「これはワウテル(ウェイラント)に捧げる勝利だ」。復活を遂げたタイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン・サーヴェロ)が、5月に亡くなった親友に捧げるWサインでゴールした。アメリカ独立記念日に、アメリカチームがステージ2連勝。チームメイトの世界チャンピオンは総合首位を守った。

トル・フースホフト(ノルウェー、ガーミン・サーヴェロ)のサーヴェロ・S5トル・フースホフト(ノルウェー、ガーミン・サーヴェロ)のサーヴェロ・S5 photo:Makoto Ayano大西洋に近い平野部を、北に向かって198km走る第3ステージ。レースはヴァンデ県があるペイ・ド・ラ・ロワール地方を旅立ち、ブルターニュ地方に向かう。

2011年7月4日、ツール・ド・フランス第3ステージ。午後0時44分、気温が30度を超す暑さの中、5時間弱の闘いが始まった。

逃げグループを形成するニキ・テルプストラ(オランダ、クイックステップ)ら逃げグループを形成するニキ・テルプストラ(オランダ、クイックステップ)ら photo:Makoto Ayanoレース前半の主役は、逃げグループを形成した5名。ミカエル・ドラージュ(フランス、FDJ)、ホセイバン・グティエレス(スペイン、モビスター)、マキシム・ブエ(フランス、アージェードゥーゼル)、ニキ・テルプストラ(オランダ、クイックステップ)、ルーベン・ペレス(スペイン、エウスカルテル)。

メイン集団はマイヨジョーヌを擁するガーミン・サーヴェロが余裕をもってコントロールし、先頭5名に8分のリードを許す。しかしレースのちょうど中盤104km地点にあるスプリントポイントが近づくと、にわかにメイン集団が活気づいた。

お手製のカードを掲げて選手たちを見送るお手製のカードを掲げて選手たちを見送る photo:Makoto Ayano逃げグループから遅れること5分。今年からマイヨヴェール争いの重要なファクターを担うスプリントポイントにメイン集団が差し掛かる。まるでゴールスプリントさながらの位置取り合戦の末に、マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、HTC・ハイロード)が先頭通過(6位通過)する。

しかし位置取り争いの際にぶつかり合ったカヴェンディッシュとフースホフトに対し、レース後に降格処分が与えられた。脚を使ってまで獲得した10ポイントを、カヴェンディッシュは失ってしまう。マイヨヴェール争いに興味が無いと語るフースホフトの4ポイントも取り消された。

長時間に渡ってメイン集団を牽いたラムナス・ナヴァルダスカス(リトアニア、ガーミン・サーヴェロ)長時間に渡ってメイン集団を牽いたラムナス・ナヴァルダスカス(リトアニア、ガーミン・サーヴェロ) photo:Cor Vos1度目のスプリントを終えたメイン集団は、そのままの勢いで逃げグループとのタイム差を詰めて行く。この日唯一のカテゴリー山岳である4級山岳サンナゼール橋はドラージュが先頭通過。

このロワール川に架かる巨大なサンナゼール橋がこの日の最高地点(標高66m)。海からまともに吹き付ける風が集団を破壊する。イヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)やベン・スウィフト(イギリス、チームスカイ)が一時的に集団から遅れるシーンも見られた。

マイヨジョーヌを着て走るトル・フースホフト(ノルウェー、ガーミン・サーヴェロ)マイヨジョーヌを着て走るトル・フースホフト(ノルウェー、ガーミン・サーヴェロ) photo:Cor Vos先頭ではグティエレスとドラージュの2人が諦めずにエスケープを続行。しかしスプリンターチームのスピードには敵わず、ラスト9km地点で大集団に飲み込まれてしまう。ここからはスプリンターチームによる主導権争いがスタート。

HTC・ハイロードは人数を揃えて集団先頭に出たが、ラスト4kmの時点で早くもトレインの後方から4両目にあたるトニ・マルティン(ドイツ)が先頭に立ってしまう(トレインはマルティン、ゴス、レンショー、カヴの順)。TTスペシャリストのマルティンの力を持ってしても集団の抑えは効かず、徐々にHTCトレインは後退した。

サンナゼール橋を通過したプロトンサンナゼール橋を通過したプロトン photo:Cor Vosラスト2kmでマルコ・マルカート(イタリア、ヴァカンソレイユ・DCM)、ラスト1kmでジェレイント・トーマス(イギリス、チームスカイ)がロングスパートを仕掛けるが、決定的なリードは奪えない。

最後はマイヨジョーヌのフースホフト自ら集団を率いて逃げを潰し、ジュリアン・ディーン(ニュージーランド)とファラーの2人を最終スプリントに送り出す。ディーンに先頭で発射されたファラーが、追いすがるロメン・フェイユ(フランス、ヴァカンソレイユ・DCM)とホセホアキン・ロハス(スペイン、モビスター)を振り切ってゴールした。

ゴール前でトレインを失い、更にラスト600mの最終コーナーで番手を下げたカヴは5位に入るのがやっと。ステージ3位に入ったロハスがマイヨヴェールを受け取った。

ゴールの際、両手でWサインを作ったファラー。「W」はウェイラントを意味するのは誰の目にも明らか。5月のジロ・デ・イタリアで落車事故死した親友のワウテル・ウェイラントに勝利を捧げた。

Wサインでゴールするタイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン・サーヴェロ)Wサインでゴールするタイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン・サーヴェロ) photo:Makoto Ayano

ステージでガッツポーズを見せるタイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン・サーヴェロ)ステージでガッツポーズを見せるタイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン・サーヴェロ) photo:Cor Vos「彼の死は、心に大きな穴を開けた。あれから数ヶ月、僕は苦しい時期を経験してきた。でもこのツールで悪い走りをするわけにはいかない。彼を語り継ぐためにも、何かを達成したかったんだ」。失意のどん底から這い上がったファラーの顔には充実した笑みが溢れる。

前日にチームタイムトライアルを制したアメリカのガーミン・サーヴェロが、母国の独立記念日に連勝。これまでツールで勝ち星のなかったチームが波に乗る。

マイヨジョーヌに袖を通すトル・フースホフト(ノルウェー、ガーミン・サーヴェロ)胸元には特別に虹色ラインが入っているマイヨジョーヌに袖を通すトル・フースホフト(ノルウェー、ガーミン・サーヴェロ)胸元には特別に虹色ラインが入っている photo:Makoto Ayano「今日はミラーがまず先頭に立ち、トールとジュリアン(ディーン)、そして自分がその後に続いた。これは2009年から繰り返しているパターン。何年にも渡ってこの勝利を追い求めてきたんだ。ツールの勝利は子どもの頃からの夢だった。表彰台に立つのは夢のようだ」。

ファラーはこれが3度目のツール出場。過去にステージ2位と3位を3回ずつ経験している。すでにジロ・デ・イタリアでステージ2勝、ブエルタ・ア・エスパーニャでステージ3勝を飾っており、アメリカ人として、チームメイトのデーヴィット・ザブリスキー(アメリカ)に続く史上2例目となる全グランツールステージ優勝を達成した。

また、ガーミン・サーヴェロはフースホフトのマイヨジョーヌを守った。フースホフトは、世界チャンピオンにのみ許された虹色ライン入りのマイヨジョーヌを受け取る。しかし翌日の第4ステージはフースホフトにとって厳しい闘いが予想される。

第4ステージは、3級山岳ミュール・ド・ブルターニュにゴール。「ブルターニュのラルプ・デュエズ」と呼ばれる平均勾配6.9%・登坂距離2kmの「ミュール(壁)」で、パンチ力のあるオールラウンダーやパンチャーがバトルを繰り広げるだろう。フースホフトは高い登坂力を誇るスプリンターだが、カデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム)との総合タイム差は僅かに1秒。最後に、フースホフトは翌日の展望をこう語った。「マイヨジョーヌのキープは難しいかもしれないが、ベストは尽くす。動きに反応して食らいつき、タイムロスを抑えたい。ミュール・ド・ブルターニュで注意すべき相手は、フィリップ・ジルベールだ」。

選手コメントはレース公式サイトより。

ツール・ド・フランス2011第3ステージ結果
1位 タイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン・サーヴェロ)      4h40'21"
2位 ロメン・フェイユ(フランス、ヴァカンソレイユ・DCM)
3位 ホセホアキン・ロハス(スペイン、モビスター)
4位 セバスティアン・イノー(フランス、アージェードゥーゼル)
5位 マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、HTC・ハイロード)
6位 トル・フースホフト(ノルウェー、ガーミン・サーヴェロ)
7位 ジュリアン・ディーン(ニュージーランド、ガーミン・サーヴェロ)
8位 ボルト・ボジッチ(スロベニア、ヴァカンソレイユ・DCM)
9位 アンドレ・グライペル(ドイツ、オメガファーマ・ロット)
10位 ジミー・アングルヴァン(フランス、ソール・ソジャサン)

個人総合成績 マイヨ・ジョーヌ
1位 トル・フースホフト(ノルウェー、ガーミン・サーヴェロ)      9h46'46"
2位 デーヴィット・ミラー(イギリス、ガーミン・サーヴェロ)
3位 カデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシング)         +01"
4位 ジェレイント・トーマス(イギリス、チームスカイ)           +04"
5位 リーナス・ゲルデマン(ドイツ、レオパード・トレック)
6位 エドヴァルド・ボアッソン(ノルウェー、チームスカイ)
7位 フランク・シュレク(ルクセンブルク、レオパード・トレック)
8位 アンディ・シュレク(ルクセンブルク、レオパード・トレック)
9位 ヤコブ・フグルサング(デンマーク、レオパード・トレック)
10位 ブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ)

14位 トニ・マルティン(ドイツ、HTC・ハイロード)             +05"
19位 アンドレアス・クレーデン(ドイツ、レディオシャック)         +10"
22位 リーヴァイ・ライプハイマー(アメリカ、レディオシャック)
24位 ロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク)             +12"
27位 アレクサンドル・ヴィノクロフ(カザフスタン、アスタナ)        +32"
30位 ユルゲン・ファンデンブロック(ベルギー、オメガファーマ・ロット)   +39"
46位 イヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)       +57"
50位 ダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ・ISD)           +1'04"
69位 アルベルト・コンタドール(スペイン、サクソバンク・サンガード)   +1'42"
86位 ロマン・クロイツィゲル(チェコ、アスタナ)             +2'21"
99位 サムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル)          +2'36"

山岳賞 マイヨ・ブラン・ア・ポワ・ルージュ
1位 フィリップ・ジルベール(ベルギー、オメガファーマ・ロット)      1pt
2位 ミカエル・ドラージュ(フランス、FDJ)                1pt

ポイント賞 マイヨ・ヴェール
1位 ホセホアキン・ロハス(スペイン、モビスター)             65pts
2位 タイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン・サーヴェロ)         58pts
3位 フィリップ・ジルベール(ベルギー、オメガファーマ・ロット)      45pts

新人賞 マイヨ・ブラン
1位 ジェレイント・トーマス(イギリス、チームスカイ)         9h46'50"
2位 エドヴァルド・ボアッソン(ノルウェー、チームスカイ)     
3位 ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、HTC・ハイロード)     +01"

チーム総合成績
1位 ガーミン・サーヴェロ                       28h30'42"
2位 BMCレーシングチーム                         +01"
3位 レオパード・トレック                         +04"

敢闘賞
ミカエル・ドラージュ(フランス、FDJ)

text:Kei Tsuji
photo:Makoto Ayano, Cor Vos
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