若き才能マルセル・キッテル(ドイツ、スキル・シマノ)がツール・ド・ポローニュの最終スプリント制覇。そして総合優勝の行方は、ステージ2位に入ってボーナスタイムを獲得したペーター・サガン(スロバキア、リクイガス・キャノンデール)の手に。最終日に逆転総合優勝が決まった。

リーダージャージを着て最終ステージに挑むダニエル・マーティン(アイルランド、ガーミン・サーヴェロ)リーダージャージを着て最終ステージに挑むダニエル・マーティン(アイルランド、ガーミン・サーヴェロ) photo:Riccardo Scanferla最終日はかつての首都クラクフを舞台にした平坦ステージ。2005年に亡くなったローマ法王ヨハネ・パウロ2世の生誕地であるクラクフ市内の12.4km周回コースを10周する。8度目のゴールライン通過(ゴール30km手前)が中間スプリントポイントだ。

この日の注目は、なんと言っても僅差で争われている総合優勝の行方。前日の山岳ステージを終えた時点で総合首位マーティンと総合2位サガンのタイム差は僅かに3秒。総合3位マルカートも同じく3秒差だ。

中間スプリントでバトルを繰り広げたペーター・サガン(スロバキア、リクイガス・キャノンデール)とハインリッヒ・ハウッスラー(オーストラリア、ガーミン・サーヴェロ)中間スプリントでバトルを繰り広げたペーター・サガン(スロバキア、リクイガス・キャノンデール)とハインリッヒ・ハウッスラー(オーストラリア、ガーミン・サーヴェロ) photo:Riccardo Scanferla中間スプリントでは3秒、2秒、1秒、そしてゴールラインでは10秒、6秒、4秒のボーナスタイムが与えられる。つまりスプリント力で勝るサガンとマルカートにとって総合逆転のチャンス有り。スプリント力で劣るマーティンは、チームメイトのハインリッヒ・ハウッスラー(オーストラリア)に頼らざるを得ない。

レースは序盤からアレクサンドル・プリウスチン(モルドバ、カチューシャ)らが逃げを試みたが、リクイガス・キャノンデールの集団コントロールによってゴールまで距離を残して吸収。集団は一つのまま中間スプリントに突入する。

クラクフ市内の12.4km周回コースを10周するクラクフ市内の12.4km周回コースを10周する photo:Riccardo Scanferlaここでハウッスラーとサガンが肘をつきあわす激しいスプリントを繰り広げ、ハウッスラーが先頭通過を果たす。しかしハウッスラーのスプリントは危険走行と見なされ、先頭通過はキャンセルに。この時点でボーナスタイム3秒を獲得したサガンが総合首位マーティンと並んだ。

最終周回でトマス・マルシンスキ(ポーランド、CCCポルサット)らが逃げを試みたが、ラスト2kmのアーチ手前で吸収される。リクイガス・キャノンデールが率いるメイン集団がゴール前に向け突進した。

最終スプリントを制したマルセル・キッテル(ドイツ、スキル・シマノ)、2位のペーター・サガン(スロバキア、リクイガス・キャノンデール)もガッツポーズ最終スプリントを制したマルセル・キッテル(ドイツ、スキル・シマノ)、2位のペーター・サガン(スロバキア、リクイガス・キャノンデール)もガッツポーズ photo:Riccardo Scanferla完全に主導権を握るチームがいない状況の中、ラスト200mからリー・ハワード(オーストラリア、HTC・ハイロード)がスプリントをスタート。これに反応したキッテルが一気に先頭に躍り出る。ポイント賞ジャージのサガンも伸びのあるスプリントを見せる。

最後まで加速を止めないキッテルが先頭でゴール。筋肉質なキッテルがガッツポーズを決めるその後ろで、サガンも同様にガッツポーズ。ステージ2位に食い込んだサガンが、雄叫びを上げてゴールラインを駆けぬけた。

最終スプリントを制したマルセル・キッテル(ドイツ、スキル・シマノ)最終スプリントを制したマルセル・キッテル(ドイツ、スキル・シマノ) photo:Riccardo Scanferla最終的に6秒差で逆転総合優勝を果たしたサガンは「スリル満点だった。今日も最高の走りを見せたチームメイトに感謝しなくちゃいけない。中間スプリントで2位だった(実際はハウッスラー降格で1位)のでゴールラインで全力を尽くす必要があると思ったんだ。秒差の闘いになると思っていたけど、最終的にステージ2位で、キャリア最高の勝利を手にすることができた」とコメント。1990年生まれの21歳が、自身初めてUCIワールドツアーのステージレースで総合優勝に輝いた。初出場のブエルタ・ア・エスパーニャでの活躍に期待が膨らむ。

そして今大会もう一人の主役が、スプリントで敵無しの強さを見せたキッテルだ。1988年生まれの23歳は、第1、2、3ステージに続く4勝目で大会を締めくくった。「まさか4勝できるとは思っていなかったよ。1勝できればいいと思っていた。厳しい山岳ステージを乗り切って完走できたことも大きな喜び。まだ若くて伸びしろがあると思う。(将来に向けて)プレッシャーは感じていないよ」。

総合表彰台、左から2位ダニエル・マーティン(アイルランド、ガーミン・サーヴェロ)、優勝ペーター・サガン(スロバキア、リクイガス・キャノンデール)、3位マルコ・マルカート(イタリア、ヴァカンソレイユ・DCM)総合表彰台、左から2位ダニエル・マーティン(アイルランド、ガーミン・サーヴェロ)、優勝ペーター・サガン(スロバキア、リクイガス・キャノンデール)、3位マルコ・マルカート(イタリア、ヴァカンソレイユ・DCM) photo:Riccardo Scanferla

レース展開と選手コメントはレース公式サイトならびにストリーミング映像より。

ツール・ド・ポローニュ2011第7ステージ結果
1位 マルセル・キッテル(ドイツ、スキル・シマノ)            2h50'00"
2位 ペーター・サガン(スロバキア、リクイガス・キャノンデール)
3位 リー・ハワード(オーストラリア、HTC・ハイロード)
4位 ハインリッヒ・ハウッスラー(オーストラリア、ガーミン・サーヴェロ)
5位 マルコ・マルカート(イタリア、ヴァカンソレイユ・DCM)
6位 ルーカスセバスティアン・アエド(アルゼンチン、サクソバンク・サンガード)
7位 ニコライ・トルソーフ(ロシア、カチューシャ)
8位 イアン・スタナード(イギリス、チームスカイ)
9位 ヤン・バケランツ(ベルギー、オメガファーマ・ロット)
10位 セルゲイ・ラグティン(ウズベキスタン、ヴァカンソレイユ・DCM)

個人総合成績
1位 ペーター・サガン(スロバキア、リクイガス・キャノンデール)     26h40'00"
2位 ダニエル・マーティン(アイルランド、ガーミン・サーヴェロ)        +06"
3位 マルコ・マルカート(イタリア、ヴァカンソレイユ・DCM)          +07"
4位 ワウテル・ポエルス(オランダ、 ヴァカンソレイユ・DCM)          +23"
5位 ピーター・ケノー(イギリス、チームスカイ)                +25"
6位 リナルド・ノチェンティーニ(イタリア、アージェードゥーゼル)       +28"
7位 バルトス・フザルスキー(ポーランド、ポーランドナショナルチーム)
8位 クリストフ・リブロン(フランス、アージェードゥーゼル)
9位 スティーブ・クミングス(イギリス、チームスカイ)
10位 マレック・ルトキェビッチ(ポーランド、CCCポルサット)          +32"

ポイント賞
ペーター・サガン(スロバキア、リクイガス・キャノンデール)

山岳賞
ミカル・ゴラス(ポーランド、ヴァカンソレイユ・DCM)

チーム総合成績
ヴァカンソレイユ・DCM

text:Kei Tsuji
photo:Riccardo Scanferla

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