ツール・ド・フランスを初めて走った日本人、今中大介さんが立ち上げたインターマックスは、高品質なイタリア製バイクで人気を集めてきた。今回紹介するセルビーノは、特にレーサーに支持されてきたレーシングバイク。アルミを売りにしてきた本モデルがついにフルカーボン化を果たした。

インターマックス セルビーノインターマックス セルビーノ (c)Makoto.AYANO/cyclowired.jp

とにかく硬く、踏んだ分だけ進むと実走派のレースマンたちに熱い支持を受けてきたインターマックス・セルビーノ。フルアルミからアルミ+カーボンバックへのマイナーチェンジを経てきたこのバイクの設計思想は、レーシングバイクであること。実際、実業団レベルのレースやホビーレースの会場にはセルビーノがズラリと並ぶこともあり、一時代を築いた感のあるバイクだ。

そんなアルミバイクの代表格でもあったセルビーノが2011モデルから遂にフルカーボン化した。鮮やかなイエローカラーがモデルポリシーでもあったが、洗練された優美さを合わせ持つグラフィックカラーが採用され、フルモデルチェンジを果たした。

ヘッドはトップが1-1/8、ボトムが1-1/2のオーバーサイズを採用。レーシングバイクらしいチョイスだヘッドはトップが1-1/8、ボトムが1-1/2のオーバーサイズを採用。レーシングバイクらしいチョイスだ 斜め下から覗くとはっきりと見えるInter Maxのロゴ。斬新なデザインワークだ斜め下から覗くとはっきりと見えるInter Maxのロゴ。斬新なデザインワークだ イタリアンバイクらしい艶かしい造形のヘッドまわりイタリアンバイクらしい艶かしい造形のヘッドまわり

しかしセルビーノの名を継ぐ以上、ピュアレーシングバイクであることが必須命題。カーボン化によってさらなるレーシング性能を手に入れた。

オートクレーブ製法のカーボンにより欲しい性能を手に入れる

アルミ時代の剛性感をカーボンに置き換えるには、高品質のカーボンが必要になる。そこでセルビーノが採用したのは、オートクレーブ製法のカーボンだ。この製法は、加熱圧力釜で余分な樹脂と気泡を排除しながらカーボンを硬化させるもので、純度の高いカーボンの成形を可能にする。

北欧のインテリアを思わせるような洗練されたグラフィック処理も魅力北欧のインテリアを思わせるような洗練されたグラフィック処理も魅力 オートクレーブ製法であることを示すロゴがトップチューブにあしらわれるオートクレーブ製法であることを示すロゴがトップチューブにあしらわれる


カーボンを積層する際に入り込むエアホールや、フレームの重量に大いに影響する樹脂を真空状態で搾り出すことにより、加圧加熱成形されるカーボンフレームとして最高の品質を実現。そこから生み出される剛性が、低速からの加速や高速からのさらなる加速、そして高速巡航性能に寄与。名実共に進化を遂げた。

ダウンチューブはヘッド側にかけてボリュームを増しており、剛性を確保しているダウンチューブはヘッド側にかけてボリュームを増しており、剛性を確保している ダウンチューブはBB側にかけてもテーパーで太さを増している。「新世代ハイモデュラスカーボン」の記載もダウンチューブはBB側にかけてもテーパーで太さを増している。「新世代ハイモデュラスカーボン」の記載も

ヘッドには1-1/2インチ径を採用し、インターマックスがブランド創業から追求しているコーナーリング性能の高さに磨きをかけた。安定感と取り回しのよさが両立したコーナーリング性能は、ナーバスなレースシーンにおいてストレスを軽減してくれる。もちろん、コーナーを抜けてからの立ち上がりの速さはフレームの剛性とスケルトン設計が実現している。

シフトワイヤーはBB部の中を通る。BBはバイクの剛性を決める重要な部分なだけに、しっかりとボリュームが確保されているシフトワイヤーはBB部の中を通る。BBはバイクの剛性を決める重要な部分なだけに、しっかりとボリュームが確保されている チェーンステーにはつぶしが入り、剛性を犠牲にしない範囲で振動吸収性を高めているチェーンステーにはつぶしが入り、剛性を犠牲にしない範囲で振動吸収性を高めている


走行性能については、セルビーノの名前から想像される通りの正統進化を遂げたこのフルカーボンモデルだが、グラフィックは大幅に変更されている。
洗練された感のあるブランドロゴ半面表示や、シックなモデルネーム、そして品のあるカラーリング。レースだけでなくツーリング的な走りや街中ライドにさえしっくりとフィットする、「大人なバイク」へと印象の変貌を遂げた。

シートステーはストレートで、踏んだ時の力を逃がさない剛性重視シートステーはストレートで、踏んだ時の力を逃がさない剛性重視 ボトルケージまで入り込んだモデル名は、Oの字をうまくボルトに合わせているボトルケージまで入り込んだモデル名は、Oの字をうまくボルトに合わせている シートステーの内側は塗り分けられる。目立たないがバイクにアクセントを与えるデザインだシートステーの内側は塗り分けられる。目立たないがバイクにアクセントを与えるデザインだ

カラーはホワイト×ブラック、ブルー×ホワイト、ブラック×グレーの全3色。レーシングバイクとあって完成車のパーツアッセンブルはアルテグラ(416,800円)、デュラエース(615,000円)のみとなっている。フレーム・セット単体での価格は268,000円。

レーシングバイクの代名詞として名の挙がる定番バイクの2ndジェネレーション、果たして2人のインプレッションライダーはどのような評価を下すのか、ご覧頂こう。




ーインプレッション

「純レースというコンセプトが一貫しているバイク作り」
鈴木祐一(Rise Ride)


今までのセルビーノの位置づけとして、若くてイキのいいレース志向の方のために、価格を抑えて作られていたと思います。
今日この新しいモデルに乗ってみて、方向性は変わっていないなと感じました。硬さがかなり前面に出ていて、加速時のダイレクト感は素晴らしいものがあります。コーナーリングもシャキッと決まる感じがあります。路面の凹凸もライダーに的確に伝えてくれますね。

ただ一方で、その硬さ故に振動吸収性にはやや難儀なところが生じています。ペダリングパワーがある方なら、安定したトルクを生み出すことができると思いますが、脚が無いと進まない、ごまかしのきかないバイクです。

「純レースというコンセプトが一貫しているバイク作り」 鈴木祐一(Rise Ride)「純レースというコンセプトが一貫しているバイク作り」 鈴木祐一(Rise Ride)

スケルトンはヘッドチューブが短い、いわゆる「ロードレースマシン」として作られているので、乗る人にはハンドル位置を低くして、ライダーがライディングポジションをレーススペックに合わせていく必要があると思います。
コンフォート寄りのバイクが流行している中で、これだけコンセプトが一貫しているバイク作りをしているのはすごく評価できる部分だと思います。今中さんのレーサーとしての体験が、このバイクをセルビーノたらしめているのでしょう。

素材が変わっても同じコンセプトを貫いているので、むかしアルミのモデルに乗っていた人でもすんなり乗ることができると思います。BBもノーマルサイズを採用していますが、これはパーツの供給量の多さを見越してのものかもしれません。
「明日レース」と言う時にトラブルがあったら、すぐに代替パーツが手に入ることは、レースバイクでは案外大事なことです。その意味でもレーシングバイクなのだと思いました、

「ダッシュ時に食いつく感覚はレースバイクならでは」
戸津井俊介(OVER-DOバイカーズサポート)


ズバリ、「レーシングバイク」ですね。見た目にもキレイというか、よくできているな、という印象です。乗って踏んでみると、とても剛性が高いことに驚かされました。リアバックの剛性が高いので、ダンシング時にバイクを振らなくてもスッと進んでいく感覚がある。

フロント回りは、少し柔らかさを感じることもありました。ですからレースデビューを狙う人にとっても走りやすさを感じるのではないでしょうか。

価格はフレームセットで268,000円。インターマックスのバイクはイタリア製ということで、眺めているとイタリアンバイクらしさを感じることができる。昔のイタリア製バイクはこんなだったなぁ、と思い返したり。そういう意味でも楽しめるバイクです。

「ダッシュ時に食いつく感覚はレースバイクならでは」 戸津井俊介(OVER-DOバイカーズサポート)「ダッシュ時に食いつく感覚はレースバイクならでは」 戸津井俊介(OVER-DOバイカーズサポート)

バイクとしては脚力がある人のためのものですが、それを満たしているならば、ヒルクライムなどにも威力を発揮するバイクでしょうね。
コーナーリングは落ち着いていて、ダルイ感じはない。かといってクイックでもないので、スタートダッシュの多いクリテリウムよりはロードレース向けのバイクです。スピードを上げていって、そこからダッシュした時に食いついてくる感覚はレースバイクならではです。
その分タテ方向の突き上げは少しカドがあるので、このバイクにあった乗り方を心得るのが大切ですね。

デザインは新しいですね。しっとりと落ちついている雰囲気です。自分が乗っている時の、自分から見えるバイクのデザインにも僕はこだわりがあるんですが、それもいい。オートクレーブのカーボンは、カーボンらしい表情をもっていて、欲しくなる一台です。




インターマックス セルビーノインターマックス セルビーノ (c)Makoto.AYANO/cyclowired.jp

インターマックス セルビーノ

カラー:ホワイト×ブラック、ブルー×ホワイト、ブラック×グレー
チューブ:スーパーハイモジュラスカーボン
サイズ: 460、480、500、520、540 (C-T)
フレーム重量:940g
カーボンフォーク:トップ: 1-1/8 ボトム:1-1/2Integral OverSize410g、FSA・HP付き
カーボンコンポジットオートクレーブ 軽量カーボンフォーク
価格:フレームセット 268,000円(税込)
   DURA-ACE 完成車 615,000円(税込)
   ULTEGRA 完成車 416,800円(税込)





インプレライダーのプロフィール

戸津井俊介(OVER-DOバイカーズサポート)戸津井俊介(OVER-DOバイカーズサポート) 戸津井俊介(OVER-DOバイカーズサポート)

1990年代から2000年代にかけて、日本を代表するマウンテンバイクライダーとして世界を舞台に活躍した経歴を持つ。1999年アジア大陸マウンテンバイク選手権チャンピオン。MTBレースと並行してロードでも活躍しており、2002年の3DAY CYCLE ROAD熊野BR-2 第3ステージ優勝など、数多くの優勝・入賞経験を持つ。現在はOVER-DOバイカーズサポート代表。ショップ経営のかたわら、お客さんとのトレーニングやツーリングなどで飛び回り、忙しい毎日を送っている。09年からは「キャノンデール・ジャパンMTBチーム」のメカニカルディレクターも務める。
最近埼玉県所沢市北秋津に2店舗目となるOVER DO所沢店を開店した(日常勤務も所沢店)。
OVER-DOバイカーズサポート


鈴木祐一鈴木祐一 鈴木 祐一(Rise Ride)

サイクルショップ・ライズライド代表。バイシクルトライアル、シクロクロス、MTB-XCの3つで世界選手権日本代表となった経歴を持つ。元ブリヂストン MTBクロスカントリーチーム選手としても活躍した。2007年春、神奈川県橋本市にショップをオープン。クラブ員ともにバイクライドを楽しみながらショップを経営中。各種レースにも参戦中。セルフディスカバリー王滝100Km覇者。
サイクルショップ・ライズライド


ウェア協力:SUGOi

text:Yufta.OMATA
photo:Makoto.AYANO

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