ミラノ市内を舞台に行われたジロ・デ・イタリア第9ステージは、連日の危険なコース設定に選手が抗議し、ニュートラルなまま約150kmを走行するという異例の事態になった。ラストはゴール前での集団スプリントとなり、これを制したマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームコロンビア)が悲願の今大会初勝利を飾った。

4賞ジャージを先頭にドゥオモ広場前をスタート4賞ジャージを先頭にドゥオモ広場前をスタート photo:CorVosジロ・デ・イタリア第9ステージは、例年はジロの終着地として登場するミラノを舞台に行われた。ミラノの観光名所を駆け抜ける15.4kmの周回コースは、完全フラット。ハイスピードバトルが繰り広げられるものと思われた。

最初の周回の平均速度は33.370 km/h。ここから徐々にペースが上がるだろうと誰もが考えた。しかし、2周目、3周目と周回を重ねても集団のペースは上がらない。
徐々に疑問が湧き上がってきた頃、集団先頭にダニーロ・ディルーカ(イタリア、LPRブレークス)、ランス・アームストロング(アメリカ、アスタナ)、イヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス)、イェンス・フォイクト(ドイツ、サクソバンク)ら、錚々たる面々が集結した。
路面の滑りやすさに選手たちは悪戦苦闘する路面の滑りやすさに選手たちは悪戦苦闘する photo:CorVosそして6周目の周回に入るところで、いったん集団がストップした。

マイクを持ったのはマリアローザに身を包んだダニーロ・ディルーカだ。
ディルーカはコースの危険性に触れ、このステージは危険回避のためにゆっくりと走行するという趣旨の声明を発表した。

実はこの日、ステージ序盤に集団内で落車が発生している。マルクス・フォーテン(ドイツ、ミルラム)とセラフィン・マルティネス(スペイン、シャコベオ・ガリシア)が落車し、その後集団に復帰するも、痛々しい傷跡を見せ集団後方で走行するマルティネスの姿が映像でとらえられている。

実際、滑りやすい石畳や路面電車の線路、テクニカルなコーナー、さらには幅の狭いコース上に乗用車が駐車している箇所などもあり、集団が高速で走行するには危険な箇所も多数あった。集団内ではパンクが相次ぎ、選手の主張にも一理あると思わざるを得なかった。

また、忘れてならないのは前日の第8ステージでのペドロ・オリッリョ(スペイン、ラボバンク)の落車だ。コムーネ・ディ・サンピエトロの山岳ポイント通過後、下りで落車、崖下に転落して脊椎損傷、肺破裂の重傷を負った。
路面電車の線路を斜めに横切る箇所も路面電車の線路を斜めに横切る箇所も photo:CorVosその後オリッリョは昏睡状態を脱し、手足を動かせるようになったものの、依然深刻な状況であることには変わりない。

ゴールスプリントのフィナーレ。マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームコロンビア)が先行するゴールスプリントのフィナーレ。マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームコロンビア)が先行する photo:CorVosディルーカはオリッリョの事故にも触れ、連日のコースの危険性、選手の負うリスクを訴えた。そしてこれは選手を代表してのコメントであると。

ミラノショー100のスプリントを制したマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームコロンビア)ミラノショー100のスプリントを制したマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームコロンビア) photo:CorVosレース開始前に選手との話し合いの上、レースのニュートラリゼーション、すなわちタイム差は発生せず、ボーナスポイントやボーナスタイムも付かないことを発表したジロ・デ・イタリアのオーガナイザー、アンジェロ・ゾメニャン氏は後に「ニュートラリゼーションには同意した。それで十分ではないのか。これはスポーツの楽しみを奪う行為だ。もし危険なレースをすべてキャンセルするというなら、アムステルゴールドレースやリエージュ~バストーニュ~リエージュもキャンセルすべきということだろうか」と憤然とコメント。

その後、ディルーカがオーガナイザーと短い会話を交わし、集団は再びゆったりとしたペースでスタートした。
周回を重ねるうちに徐々に集団のペースは上がったが、集団からアタックする選手は現れず、レースが動いたのは最終周回に入ってからだった。
まず動いたのがトマ・ヴォクレール(フランス、Bboxブイグテレコム)だ。集団に対して多少のリードを得たが、ペースを上げる集団が難なく吸収。
集団のままストレートに入り、ラストは集団スプリントとなった。

残り1kmを切ったあたりでサクソバンクの2名をかわし、マリアチクラミーノを着たエドヴァルド・ボアッソン(ノルウェー、チームコロンビア)、マーク・レンショー(オーストラリア、チームコロンビア)、マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームコロンビア)のコロンビアトレインが先頭に立つ。
その際、ボアッソンに着こうとしたアラン・デーヴィス(オーストラリア、クイックステップ)はレンショー、フアンホセ・アエド(アルゼンチン、サクソバンク)と体をぶつけ合う。アエドが多少失速。その背後にいたアレッサンドロ・ペタッキ(イタリア、LPRブレークス)も一度失速してしまった。
デーヴィスはカヴェンディッシュの後ろの位置を死守。
まずボアッソンが切り離され、レンショーがカヴェンディッシュを引く。そして残り300m地点で先頭に立ったカヴェンディッシュの勢いは誰も止めることができなかった。
ラストはガッツポーズでゴール。
2位にはデーヴィス、3位は伸びのあるスプリントを見せるも一歩及ばなかったタイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン・スリップストリーム)が入った。

マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームコロンビア)は今大会悲願の初勝利。そして、チームコロンビアは第7ステージのボアッソン、第8ステージのカンスタンティン・シウトソウ(ベラルーシ)に続くステージ3連勝、チームタイムトライアルも含めると4勝目を上げることとなった。

ニュートラリゼーションの適用により、集団より遅れてゴールしたランス・アームストロング(アメリカ、アスタナ)やダニーロ・ディルーカ(イタリア、LPRブレークス)らもタイム差は付かず。
選手の抗議行動により10周回ものパレード走行という異例の事態を巻き起こした第9ステージだったが、カヴェンディッシュの他を寄せ付けぬスプリントは非常に見ごたえのあるものだった。

5月18日はジロ・デ・イタリア2009初めての休息日。翌19日に行われる第10ステージは今大会最長の262kmの山岳ステージとなる。


ジロ・デ・イタリア2009第9ステージ結果
1位 マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームコロンビア) 4h16'13"
2位 アラン・デーヴィス(オーストラリア、クイックステップ) +0"
3位 タイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン・スリップストリーム) +0"
4位 マシュー・ゴス(オーストラリア、サクソバンク) +0"
5位 アレッサンドロ・ペタッキ(イタリア、LPRブレークス) +0"
6位 ロベルト・フェルスター(ドイツ、ミルラム) +0"
7位 ロバート・ハンター(南アフリカ、バルロワールド) +0"
8位 ダヴィデ・ヴィガーノ(イタリア、フジ・セルヴェット) +0"
9位 サイード・ハドゥ(フランス、Bboxブイグテレコム) +0"
10位 トーマス・フォーテン(ドイツ、ミルラム) +0"

個人総合成績
1位 ダニーロ・ディルーカ(イタリア、LPRブレークス) 37h29'48"
2位 トーマス・ロヴクヴィスト(スウェーデン、チームコロンビア) +13"
3位 マイケル・ロジャース(オーストラリア、チームコロンビア) +44"
4位 リーヴァイ・ライプハイマー(アメリカ、アスタナ) +51"
5位 デニス・メンショフ(ロシア、ラボバンク) +58"
6位 イヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス) +1'14"
7位 カルロス・サストレ(スペイン、サーヴェロ・テストチーム) +1'24"
8位 クリストファー・ホーナー(アメリカ、アスタナ) +1'25"
9位 フランコ・ペッリツォッティ(イタリア、リクイガス) +1'35"
10位 ダビ・アローヨ(スペイン、ケースデパーニュ) +1'49"

ポイント賞 マリアチクラミーノ
ダニーロ・ディルーカ(イタリア、LPRブレークス)

山岳賞 マリアヴェルデ
ダニーロ・ディルーカ(イタリア、LPRブレークス)

新人賞 マリアビアンカ
トーマス・ロヴクヴィスト(スウェーデン、チームコロンビア)

チーム総合成績
チームコロンビア

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