3つの山岳ポイントを含む118kmで開催された第2ステージは、残り25kmから7選手が逃げ切り。ワン・カンポーがステージ優勝を挙げ、宮澤崇史が総合首位となりイエロージャージを獲得した。

台湾北部、新北市郊外をパレード走行しながら進む選手たち台湾北部、新北市郊外をパレード走行しながら進む選手たち photo:Sonoko.TANAKA昨日に引き続き、いまにも雨が降り出しそうな暗い雲に覆われた118.01kmの第2ステージ。台湾は沖縄よりも南に位置しているため、暖かいイメージがあるが、例年この時期は雨が多く、気温も10℃前後まで下がるという。この日もひんやりとした空気の中、レースはスタートを迎えた。

“頑張ろう”という気持ちを持ち続けたい

東日本大震災から1年を迎えたこの日、宮澤崇史(サクソバンク)は右腕に喪章をつけて、スタートラインに並んだ。1年前、震災直後に開催されたミラノ〜サンレモで日本国旗を掲げ、各国選手とともに黙祷を行った宮澤の姿を手作りの喪章を付けて、スタートに現れた宮澤崇史(サクソバンク)手作りの喪章を付けて、スタートに現れた宮澤崇史(サクソバンク) photo:Sonoko.TANAKA思い出す。

宮澤は「自分も“頑張って”という家族や周りの人たちの思いによって支えられて、ここまでやってこれた。被災地に対して、自分は何も大きなことはできないが、“頑張ろう”という気持ちを持つことはできる。気持ちの一体感を大事にして、少しでも自分の走りで励ますことができればいいと思う。

(以前に行った肝移植の)手術のことを今は気にも留めていないけど、傷跡は消えないで残り続ける。これと同じことだと思う。復興して、街から震災の跡がなくなったとしても、人々の心には傷ついたことや悲しいことは残り続ける。だから、ずっと忘れないこと、そして“頑張ろう”という気持ちを持ち続けたい」と話す。


横風区間で宮澤、西谷を含む7人がエスケープ
1つ目の2級山岳を先頭で越えるポイント賞リーダー、フェン・チュンカイ(台湾、アクション)1つ目の2級山岳を先頭で越えるポイント賞リーダー、フェン・チュンカイ(台湾、アクション) photo:Sonoko.TANAKA

選手たちはゆっくりとしたペースで談笑しながら、Okm地点のある新北市郊外へとニュートラル走行で向かった。市街を出ると2級山岳を越えて、島の北端、海に面した道に出る。荒々しい波が立ち、湿った強い横風が吹き荒れて、体感温度はとても低い。そして内陸に入り、3級山岳、2級山岳を越え、再び海沿いの道を戻るようにしてゴールに向かうというコース設定だった。

最初の山岳ポイントを終えてから、単独で先行したのはベナム・カリリコスロシャヒ(イラン、タブリーズ・ペトロケミカル)、3つ目の山岳ポイントまで独走し、山岳賞集団内で山岳ポイントを越えるリーダージャージを着たアンソニー・ジャコーポ(オーストラリア、ジェネシス・ウェルスアドヴァイザーズ)集団内で山岳ポイントを越えるリーダージャージを着たアンソニー・ジャコーポ(オーストラリア、ジェネシス・ウェルスアドヴァイザーズ) photo:Sonoko.TANAKAトップに立つ。

その後の下りで大きな先頭集団が形成されたが、残り25km、海沿いの強い風を受けて、次から次へとアタックがかかり、結果的に7人の逃げ決まる。宮澤崇史(サクソバンク)と西谷泰治(日本ナショナル)の日本勢に加えワン・カンポー(香港、香港ナショナル)、フローリス・ゴーシネン(オランダ、ドラパック)、総合3位のリース・ポロック(オーストラリア、ドラパック)など、実力のある選手たちで構成された先頭集団は後続に42秒ほど差を付けて、ゴールラインへと飛び込んだ。



ワン・カンポー(香港、香港ナショナル)がステージ優勝ワン・カンポー(香港、香港ナショナル)がステージ優勝 photo:Sonoko.TANAKA
ワン・カンポーが貫禄勝利、宮澤が総合首位に立つ

ワン・カンポー(香港、香港ナショナル)がステージ優勝ワン・カンポー(香港、香港ナショナル)がステージ優勝 photo:Sonoko.TANAKA上り基調のゴールスプリントを制したのは、38歳(2日後に39歳の誕生日を迎える)のアジアチャンピオン、ワン・カンポー(香港、香港ナショナル)。「最後の平坦区間では、海風が強く逃げが決まりやすい状況だった。それを見越してたくさんのアタックがかかっていて、そのなかの1つに付いていった。上りのゴールは自分がもっとも得意とするところ。勝てたことを嬉しく思う」とレースを振り返る。

ワンと同タイムで宮澤崇史が5位、最後の登坂でやや遅れながらも、7秒差の7位で西谷泰治がフィニッシュしている。「アタックの掛け合いや、先頭を牽いている時間が長かったので、ゴールで勝負する脚は残っていませんでし5位でレースを終えた宮澤崇史(サクソバンク)5位でレースを終えた宮澤崇史(サクソバンク) photo:Sonoko.TANAKAた」と西谷。宮澤を含めてすべての選手にとって、山岳やアタック合戦で、脚力を消耗してから迎えた厳しいゴールだったと言う。

宮澤と西谷は第1ステージでも先頭集団でフィニッシュしているため、第2ステージを終えて、宮澤が総合リーダーとなり、イエロージャージに袖を通した。総合2位のリース・ポロックに6秒の差をつける。西谷泰治は12秒差の総合5位、またボーナスタイムを獲得した山本元喜(日本ナショナル)が総合12位にランクアップしている。


イエロージャージを守りたい宮澤崇史

記者会見で涙を見せる宮澤崇史(サクソバンク)記者会見で涙を見せる宮澤崇史(サクソバンク) photo:Sonoko.TANAKAゴール後の記者会見で宮澤は、「この日に嬉しいニュースを日本に届けられて本当によかったと思う」と涙ながらにコメント。台湾の記者からは温かい拍手が送られた。「チームとしては、できるだけ多くのステージ優勝を獲得したいが、総合優勝ももちろん狙いに行く。明日のゴールは厳しいレースになると思うが、ベストを尽くしたい」と続けた。

明日、第3ステージは126.29km、1級山岳を越え、そしてまた1級山岳(獲得標高約400m)での山頂ゴールとなる。総合順位が大きく動くステージとなるだろう。



ツール・ド・台湾2012第2ステージ結果
1位 ワン・カンポー(香港、香港ナショナル)2h58'37"
2位 デック・ミューラー(ドイツ、ニュートリクション)
3位 フローリス・ゴーシネン(オランダ、ドラパック)
4位 アントニオ・ペッリネッロ(イタリア、アンドローニ・ジョカトーリ)
5位 宮澤崇史(サクソバンク)
6位 リース・ポロック(オーストラリア、ドラパック) +0'05"
7位 西谷泰治(日本ナショナル)+0'07"
36位 山本元喜(日本ナショナル)+0'42"
47位 畑中勇介(日本ナショナル)
52位 福島晋一(トレンガヌ)
64位 早川朋宏(日本ナショナル)+2'41"
70位 中尾圭祐(日本ナショナル)

個人総合成績
1位 宮澤崇史(サクソバンク) 4h05'49"
2位 リース・ポロック(オーストラリア、ドラパック) +0'06"
3位 ワン・カンポー(香港、香港ナショナル)
4位 デック・ミューラー(ドイツ、ニュートリクション) +0'10"
5位 西谷泰治(日本ナショナル) +0'12"
6位 フローリス・ゴーシネン(オランダ、ドラパック)
12位 山本元喜(日本ナショナル)+0'57"
42位 畑中勇介(日本ナショナル)+0'58"
52位 福島晋一(トレンガヌ)+2'26"
63位 早川朋宏(日本ナショナル)+2'57"
77位 中尾圭祐(日本ナショナル)

ポイント賞
フェン・チュンカイ(台湾、アクション)

山岳賞
ベナム・カリリコスロシャヒ(イラン、タブリーズ・ペトロケミカル)

アジアンリーダー
宮澤崇史(サクソバンク)

チーム総合成績
ドラパック

photo&text:Sonoko.Tanaka