大学生のトラックレースでは、大学対抗のインカレと同様に高いステータスの個人戦。修善寺の屋外250mトラックで、2日間に渡りタイトルを目指して熱戦が繰り広げられた。そしてこの大会は今夏のユニバーシアード大会の代表候補選出大会も兼ねた。

修善寺の250mトラックが会場修善寺の250mトラックが会場 photo:Hideaki.TAKAGI今年は中国でユニバーシアード大会が行われる。この学生トラック個人戦はそれの選手選考も兼ねているため、国際レース規格で行うことを目的に250mトラックが選ばれた。トラックでの練習機会の少ない大学生にとって、250mトラックが初めての選手もいる。しかし世界に通ずるレースに出場するからには経験を積んでおかねばならない。選手たちは早朝の周回練習などで足慣らしを済ませてレースに臨んだ。

5月14、15日の2日間に渡って行われた第52回全日本学生選手権トラック自転車競技大会。全国から200人を超える大学生が集まり早朝から集荷練習やローラーでのアップなどに余念が無い。初日はテントなどが飛ばされるほどの強風が吹き荒れ、タイム種目に若干の影響が出た。

1週間前の修善寺カップから実質の活動を再開した法政大学勢の活躍も見どころのひとつだ。そのロードでは優勝した中根英登(中京大学)と榊原健一(同)の走りが光ったが、わずかのタイミングの違いで優勝を逃した大本命、早川朋宏(法政大学)の走りは、その健在振りを十分に見せた。「いつもは自分から逃げるのに、今回は初めて追う立場だった」と言う早川。いつもの逃げるパターンに持ち込めば、今シーズンの展望も明るいだろう。

男子スプリント 優勝の橋本凌甫(日本大学)と2位の新納大輝(鹿屋体育大学)男子スプリント 優勝の橋本凌甫(日本大学)と2位の新納大輝(鹿屋体育大学) photo:Hideaki.TAKAGI各種目の様子をフォトレポートでお届けしよう。

男子スプリント
上位2名は予選の200mフライングTTの順番に。その決勝は、昨年の覇者・新納大輝(鹿屋体育大学)と同2位の橋本凌甫(日本大学)の戦いに。3本目までの勝負になったが、橋本が2本取って優勝。昨年の雪辱を果たした。なお3、4位は1/2決勝で2人とも失格のため空位に。
1位 橋本凌甫(日本大学)
2位 新納大輝(鹿屋体育大学)


男子1kmタイムトライアル 優勝の加東良治(順天堂大学)1分08秒477男子1kmタイムトライアル 優勝の加東良治(順天堂大学)1分08秒477 photo:Hideaki.TAKAGI男子1kmタイムトライアル
唯一8秒台を出した加藤良治(順天堂大学)が優勝。ここ数年6秒台で争われてきた上位だったが、記録はやや低調に。
1位 加藤良治(順天堂大学)1分08秒477
2位 吉川勇気(北陸大学)1分09秒727
3位 池野健太(中央大学)1分09秒744


男子ケイリン 左端の今井一誠(早稲田大学)が優勝男子ケイリン 左端の今井一誠(早稲田大学)が優勝 photo:Hideaki.TAKAGI男子ケイリン
決勝で圧巻の走りを見せた野口大誠(中央大学)が1着だったが、最終周回での押し込みがあったとして2回目の警告で失格に。2着の今井一誠(早稲田大学)が優勝。
1位 今井一誠(早稲田大学)
2位 會澤龍(東北学院大学)
3位 末木浩二(日本大学)


男子個人追抜き 優勝の窪木一茂(日本大学)予選で前走者を抜く男子個人追抜き 優勝の窪木一茂(日本大学)予選で前走者を抜く photo:Hideaki.TAKAGI男子4km個人追抜き
決勝は窪木一茂(日本大学)と佐々木龍(早稲田大学)の戦いに。予選では1秒強速かった窪木だが、決勝のスタート後は佐々木がリード。終盤になって窪木が追い上げ、ラスト2周で逆転。2人とも予選のタイムを上回る好タイムだった。
1位 窪木一茂(日本大学)4分45秒938
2位 佐々木龍(早稲田大学)4分47秒007
3位 矢野智哉(朝日大学)4分54秒309(予選時タイム)


男子スクラッチ決勝 渡辺洋平(立教大学)が優勝男子スクラッチ決勝 渡辺洋平(立教大学)が優勝 photo:Hideaki.TAKAGI男子スクラッチ
各選手が逃げるが吸収されを繰り返し、集団は崩れない。終盤に服部昇平(京都産業大学)、佐々木勇輔(早稲田大学)が逃げるも最終周回に吸収され、集団から抜け出した渡辺洋平(立教大学)が優勝。この大会に2人で参加の立教大学として大金星を挙げた。
1位 渡辺洋平(立教大学)
2位 出澤拓也(明治大学)
3位 加藤剛(明治大学)


男子タンデムスプリント 決勝は順天堂大学どうしの戦いに男子タンデムスプリント 決勝は順天堂大学どうしの戦いに photo:Hideaki.TAKAGI男子タンデムスプリント
大学生独特の種目がタンデムスプリント。時速70キロで周回する様は迫力ある。予選タイムトップは飯塚力也・石田輝ペア(順天堂大学)。タイムは1周250mを13秒708で、強風のためあまり伸びず。好条件ならば12秒台のところだ。決勝は同じ順天堂大学どうしになり、飯塚・石田ペアがストレート勝ち。
1位 飯塚力也・石田輝(順天堂大学)
2位 木村洋介・村上哲也(順天堂大学)
3位 小山真太朗・黒澤洋徳(日本大学)


男子ポイントレース 表彰、全員関西出身だ男子ポイントレース 表彰、全員関西出身だ photo:Hideaki.TAKAGI男子ポイントレース
決勝は160周40kmで行われた。序盤から元砂勇雪(鹿屋体育大学)と入部正太朗(早稲田大学)がマークしあって加点する。徳田鍛造(鹿屋体育大学)も逃げで加点。中盤までの得点が効いて元砂が圧勝。優勝の元砂は「ユニバーシアードがかかっていたので勝ちたかった。入部さんを気をつけた。終盤に飯野さんにラップされそうになったので、集団のスピードを上げた」と語る。2位の入部は「上位3人とも関西勢。誇りに思う。元砂をマークしたが強かった」と同じ高校の後輩を持ち上げる。前へ出て行く好レースになった。
1位 元砂勇雪(鹿屋体育大学)31点
2位 入部正太朗(早稲田大学)20点
3位 徳田鍛造(鹿屋体育大学)16点


男子マディソン 優勝の鹿屋体育大学ペア男子マディソン 優勝の鹿屋体育大学ペア photo:Hideaki.TAKAGI男子マディソン
2人ペアでタッチしながら走るポイントレース形式のマディソンには、3連覇がかかる早稲田大学を含む11チームが出場。しかし実力差がはっきりと現れるレースに。序盤から鹿屋体育大学(高宮正嗣・元砂勇雪)、早稲田大学(佐々木龍・三浦康嵩)、中京大学(中根英登・榊原健一)の3チームが主導し他チームがラップアウトされ、前半で早くも3チームだけに。中盤で佐々木が落車、再乗車するがマイナス1ラップのまま再びポイントを取りにいく。ラストは中京大学が逃げ切ったが、それまでのポイントで鹿屋体育大学が圧勝。6人全員が前へ出て行く積極的な走りを見せ、佐々木も根性の走りで会場を沸かせた。
1位 鹿屋体育大学(高宮正嗣・元砂勇雪)23点
2位 中京大学(中根英登・榊原健一)17点
3位 早稲田大学(佐々木龍・三浦康嵩)-1Lap 20点


女子スプリント 優勝の前田佳代乃(鹿屋体育大学)女子スプリント 優勝の前田佳代乃(鹿屋体育大学) photo:Hideaki.TAKAGI女子スプリント
予選は前田佳代乃(鹿屋体育大学)が、2位に1秒の大差をつける12秒358でトップ。決勝は近藤美子(鹿屋体育大学)との対決になったが前田が圧勝。
1位 前田佳代乃(鹿屋体育大学)
2位 近藤美子(鹿屋体育大学)
3位 野村くるみ(北陸大学)


女子500mタイムトライアル 優勝の前田佳代乃(鹿屋体育大学)35秒975女子500mタイムトライアル 優勝の前田佳代乃(鹿屋体育大学)35秒975 photo:Hideaki.TAKAGI女子500mタイムトライアル
この種目で国内第一人者の前田佳代乃(鹿屋体育大学)が2位に4秒以上の大差をつけ圧勝。35秒975のタイムは男子上位陣でも顔負けのスピード。だが世界で戦うには34秒台が最低でも必要。今秋に完成する修善寺の屋内250mトラックで経験を積み、タイムを出したいところだ。
1位 前田佳代乃(鹿屋体育大学)35秒975
2位 野村くるみ(北陸大学)40秒092
3位 塚越さくら(鹿屋体育大学)40秒133


女子ポイントレース 表彰女子ポイントレース 表彰 photo:Hideaki.TAKAGI女子ポイントレース
3人参加の鹿屋体育大学、5人参加の日本体育大学勢を中心とした戦いに。近藤美子(鹿屋体育大学)が6回中4回を1位通過し圧勝。期待されていた明珍裕子は初日朝の周回練習中に落車、負傷したため欠場した。
1位 近藤美子(鹿屋体育大学)25点
2位 木村亜美(鹿屋体育大学)11点
3位 中村妃智(日本体育大学)9点


女子個人追抜き 表彰女子個人追抜き 表彰 photo:Hideaki.TAKAGI女子3km個人追抜き
日本体育大学勢が表彰台を独占、女子の強化を続ける同大の努力が実る結果に。
1位 田中まい(日本体育大学)4分02秒173(予選時タイム)
2位 小島蓉子(日本体育大学)4分04秒604(予選時タイム)
3位 中村妃智(日本体育大学)4分10秒488

ユニバーシアード代表選手4名が発表
今夏、中国で行われるユニバーシアード大会への派遣選手が、今大会で4名決定した。
男子ケイリン 今井一誠(早稲田大学)
男子スプリント 橋本凌甫(日本大学)
男子ポイントレース 元砂勇雪(鹿屋体育大学)
男子個人追抜き 窪木一茂(日本大学)
ほか女子トラック4名、男女ロード各3名の計10名は今後のレース結果で決定される。

photo&text:高木秀彰