重57.8キロで、7時間平均ワット260Wで平均心拍が151。そりゃきついわけだ(笑)ワールドツアー(レース)は、スタートサインから走ってる最中、もう最高に楽しいね!次のフレッシュワロンヌはまた違った走りが出来ると思います。」と調子の良さを語っている。


アムステル・ゴールドレース2012結果
1位 エンリーコ・ガスパロット(イタリア、アスタナ)6h32'35"
2位 イェーレ・ファネンデルト(ベルギー、ロット・ベリソル)
3位 ペーター・サガン(スロバキア、リクイガス・キャノンデール)+02"
4位 オスカル・フレイレ(スペイン、カチューシャ)
5位 トマ・ヴォクレール(フランス、ユーロップカー)
6位 フィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシングチーム)
7位 サムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル・エウスカディ) 
8位 ファビアン・ウェーグマン(ドイツ、ガーミン・バラクーダ)+04"
9位 リナルド・ノチェンティーニ(イタリア、アージェードゥーゼル・ラモンディアール)
10位 バウク・モレマ(オランダ、ラボバンク)
140位 土井雪広(アルゴス・シマノ)

text:So.Isobe
photo:Kei.Tsuji