クリテリウム・ドゥ・ドーフィネと並ぶ、もう一つの「ツール前哨戦」が、永世中立国スイスを舞台に開催される。同国最大のロードレース、第75回ツール・ド・スイス(UCIワールドツアー)が6月11日に開幕。シュレク兄弟(ルクセンブルク、レオパード・トレック)の連覇に期待がかかる。

9日間に詰め込まれた3つの頂上ゴールと2つの個人TT

ツール・ド・スイス2011コース全体図ツール・ド・スイス2011コース全体図 image:www.tourdesuisse.ch同時期開催のクリテリウム・ドゥ・ドーフィネと並んで、ツール・ド・フランス前哨戦として知られるツール・ド・スイス。7月のツールを狙うオールラウンダーやスプリンターたちが挙って出場する。

その歴史は古く、第1回大会が開催されたのは今から78年前の1933年。ドーフィネよりも14年歴史が長く、今年で開催75回目を迎える。全9ステージで、歴史だけではなく開催期間もドーフィネよりも長い。

第2ステージ・コースプロフィール第2ステージ・コースプロフィール image:www.tourdesuisse.ch山がちなスイスを走り回るコースはアップダウンの連続。同じスイスで4月に開催されたツール・ド・ロマンディと比較すると、コース取りがよりダイナミック。今年はイタリア語圏のルガーノでの7.3km個人タイムトライアルで幕開ける。残る8ステージの大半はドイツ語圏を舞台に行なわれる。

第3ステージ・コースプロフィール第3ステージ・コースプロフィール image:www.tourdesuisse.chレースは2日目にして早くも大会最高地点を通過する。スタート直後に始まる超級山岳ヌフェネン峠は標高2478mの難関峠。除雪によって6月に開通したばかりだ。その後は比較的フラットなコースが続き、最後は1級山岳アミノナを経て、スキーリゾート地のクラン・モンタナにゴールする。ちなみにスチュアート・オグレディ(オーストラリア、レオパード・トレック)は昨年クラン・モンタナでのスキーキャンプ中に肋骨を折っている。

第7ステージ・コースプロフィール第7ステージ・コースプロフィール image:www.tourdesuisse.chスイスアルプスの洗礼は翌日も続く。第3ステージは1級山岳グリンゼル峠と超級山岳グロッセシャイデックをクリア。距離が108kmと短いため、ハイスピードで濃い闘いになるはず。最後は標高1034mのグリンデルヴァルトにゴールする。

今大会でスプリンターに用意されたステージは3つ。第5、第6、第8ステージだ。このツール・ド・スイスにはドーフィネよりも豪華なスプリンターが集結しており、ツールのマイヨヴェールを占う上で重要な闘いになるだろう。有力スプリンターについては後述する。

第6ステージは隣国リヒテンシュタインの超級山岳トリーゼンベルクにゴール。トリーゼンベルクは登坂距離9kmで標高差800m。厳密に言えば、ラスト1.5km地点で超級山岳ゲートを越え、更にそこから標高差180mを駆け上がる。この急勾配の登りで総合タイム差は開くだろう。

そして今大会最難関の「クイーンステージ」と目されているのが、3つのカテゴリー山岳を越える第7ステージ。標高2383mの超級山岳フリュエラ峠と2級山岳ノルベルツホーフを越え、最後はオーストリアの1級山岳セルファウスにゴールする。全長は今大会最長の223km。クライマー系選手にとってはこの第7ステージが攻撃を仕掛ける最後のチャンスだ。

平坦な第8ステージを挟み、イエロージャージを懸けたバトルは最終個人タイムトライアルで決着する。コースは起伏のある32.1km。ファビアン・カンチェラーラ(スイス、レオパード・トレック)ら、TTスペシャリストたちの走りにも注目だ。

シュレク兄弟は連覇に向け盤石の体制?豪華スプリンターの競演に注目

コースを試走するアンディとフランク・シュレク(ルクセンブルク、レオパード・トレック)コースを試走するアンディとフランク・シュレク(ルクセンブルク、レオパード・トレック) photo:Cor Vos昨年、最終個人TTで逆転総合優勝を飾ったフランク・シュレク(ルクセンブルク、レオパード・トレック)は、ディフェンディングチャンピオンとしてスイスに戻ってくる。ドーフィネではなく、このスイスにレオパード・トレックは1軍を送り込む。連覇に向けての体制は整っている。

何と言っても弟アンディ・シュレク(ルクセンブルク)の存在が大きい。ツール狙いのアンディは、兄フランクのサポートに回ることが予想される。

アンドレアス・クレーデン(ドイツ、レディオシャック)アンドレアス・クレーデン(ドイツ、レディオシャック) photo:Cor Vos初日からイエロージャージに袖を通す可能性が高いカンチェラーラや、直前のツール・ド・ルクセンブルクで総合優勝したリーナス・ゲルデマン(ドイツ)、ヤコブ・フグルサング(デンマーク)、イェンス・フォイクト(ドイツ)らがチームには揃っている。

レオパード・トレック最大の対抗馬はレディオシャックだろう。ツアー・オブ・カリフォルニアで総合優勝したクリストファー・ホーナー(アメリカ)は残念ながら欠場するが、アンドレアス・クレーデン(ドイツ)とリーヴァイ・ライプハイマー(アメリカ)の二枚看板でシュレク兄弟に挑む。

ジロ・デ・イタリアでステージ2勝を飾ったマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、HTC・ハイロード)ジロ・デ・イタリアでステージ2勝を飾ったマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、HTC・ハイロード) photo:Riccardo Scanferlaイタリアからはダニーロ・ディルーカ(カチューシャ)やマッテーオ・カラーラ(ヴァカンソレイユ・DCM)、ダミアーノ・クネゴ(ランプレ・ISD)が出場。他にも若手オールラウンダーとして頭角を現しつつあるティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、HTC・ハイロード)やライダー・ヘジダル(カナダ、ガーミン・サーヴェロ)らも総合上位に絡んでくるはずだ。

このツール・ド・スイスにはグランツール並の豪華なスプリンターが揃う。中でも今年のジロ・デ・イタリアでステージ2勝したマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、HTC・ハイロード)は第5、第6、第8ステージの優勝候補筆頭だ。

ペーター・サガン(スロバキア、リクイガス・キャノンデール)ペーター・サガン(スロバキア、リクイガス・キャノンデール) photo:Cor Vosカヴェンディッシュを支えるのは、ミラノ〜サンレモ覇者のマシュー・ゴス(オーストラリア)。カヴ=ゴスの黄金コンビがスイスの平坦ステージを支配する可能性も。

ガーミン・サーヴェロは世界チャンピオンのトル・フースホフト(ノルウェー)とハインリッヒ・ハウッスラー(オーストラリア)のコンビを揃える。他にもアンドレ・グライペル(ドイツ、オメガファーマ・ロット)やオスカル・フレイレ(スペイン、ラボバンク)、トム・ボーネン(ベルギー、クイックステップ)、ベン・スウィフト(イギリス、チームスカイ)、ロビー・マキュアン(オーストラリア、レディオシャック)らがHTCトレインに勝負を挑む。

純粋なスプリンターではないが、ツアー・オブ・カリフォルニアでステージ優勝を飾り、ポイント賞に輝いたペーター・サガン(スロバキア、リクイガス・キャノンデール)にも注目。同じスロバキア出身で、2010年から2年連続シクロクロスの世界チャンピオンに輝いているゼネク・スティバルは、クイックステップジャージでUCIワールドツアーレースデビューを飾る。

text:Kei Tsuji

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