アルベルト・コンタドール(スペイン、サクソバンク・サンガード)の圧勝に終わったジロ・デ・イタリア。あまりの強さに拍子抜けした方も多いだろう。そんな中、総合狙いの新たな希望が誕生した。ステフェン・クルイスウィック(オランダ)。ラボバンク所属の23歳は、コンタドールから13分51秒遅れの総合9位でミラノにゴールした。

ジロ前半にマリアビアンカを着たステフェン・クルイスウィック(オランダ、ラボバンク)ジロ前半にマリアビアンカを着たステフェン・クルイスウィック(オランダ、ラボバンク) photo:Kei Tsuji昨年ラボバンクでプロデビューしたばかりのクルイスウィックにとって、今年のジロは自身2度目の挑戦だった。クルイスウィックは昨年ジロに初出場し、総合18位というネオプロらしからぬ成績を残している。

「昨年のジロも良い出来だった。最終週にかけて調子が上がる感覚は初めての経験で、グランツールでもっと良い走りをしてみたいと思うようになった。今回のジロでグランツールレーサーとして闘える確証を得たよ」。ミラノのドゥオーモ広場にゴールしたクルイスウィックは自信ありげな表情で語る。

TTでも安定した強さを見せるステフェン・クルイスウィック(オランダ、ラボバンク)TTでも安定した強さを見せるステフェン・クルイスウィック(オランダ、ラボバンク) photo:Kei Tsuji個人タイムトライアルでも上位に絡む実力を備えながら、本来はクライマータイプの選手。金髪でベビーフェイスの風貌から、それほど闘争心に溢れたライダーには見えないかもしれない。だがクルイスウィックの走りは実にアグレッシブだ。

最終日前日の第20ステージでのこと。クルイスウィックは新人賞争いのライバルであるロマン・クロイツィゲル(チェコ、アスタナ)からマリアビアンカを奪い取るためため、フィネストレ峠とセストリエーレの登りで再三アタック。コンタドールと肩を並べてゴールしたクルイスウィックは、総合順位を2つ上げることに成功する。しかしクロイツィゲルのマリアビアンカを奪うには至らなかった。

クルイスウィックは総合9位。多くのロードレース選手が住むスペインのジローナに移り住んだことが、昨年の成績を上回る走りに繋がったのだと分析する。

「まだプロ2年目なんだ。プロ入り前のU23レースでの勝利数は少ないけど、ステージレースではいつも好成績を残すことができていた。スペインに移り住んだことで、一気にクライミング能力が向上したと感じている。最近はロバート・ヘーシンクらと一緒に登りのトレーニングばかりしているんだ」。

トレーニングパートナーのヘーシンクと並ぶオランダ期待のグランツールレーサーとして、クルイスウィックは今後も注目の存在。今年の厳しいジロでの総合9位という成績を残すのは並大抵のことではない。

ステフェン・クルイスウィック。その名前は覚えておいて損は無いだろう。

text:Gregor Brown in Milano, Italy
translation:Kei Tsuji