2012年、イギリスのチームスカイは新加入マーク・カヴェンディッシュ(イギリス)を中心に据えた勝利量産チームになるだろう。オールラウンダーとしてリッチー・ポルト(オーストラリア)も加入し、総合力も向上させている。トラック世界選手権マディソンで2008年に世界一に輝いたブラドレー・ウィギンズ(イギリス)とカヴのコンビがツールに揃う。

ブエルタ総合2位のクリス・フルーム(イギリス)と総合3位ブラドレー・ウィギンズ(イギリス)ブエルタ総合2位のクリス・フルーム(イギリス)と総合3位ブラドレー・ウィギンズ(イギリス) photo:Tour of Spain/Graham Watsonイギリスの大手テレビ局ブリティッシュ・スカイ・ブロードキャスティングのスポンサーのもと、2010年にイギリス純正チームとして産声をあげたチームスカイ。2010年はUCIワールドツアーランキング15位(通算22勝)とまずまずの出だしだったが、2011年は同ランキング2位(通算32勝)まで浮上。正真正銘トップチームを名乗る戦力を示した。

その背景にはウィギンズのクリテリウム・ドゥ・ドーフィネ制覇、エドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー)のエネコ・ツアー制覇、そして何よりブエルタ・ア・エスパーニャでのクリス・フルーム(イギリス)総合2位&ウィギンズ総合3位がある。

ツールでステージ2勝を飾ったエドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー)ツールでステージ2勝を飾ったエドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー) photo:Makoto Ayanoチーム結成時に掲げていた目標は「5年以内にイギリス人初のツール覇者を輩出すること」。フルームとウィギンズの活躍によってブエルタでその可能性を示すことに成功したが、2012年は少し戦略を変更する。シーズン13勝を飾った世界チャンピオン、カヴェンディッシュが加入するのだ。

イギリスチームにアルカンシェルを着るイギリス最強スプリンターが合流するのは自然な流れ。チームスカイにはスピード溢れる選手が揃っており、これまでのHTC・ハイロードトレインに代わるスカイトレインがゴール前を熱くするだろう。

世界チャンピオンのマーク・カヴェンディッシュ(イギリス)世界チャンピオンのマーク・カヴェンディッシュ(イギリス) photo:Riccardo ScanferlaHTC・ハイロードからはカヴの相棒ベルンハルト・アイゼル(オーストリア)やダニー・ペイト(アメリカ)、カンスタンティン・シウトソウ(ベラルーシ)も合流する。

しかしカヴの加入は必ずしも「ツール制覇」というチームの目標に合致しない。ウィギンズは「マークの加入は来シーズンに繋がる素晴らしいステップだ」と語っているが、カヴをサポートするスプリント要員の増加は、総合を狙うウィギンズやフルームのアシスト力低下に繋がる。7月に向けてチーム首脳陣は頭を悩ますことになるだろう。

新加入のリッチー・ポルト(オーストラリア)新加入のリッチー・ポルト(オーストラリア) photo:Kei Tsujiツールでステージ2勝を飾ったボアッソンハーゲンは今やチームを代表する選手。「ミラノ〜サンレモやパリ〜ルーベなどのクラシックレース制覇が目標」と語るボアッソンハーゲンは、ブエルタでオールラウンダーとして頭角を現したフルームとともに、2014年末まで契約を3年間更新している。

カヴの他に新加入選手として注目したいのは、2010年ジロ・デ・イタリアでマリアローザを着用し、新人賞(総合7位)を獲得したポルトだ。身長172cmと小柄ながら、2010年の世界選手権タイムトライアルで4位に入る実力の持ち主。グランツールではウィギンズらの良きアシストになるだろう。

その他、23歳のセルジオルイス・エナオモントーヤ(コロンビア)は山岳力に長けたオールラウンダー。サルヴァトーレ・プッチオ(イタリア)は、2011年ロンド・ファン・フラーンデレンのU23レース優勝者。2011年をもって引退する37歳ダリオダヴィデ・チオーニ(イタリア)はチームに残り、コーチとして活動する。チームメンバーは総勢28名になる予定だ。

チームスカイ2012メンバー(暫定)
ダヴィデ・アッポローニオ(イタリア)
マイケル・バリー(カナダ)
マーク・カヴェンディッシュ(イギリス) ←HTC・ハイロード
アレックス・ダウセット(イギリス)
ベルンハルト・アイゼル(オーストリア) ←HTC・ハイロード
フアンアントニオ・フレチャ(スペイン)
クリス・フルーム(イギリス)
エドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー)
マシュー・ヘイマン(オーストラリア)
セルジオルイス・エナオモントーヤ(コロンビア) ←ゴベルナシオン・デ・アンティオキア
ジェレミー・ハント(イギリス)
ピーター・ケノー(イギリス)
クリスティアン・クネース(ドイツ)
トーマス・ロヴクヴィスト(スウェーデン)
ラーシュペッテル・ノルダーグ(ノルウェー)
ダニー・ペイト(アメリカ) ←HTC・ハイロード
リッチー・ポルト(オーストラリア) ←サクソバンク・サンガード
サルヴァトーレ・プッチオ(イタリア) ←ネオプロ
マイケル・ロジャース(オーストラリア)
ルーク・ロウ(イギリス) ←ネオプロ
カンスタンティン・シウトソウ(ベラルーシ) ←HTC・ハイロード
イアン・スタナード(イギリス)
クリストファー・サットン(オーストラリア)
ベン・スウィフト(イギリス)
ジェレイント・トーマス(イギリス)
リゴベルト・ウラン(コロンビア)
ブラドレー・ウィギンズ(イギリス)
シャビエル・ザンディオ(スペイン)

チームを移籍する選手
ラッセル・ダウニング(イギリス) →エンドゥーラレーシング
サイモン・ジェランス(オーストラリア) →グリーンエッジ
セルジュ・パウエルス(ベルギー) →オメガファーマ・クイックステップ
クルトアスル・アルヴェセン(ノルウェー) →引退
ダリオダヴィデ・チオーニ(イタリア) →引退
キェール・カールストローム(フィンランド) →引退?
グレゴリー・ヘンダーソン(ニュージーランド) →ロット・ベリソル
スティーブ・クミングス(イギリス) →BMCレーシングチーム
モーリス・ポッソーニ(イタリア) →ランプレ・ISD
ジョンリー・オーガスティン(南アフリカ) →ウテンシルノルド・ネイムド

text:Kei Tsuji

最新ニュース(全ジャンル)