ジロ第1週を締めくくる第9ステージはシチリア島の活火山エトナ山を2度登る難関山岳ステージ。アルベルト・コンタドール(スペイン、サクソバンク・サンガード)がゴールまで残り6.7kmでアタックを決め、追従したホセ・ルハノ(ベネズエラ、アンドローニ・ジョカトリ)を3秒振り切って山頂ゴールを制した。

コンタドールは総合優勝を狙うライバルたちには50秒の差をつけ、個人総合でも2位に59秒差をつけてマリアローザを獲得した。第1週にしてジロはすでにコンタドールの手中に落ちたように思える。

ホセ・ルハノ(ベネズエラ、アンドローニ・ジョカトリ)を引き離すアルベルト・コンタドール(スペイン、サクソバンク・サンガード)ホセ・ルハノ(ベネズエラ、アンドローニ・ジョカトリ)を引き離すアルベルト・コンタドール(スペイン、サクソバンク・サンガード) photo:Riccardo Scanferla

12時10分、メッシーナを発つ12時10分、メッシーナを発つ photo:Riccardo Scanferlaメッシーナ~エトナの169kmで行われた第9ステージは、シチリアの活火山であるエトナ山を2度登る山岳コースが設定された。しかしジロが訪れる直前の5月12日になってエトナ山は噴火を起こした。
コース上に降った火山灰は掃除され、周辺の飛行場も復旧。影響が心配されたが、コースには支障がなかったため主催者はレースを当初の予定通りエトナ山を2度登るコースで決行した。

エトナ山頂上ゴールがジロに採用されたのは22年ぶり、ジロ史上3度目のこと。選手たちの前に立ちはだかる灼熱の地シチリア島の活火山は標高3323m。ゴールはその中腹1892mに設定される。
エトナ火山に向かって標高を上げて行くエトナ火山に向かって標高を上げて行く photo:Riccardo Scanferla最初に登場する北側の登りは平均勾配6.1%で登坂距離18km、標高1631mまで登る。そこから約35kmかけて一旦海岸線近くまで下り、再び南側から標高3323mの活火山目がけて登り返す。岩肌むき出しの荒涼とした平均勾配6.2%・登坂距離19.4kmの登りの先に待つのは、標高1892mの山頂フィニッシュだ。

翌日に休息日を控えたジロ第1週最終日、シチリア島のメッシーナをスタートしたのは192人の選手たち。この日スタートしなかったのはクリストファー・バトラー(アメリカ、BMCレーシングチーム)。第3ステージで落車していたバトラーは骨折が見つかり、帰宅を選択した。

レースはスタートからいくつもアタックがかかり、最初の1時間の平均スピードは49.1km/hにのぼった。約50km地点で9人の逃げが決定的となる。逃げたのは次の9人だ。

逃げグループを率いるジョヴァンニ・ヴィスコンティ(イタリア、ファルネーゼヴィーニ・ネーリソットリ)逃げグループを率いるジョヴァンニ・ヴィスコンティ(イタリア、ファルネーゼヴィーニ・ネーリソットリ) photo:Riccardo Scanferlaヤロスラフ・ポポヴィッチ(ウクライナ、レディオシャック)
ジョヴァンニ・ヴィスコンティ(イタリア、ファルネーゼヴィーニ・ネーリソットリ)
ヤン・バケランツ(ベルギー、オメガファーマ・ロット)
アレッサンドロ・ヴァノッティ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)
パブロ・ラストラス(スペイン、モビスターチーム)
マティアス・フランク(スイス、BMCレーシングチーム)
ミカエル・シュレル(フランス、アージェードゥーゼル)
フィリッポ・サヴィーニ(イタリア、コルナゴ・CSFイノックス)
ホアン・オラク(スペイン、カチューシャ)

前を行く9人は順調に差を広げ65km地点で5分5秒の差。集団はランプレ・ISDなどが中心にペースをつくり、勝負どころまでに大きな差が開かないように追走する。
集団からマキシム・ベルコフ(ロシアヴァカンソレイユ・DCM)がひとり飛び出すが、前の9人には追いつけないまま泳いでいた。

このフォーメーションのままエトナ山の1回目の登りを通過。先頭はフィリッポ・サヴィーニ(イタリア、コルナゴ・CSFイノックス)が通過し、マリアヴェルデへの意欲を見せる。
ほかに逃げに入ったなかではヤロスラフ・ポポヴィッチ(ウクライナ、レディオシャック)がフーガ(逃げ)賞を狙う。しかしポポは時折苦しめな表情を浮かべる。

メイン集団はランプレISDが引くが、その先頭牽引を多く担ったのは赤いマリアロッソ・パッショーネを着るアレッサンドロ・ペタッキだ。ペタッキは登りでも力強く集団を引き、ジロ前にエトナ山でチームメイトのスカルポーニとともに練習を積んだ成果を披露した。もちろん今日のステージではエースのスカルポーニを全面バックアップする体制だ。

黒い溶岩に覆われたエトナ火山を登る黒い溶岩に覆われたエトナ火山を登る photo:Kei Tsuji

2回目のエトナ登坂で逃げグループからアタックするヤン・バケランツ(ベルギー、オメガファーマ・ロット)2回目のエトナ登坂で逃げグループからアタックするヤン・バケランツ(ベルギー、オメガファーマ・ロット) photo:Riccardo Scanferla2度目のエトナの登りはラスト20kmがキー。1回目の30kmの登りより距離は短いが厳しく、吹きっ晒しのため風の影響を強く受けることが予想された。
逃げる9人も意思統率がとれず分解。残り15kmで前に行きたいジョヴァンニ・ヴィスコンティ(イタリア、ファルネーゼヴィーニ・ネーリソットリ)、ヤン・バケランツ(ベルギー、オメガファーマ・ロット)、マティアス・フランク(スイス、BMCレーシングチーム)の3人が抜け出しに成功する。

メイン集団では総合優勝候補たちのアタックがおこらず、淡々と登るが、ここからマリアローザを着るピーター・ウェーニング(オランダ、ラボバンク)もマリアヴェルデを着たバルト・デクレルク(ベルギー、オメガファーマ・ロット)も遅れてしまう。

残り9kmで逃げる3人からバケランツがアタック。独走を開始するが、同時に後方のメイン集団からホセ・ルハノ(ベネズエラ、アンドローニ・ジョカトリ)がアタック。ニーバリやコンタドールは動く素振りを見せない。

ゴールまで7kmを残してアタックしたアルベルト・コンタドール(スペイン、サクソバンク・サンガード)ゴールまで7kmを残してアタックしたアルベルト・コンタドール(スペイン、サクソバンク・サンガード) photo:Riccardo Scanferlaそのままバケランツとルハノの逃げ切りが濃厚になったラスト6.7km、突如沈黙を破ったのはコンタドールだった。
コンタドールは軽々とした独特のダンシングスタイルで猛スピードで登りを突き進む。ルハーノ、そしてヴィスコンティら前を行く選手たちを次々に追いぬいてバケランツにも追いついてしまう。スカルポーニも追走したが、失速して後退。なんとかついて行けたのはルハノのみだった。

ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)、ロマン・クロイツィゲル(チェコ、アスタナ)をはじめとした優勝候補たち、ステファノ・ガルゼッリ(イタリア、アックア・エ・サポーネ)、ダビ・アローヨ(スペイン、モビスターチーム)、カンスタンティン・シウトソウ(ベラルーシ、HTC・ハイロード)そしてスカルポーニらはコンタドールの動きを見送ってしまったまま肩を寄せて走る。

追走するメイングループはロマン・クロイツィゲル(チェコ、アスタナ)とヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)が先頭追走するメイングループはロマン・クロイツィゲル(チェコ、アスタナ)とヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)が先頭 photo:Kei Tsuji残り1.5kmでコンタドールは再加速し、ルハノを振りきってしまう。平坦区間のゴールに向かうコンタドールは自分が先頭かどうか確信が持てないまま、しかしライバルたちを振りきったその力を誇示するかのように腕を振りあげてフィニッシュ。ゴールラインを切ってから控えめなピストルポーズを見せた。

ルハノは3秒遅れでフィニッシュ。ニーバリ、クロイツィゲル、ガルゼッリ、アローヨ、シウトソウは50秒遅れでフィニッシュ。ボーナスタイム争いのスプリントはガルゼッリがニーバリに先着した。

個人総合においてもコンタドールは2位シウトソウに59秒差をつけてマリアローザを獲得。ポイント賞首位の座もペタッキから奪ってしまった。マリアヴェルデのみフィリッポ・サヴィーニ(イタリア、コルナゴ・CSFイノックス)が獲得。

片手を突き上げるアルベルト・コンタドール(スペイン、サクソバンク・サンガード)片手を突き上げるアルベルト・コンタドール(スペイン、サクソバンク・サンガード) photo:Riccardo Scanferla2008年ジロ・デ・イタリア覇者が、第9ステージにして早くもマリアローザを着て君臨する結果になった。しかしコンタドールにとってジロでのステージ優勝は初めてのこと。2008年はステージ優勝ゼロで総合優勝を勝ち取っている。

コンタドールのコメント
「結果に満足している。スカルポーニを抑えることができたし、ラスト5~8kmでアタックしなければならないと思っていた。強風にも気をつける必要があった。だから、勝てたのはとても嬉しい。
マリアローザを獲得することは考えてなかった。大事だったのは、他の選手たちに差をつけることだった。

メイングループからアタックするヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)メイングループからアタックするヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス・キャノンデール) photo:Riccardo Scanferla本当にきつい一日だった。ステージ序盤はとても速いペースだった。多くの選手が逃げたがっていたんだ。最初にエトナに登ったときに調子がよかったし、2回目も調子がよかったので、今日は自分の日だと確信した。昨晩ビヤンヌ(リース監督)と話して、行けそうならゴール前のラスト5~8kmで動くことになっていた。最初に集団を引き離したときも、充分に余力があった。
今日は総合成績にとって重要な日だった。ある意味、ジロは今日まで始まってはいなかった。だから、リザルトが大きく書き換わることになった。でも、レースが終わるにはほど遠い。この先にも重要なステージがたくさんある」。

難関山岳ステージが控えるジロ最終週に勝負を先延ばししたいと考えるライバルたちに対し、このアタックが計画していた通りのものだったことを示唆したコンタドール。準備不足のバカンス中に突如参戦が決まった2008年ジロは守りの走りに徹したが、今年のジロは勝負のチャンスがあるところでは積極的に勝ちに行く貪欲さを見せている。

マリアローザにキスするアルベルト・コンタドール(スペイン、サクソバンク・サンガード)マリアローザにキスするアルベルト・コンタドール(スペイン、サクソバンク・サンガード) photo:Riccardo Scanferlaマキュアン、ブラウンらがタイムアウト

厳しいエトナ山の長い上りが2度続いたこのステージでは最終グルペットが制限時間ギリギリの26分35秒遅れ4でフィニッシュ。別府史之(日本、レディオシャック)はひとつ前の24分46秒遅れのグルペットで無事ゴールしている。

しかしロビー・マキュアン(オーストラリア、レディオシャック)とグレーム・ブラウン(オーストラリア、ラボバンク)は59分35秒遅れでゴールに辿り着き、タイムカットで失格となってしまった。

ジロは最初の休息・移動日へ

エトナ山の噴火の影響で閉鎖されていたシチリアのカターニア空港は再開され、空路は復旧。選手たちは翌日の休息日を前に夜のうちにイタリア本土へと空路+陸路で移動した。
16日はジロ最初の休息日。しかし飛行機とバスを乗り継いで移動した選手たちがホテルに到着したのは深夜、もしくは午前を過ぎてからになった模様で、早くも運営に対する不満が聞こえてきている。



ジロ・デ・イタリア第9ステージ結果

1位 アルベルト・コンタドール(スペイン、サクソバンク・サンガード)  4h54'09"
2位 ホセ・ルハノ(ベネズエラ、アンドローニ・ジョカトリ) +03"
3位 ステファノ・ガルゼッリ(イタリア、アックア・エ・サポーネ)+50"
4位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)
5位 ロマン・クロイツィゲル(チェコ、アスタナ)
6位 ダビ・アローヨ(スペイン、モビスターチーム)
7位 カンスタンティン・シウトソウ(ベラルーシ、HTC・ハイロード)+59"
8位 イゴール・アントン(スペイン、エウスカルテル・エウスカディ)
9位 ジョン・ガドレ(フランス、アージェードゥーゼル)1'07"
10位 ユベール・デュポン(フランス、アージェードゥーゼル)
147位別府史之(レディオシャック)+24'46"

個人総合成績
1位 アルベルト・コンタドール(スペイン、サクソバンク・サンガード)33h03'51"
2位 カンスタンティン・シウトソウ(ベラルーシ、HTC・ハイロード)+59"
3位 クリストフ・ルメヴェル(フランス、ガーミン・サーヴェロ)+01'19"
4位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)+01'21"
5位 ミケーレ・スカルポーニ(イタリア、ランプレ・ISD)+01'28"
6位 ダビ・アローヨ(スペイン、モビスターチーム)+01'37"
7位 ロマン・クロイツィゲル(チェコ、アスタナ)+01'41"
8位 ホセ・セルパ(コロンビア、アンドローニ・ジョカトリ)+01'47"
9位 ダリオ・カタルド(イタリア、クイックステップ)+02'21"
10位 マッテーオ・カラーラ(イタリアヴァカンソレイユ・DCM)


ポイント賞 マリアロッサ・パッシオーネ
アルベルト・コンタドール(スペイン、サクソバンク・サンガード)

山岳賞 マリアヴェルデ
フィリッポ・サヴィーニ(イタリア、コルナゴ・CSFイノックス)

新人賞 マリアビアンカ
ロマン・クロイツィゲル(チェコ、アスタナ)

チーム総合成績
アスタナ

フーガ(逃げ)賞
ヤロスラフ・ポポヴィッチ(ウクライナ、レディオシャック)


text:Makoto.AYANO
photo:Kei Tsuji,Riccardo Scanferla,Luca Bettini,CorVos
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著者:
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