5000人の大観衆が見守る中、Cyclo Cross Tokyoエリート男子クラスは本場ベルギー出身のベン・ベルデンが砂地で圧倒的な速さを見せて優勝を飾った。全日本チャンピオン竹之内も見せ場を作ったが、海外勢が表彰台を独占する結果となった。

会場のお台場海浜公園には5000人が観戦に詰めかけたという会場のお台場海浜公園には5000人が観戦に詰めかけたという (c)kei.Tsuji

エリート男子のスタートエリート男子のスタート (c)kei.Tsuji初開催のCyclo Cross Tokyo2012。東京の臨海副都心のど真ん中に位置するお台場海浜公園に設けられたコースは全長約1.5km。通常一周が2.5~3.5kmのコースで行われるシクロクロスだが、それに比べれば非常に短い。そのぶん観客の前を通る回数は多くなる。このレースはUCIレースではないため、独自の規格で運営されるのだ。
しかし短いといえどそのコースは非常に過酷なものであることが、先に行われた一般のレースが行われる様を観れば判明してゆく。

コースは前半こそ舗装路と松林の中を行く比較的走りやすいコース設定だが、コースの後半は、全体のほぼ半分を先行する竹之内悠 (Team Eurasia-Fondriest bikes)を捉えて離さないベン・ベルデン(ベルギー、Ops Ale-Stoemper)先行する竹之内悠 (Team Eurasia-Fondriest bikes)を捉えて離さないベン・ベルデン(ベルギー、Ops Ale-Stoemper) (c)kei.Tsuji占める砂浜セクション。「お台場の砂地獄」と形容されていた砂浜は、一般クラスでは多くの選手が乗車不可能で、押し・担ぎを強いられる。ここをいかに乗車でクリアするかが問われるパワーライダー向けのコースだ。

スタートラインへと47名の国内外のエリートライダーが勢ぞろいした。
今回の注目はやはり海外招待選手勢だ。アメリカのシクロクロスシーンをリードする招待選手たちが今大会に招かれた。中でも注目選手はアメリカチャンピオンの経験を持つ全米クロス界のレジェンド、ティモシー・ジョンソン(アメリカ)を始めとするキャノンデールpbシクロクロスワールド.comの3人の選手たち。このレースともう1レースを走って引退すベイブリッジをバックに走るティモシー・ジョンソン(アメリカ、キャノンデールpbシクロクロスワールド.com)ベイブリッジをバックに走るティモシー・ジョンソン(アメリカ、キャノンデールpbシクロクロスワールド.com) (c)kei.Tsujiる予定のクリスチャン・ホイレ(スイス)と、期待の若手ジェイミー・ドリスコル(アメリカ)。3人はいずれもベルギー・コクサイデで開催された世界選手権では竹之内悠と辻浦圭一ら日本代表勢に対して優位のリザルトを残している。最高位はホイレの25位相当。

そしてベルギーのベテラン、ベン・ベルデン(ベルギー、Ops Ale-Stoemper)、パスポート期限切れが出国直前に発覚したバリー・ウィックスに代わり同僚のエリック・トンキン(アメリカ、コナシクロクロスチーム)が加わる。
ベルデンは<世界選手権でトップ7を占める>シクロクロス大国ベルギーではスポットライトを浴びることはないが、活動の舞台をアメリカに移して活躍している。トンキンはポートランドでバイクショップを経営しながらも全米シクロクロス砂を蹴立てて走るベン・ベルデン(ベルギー、Ops Ale-Stoemper)砂を蹴立てて走るベン・ベルデン(ベルギー、Ops Ale-Stoemper) (c)kei.Tsujiのエリートクラスで活躍している。

これら海外勢に全日本チャンピオンジャージを着る竹之内悠(Team Eurasia-Fondriest bikes)をはじめとする国内勢がどう迎え撃つかが注目された。

スタートが切られると、いち早くトップに立ちシケインをクリアしていくのは竹之内。追うのはベルデンやジョンソンら海外勢だ。そのまま竹之内が先頭で松林セクションをハイスピードでクリア。ベルデンがこれに追い付き、付かず離れずの差で後ろから様子をうかがう展開に。

リードを保ち飛ばし続ける竹之内とベルデン。クリスチャン・ホイレ(スイス、キャノンデールpbシクロクロスワールティモシー・ジョンソンとクリスチャン・ホイレが前の2人を追ってペースを上げるティモシー・ジョンソンとクリスチャン・ホイレが前の2人を追ってペースを上げる (c)kei.Tsujiド.com)やジェイミー・ドリスコル(アメリカ、同)、ジョンソンらが続いていき、その後方では小坂正則(スワコレーシング)やエリック・トンキン(アメリカ、KONA)が追いかける。

ほぼそのままのオーダーのよる展開でレース進行。ハイスピードを維持したまま後半戦へと突入していく。竹之内のアグレッシブな走りに観客から大声援が巻き起こる。大きなリードを保つ竹之内とベルデン。しかし海外勢は苦しんでいたわけではなかった。

残り4周の砂浜区間で竹之内のスピードが若干落ちたところでベルデンがアタック。本場ベルギー仕込みの圧倒的な余裕の勝利を挙げたベン・ベルデン(ベルギー、Ops Ale-Stoemper)余裕の勝利を挙げたベン・ベルデン(ベルギー、Ops Ale-Stoemper) (c)kei.Tsujiパワーとテクニックを披露して、竹之内との差を開いていく。

食い下がる竹之内だが、徐々にベルデンとの差は開いていく。そして後方からもホイレとジョンソンが追い上げてきて、竹之内を容赦無くかわしていく。

単独先頭に躍り出たベルデンはペダルを踏み込む力を緩めない。他を圧倒するテクニックとパワー。白い腕と脚のタトゥーが不気味に光る。その豪快かつスムーズな走りに、観客たちからはため息と大歓声が送られる。
竹之内をかわしたジョンソンとホイレの二人のキャノンデール勢の走りも勢いを増していく。

優勝のベン・ベルデン(ベルギー、Ops Ale-Stoemper)、2位ティモシー・ジョンソン(アメリカ、キャノンデールpbシクロクロスワールド.com)、3位クリスチャン・ホイレ(スイス、同)優勝のベン・ベルデン(ベルギー、Ops Ale-Stoemper)、2位ティモシー・ジョンソン(アメリカ、キャノンデールpbシクロクロスワールド.com)、3位クリスチャン・ホイレ(スイス、同) (c)So.Isobeしかしベルデンは追い上げるキャノンデール勢を余裕を持って振り切り、そのまま独走で両手でガッツポーズを繰り出し、大歓声に包まれながらお台場のゴールへと飛び込んだ。

2着にはジョンソン。3着はホイレ。中盤までレースをリードしていた竹之内は4着でゴールした。5位ドリスコル、6位にトンキン、7位に小坂正則が入った。結果的には上位5人以下すべての選手がベルデンらに周回遅れにされている。

強豪に対して積極果敢に攻める走りで観衆を沸かした竹之内は「最初から飛ばしていった。昔からそうですが、砂地での走りが僕の課題。これからテクニックを磨いていかなければ。」とゴール後悔しさをにじませていた。

都心での画期的な大会となったCyclo Cross Tokyoの初代王者に輝いたベン・ベルデン。ベルギー出身の36歳のベテランは、アメリカ国内選手権でのライバルたちを東京で一蹴することに成功した。この日、お台場海浜公園に集まってスピードとスリルに満ちたこのシクロクロス・ショーを目撃した観客は5000人に上るという。わずか1時間に凝縮された素晴らしいレースに、多くの人が感嘆の声をあげていたのが印象に残った。


先行する豊岡英子(パナソニックレディース)に宮内佐季子(CLUB viento)が食い下がる先行する豊岡英子(パナソニックレディース)に宮内佐季子(CLUB viento)が食い下がる (c)So.IsobeL1クラスは豊岡と宮内のデッドヒート

L2との混走となったL1クラスは、全日本選手権7連覇中の女王、豊岡英子(パナソニックレディース)と宮内佐季子(CLUBviento)の争いに注目が注がれた。

9名がスタートしたL1クラスは、やはり下馬評通り豊岡が序盤からトップを走る。これに食らいつくのは宮内。この先頭2人の速さは他を寄せ付けない圧倒的で、特に砂浜セクションではみる間に後続とのリードを広げていく。
乗車にこだわる豊岡に対し、早めにランに切り替える宮内。宮内が先行し、豊岡が砂浜にタイヤをとられて苦戦するシーンが見られたが、そこはやはり女王の貫禄。ミスの少ない豊岡がリードする場面が多くなる。
レースを走るごとにレベルを上げていく宮内佐季子(CLUB viento)レースを走るごとにレベルを上げていく宮内佐季子(CLUB viento) (c)So.Isobe先頭を飛ばす2人だが次第にパワーの差が現れ始め、宮内との差が開いていく。追いすがる宮内だが、思うように差が縮まらない。そしてそのままリードを広げた豊岡が先頭でゴールラインを切った。3位には坂口聖香(Ready Go JAPAN)が入った。

また、オランダから来日したマスターズ世界チャンプ、荻島美香もL1クラスに出場した。マスターズ世界チャンピオン獲得という目標を達成したことですでに真剣勝負の競技からは身を引いた荻島だが、青いアルカンシェルジャージを着た姿を披露。長い砂浜セクションを乗り切るなど見せ場を作り、お台場に集まった大観衆を大いに沸かせていた。


Cyclo Cross Tokyo結果

エリート男子
1位 ベン・ベルデン(ベルギー、Ops Ale-Stoemper)
2位 ティモシー・ジョンソン(アメリカ、キャノンデールpbシクロクロスワールド.com)
3位 クリスチャン・ホイレ(スイス、キャノンデールpbシクロクロスワールド)
4位 竹之内悠 (Team Eurasia-Fondriest bikes)
5位 ジェイミー・ドリスコル(アメリカ、キャノンデールpbシクロクロスワールド)
6位 エリック・トンキン(アメリカ、KONA)
7位 小坂正則(スワコレーシング) 

Women's L1
1位 豊岡英子(パナソニックレディース)
2位 宮内佐季子(CLUB viento)
3位 坂口聖香(Ready Go JAPAN)


※公式リザルトが確定次第アップデートします。


text:So.Isobe,Makoto.AYANO
photo:Kei.tsuji、So.Isobe
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