ベルガモ~マクニャーガの209kmで争われたジロ・デ・イタリア第19ステージは山頂ゴールの設けられた3級山岳マクニャーガで抜けだしたパオロ・ティラロンゴ(イタリア、アスタナ)がアルベルト・コンタドール(スペイン、サクソバンク・サンガード)とランデブーの末勝利を譲られ、2000年のプロ入り以来初となる勝利を挙げた。

スイス国境に近いマッジョーレ湖を通過スイス国境に近いマッジョーレ湖を通過 photo:Riccardo Scanferla

逃げグループを率いるラルスイティング・バク(デンマーク、HTC・ハイロード)逃げグループを率いるラルスイティング・バク(デンマーク、HTC・ハイロード) photo:Riccardo Scanferla残る山岳ステージ2つのうちのひとつ、マクニャーガ頂上ゴールとなる第19ステージ。頂上ゴールのステージでありながら、逃げにも向くというコースプロフィールだ。
ゴールとなる3級山岳マクニャーガは登坂距離が28.3kmと長く、標高差1106mを緩い勾配で登ってゴールする。

この日の天気は崩れがち。スタート時は持ちこたえたが、数時間を経て雨が降りだした。集団はベルガモをスタートし、前半は大都市ミラノの北部をかすめるようにして平坦路を東から西へ。昨ステージに続いて逃げのチャンスがあるため、無数のアタックがかかる。20人近い逃げが形成されるも、すぐに捕まってしまう。

メイン集団のペースを上げるマッシモ・コドル(イタリア、アックア・エ・サポーネ)メイン集団のペースを上げるマッシモ・コドル(イタリア、アックア・エ・サポーネ) photo:Riccardo Scanferla序盤、ジェローム・ピノー(フランス、クイックステップ)、ラルスイティング・バク(デンマーク、HTC・ハイロード)、マッテオ・ラボッティーニ(イタリア、ファルネーゼヴィーニ・ネーリソットリ)の3人の逃げが許される。
3人はすぐに10分程度の差で泳ぐことが許されたが、モッタローネ山頂へ向かう長い上りでその差を詰めだしたのはステファノ・ガルゼッリ擁するアックア・エ・サポーネ。頂上を前に1分30ほどに詰め寄り、ガルゼッリが単独アタック。

ガルゼッリはコンタドールに対してマリアヴェルデを守るためにポイントを稼いでおきたい意図だ。しかし頂上までに追いつけず、3人のすぐ後ろで頂上を通過。獲得できたのは3ptのみ。下りに入ってからすぐに追いつき、4人に。

滑りやすい路面をハイスピードで進むプロトン滑りやすい路面をハイスピードで進むプロトン photo:Kei Tsuji長いダウンヒルでミカエル・シュレル(フランス、アージェードゥーゼル)とヨハン・チョップ(スイス、BMCレーシングチーム)の2人が4人に追いつき、6人の先頭集団が形成される。先の長さを考えれば、逃げきるのに有利な人数になった。

下りきって最後のマクニャーガ山岳の登り口までは20kmの平坦区間がある。降りだした雨が激しくなる。メイン集団では落車が起こり、クレイグ・ルイス(アメリカ)とマルコ・ピノッティ(イタリア)のHTCハイロードの2人がリタイア。病院に運ばれる。ルイスは大腿骨を骨折している。

マクニャーガ山岳へ向けて意欲を燃やしたのはカチューシャだ。後方集団の先頭を固め、ペースを上げて逃げる6人献身的にメイン集団を牽引するダニーロ・ディルーカ(イタリア、カチューシャ)献身的にメイン集団を牽引するダニーロ・ディルーカ(イタリア、カチューシャ) photo:Riccardo Scanferlaとの差を詰めていく。上りに入るとダニーロ・ディルーカが先頭固定でペースを上げる。ディルーカのスピードの速さが、集団に残れる選手の数をどんどん絞り込んでいく。

山頂まで残り10kmでガルゼッリらは集団に飲み込まれるが、抵抗したのはピノー(クイックステップ)とラボッティーニ(ファルネーゼヴィーニ)のふたり。しかし2人もお互いの労をねぎらい、肩をたたき合うと集団に吸収される。

残り8km、昨ステージもアタックしたティラロンゴが単独で飛び出す。集団では総合争い上位勢のにらみ合いがあり、ティラロンゴはそれを尻目に差を開き出す。残り2.5kmでユベール・デュポン(フランス、アージェードゥーゼル)がアタックすると、それにホアキン・ロドリゲス(カチューシャ)も飛び出す。そしてデュポンを抜いてティラロンゴを追う。

3級山岳マクニャーガでメイン集団からアタックしたパオロ・ティラロンゴ(イタリア、アスタナ)3級山岳マクニャーガでメイン集団からアタックしたパオロ・ティラロンゴ(イタリア、アスタナ) photo:Riccardo Scanferlaしかしここまでおとなしくしていたコンタドールがついにアタックを開始した。スカルポーニとニーバリも反応するが、ついていけない。コンタドールは先行するロドリゲスをラスト1kmで抜き、みるみる間にティラロンゴに迫る。残り500mで追いつくと、言葉を交わしてティラロンゴの前に出る。するとコンタドールはこの疲れたアスタナの選手を引き始めた。

後方からニーバリが迫るが、コンタドールに引かれたティラロンゴはペースを保ち、ゴールまで逃げ切った。そしてゴール前になるとコンタドールはティラロンゴに前を譲った。ふたりは昨年アスタナでチームメイトだった。

喜びをかみしめ、両手を大きく広げてゴールするティラロンゴ。コンタドールは後ろに回ってゴールすると、ティラロンゴを祝福した。続いてニーバリ、ガドレ、ロドリゲスがフィニッシュ。スカルポーニは8秒遅れの7位でフィニッシュし、ニーバリに対して5秒失ってしまう。

勝利したティラロンゴはアシストとして昨年のコンタドールの勝利を多く支えてきた。2000年のプロ入り以来12年のキャリアをもつベテラン選手。キャリア最大の勝利? いや、これがジロの初優勝というだけでなく、12年のプロ生活で初の勝利となる。ティラロンゴは昨18ステージでも果敢に逃げたが、ステージ優勝を飾ったカペッキら3人に追いつかず、5位に終わっている。

コンタドールに譲られてフィニッシュに飛び込むティラロンゴコンタドールに譲られてフィニッシュに飛び込むティラロンゴ (c)RCS Sportsラスト8kmまで先頭集団に残った別府史之(レディオシャック)は6分遅れの39位でフィニッシュ。総合を61位に上げた。


コンタドールのコメント
パオロの勝利は僕の勝利。僕が最後にアタックしたのは調子がいいと感じたから。ティラロンゴの勝利を助けるためというわけじゃなかった。ライバルたちに差をつけられると思ったんだ。
パオロは今までプレゼントを受け取ってこなかった。彼は強さと意志で勝利を勝ちとったんだ。僕はステージを勝つ必要はなかった。マリアローザをキープすることが重要だったからね。

ティラロンゴのコメント
今日は調子が良かったんだ。だからトライしてみることにした。ラスト6kmでアルベルト(コンタドール)が肩を叩いて"今だ"と言ってくれたんだ。
ラスト600mで後ろから来た選手を見たとき、すぐにアルベルトだと分かった。彼は僕を絶対に抜こうとしなかった。そして息を整えさせてくれた。後ろの状況をチェックさえして!


第19ステージ結果
1位 パオロ・ティラロンゴ(イタリア、アスタナ) 5h26'27"
2位 アルベルト・コンタドール(スペイン、サクソバンク・サンガード)
3位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)+0'03"
ティラロンゴの勝利を祝福するコンタドールティラロンゴの勝利を祝福するコンタドール (c)RCS Sports4位 ジョン・ガドレ(アージェードゥーゼル)+0'06"
5位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)
6位 ステフェン・クルイスウィック(オランダ、ラボバンク)
7位 ミケーレ・スカルポーニ(イタリア、ランプレ・ISD)+0'08"
8位 ロマン・クロイツィゲル(チェコ、アスタナ)+0'21"
9位 ユベール・デュポン(フランス、アージェードゥーゼル)+0'29"
10位 カンスタンティン・シウトソウ(ベラルーシ、HTC・ハイロード)+0'34"
39位 別府史之(レディオシャック)+6'00"

個人総合成績 
1位 アルベルト・コンタドール(スペイン、サクソバンク・サンガード) 77h11'24"
2位 ミケーレ・スカルポーニ(イタリア、ランプレ・ISD)+5'18"
3位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)+5'52"
4位 ジョン・ガドレ(アージェードゥーゼル)+7'53"
5位 カンスタンティン・シウトソウ(ベラルーシ、HTC・ハイロード)+9'58"
6位 ミケル・ニエベ(スペイン、エウスカルテル・エウスカディ)+10'08"
7位 ロマン・クロイツィゲル(チェコ、アスタナ)+10'20"
8位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)+10'43"
9位 デニス・メンショフ(ロシア、ジェオックス・TMC)+10'51"
10位 ホセ・ルハノ(ベネズエラ、アンドローニ・ジョカトリ)+11'50"
61位 別府史之(レディオシャック)+1h56'47"

ポイント賞 マリアロッサ・パッシオーネ
アルベルト・コンタドール(スペイン、サクソバンク・サンガード)

山岳賞 マリアヴェルデ
ステファノ・ガルゼッリ(イタリア、アックア・エ・サポーネ)

新人賞 マリアビアンカ
ロマン・クロイツィゲル(チェコ、アスタナ)

チーム総合成績
アスタナ

text:Makoto.AYANO
photo:Kei Tsuji,Riccardo Scanferla,CorVos