寒波による大雪に苦しめられた5チームも無事に時間通りスタート。ボルタ・シクリスタ・ア・カタルーニャ第4ステージは、冬の山間部から、春の平野部へ。原子力発電所を眼下に望む2級山岳パウメレス峠で勝負は動いた。

積雪に5チームが苦しむも、無事にスタートした第4ステージ

積雪について熱く語り合うリーヴァイ・ライプハイマー(アメリカ、オメガファーマ・クイックステップ)とヤネス・ブライコヴィッチ(スロベニア、アスタナ)積雪について熱く語り合うリーヴァイ・ライプハイマー(アメリカ、オメガファーマ・クイックステップ)とヤネス・ブライコヴィッチ(スロベニア、アスタナ) photo:Kei Tsuji雪をともなう悪天候により散々な結果となった第3ステージを終え、ボルタ・シクリスタ・ア・カタルーニャは後半戦に突入する。

第3ステージで凍えきった選手たちは、前夜、ゴール地点ポルトアイネ麓のホテルに分散。しかし、カチューシャ、チームサクソバンク、FDJ・ビッグマット、オメガファーマ・クイックステップ、アージェードゥーゼルの5チームは、予定通り標高1947mのポルトアイネ頂上にあるホテルに滞在した。

そして第4ステージの朝、前夜から降り積もった40〜50cmの雪から脱出する作業から始まった上記5チーム。脱出に時間がかかったため、第4ステージの開始時間が遅らされるとアナウンスがあったものの、除雪車を総動員し、5チームは何とかポルトアイネから脱出。時間通りスタートが切られることとなった。

チームサクソバンクの宮島正典マッサーから届いた写真をこちらに紹介。

一晩でこの有り様。チームカーが見えません一晩でこの有り様。チームカーが見えません photo:Masanori Miyajima朝、ホテルを出発するチームカーの車列朝、ホテルを出発するチームカーの車列 photo:Masanori Miyajima
雪に埋もれたトラックやチームカー雪に埋もれたトラックやチームカー photo:Masanori Miyajima頂上のホテルに宿泊したチームは全員が被害者頂上のホテルに宿泊したチームは全員が被害者 photo:Masanori Miyajimaトラックにたどり着く為に雪かきトラックにたどり着く為に雪かき photo:Masanori Miyajima


天候は回復。雨から曇り、曇りから晴れへ

出走サインを済ませ、一旦チームバスに戻る土井雪広(プロジェクト1t4i)出走サインを済ませ、一旦チームバスに戻る土井雪広(プロジェクト1t4i) photo:Kei Tsuji山間部は引き続き気温8度前後の雨に見舞われていたが、天気予報によると、レース後半の平野部は晴れ。山間の街トレンプのスタート地点に集まった選手たちは、前日のエピソードを笑い話にし、和やかな雰囲気でスタートを待つ。

前日にDNSとDNFを合わせて40名がレースを去り、幾分小さくなったプロトン(132名)。加えて、総合8位ヤコブ・フグルサング(デンマーク、レディオシャック・ニッサン)が前日の落車による左手舟状骨骨折によりスタートしなかった。

長時間にわたってメイン集団を率いる別府史之(グリーンエッジ)長時間にわたってメイン集団を率いる別府史之(グリーンエッジ) photo:Kei Tsuji by courtesy of Volta a Catalunyaレース序盤、雨の残る2級山岳フォントロンガ峠でフリアン・サンチェス(スペイン、カハルーラル)、ロメン・ジングル(ベルギー、コフィディス)、ヘスス・ロセンド(スペイン、アンダルシア)の3名が飛び出すと、すぐさまリーダージャージ擁するグリーンエッジの集団コントロールが始まる。

全日本チャンピオンジャージの別府史之やブレット・ランカスター(オーストラリア)がローテーションを回し、逃げる3名とのタイム差を常に3〜4分に保つ。やがて、山間部を抜け、平野部に入ると、春らしい暖かな太陽が選手たちを出迎える。気温は17度まで上昇した。

メイン集団を牽引する別府史之(グリーンエッジ)メイン集団を牽引する別府史之(グリーンエッジ) photo:Kei Tsuji

アスコ原子力発電所を望む2級山岳パウメレス峠

ゴール地点アスコ近くにある原子力発電所ゴール地点アスコ近くにある原子力発電所 photo:Kei Tsujiゴール地点アスコは、原子力発電所がある街として知られている。1984年に稼働を開始し、2基の原子炉をもつ。なお、スペインには稼働中の原子炉が8基あり、1年間の総発電量は520億kWh。スペイン全体の電力供給のうち、原子力発電が占める割合は約19%。

スペインは再生可能エネルギーの活用に積極的であり、2011年には風力発電が原子力発電を抜いて最大の供給源となっている。

周回コースに入ると、グリーンエッジに代わってランプレ・ISDが集団をコントロール周回コースに入ると、グリーンエッジに代わってランプレ・ISDが集団をコントロール photo:Kei Tsuji第4ステージのゴール地点の正式な名前は「Asco La vostra energia(アスコ・あなたのエネルギー)」。原子力発電所だけではなく、街の周りには風力発電の風車が数多く立っている。

そんなアスコの街を起点とした28kmの周回コースで第4ステージは締めくくられる。周回コースの前半には、2級山岳パウメレス峠(登坂距離8.6km・平均勾配5.6%)が登場。

落ち着いて集団前方で走るリーダージャージのミハエル・アルバジーニ(スイス、グリーンエッジ)落ち着いて集団前方で走るリーダージャージのミハエル・アルバジーニ(スイス、グリーンエッジ) photo:Kei Tsuji「もうキツイ登りが少ないから、総合は大きく動かないかも知れない」とスタート前に話していたダミアーノ・クネゴ(イタリア)をリードするため、1回目のパウメレス峠でランプレ・ISDが集団コントロールを開始。登りで逃げとのタイム差を詰め、下り区間で早くも逃げを全て吸収する。

テクニカルな下りでリゴベルト・ウラン(コロンビア、チームスカイ)がアタックを仕掛け、これにサンディ・カザール(フランス、FDJ・ビッグマット)とトマシュ・マルチンスキー(ポーランド、ヴァカンソレイユ・DCM)が加わるも、結局は2周目のパウメレス峠の登りで吸収。エリート集団による登りバトルが始まった。

メンショフを振り切ってゴールするリゴベルト・ウラン(コロンビア、チームスカイ)メンショフを振り切ってゴールするリゴベルト・ウラン(コロンビア、チームスカイ) photo:Kei Tsujiハイペースを刻む集団は人数を減らし、そこからシルヴェスタ・シュミット(ポーランド、リクイガス・キャノンデール)とリーヴァイ・ライプハイマー(アメリカ、オメガファーマ・クイックステップ)がアタック。

この時の状況を土井雪広(プロジェクト1t4i)は「最後の登りの頂上手前で遅れてしまった。そこまでリミットで走っていたから、アタックがかかったときにもうついて行けなかった」と振り返り、悔しさを滲ませる。

先頭集団に残れなかったことを悔やむ土井雪広(プロジェクト1t4i)先頭集団に残れなかったことを悔やむ土井雪広(プロジェクト1t4i) photo:Kei Tsujiシュミットとライプハイマーには、下りでサムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル)、デニス・メンショフ(ロシア、カチューシャ)、ダヴィ・モンクティエ(フランス、コフィディス)、そして1周目の下りでも飛び出していたウランが合流。6名のエリートグループが、リーダージャージを含む19名の後続を引き離しにかかる。

先頭6名は下りで15秒のリードを築いたが、ゴールまで1500mを残してタイム差は5秒に。最終ストレートで後続に追いつかれたその刹那、ウランとメンショフがゴールスプリントを開始。後続に飲み込まれながらも、ウランがスプリントで先着した。

ステージ優勝に輝いたリゴベルト・ウラン(コロンビア、チームスカイ)ステージ優勝に輝いたリゴベルト・ウラン(コロンビア、チームスカイ) photo:Kei Tsuji第2ステージでアルバジーニに敗れ、惜しくもステージ優勝を逃していたコロンビア生まれの25歳が勝利。エースのウィギンズとポルトが去ったチームスカイにシーズン13勝目をもたらした。

最後のパウメレス峠で脱落し、1分56秒遅れの集団でゴールした土井は「登りを越えてからは、横風で差を詰められなかった。ただ単に、トップの25人のグループに入るには力が足りなかった。リザルトを見たら強い選手しか前に行っていなかったし、強い選手も遅れていた。明日はまた違う一日。引き続き頑張ります」と気を引き締める。

一日の大半を集団コントロールに費やした別府は、16分32秒遅れのグルペットでゴール。アルバジーニが先頭集団でゴールしたため、グリーンエッジはまた一日リーダージャージを守ることに成功している。終着地バルセロナまで残り3ステージ。別府は引き続きリーダーチームの責務を果たす。

その他、レースの模様はフォトギャラリーにて!

ボルタ・シクリスタ・ア・カタルーニャ2012第4ステージ
1位 リゴベルト・ウラン(コロンビア、チームスカイ)           5h13'12"
2位 デニス・メンショフ(ロシア、カチューシャ)
3位 シルヴェスタ・シュミット(ポーランド、リクイガス・キャノンデール)
4位 ダヴィ・モンクティエ(フランス、コフィディス)
5位 ユルゲン・ファンデンブロック(ベルギー、ロット・ベリソル)
6位 サムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル)
7位 マッテーオ・カラーラ(イタリア、ヴァカンソレイユ・DCM)
8位 ダリオ・カタルド(イタリア、オメガファーマ・クイックステップ)
9位 ジュリアン・シモン(フランス、ソール・ソジャサン)
10位 ロベルト・キセロフスキー(クロアチア、アスタナ)
46位 土井雪広(日本、プロジェクト1t4i)                  +1'56"
109位 別府史之(日本、グリーンエッジ)                  +16'32"

個人総合成績
1位 ミハエル・アルバジーニ(スイス、グリーンエッジ)          12h25'24"
2位 スティーブ・モラビート(スイス、BMCレーシングチーム)        +1'32"
3位 ユルゲン・ファンデンブロック(ベルギー、ロット・ベリソル)
4位 ダニエル・マーティン(アイルランド、ガーミン・バラクーダ)
5位 サムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル)
6位 リゴベルト・ウラン(コロンビア、チームスカイ)
7位 セルヒオ・パルディージャ(スペイン、モビスター)
8位 ダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ・ISD)
9位 トム・ダニエルソン(アメリカ、ガーミン・バラクーダ)
10位 ロベルト・キセロフスキー(クロアチア、アスタナ)
58位 土井雪広(日本、プロジェクト1t4i)                  +5'37"
94位 別府史之(日本、グリーンエッジ)                  +20'13"

山岳賞
クリスアンケル・セレンセン(デンマーク、チームサクソバンク)

スプリント賞
フリアン・サンチェス(スペイン、カハルーラル)

チーム総合成績
ガーミン・バラクーダ

text&photo:Kei Tsuji in Asco, Spain
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