今年9月に発表され、ロードレース界に衝撃を与えたレディオシャックとレオパード・トレックの実質的な合体。その背景には、アメリカからヨーロッパまで世界的に広がる経済危機がある。チームが緊縮政策に走るのは無理のない話だ。

今シーズンで見納めとなるレオパード・トレックのジャージ今シーズンで見納めとなるレオパード・トレックのジャージ Vuelta a Espana/Graham Watson「現在、多くの国々の経済状況は思わしくない。経済状況の悪化は、スポンサー獲得に直接的に影響し、チームや選手の動向に大きく関わってくる」。そう語るのは、スイス人のアラン・ルンプ氏。

ルンプ氏は長きにわたってUCI(国際自転車競技連合)の第一線で活躍し、現在はツアー・オブ・北京などのマネジメントに関わる人物。トップチームの経済的なバックグラウンドに精通している。

レオパード・トレックのパトロンを務めるフラヴィオ・ベッカ氏レオパード・トレックのパトロンを務めるフラヴィオ・ベッカ氏 photo:Cor Vos昨年チームガーミンとサーヴェロ・テストチームが合併したことを皮切りに、トップチームの合併、もしくはスポンサー撤退に伴う解散が相次いでいる。

ルクセンブルクの資産家フラヴィオ・ベッカ氏は、年間1500万ユーロ(約15億8000万円)という巨額の年間予算を4年間確約し、話題性とともにレオパード・トレックをスタートさせた。しかしそれからわずか1年後、レディオシャック社とニッサン社を新たなスポンサーに迎え、再スタートを余儀なくされる結果に。

新たな名称はレディオシャック・ニッサン。ヨハン・ブリュイネール監督を迎え、メンバーの多くをレディオシャックから獲得。しかし当然2チームの選手やスタッフが1チームに収まりきるわけではない。首を切られ、路頭に迷う選手やスタッフは確実にいる。

「これは先を見据えた戦略的な動きだ」。ベッカ氏はプレスリリースの中でそう語っている。「成績を改善するために下した判断。現代のロードレース界において、巨大スポンサーなしに前に進むことは困難を極める」。

レオパード・トレックは今年、チームとして25勝をマークした。ワウテル・ウェイラント(ベルギー)の不慮の事故死によりジロ・デ・イタリアは第6ステージで撤退したが、ツール・ド・フランスではアンディ・シュレク(ルクセンブルク)がステージ1勝&総合2位、チーム総合2位。ブエルタ・ア・エスパーニャではチームTTを制し、更にダニエーレ・ベンナーティ(イタリア)がステージ1勝。マキシム・モンフォール(ベルギー)総合6位、チーム総合2位という成績を残している。シーズン最後のジロ・ディ・ロンバルディアではオリバー・ザウグ(スイス)が勝利した。

ランス・アームストロングの台頭以降、勢いに乗っていたアメリカ。しかし来シーズンはレディオシャックとHTC・ハイロードという二大チームが姿を消す。チームの資金繰りの苦しさについてルンプ氏は「ファーストディビジョン(UCIプロチーム)の平均予算が著しく増加している。選手の報酬もここ10年間で大きく上がった。選手の契約に関して、最低年俸や保証、契約期間など、細かい取り決めが増えたんだ。そのことはチームスタッフも同じ。選手たちの走る環境は改善されたが、そのことがチーム予算を圧迫している」。

ルンプ氏によると、チームスカイやグリーンエッジなどの新チームはバランスの良い運営がされている。イギリスのチームスカイは初年度からファーストディビジョン入りし、オーストラリアのグリーンエッジも同様にUCIワールドツアーライセンスを獲得する可能性が高い。UCIのライセンス委員会は12月10日までに18のUCIプロチームを発表する予定だ。

text:Gregor Brown
translation:Kei Tsuji

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