5月9日に開幕する第92回ジロ・デ・イタリアのコース分析第2弾。60kmを超える長距離個人タイムトライアルや、ブロックハウスとヴェスヴィオの頂上ゴール、そしてローマの最終個人タイムトライアルに至る後半戦10ステージを紹介します!

第12ステージ 5月21日(木)セストリレヴァンテ〜リオマッジョーレ 個人TT 60.6km
第12ステージ・コースプロフィール第12ステージ・コースプロフィール photo:RCS Sportバカンス時期に観光客が押し寄せる風光明媚なチンクエ・テッレを舞台に、近年グランツールでは珍しい60kmオーバーの長距離個人タイムトライアルが行なわれる。リグリア海沿いの急峻な地形を縫うように走るコースは無数のコーナーの繰り返し。しかも標高600m級の山岳ポイントを2つ越えなければならない。

コースの3分の1は山岳の上りになる計算で、平坦独走力を備えたTTスペシャリストは苦戦を強いられるだろう。山岳を得意とするオールラウンダーでさえも、テクニカルな下りでタイムを失えば総合成績で後退しかねない。ここで総合成績は大きく変動することになるだろう。マリアローザ争いにおいて極めて重要な闘いになる。
第13ステージ 5月22日(金)リード・ディ・カマイオーレ〜フィレンツェ 176km
第13ステージ・コースプロフィール第13ステージ・コースプロフィール photo:RCS Sportイタリア半島西岸を離れ、トスカーナ州のフィレンツェにゴールする第13ステージは、再びピュアスプリンターにスポットライトが当てられる。斜塔で有名なピサの街近くを通る際に標高212mの山岳ポイントが登場するが、重量級スプリンターでも難なく越えられるはずだ。

終盤の40kmは完全にフラットであり、中世の街フィレンツェでスプリンターチームが躍動する。翌日から再び山岳シリーズに移行するため、マリアチクラミーノを狙う選手たちは血気盛んにステージ優勝を狙ってくるだろう。
第14ステージ 5月23日(土)カンピ・ビゼンツィオ〜ボローニャ 172km
第14ステージ・コースプロフィール第14ステージ・コースプロフィール photo:RCS Sportフィレンツェ郊外のカンピ・ビゼンツィオをスタートし、半島中央部の山岳地帯を抜け、エミリア・ロマーニャ州のボローニャにゴールする第14ステージは、本格化する山岳決戦の序章だ。中盤に連続するコッリーナ峠(標高777m)、メディアーノ峠(標高898m)、トレ峠(標高747m)は登坂距離が14kmに達するものばかりで、ボローニャに辿り着く頃には集団は縮小していることだろう。

しかもゴール地点はボローニャの街中ではなく、郊外にそびえるサンルーカの丘の頂上。登坂距離は2.1kmで、標高差は200mほどしかないが、平均勾配9.7%、最大勾配16%という急坂であり、170km以上を走ってきた選手の脚を破壊する。勢いを失えば大きくタイムをロスすることも考えられる。
第15ステージ 5月24日(日)フォルリ〜ファエンツァ 161km
第15ステージ・コースプロフィール第15ステージ・コースプロフィール photo:RCS Sport山岳ポイントが4つ連なる第15ステージは、幾分破壊力は弱いものの、総合狙いの選手にとっては油断大敵の山岳コース。最後のモンテ・トレッビオ(標高585m)を越えるとゴールまで25kmしかない。

スプリンターにとっては苦しいステージであり、総合に関する動きが活発化しない限り、逃げが決まる可能性も高い。この頃には山岳賞争いも本格化していると思われ、栄光のマリアヴェルデをかけて、序盤からクライマーが我先に飛び出すだろう。
第16ステージ 5月25日(月)ペルゴラ〜モンテ・ペトラーノ 237km
第16ステージ・コースプロフィール第16ステージ・コースプロフィール photo:RCS Sport2回目の休息日を前にして、主催者RCS Sportは大会4つ目の頂上ゴールを用意した。237kmのロングコースの後半には標高1400m級の山岳ポイントが3つ連続。平均勾配が8%に達するモンテ・ネローネとモンテ・カトリアを越え、最後はモンテ・ペトラーノを駆け上がる。

平均勾配7.9%の上りが10kmに渡って続くこの頂上ゴールで、今一度総合争いはシャッフルがかけられる。コース沿道には、地元が近いミケーレ・スカルポーニ(イタリア、ディキジョヴァンニ)のファンが大挙して駆けつけるだろう。2回目の休息日を終えると、怒濤の最終週が始まる。
休息日 5月26日(火)
第17ステージ 5月27日(水)キエーティ〜ブロックハウス 83km
第17ステージ・コースプロフィール第17ステージ・コースプロフィール photo:RCS Sport今年のチーマコッピ(大会最高地点)は、アルプスやドロミテではなく、第17ステージのゴール地点として登場するブロックハウスだ。走行距離は最長ステージの3分の1に満たない83kmで、レース後半はひたすらゴール地点に向かって上りが続く。

距離23.5kmのブロックハウスの上り中腹には、2006年ジロでイヴァン・バッソ(イタリア、当時チームCSC)がマリアローザを獲得したランチャーノ峠が佇む。今年はこの標高1306mの峠を通過し、さらに10km以上上って標高2064mにゴール。海近くから上り始めるため、高低差は1630mに達する。平均勾配は6.9%で、サバイバル的な激しいマリアローザ争いは必至だ。
第18ステージ 5月28日(木)スルモーナ〜ベネヴェント 182km
第18ステージ・コースプロフィール第18ステージ・コースプロフィール photo:RCS Sport南イタリアに踏み込む第18ステージは、前後を重要な山岳ステージに挟まれたつなぎステージ。序盤に登場するチンクエ・ミッリアの山岳ポイント通過後は、細かいアップダウンを繰り返しながらゴール地点ベネヴェントを目指す。

ジロもレース終盤に入り、すでに総合で大きく遅れた選手はステージ優勝目がけて飛び出すだろう。総合に関係の無い大逃げが決まる可能性もあるが、平坦ステージでの活躍を信じて山岳を乗り越えてきたスプリンターたちも鼻息は荒いハズだ。
第19ステージ 5月29日(金)アヴィリーノ〜ヴェスヴィオ 164km
第19ステージ・コースプロフィール第19ステージ・コースプロフィール photo:RCS Sportナポリ南方に位置するソレント半島をグルリと周り、ポンペイの街を壊滅させたことで有名なヴェスヴィオ山にゴールする。中盤に通過するアマルフィ海岸は美しい海岸線が続くことで有名で、7月公開予定の映画「アマルフィ 女神の報酬」の舞台でもある。

今大会最後の頂上ゴールであるヴェスヴィオ山は、登坂距離13kmで平均勾配7.4%。後半にかけて上りは厳しさを増し、ラスト2kmを切ってから9〜10%の上りが続く。メチャクチャな難易度ではないが、すでにここまで3100km以上走っている選手にとっては過酷そのもの。マリアローザ争いにおける最後の山岳決戦が繰り広げられる。
第20ステージ 5月30日(土)ナポリ〜アナーニ 203km
第20ステージ・コースプロフィール第20ステージ・コースプロフィール photo:RCS Sport概ね平坦な203kmで行なわれる第20ステージだが、ピュアスプリンター向きのステージとは言い難い。終盤はカテゴリー山岳アナーニ(標高401m)を含む18kmの周回コースで、最後は高低差180mを駆け上がってゴールとなる。

上りの短さから総合に変動が起こらないまでも、ダニーロ・ディルーカ(イタリア、LPRブレークス)やダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ)といった上りスプリント力に長けた選手の活躍に期待が集まる。ディルーカは大地震の被災者に捧げる会心の勝利を飾れるか。総合狙いの選手は無理をせず、翌日の最終個人タイムトライアルに備える。
第21ステージ 5月31日(日)ローマ 個人TT 15.5km
第21ステージ・コースマップ第21ステージ・コースマップ photo:RCS Sport100年大会の目玉の一つが、この最終個人タイムトライアル。勢いあるレース主催者はローマのど真ん中に15.5kmの平坦コースを敷いた。世界に名だたる観光地を巡るスペシャルコースであり、古代ローマ時代の遺跡フォロロマーノとヴィットーリオ・エマヌエーレ2世記念堂の横をスタートし、入り組んだ街並を縫ってポポロ広場を通過。カトリックの総本山ヴァチカン市国を経て、目抜き通りのコルソ通りを駆け抜ける。最後はコロッセオを回り込んでゴールだ。

前半に高低差40mほどの上りはあるものの、基本的にはフラット。コースの一部は路面が荒れており、しかもコーナーが連続して登場する。TTスペシャリストによるステージ優勝と、逆転の可能性を残した総合優勝争いに注目だ。古代ローマ時代、剣闘士がバトルを演じた円形闘技場コロッセオの前で、ガッツポーズを見せるのは果たして誰だろうか。