アンドレ・グライペル(ドイツ、オメガファーマ・ロット)は、昨日のツール・ド・フランスで最終コーナーを曲がったところで、すごい勢いで発射され、最初にゴールラインを越えた。この彼のツール初勝利は、特別に大きな意味を持つ。相手がマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、HTC・ハイロード)であったからだ。

「象徴的な出来事だ」とオメガファーマ・ロットのマルク・セルジャン監督は語る。「このレースに、彼は今まで絶対に参加できなかったんだ。カヴェンディッシュのチームに在籍していたからね。今なら参加できる。他のチームに在籍しているから。そしてカヴェンディッシュに勝つことは、グライペルにとって大きな意味を持つにちがいない」

アンドレ・グライペル(ドイツ、オメガファーマ・ロット)がカヴェンディッシュの横に並ぶアンドレ・グライペル(ドイツ、オメガファーマ・ロット)がカヴェンディッシュの横に並ぶ photo:Cor Vos
セルジャン監督は、グライペルとHTC・ハイロードとの契約期間が終了した昨年、彼と契約した。グライペルはHTC・ハイロードで5年間マーク・カヴェンディッシュとともに過ごした。セルジャン監督はグライペルに対して、無数の小さな勝利をあげるよりも、単純に大きな勝利に集中するように求めた。

昨年まで、グライペルはカヴェンディッシュと同じチームに在籍し、莫大な勝利数を上げていた。昨年、彼はツアー・ダウンアンダーからブエルタ・ア・エスパーニャにいたるまで、数多くのステージ優勝をとげている。しかし、ツールへの出場は失敗に終わった。チーム内では、カヴェンディッシュが最速であることを示していたからだ。

カヴェンディッシュとのスプリント勝負を制したアンドレ・グライペル(ドイツ、オメガファーマ・ロット)カヴェンディッシュとのスプリント勝負を制したアンドレ・グライペル(ドイツ、オメガファーマ・ロット) photo:Cor Vos2008年にカヴェンディッシュはツール・ド・フランスでステージ5勝を上げ、現在では通算17勝に及ぶ。「カヴェンディッシュは、彼が2008年にグランツールで初勝利を上げて以来、ずっとナンバーワンのスプリンターであり続けている」とHTCのコーチであるエリック・ツァベルは語った。

「当然のことだが、カヴェンディッシュが勝つのはより難しくなっている。彼がツールでステージ17勝を上げているからだ。彼が最も得意とする集団スプリントでは、彼はタイトル防衛に立つ側になるんだ。

すべてのスプリンターたちがカヴェンディッシュに挑んでくるだろう。とくにアンドレ(グライペル)は。彼らは何年間もチームメイトだったんだ。二人のスプリンター、そう二人の一流スプリンターのあいだには、こういう勝負があるんだよ」

「カヴは今日(第10ステージ)は勝ちたがっていた。彼はアンドレには、そう簡単には負けはしない」 ツァベルは、昨日のカルモーまでの第10ステージで、HTCがカヴェンディッシュに全力でアシストしたと語った。チームメイトのトニー・マルティンは、グライペルのチームメイトであるフィリップ・ジルベールをゴール前10kmまで追走した。

ツール初ステージ優勝を飾ったアンドレ・グライペル(ドイツ、オメガファーマ・ロット)ツール初ステージ優勝を飾ったアンドレ・グライペル(ドイツ、オメガファーマ・ロット) photo:Cor Vosジルベールの目的はカヴェンディッシュに防戦体制に追いやり、あわよくばマイヨヴェール用のポイントをこっそりと潰しておくことにある。

カヴェンディッシュは第10ステージで44ポイントを獲得した。その内訳は9ポイントが中間スプリント7位、35ポイントがグライペルに次いでステージ2位となった結果だ。ジルベールはカヴェンディッシュに29ポイント差をつけてリードしており、パリでマイヨヴェールを獲得したいと述べている。

「あとわずかなんだ」とツァベルはカヴェンディッシュのことを語る。「大きなチャンスだった。ステージ優勝してればね。われわれは(マイヨヴェールに)手が届くところにいるんだ」

HTCにとって、今日はこの数日間のチャンスで、最後の日になるだろう。今日のラヴォールまでの167.5kmの区間はスプリンター向けのステージだ。二人の元チームメイトの競演による、もうひとつのショーも見どころとなるだろう。


text: Gregor Brown in Blaye-les-Mines
translation: Seiya.YAMASAKI

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