ジロ・デ・イタリア第19ステージを制したパオロ・ティラロンゴ(イタリア、アスタナ) は、昨年アスタナでコンタドールの勝利に貢献したベテランアシスト。今まで山岳でクネゴやバルトリの勝利をお膳立てするキーマンとして仕えてきた影の立役者が、ついに日の目をみるときが来た。

12年のキャリア初の勝利を挙げたパオロ・ティラロンゴ(イタリア、アスタナ)

プロ12年のキャリアで初の勝利を挙げたティラロンゴプロ12年のキャリアで初の勝利を挙げたティラロンゴ (c)RCS Sports今日はスタートからトライしたいと思っていた。たった一週間の自由。だから逃げたかったんだ。ラスト6kmを切って集団が長く伸びたとき、アタックしたが一度は捕まった。そしてコンタドールが肩を叩いて「今だ、行け」と言ってくれた。だからもう一度行ったんだ。
脚の調子は良かった。もしチームキャプテン(クロイツィゲル)が一緒なら引き続けただろう。

ラスト600mで後ろから選手が来るのを見たとき、すぐにそれがアルベルト(コンタドール)だと判った。
彼が僕を絶対に抜かないということは判っていた。どころか、息を整えるのを待ってくれ、後方の状況チェックさえして、僕を抜かそうとしなかったんだ。

- シチリア島のアヴォラ出身の自転車選手としては、カルメロ・バローネ氏以来のジロの勝利ですね?
バローネはトスカーナに住んでいたから彼とはよく話したし、友達だよ。僕のアイドルはサロンニとモゼールだ。

- コンタドールが君に勝利をプレゼントしたことに対して文句を言う選手がいるのでは?
いや、そうは思わない。アルベルトはとてもリスペクトされているから。エースの犠牲になることに人生を捧げてきた多くの選手たちも同じ気持だと思う。彼らも僕の勝利を喜んでくれるはずだ。

ティラロンゴの勝利を祝福するコンタドールティラロンゴの勝利を祝福するコンタドール (c)RCS Sports- 今まで貴方が仕えたキャプテンとは?
バルトリ、カーザグランデ、クネゴ、コンタドール、そして今クロイツィゲル。今年のツール・ド・フランスではヴィノクロフだろう。

- ツール・ド・フランスでコンタドールは勝てる?
少なくとも僕の考えでは彼はとても強い。彼はスマートで戦術に長けている。すべてのステージレースに勝てると思う。

- なぜサクソバンクに行かなかったのか?
それは契約があったから。強固なチームと偉大なキャプテン。ネゴシエーションはあったけれど。来年どうなるかは、見ていて欲しい。


ティラロンゴに勝利を譲ったアルベルト・コンタドール(スペイン、サクソバンク・サンガード)

マリアローザをさらに確定的にしたコンタドールマリアローザをさらに確定的にしたコンタドール (c)RCS Sports今日は難しい日だった。特に天候がひどかった。大降りの雨で前が全く見えなくなった。そんな雨の中うまく走ることができた。
最後の局面でも脚の調子が良かったから、ライバルたちのアタックを封じたんだ。ただひとり、ティラロンゴを除いてね。
彼は昨年ツール・ド・フランスで僕が勝つためにすべてを捧げてくれ、年間を通じて僕をアシストしてくれたんだ。

彼は今日とても強かったし、勝利に値する走りだった。僕の行動は本能的だった。そうすべきと思ったことをしたまでだ。パオロの勝利は僕の勝利だ。

僕が最後にアタックしたのは調子がいいと感じたから。ティラロンゴの勝利を助けるためというわけじゃなかった。ライバルたちを揺さぶって、差をつけられると思ったんだ。

- 人々に選手としてのクオリティで記憶されるのと、人間としてのクオリティで記憶されるのではどちらを好む?
間違いなく人としてだね。

- 君は誰にでもステージ優勝というプレゼントを贈るサンタクロースなのかい?
パオロは今までプレゼントを受け取ってこなかった。彼は強さと意志で自分の勝利を勝ちとったんだ。
僕はステージを勝つ必要はなかった。マリアローザをキープすることが重要だったからね。ルハノ、スカルポーニ、ニーバリはアタックすべきだったね。


落車して股関節を骨折したマルコ・ピノッティ(イタリア、HTCハイロード)落車して股関節を骨折したマルコ・ピノッティ(イタリア、HTCハイロード) (c)CorVos落車して骨折、病院で治療を受けたマルコ・ピノッティ(イタリア、HTCハイロード)

僕のすぐ前で起こった落車を避けられなかった。 "acetabolo"=臼蓋窩(きゅうがいか/股関節の骨)と呼ばれる骨を折ってしまったよ。
クレイグ・ルイス(同時に落車したチームメイト)が家族と電話で話せたかどうかわからないけど、彼は大丈夫だと誰か伝えて欲しい。彼は大腿骨を折っているけど。

20分遅れの101位でゴールしたカルロス・サストレ(スペイン、ジェオックス・TMC)

すごく速い一日だった。狂ったように雨が振って、昨日のような60km近い速いスピードで集団が伸びていた。そして3人が抜けだした。
マッタローネを登るとき、正直僕はエネルギー切れを起こしていた。数チームがステージ優勝に向けて動いた。最後の上りにかかる時、僕は強さに欠けていた。すぐに今日は静かにしておこうと決め、明日のことを考えることにした。今日は何もするチャンスがなかった。


最後に強力に集団を引いたリッチー・ポルト(オーストラリア、サクソバンク・サンガード)

3週間がたったというのに脚はますます好調になってきた。チームは素晴らしいね。天気はやさしくないけど...。


39位でフィニッシュ。総合を61位に上げた別府史之(レディオシャック)

雨の中を走る別府史之(日本、レディオシャック)雨の中を走る別府史之(日本、レディオシャック) photo:Kei Tsuji前半から嵐のような雨が降りしきる中、平均時速50km/h以上で集団は走り続けて、さらに道が滑るというリスクもありストレス全開だった。信じられないような一日を再び経験した。先頭集団に8kmまで残ったけど、ついていけなかった。しかしタフな一日だった。


text:Makoto.AYANO
photo:Kei Tsuji,Riccardo Scanferla,CorVos