「クラシックの王様」と称される第96回ロンド・ファン・フラーンデレン(UCIワールドツアー)が、4月1日、ベルギーを舞台に開催された。落車で多くの選手が戦線を去る中、石畳の急坂で飛び出した3人によるゴールスプリント勝負へ。トム・ボーネン(ベルギー、オメガファーマ・クイックステップ)がUCIワールドツアーレース3連勝を飾った。

カンチェラーラが鎖骨骨折によりリタイアする波乱の展開

前半から逃げるトム・フィーラース(オランダ、アーゴス・シマノ)ら前半から逃げるトム・フィーラース(オランダ、アーゴス・シマノ)ら photo:Cor Vos名物ミュール・カペルミュールが廃止され、新たな試みとしてオウデ・クワレモントとパテルベルグを含む大中小3種類の周回コースを導入した第96回ロンド・ファン・フラーンデレン。39年ぶりにゴール地点を変更し、ニノーヴェではなくオウデナールデに移した。

ブルージュで動き出したレースは、15名の先行が決まってようやく落ち着きを取り戻す。タイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン・バラクーダ)やトム・フィーラース(オランダ、アーゴス・シマノ)ら、14チームが逃げに送り込むことに成功する。

多くの観客が詰めかけた石畳の登り多くの観客が詰めかけた石畳の登り photo:Cor Vosメイン集団は時折ペースアップが図られるも、オメガファーマ・クイックステップが中心となって集団の体制を整える。タイム差は6分を上限に縮まり続け、オウデ・クワレモントとパテルベルグを含む周回コースに入った。

1周目の大きな周回コースでは大きな動きは見られず、単発的なアタックにはオメガファーマ・クイックステップ勢がチェックに入って封じ込める。有力選手たちは集団内に息をひそめたまま淡々と石畳の急坂をこなしていく。

精彩を欠いたフィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシングチーム)がパテルベルグで苦しむ精彩を欠いたフィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシングチーム)がパテルベルグで苦しむ photo:Cor Vosレースが大きな転機を迎えたのは、ゴールまで63kmを残した補給地点。それまでも落車が多発していたが、ここで優勝候補のファビアン・カンチェラーラ(スイス、レディオシャック・ニッサン)が落車。鎖骨を骨折したカンチェラーラはここでリタイアとなる。

舗装された急坂クルイスベルグでのアッサン・バザイエフ(カザフスタン、アスタナ)のアタックを切っ掛けに集団は活性化し、フィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシングチーム)も攻撃開始。

パテルベルグをクリアするペーター・サガン(スロバキア、リクイガス・キャノンデール)パテルベルグをクリアするペーター・サガン(スロバキア、リクイガス・キャノンデール) photo:Cor Vosグスタフエリック・ラーション(スウェーデン、ヴァカンソレイユ・DCM)も加わって新たな動きが生まれたが、やがては集団に吸収。ペースが上がったメイン集団は、ゴールまで46kmを残して、前半から逃げていた選手たちを全員吸収する。

幾分人数を減らした集団は、2回目のオウデ・クワレモントに向けてペースアップ。集団内でのポジションを失い、歩道に逃げ込んだセバスティアン・ラングヴェルト(オランダ、グリーンエッジ)は、観客と接触して落車。カンチェラーラに続いて鎖骨骨折を負っている。

シルヴァン・シャヴァネル(フランス、オメガファーマ・クイックステップ)らのアタックにより、集団は2回目のオウデ・クワレモントで30名ほどに縮小。続く急勾配のパテルベルグで、落車の影響もあり、ボーネンやシャヴァネル、フィリッポ・ポッツァート(イタリア、ファルネーゼヴィーニ)、ペーター・サガン(スロバキア、リクイガス・キャノンデール)を含む強力な11名の先行が決まった。

エドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー)を先頭に送り損ねたチームスカイがメイン集団を率い、約30秒先を行く11名を追う状態のままレースは最終周回へと入って行った。


ボーネン、ポッツァート、バッラン…三つ巴の闘い

3度目のオウデ・クワレモントでトム・ボーネン(ベルギー、オメガファーマ・クイックステップ)を引き連れて飛び出したフィリッポ・ポッツァート(イタリア、ファルネーゼヴィーニ)3度目のオウデ・クワレモントでトム・ボーネン(ベルギー、オメガファーマ・クイックステップ)を引き連れて飛び出したフィリッポ・ポッツァート(イタリア、ファルネーゼヴィーニ) photo:Cor Vos先頭ではヴァンサン・ジェローム(フランス、ユーロップカー)やニキ・テルプストラ(オランダ、オメガファーマ・クイックステップ)が積極的に動き、最終周回の前半をペースを上げたまま駆け抜ける。

先頭11名による勝負が濃厚と見られたが、チームスカイの牽引によってラスト21km地点で11名は集団に捉えられる。そしてそのまま最後のオウデ・クワレモントに突入。ここでアレッサンドロ・バッラン(イタリア、BMCレーシングチーム)が一人ペースを上げて飛び出した。

集団を引き離して最後のパテルベルグに挑むトム・ボーネン(ベルギー、オメガファーマ・クイックステップ)ら3名集団を引き離して最後のパテルベルグに挑むトム・ボーネン(ベルギー、オメガファーマ・クイックステップ)ら3名 photo:Cor Vosこのバッランのアタックが、勝負の鍵を握った。全長2200m・平均勾配4%・最大勾配11.6%の石畳の登りで続いて動いたのはポッツァート。これにはボーネンがすかさず反応し、2人で先頭バッランに合流した。

先頭に立ったボーネン、ポッツァート、バッランの3人は、動きを見せないまま、そして協力したまま最後のパテルベルグをクリア。ゴールまでの14km平坦区間へと入る。

最後のパテルベルグを先頭でクリアするフィリッポ・ポッツァート(イタリア、フファルネーゼヴィーニ)最後のパテルベルグを先頭でクリアするフィリッポ・ポッツァート(イタリア、フファルネーゼヴィーニ) photo:Cor Vos単独追走を試みたサガンは、先頭から約1分遅れの後続集団に飲み込まれる。ローテーションを回してリードを広げたボーネン、ポッツァート、バッランによるゴールスプリント勝負が確定した。

3人の中で最もスプリントで劣るバッランは、ラスト3kmのアーチ手前で渾身のアタック。しかしこれはボーネンによって封じ込まれる。バッランはラスト2kmのアーチ手前、そしてラスト1kmのアーチ手前でアタックを繰り出したが、いずれも失敗に終わる。

オウデナールデの長い大通りに差し掛かった3人。ラスト250mでバッランが仕掛けると、ボーネンが直ぐさまそのスリップストリームに入る。向かい風の中、ポッツァートがスプリントで対抗。しかし伸びず、ボーネンがホイール1つ分のリードを保って勝利した。

ゴールスプリントを繰り広げるトム・ボーネン(ベルギー、オメガファーマ・クイックステップ)とフィリッポ・ポッツァート(イタリア、ファルネーゼヴィーニ)ゴールスプリントを繰り広げるトム・ボーネン(ベルギー、オメガファーマ・クイックステップ)とフィリッポ・ポッツァート(イタリア、ファルネーゼヴィーニ) photo:Riccardo Scanferla

ゴールスプリントでフィリッポ・ポッツァート(イタリア、ファルネーゼヴィーニ)を下したトム・ボーネン(ベルギー、オメガファーマ・クイックステップ)ゴールスプリントでフィリッポ・ポッツァート(イタリア、ファルネーゼヴィーニ)を下したトム・ボーネン(ベルギー、オメガファーマ・クイックステップ) (c)Makoto.AYANOパリ〜ルーベに繋がるフランドルクラシック3連勝

今年UCIワールドツアーに昇格したE3プライス・フラーンデレン、そしてヘント〜ウェベルヘムに続き、フランドルのメジャークラシック3連勝を果たしたボーネン。2005年と2006年に続く3回目のロンド制覇は、アシエル・ビュイス、フィオレンツォ・マーニ、エリック・ルマン、ヨハン・ムセウに続く史上5人目の快挙だ。

第96回ロンド・ファン・フラーンデレン表彰台第96回ロンド・ファン・フラーンデレン表彰台 photo:Riccardo Scanferla歴史に名を刻んだことについてボーネンは「ファンタスティックだ。そんなことは考えもしなかった」と驚く。

最後のゴールスプリントについてボーネンはこう語る。「バッランとポッツァートには警戒していた。2人はお互いを良く知るイタリア人同士なので、協力してくることを恐れていたんだ。でも強い向かい風が味方した。鍵を握るスプリントでは、少し踏み出しが早かったかも知れない。でもそんなことは関係なかった。勝つには充分だった」。

もちろん期待されるのは翌週に行なわれるパリ〜ルーベ。記者の質問にボーネンは「ルーベはまた別物。でもこのクラシック3勝で良い流れに乗っているし、ルーベは好きなコース。挑戦するよ」と語っている。

選手コメントはベルギーのSporzaインタビューより。

ロンド・ファン・フラーンデレン2012
1位 トム・ボーネン(ベルギー、オメガファーマ・クイックステップ)       6h04'33"
2位 フィリッポ・ポッツァート(イタリア、ファルネーゼヴィーニ)
3位 アレッサンドロ・バッラン(イタリア、BMCレーシングチーム)           +01"
4位 フレフ・ファンアフェルマート(ベルギー、BMCレーシングチーム)         +38"
5位 ペーター・サガン(スロバキア、リクイガス・キャノンデール)
6位 ニキ・テルプストラ(オランダ、オメガファーマ・クイックステップ)
7位 ルーカ・パオリーニ(イタリア、カチューシャ)
8位 トマ・ヴォクレール(フランス、ユーロップカー)
9位 マッティ・ブレシェル(デンマーク、ラボバンク)
10位 シルヴァン・シャヴァネル(フランス、オメガファーマ・クイックステップ)

text:Kei Tsuji
photo:Riccardo Scanferla, Cor Vos,Makoto.AYANO
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