トリノで開幕する第94回ジロ・デ・イタリアに、別府史之(レディオシャック)が初出場する。良い感触を得て直前のツール・ド・ロマンディを終えたフミに、3週間の闘いの意気込みを訊いた。

別府史之(日本、レディオシャック)別府史之(日本、レディオシャック) photo:Kei Tsujiロマンディでは安定した走りで見せていましたが、その勢いをジロに持ち込めている感じ?

今年はジロが最初から年間スケジュールに入っていました。昨年の冬から取り組んでいた成果が出たのが、春先に出場したティレーノ〜アドリアティコとジロ・ディ・サルデーニャ。その山岳ステージで良い感触を得たんです。今年のジロは予めコースがキツいと聞いていたので、直前のロマンディでは負荷を上げ過ぎないよう心がけました。自分なりのペースでロマンディを走り終えたので、良いコンディションをジロに繋げることができています。自分としては、今は全てが揃っている状態。

山岳での力を得て、それでいて平坦なパリ〜ルーベで完走。相反する2つの要素は、全体的なレベルアップを意味する?

パリ〜ルーベなどのクラシックレースでは、根本的にパワーがないと乗り切ることができない。確かにグランツールの山岳で活躍するような選手は、好んで平坦系のクラシックレースに出場しない。でも結局はクラシックレースを走り抜くパワーがないと、グランツールでは闘えないと感じています。クラシックレースでもステージレースでも、“走れている”という感覚を得ています。

ツール・ド・ロマンディ最終日 別府史之(レディオシャック)と新城幸也(ユーロップカー)が集団前方でスプリントツール・ド・ロマンディ最終日 別府史之(レディオシャック)と新城幸也(ユーロップカー)が集団前方でスプリント photo:Kei Tsujiロマンディ最終日にスプリントで6位に入りましたが、それはチームの作戦通り?

いえ、本当はマヌエル(カルドソ)でスプリントを狙う予定だったんですけど、彼が山で遅れてしまった。前日のステージで7位に入っていた(ジョフロワ)ルカトルが調子は良くないと言うから、じゃあ最後だし、リスクを伴わなければいいかなと思ってスプリントに参加しました。脚を残した状態で山岳をクリアしたのは調子が良い証拠です。

ジロでもスプリントのチャンスは回ってくる?

レディオシャックは今回のジロに3人のスプリンターを送り込んでいます。マキュアンとハンターとカルドソ。だから僕自身が集団スプリントで順位を狙うつもりはないです。可能性としては、山岳が設定されているステージで彼らが遅れた場合に、僕がスプリントするかもしれない。基本的に山岳ステージでの役目は(総合狙いの)ティアゴ・マシャドのアシストだけど、いい場所で山岳を乗り越えることができれば、自分にチャンスが回ってくるかもしれないですね。

レディオシャックの先導役女性と記念撮影する別府史之(日本、レディオシャック)レディオシャックの先導役女性と記念撮影する別府史之(日本、レディオシャック) photo:Kei Tsuji平坦ステージではエーススプリンターたちのためのリードアウト役を担う?

実際にはスプリンターが3人いるので、最後の勝負は彼らだけでこなしてしまう。僕が手伝えるとしたら、ラスト5kmあたりで彼らを集団前方に引き上げて(他のチームの)トレインの特上席に降ろすような走りになると思います。

今年のジロは山岳ステージが厳しいと言われていますが?

今まで経験したことがないほどの山岳の厳しさです。ツール・ド・フランスの山岳よりも断然厳しい。だから最初の1週間からムキになって結果を求めるのではなく、様子を見ながら走ろうと思います。でもレースが進むうちにカラダも絞れるし、日々変われる(進化できる)と思う。現状体重は67〜68kg。ツールを完走した2年前も開幕時は67〜68kg。最終日には66kgになっていた。

チームプレゼンテーションに向かう別府史之(日本、レディオシャック)チームプレゼンテーションに向かう別府史之(日本、レディオシャック) photo:Kei Tsujiツールを完走した2年前と比較して変わったことは?

まずチームの体制や作戦が違う。スキル・シマノの場合は最初の1週間から目立つ走りを要求されました。でもレディオシャックの場合は、エースのケアさえしていれば、自分のペースで走ることができ、そして狙えるところは狙っていける。幾つかのステージは狙えそうだな、という実感はあります。例えばアップダウンがあるステージ。キツい山岳が途中にあっても、ゴールが平坦なら狙えると思う。実際に過去のイタリアのレースでは、山が多いコースで活躍できている。チャンスはあると思っています。

良いレース環境でジロに挑めそう?

今回のジロには、良いチームスタッフが揃っている。ずっとランス(アームストロング)専属のマッサージャーを務めていたリッチー(リチャード)が担当してくれているんです。2005年のディスカバリーチャンネル時代にも担当してもらっていて、リッチーに揉んでもらうと成績が良かった。先日のロマンディでも、スプリントで6位に入った最終日の前だけ彼にマッサージしてもらっていたんです。メンタルの問題かもしれないけど、彼に揉んでもらうとカラダは軽くなるし、マッサージテーブルでもとてもリラックスできる。相性が良いんだと思います。

観客が詰めかけた通りを練り歩く別府史之(日本、レディオシャック)観客が詰めかけた通りを練り歩く別府史之(日本、レディオシャック) photo:Kei Tsujiイタリアレース雰囲気、そしてイタリアという国の印象は?

イタリアのレースは、山のスピードが速いです。でも自分にとっては、アグレッシブに走れるイタリアのレースのほうが走りやすい気がします。イタリア語は分かりませんが、とにかくご飯が美味しい!レース期間中はあまり食事を抑えたらいけないけど、食べ過ぎるといけないので腹八分目に抑えています。食事は基本的にホテルのレストラン。伸び伸びパスタなんて出てこないのが、さすがイタリアです(笑)

ジロに登場する未舗装区間については?

パリ〜ルーベと比べたらマシかなと思っているけど、砂利なので滑りますよね。でも基本的に悪路は好きです。自分でバイクを洗わなくてもいいんだと思うと突っ込める。レース後に自分でバイクを洗うとなると走りたくないです(笑)

「ひとりじゃない 〜You are NOT alone〜」のリストバンドとつけるロバート・ハンター(南アフリカ)とロビー・マキュアン(オーストラリア、レディオシャック)「ひとりじゃない 〜You are NOT alone〜」のリストバンドとつけるロバート・ハンター(南アフリカ)とロビー・マキュアン(オーストラリア、レディオシャック) photo:Kei Tsuji今回はご自身が発起人となった「ひとりじゃない」のリストバンドを付けての出場ですが、特別な意識はありますか?

日本を代表させてもらっている、という意識で走りたいですね。初めてのジロに向けて、気持ちが入っている。ちょうど東日本大震災が起こったのがティレーノ〜アドリアティコの出場中で、言葉を失ってしまった。あのときに受けたショックは一生記憶に残るもので、何か少しでも力になりたいと思ってこのリストバンドを作りました。「ひとりじゃない」というメッセージを日本に発信したい。海外の人もすごく日本のことを心配してくれていて、そのメッセージを日本に送り続けたい。他のチームメイトも率先してリストバンドを付けてくれています。

3週間の闘いを前に、これだけは果たしたいという目標は?

やはり完走だけが目的ではなくて、ステージ優勝を狙って走りたい。チームの走りに貢献しつつ、チャンスがあればステージ優勝を狙いたいです。ツールの時もそうだったけど、初めてのジロだから先ず最初に完走がどうのこうのと聞かれるけど、全ては毎日の積み重ねだと思う。毎日ベストを尽くし、一日が終わったらコースブックの次のページをめくるようにして走り続けたいですね。

text&photo:Kei Tsuji in Torino, Italy
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の画像 100 Jahre Giro d‘Italia: Strecken, Fahrer und Legenden rund um den italienischen Radsport-Mythos
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の画像 CICLISSIMO (チクリッシモ) 2011年 05月号 [雑誌]
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出版社: 八重洲出版