超級山岳プラトー・ド・ベイユでベルギー生まれのクライマーが飛揚。エースを失ったチームのイェーレ・ファネンデルト(ベルギー、オメガファーマ・ロット)が、ビッグネームを振り切って勝利した。また、最後までメイン集団に残ったトマ・ヴォクレール(フランス、ユーロップカー)が驚きのマイヨジョーヌキープを果たした。

第14ステージ・コースプロフィール第14ステージ・コースプロフィール image:A.S.O.ピレネー3連戦の最後を飾るのが、超級山岳プラトー・ド・ベイユにゴールする第14ステージ。ピレネー山脈に沿うスペイン国境と並行するように走る山道を、西から東へ、168.5kmに渡って走る。

逃げグループを形成するゴルカ・イサギーレ(スペイン、エウスカルテル)ら逃げグループを形成するゴルカ・イサギーレ(スペイン、エウスカルテル)ら photo:Cor Vos登場するカテゴリー山岳は合計6つで、順番に2級、1級、2級、1級、3級、そして超級。ゴール地点の超級山岳プラトー・ド・ベイユは、アンドラ公国にほど近いスキーリゾート地であり、標高1780mに至る平均勾配7.9%・登坂距離15.8kmという登りのスペックは、あのラルプ・デュエズをも凌ぐ。ピレネーが誇るこの名峰でレースは動いた。

レースはシルヴァン・シャヴァネル(フランス、クイックステップ)らのアタックで幕開ける。断続的なアタックで形成されたのは20名の大きな逃げグループ。最終的に逃げグループは24名まで膨らみ、マイヨジョーヌを擁するユーロップカーはこの動きを容認した。

ピレネー山岳を進むプロトンピレネー山岳を進むプロトン photo:Cor Vos総合21位/8分47秒遅れのサンディ・カザール(フランス、FDJ)やイェンス・フォイクト(ドイツ、レオパード・トレック)、ルイスレオン・サンチェス(スペイン、ラボバンク)、デーヴィット・ミラー(イギリス、ガーミン・サーヴェロ)を含むこの逃げは、最大9分のリードを得てピレネーの峠を越えて行く。

しかし人数の多さは必ずしも逃げグループに味方しない。ローテーションが回りにくい不協和音を切り裂くように、1級山岳コル峠(62km地点)の下りでカザールとジュリアン・エルファレ(フランス、コフィディス)がアタック。これにミラーらが追いつき、メイン集団とのタイム差を維持したまま先行を続けた。

下りで2度落車したイェンス・フォイクト(ドイツ、レオパード・トレック)下りで2度落車したイェンス・フォイクト(ドイツ、レオパード・トレック) photo:Cor Vosゴールまで60kmを残して逃げグループは11名まで膨らみ、1級山岳アニェス峠(110km地点)で今度はゴルカ・イサギーレ(スペイン、エウスカルテル)がアタック。しかしイサギーレの独走も長続きせず、最後のプラトー・ド・ベイユの登りが始まるまでに逃げグループは一つに戻った。

一方のメイン集団は、ユーロップカーからコントロール役を譲り受けたレオパード・トレックが牽引し、集団の人数を絞り込みつつ、そして逃げグループとのタイム差を縮めつつ、プラトー・ド・ベイユに向かう。オグレディ&カンチェラーラという鉄壁コンビが集団をハイスピードで引き続け、序盤から逃げながらも2度の落車で集団に戻ったフォイクトも献身的な走りを見せた。

先頭でプラトー・ド・ベイユを駆け上がるイェーレ・ファネンデルト(ベルギー、オメガファーマ・ロット)先頭でプラトー・ド・ベイユを駆け上がるイェーレ・ファネンデルト(ベルギー、オメガファーマ・ロット) photo:Cor Vosプラトー・ド・ベイユの登りが始まると、逃げグループからカザールが飛び出して一人先行。2分遅れで登りに入ったメイン集団は、レオパード・トレックやガーミン・サーヴェロの牽引によって更に人数を絞って行く。

ゴールまで11kmを残して真っ先に動いたのはアンディ・シュレク(ルクセンブルク、レオパード・トレック)だ。スピードの強弱をつけながらアタックを繰り返すアンディ。しかしアルベルト・コンタドール(スペイン、サクソバンク・サンガード)を始め、多くのビッグネームが難なく反応する。

(cannot load image node)イヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)のアタックも功を奏さず、総合上位陣がアタックと牽制を繰り返す状況の中、ラスト7kmでファネンデルトがアタック。総合30位/12分54秒遅れのファネンデルトの動きには誰も反応しない。

解き放たれた矢の様に集団を抜け出したファネンデルトは、先行していたカザールを抜いて一躍トップに立つ。続いて総合8位/4分11秒遅れのサムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル)が飛び出し、単独でファネンデルトを追走。

メイン集団でプラトー・ド・ベイユのゴールに向かうトマ・ヴォクレール(フランス、ユーロップカー)メイン集団でプラトー・ド・ベイユのゴールに向かうトマ・ヴォクレール(フランス、ユーロップカー) photo:Cor Vosしかしシュレク兄弟やコンタドール、エヴァンス、バッソと言った有力選手のアタックは、互いの激しいマークによって取り消される。ペースが上がり切らない集団内には、マイヨジョーヌのヴォクレールが最後まで生き残った。

ファネンデルトのペースは最後まで落ちず、最終的にサンチェスを21秒、メイン集団を46秒引き離す力走で勝利。ゴール地点で何度もガッツポーズを繰り出した。

ガッツポーズでゴールするイェーレ・ファネンデルト(ベルギー、オメガファーマ・ロット)ガッツポーズでゴールするイェーレ・ファネンデルト(ベルギー、オメガファーマ・ロット) photo:Cor Vosファネンデルトは26歳のベルジャンクライマー。トップスポート・フラーンデレンでプロデビューし、フランセーズデジューを経て2009年からロットチームで走っている。今年のフレーシュ・ワロンヌで6位に入っているが、トップレースの中では無名に近い選手だ。

「まるで夢が叶ったような気分」。初出場のグランツールで大金星を飾ったファネンデルトは率直な意見を述べる。「前々日のリュザルディダン頂上ゴールで2位。そして今日のプラトー・ド・ベイユで優勝。今回はマイヨアポワもついてきた。とても満足している。昨シーズンは連続する2つの膝の故障が原因で7〜8ヶ月を棒に振った。自分のキャリアはここでようやく始まったんだ」。ファネンデルトはマイヨアポワを手にしている。

マイヨジョーヌを守ったトマ・ヴォクレール(フランス、ユーロップカー)が顔を覆うマイヨジョーヌを守ったトマ・ヴォクレール(フランス、ユーロップカー)が顔を覆う photo:Cor Vosオメガファーマ・ロットは落車によってエースのユルゲン・ファンデンブロック(ベルギー)を失った。しかし初日の登りスプリントでジルベールが勝利し、第10ステージの集団スプリントでグライペルが勝利し、そしてファネンデルトが難関山岳ステージを制覇。2008年から3年連続ツールでステージ0勝に終わっていたチームが、すでに今年はステージ3勝を飾っている。

ファネンデルトはプラトー・ド・ベイユでの総合上位陣の牽制をこのように振り返る。「最後の登りでは、アンディがコンタドールが警戒し、コンタドールがフランクを警戒していた。シュレク兄弟がアタックしてコンタドールが反応する展開。まだアルプスが控えているので、彼らは全力を出していなかったと思う。総合に関係の無い選手は自分だけだったので、それがアドバンテージになった」。

シュレク兄弟やコンタドールらの牽制の恩恵を受けたのがヴォクレールだ。ヴォクレールはほぼ全てのアタックに真っ先に反応する粘り強さを見せ、最後までメイン集団に食らいついた。ゴール地点では左手でガッツポーズを作っている。

「マイヨジョーヌを守れると思っていたと言うと嘘になる」。ヴォクレールは満足の表情でそう打ち明ける。「リュザルディダンのときより楽観的に構えていた。最後の登りでは全力を尽くした。正直、自分の走りには驚いたよ。ピレネーでタイムを失わずにマイヨジョーヌを着ているなんて夢のよう。これからも我々は仕事をこなしていくだけだ」。

2分近いリードを得たままピレネーを乗り切った今、ヴォクレールには最終的な総合上位も見えている。アルプスで再びオールラウンダーたちと山岳決戦を繰り広げることになりそうだ。

マイヨヴェールはマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、HTC・ハイロード)がキープ。マイヨブランはリゴベルト・ウラン(コロンビア、チームスカイ)の手に渡っている。

選手コメントはレース公式サイトより。

ツール・ド・フランス2011第14ステージ結果
1位 イェーレ・ファネンデルト(ベルギー、オメガファーマ・ロット)     5h13'25"
2位 サムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル)             +21"
3位 アンディ・シュレク(ルクセンブルク、レオパード・トレック)        +46"
4位 カデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム)        +48"
5位 リゴベルト・ウラン(コロンビア、チームスカイ)
6位 アルベルト・コンタドール(スペイン、サクソバンク・サンガード)
7位 トマ・ヴォクレール(フランス、ユーロップカー)
8位 フランク・シュレク(ルクセンブルク、レオパード・トレック)
9位 ジャンクリストフ・ペロー(フランス、アージェードゥーゼル)
10位 ピエール・ロラン(フランス、ユーロップカー)
11位 イヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)

個人総合成績 マイヨ・ジョーヌ
1位 トマ・ヴォクレール(フランス、ユーロップカー)            61h04'10"
2位 フランク・シュレク(ルクセンブルク、レオパード・トレック)        +1'49"
3位 カデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム)        +2'06"
4位 アンディ・シュレク(ルクセンブルク、レオパード・トレック)        +2'15"
5位 イヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)         +3'16"
6位 サムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル)             +3'44"
7位 アルベルト・コンタドール(スペイン、サクソバンク・サンガード)      +4'00"
8位 ダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ・ISD)              +4'01"
9位 トム・ダニエルソン(アメリカ、ガーミン・サーヴェロ)           +5'46"
10位 ケヴィン・デウェールト(ベルギー、クイックステップ)          +6'18"

ポイント賞 マイヨ・ヴェール
1位 マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、HTC・ハイロード)        264pts
2位 ホセホアキン・ロハス(スペイン、モビスター)              251pts
3位 フィリップ・ジルベール(ベルギー、オメガファーマ・ロット)        240pts

山岳賞 マイヨ・ブラン・ア・ポワ・ルージュ
1位 イェーレ・ファネンデルト(ベルギー、オメガファーマ・ロット)       74pts
2位 サムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル)             72pts
3位 ジェレミー・ロワ(フランス、FDJ)                    45pts

新人賞 マイヨ・ブラン
1位 リゴベルト・ウラン(コロンビア、チームスカイ)            61h12'05"
2位 レイン・ターラマエ(エストニア、コフィディス)             +1'07"   
3位 ピエール・ロラン(フランス、ユーロップカー)              +1'25"

チーム総合成績
1位 レオパード・トレック                       182h46'31"
2位 ユーロップカー                              +06"
3位 アージェードゥーゼル                          +2'32"

敢闘賞
サンディ・カザール(フランス、FDJ)

text:Kei Tsuji
photo:Makoto Ayano, Cor Vos
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