オーストラリアのドリームチーム、グリーンエッジがオレンジを身にまとい走り始める。
グリーンエッジが新たに2人のオランダ人選手、ピーター・ウェーニングとセバスティアン・ラングヴェルトと契約したと発表した。それにはある理由があった。

チームディレクターを務める元サイクリングオーストラリアのシェイン・バナン氏チームディレクターを務める元サイクリングオーストラリアのシェイン・バナン氏 photo:Kei.TSUJI「我々は他のチームをリスペクトしている。とりわけラボバンクだ。」
チームマネーシャー、シェイン・バナン氏はシクロワイアードの契約ジャーナリスト、グレゴー・ブラウンにこう語った。

「彼らは16年間ロードレースに携わってきている。しかも高い育成能力を持ったチームでもある。」

ラボバンクグループは、プロチームとU23を含め、各レベルのチームそれぞれにスポンサーとしてついている。
ラボバンクが新しいスポンサーシップとしてチーム運営を開始したのが15年前の1996年シーズンから。アメリカやオーストラリアなど国際的な露出戦略をとることで成功を収めてきた。そして、2016年まで継続してスポンサー活動をしていくことを既に明らかにしている。
12月に結んだ新たな契約内容は「1年につき1500万ユーロの支給。それに加えて地方銀行が主催するレースへのサポート費用1000万ユーロ。更にマウンテンバイクチームの設立とサイクルイベントの開催」など。

ツール・ド・フランスの会場に乗り付けられたグリーンエッジのチームカー。すでに準備は進んでいるツール・ド・フランスの会場に乗り付けられたグリーンエッジのチームカー。すでに準備は進んでいる (c)Makoto.AYANOバナン氏のビジネスプランの根底にあるのが、オーストラリアのトップ実業家ゲリー・ライアン氏だ。ライアン氏は今年、そして向こう2年間、チーム運営の保証人になっている人物である。

来年のUCIワールドツアーのチーム方針を発表した際、同時にバナン氏は、「オランダのプロチームであるラボバンクが、グリーンエッジに対して、成し遂げてきた数々のノウハウを提供してくれることになった」と発表した。「これは今まで築き上げてきたものの産物のようなもの。ここ6年、8年、10年、12年のね。」

バナン氏は更にこうも語る。「ヨーロッパの自転車界だけではない。女子、そしてトラックチームもだ。」

チームグリーンエッジの軸となるチーム方針は、アスリート達に対してのサポート体制をいかに充実させるかにある。ヨーロッパのバーゼ湖畔に拠点を構えるAustralian Institute of Sport (AIS)という団体を通じて、資金面での充実を図っていく予定だ。

チームの将来をどのように見据えていくのか、プロとしてのキャリアの最終地点をどこに置くのか、バナン氏は今その答えを探している最中だ。

チームは既に25人~26人のチーム構成のうち、7人と正式に契約を取り交わした、と公式発表している。

ピーター・ウェーニング(オランダ、ラボバンク)ピーター・ウェーニング(オランダ、ラボバンク) photo:(c)Kei.TSUJIチームグリーンエッジの方針に賛同した「ラボバンク」の中から、これまでに2人のオランダ人ライダーの獲得に成功した。ピーター・ウェーニングとセバスティアン・ラングヴェルトだ。

バナン氏はプレス発表でラングヴェルトについて「彼は今キャリアの中で最もベストな状態であり、さらに沢山の可能性を秘めている選手。。私は信じている。バイクに乗っている時もそうでない時も、彼の目標達成の為に、我々が常にベストなサポートが出来ることを。」と語った。

ラングヴェルトは5年間「ラボバンク」に在籍していた。彼の専門はワンデークラシック。今シーズンは オンループ・ヘットニュースブラッドで勝利セバスティアン・ラングヴェルト(オランダ、ラボバンク)セバスティアン・ラングヴェルト(オランダ、ラボバンク) photo:(c)Makoto.AYANOを収めている。来シーズンからは2007年のパリ~ルーベで優勝した実力者スチュワート・オグレディ(オーストラリア)が彼のアシスト役を務めていくことになるだろう。

ピーター・ウェーニングはラボバンクのアマチュアチーム・プロチームで過去8年間走ってきた。
「彼はもうラボバンクで充分エンジョイした。今彼が求めているものは"新たな挑戦"なんだ。」バナン氏はこう語った。

「私と彼の中での"過去"はもう過ぎ去ったこと。彼は本当に挑戦を求めている。まるでオーストラリア人のメンタリティそのものだ。私達にはみなぎる情熱と、そして互いを助け合う心がある。
さらに地元のオーストラリア人ライダーに目を向ければ、そこにはリッチー・ポルトやカデル・エヴァンス、マシューロイドがいる。我々が目指すもの。ウィーニングはその過程の中で足りないものを必ず埋めてくれるだろう。」

「グリーンエッジ」という大きな船にまず乗り込んだのは、オグレディを筆頭に、4人のオーストラリア人ライダーと、2人のオランダ人ライダー。
バナン氏は力強くこうも語った。「ラボバンクに全て頼ろうとはこれっぽっちも思っていない。」

グリーンエッジは最高のチームから提供されたノウハウを基に、更に自分達独自のスタイルを作り上げたいと考えている。

「どのチームもそれぞれ特徴を持っている。我々にはトップレベルで戦うまでに成長させることが出来る"育成プログラム"があることを知ってもらいたい。我々がアスリートのことを最優先に考えるチームであることを知ってもらいたい。それらを達成するには、栄養学や生理学、リカバリーなど、様々な視点からのアプローチが必要である。それらの結果として何かしらの’切り札=edge’が生まれてくるはずだ。」

「我々は、我々のシステム、そしてアスリート達がベストの選択を出来るように、研究・開発していく。」

「良識のある考えを持っていれば、フィジカル的にもっと強くなれる。とにかく考えることが必要だ。将来を見据えた時、それらは我々チームと共にあるのか、それとも否か。」

サイモン・ジェランス(オーストラリア、チームスカイ)サイモン・ジェランス(オーストラリア、チームスカイ) photo:Kei.TSUJIこれぞまさに、新生オーストラリアチーム、グリーンエッジのオランダ的考え方である。これによって、チームは必ずや成功へと導かれることだろう。

そしてチームは8月18日、サイモン・ジェランス(オーストラリア、チームスカイ)の獲得を発表した。着々と体制を固めつつあるチームから目が離せない。


text:Gregor.Brown
tlanslation:Chiaki.Iwamoto