新たなカーボンコンポジットブランドが日本に上陸する。スウィフト・カーボン(SWIFT Carbon)は南アフリカ発祥のブランドだ。欧州とのつながりで独自のテクノロジーを駆使し、パートナーシップを結んだ工場でカーボンフレームを製造している。スウィフトのフラッグシップモデル、R838 ISPを紹介しよう。

スウィフト R838 ISPスウィフト R838 ISP (c)Makoto.AYANO/cyclowired.jp

新ブランド「スウィフト・カーボン」

まずはスウィフト・カーボン社の生い立ちとコンセプト、テクノロジーを紹介しよう。
スウィフト・カーボンが誇るのは、独自のグライドテック・カーボンウォールテクノロジーでパートナーシップを結んだ工場とフレームを製造していること。そして、性能や強度を作り上げるために、優れた日本製カーボンクロスとドイツ製レジンを選択していること。ライディングからデザインを作り上げるコンセプトには、長年の経験が裏打ちされているという。

ダウンチューブとトップチューブ部が隆起したヘッドまわりダウンチューブとトップチューブ部が隆起したヘッドまわり 特徴的な質量感を持つヘッドチューブ特徴的な質量感を持つヘッドチューブ くぼみが入り振動吸収性の向上を狙ったフロントフォークくぼみが入り振動吸収性の向上を狙ったフロントフォーク


スウィフトカーボン社のCEOを務めるのはマーク・ブルウェット氏。90年代の南アフリカナショナルチームでキャプテンをつとめ、フランス、ポルトガルのプロチーム所属を経験した元プロサイクリストだ。
ブルウェット氏にとって、自転車は幼い頃から生活の一部だった。10歳の頃にBMXを始めてレースに出場したり、ランプを作り遊び転んだりしていた。日常の学校生活に加えて自動車などのデザインを行い、工業デザインの道に進む。トップレベルのレースに出場しながらも、デザインを勉強する事に魅了されていたという。ブルウェット氏が競技用自転車製造に取り組むことは自然な歩みだった。

ブルウェット氏は、6年間ヨーロッパのプロチームに属し、フランス、ポルトガルのレースを走った。しかしながら氏のプロ選手としてのキャリアは地味なアシスト仕事が殆どで、集団にボトルや補給食を運んだり、レースのペースを作る役割のサポートが中心だった。しかしプロ選手としてレース機材に接してきた経験が今に生きているのは間違いない。

トップチューブ前部は三角形断面のチューブとなっているトップチューブ前部は三角形断面のチューブとなっている ダウンチューブはボトルケージに向かって狭まる涙断面のチューブを採用ダウンチューブはボトルケージに向かって狭まる涙断面のチューブを採用


ブルウェット氏はフレーム製作の面でオランダの信頼ある技術者と共に働いてきた。パートナーであるレネ・バレッタ氏は、高度なエンジニアリングについてデルフト大学で研究し、幾つかの小さいブランドのフレームとパーツをデザインしてきた。バレッタ氏のサイクリングへの情熱は、彼のグラフィックデザインとスタイルのセンスを組み合わせた仕事として結実している。ふたりはツール・ド・フランスを走るロードやタイムトライアル用バイクのプロデュースも手がけ、造りあげてきた。

スウィフト・カーボンのテクノロジー

スウィフト・カーボンでは、従来のカーボンフレーム製作時に要いられる「Air-Bag方式」とは異なる方式を採用している。これは出来上がったフレームからAir-Bagを取り除く際にカーボンが剥離するのを防ぐため。その代わりに別の工法で取り除くことが出来る独自の「グライドテック・カーボンウォールテクノロジー(GLIDE TECH CARBON WALL TECHNOLOGY)」を採用している。この工法が出来る工場で生産をすることにより、フレームチューブ内側の仕上げを表面と同じ滑らかさで仕上げることができる。それは応力集中を避け、性能向上に貢献する。

リアブレーキのアウターケーブルはトップチューブに内蔵されるリアブレーキのアウターケーブルはトップチューブに内蔵される ダウンチューブはつぶしが入り、空力効果を高めているダウンチューブはつぶしが入り、空力効果を高めている


ユニディレクショナルカーボン概観図ユニディレクショナルカーボン概観図 CNTカーボンナノチューブ技術はここ近年多く知られているが、サイクリングの業界での利用は完全ではない。スウィフト・カーボンのフレームにはこの工法が活用されている。
これまでCNTの難点であったカーボン・ナノチューブ(近年使われている炭素分子の多くは球状で、カーボンナノチューブは管状の炭素分子)の活用法に約2年の歳月をかけてヨーロッパの技術者と共に研究し、カーボン・ナノチューブをフレームに分散させ、造り上げている。更にナノテクレジンを加えることで、高い耐熱性を発揮し、過度の温度変化にも強くなっている。

シートポストはチューブと一体型で剛性を高めるシートポストはチューブと一体型で剛性を高める ポストと一体のシートチューブもグラフィカルだポストと一体のシートチューブもグラフィカルだ 一体型のシートチューブにはSWIFTのブランドロゴがあしらわれる一体型のシートチューブにはSWIFTのブランドロゴがあしらわれる

また、ユニディレクショナルカーボンを利用することで、高剛性、高耐久性、軽量性を求めることができる。そして従来の綾織りされた2方向のカーボン繊維に重ねる事で、部分的な強度アップや各フレームサイズ毎に必要とされる強度調整も可能にしている。

スウィフトは日本のパートナー企業と共に、熱で合金を扱えるようなカーボンを開発している。そのひとつ、「サーマルカーボン」は、特別なバイク用コンポーネントへ応用ができる素材だ。スウィフトはカーボンホイールもプロデュースしているが、このナノチューブカーボンのリム構造は、従来のカーボン繊維に対して136%以上の耐久性がある。この構造でリム強度が15%増し、ブレーキング時のCTE(熱による摩擦膨張係数)を15%減少させることに成功している。

ボトムブラケットにはBB-30を採用しているボトムブラケットにはBB-30を採用している スウィフト R838 ISPのエンド部分スウィフト R838 ISPのエンド部分

今春より日本での展開が始まったスウィフト・カーボンには、主なラインナップとしてR838 ISP、R830SL、R833TTの3つのフレームがある。そのフラッグシップモデルのR838 ISPの実力はいかに。さっそくインプレッションをお届けしよう。




ーインプレッション


「レースで真価を発揮する高性能実戦バイク。驚きのハイコストパフォーマンス」
戸津井俊介(OVER-DOバイカーズサポート)



「レースで真価を発揮する高性能実戦バイク。驚きのハイコストパフォーマンス」戸津井俊介(OVER-DOバイカーズサポート)「レースで真価を発揮する高性能実戦バイク。驚きのハイコストパフォーマンス」戸津井俊介(OVER-DOバイカーズサポート) 乗ってみてまず先に感じたのはフレーム自体の剛性の高さです。どんなシチュエーションでも踏み込めば踏み込むだけ加速していけます。とりわけ高速巡航時からの加速に光るものを感じました。ただこれは、裏を返せば相応の脚力がないとスピードを維持できないということにもなりますよね。

フォークについて見てみましょう。振動吸収性に関しては、路面のカドを抑えてなめらかに走っていけるような味付けだとは言えないところです。タテ方向にしなるフォークなので、サドルに座ってペダリングしている時には振動吸収性の高さが発揮され、快適さを感じることができます。

しかしダンシングでハンドルに被さるような荷重でペダリングをするときに、やや粘りすぎるきらいを感じました。レースバイクとして快適さをとっていない以上、ここはもっとシャッキリしていてもよかったかな、と思います。

このバイク自体はレーシングバイク中のレーシングバイク。脚自慢の人以外には、「ロングライド向きだ」などと言っておススメできないバイクだと思います。逆に、戦うためのバイクを欲しているレーサーにはこの一台を強く推せる。特に路面のいいサーキットのようなコースで使うにはいいバイクだと思います。一般的に言えば上級者向け、ということになるでしょうか。フレームフォークで20万円ちょっとというコストパフォーマンスには驚かされますね。

僕は現役選手の時から割と柔らかいバイクが好きだったので、このようなガッチリしたバイクに対しては少し辛めの採点になりがちなのをご理解ください。BBや後ろ三角がカタめなので、踏んだら踏んだだけスッと進んでいく感覚はレースバイクのそれです。こういうバイクは、ホイールとの組み合わせ方でキャラクターが変わりますよね。僕は、剛性のしっかりしたアルミのホイールを入れてバイクの性格をよりハッキリさせた上でもう一度走ってみたいと思いました。



「軽い走りが光る。無名なのにあなどれない高性能をもつことが驚き」
鈴木祐一(Rise Ride)



新しく日本に入ってきたカーボンのブランドということで、僕も全く知りませんでした。「流行に乗ってカーボンバイクを作っちゃった無知な新興メーカーなのでは?」なんて意地悪に考えていたのですが、乗ってみたらいい意味ですごく印象を覆されました。すごくいいバイクでびっくりしました。

何がいいか? ブランドや価格などの印象ではなく、乗って感じた良さからいうと、その軽さです。持った時の軽さではなく、乗った時の加速感の軽さ。これがものすごく気持ちいい。スタートダッシュからの加速や、登りながらアタックをかけるような加速、高速域からさらにダッシュをかけるような加速、どのスピードレンジからでも加速の意志に対するレスポンスの良さを感じました。

カーボンバイクで軽いバイクを作ろうとすると、どうしてもカタくなってしまう傾向があると思います。重量も、走っていての軽さも実現できるけれど、バイクそのものがカタいものになる。それが見事にこのバイクでは違うフィーリングになっていた。走りの軽さと同時に、振動吸収性と路面追従性がものすごく高い。

「軽い走りが光る。無名なのにあなどれない高性能をもつことが驚き」鈴木祐一(Rise Ride)「軽い走りが光る。無名なのにあなどれない高性能をもつことが驚き」鈴木祐一(Rise Ride)

たとえばカタいフレームに柔らかめのフォークを入れると、フロントの追従性は高くてもリアが弾かれるといったアンバランスが生まれてしまう。このバイクはこうした前後のバランスが見事に保たれているのを体感しました。

よくバイクインプレッションでは「レースからロングライドまで」っていうコピーがつけられますよね。ただ厳密に言えば、どのバイクもどちらかにはキャラが振られているんです。このバイクに関しては、まったりツーリングではもちろんない。対象ユーザーはロードレースをやっている人です。レーサーは、結局普段のライドもファストラン的に長い時間をそれなりに速く走るので、そういう用途も見越しておススメできます。俊敏に反応する軽快なバイクです。

僕自身、こういう高レスポンスのバイクが好きということもあるので、好みの話になっていしまうかもしれないのですが、すごく高評価をつけられるバイクです。無名ブランドだからといって変に先入観を持たないで、このバイクの性能を体感して欲しいと思います。




スウィフト R838 ISPスウィフト R838 ISP (c)Makoto.AYANO/cyclowired.jp

スウィフト R838 ISP

ハイモジュラスUDカーボン
ナノカーボンテクノロジー
グライドテックカーボンウォール
フルモノコックフレーム(T800/T1000+M40カーボンブレンド)
インテグラルHPセット 1.1/8 & 1.1/2サイズ(付属)
BB-30ボトムブラケット(STD用BSCアダプター付属)
重量:フレーム 1050g / Fフォーク 350g (L:フレームサイズ)
インテグレートシートポスト
インターナルシフトワイヤー
FD-FD-34.9mm
サイズ:XS / S / M / ( L以上は受注生産)
カラー:RED / SIL-GRAY
ISP仕様:価格:本体価格 210,000円 税込価格 220,500円




インプレライダーのプロフィール

戸津井俊介(OVER-DOバイカーズサポート)戸津井俊介(OVER-DOバイカーズサポート) 戸津井俊介(OVER-DOバイカーズサポート)

1990年代から2000年代にかけて、日本を代表するマウンテンバイクライダーとして世界を舞台に活躍した経歴を持つ。1999年アジア大陸マウンテンバイク選手権チャンピオン。MTBレースと並行してロードでも活躍しており、2002年の3DAY CYCLE ROAD熊野BR-2 第3ステージ優勝など、数多くの優勝・入賞経験を持つ。現在はOVER-DOバイカーズサポート代表。ショップ経営のかたわら、お客さんとのトレーニングやツーリングなどで飛び回り、忙しい毎日を送っている。09年からは「キャノンデール・ジャパンMTBチーム」のメカニカルディレクターも務める。
最近埼玉県所沢市北秋津に2店舗目となるOVER DO所沢店を開店した(日常勤務も所沢店)。
OVER-DOバイカーズサポート


鈴木祐一鈴木祐一 鈴木 祐一(Rise Ride)

サイクルショップ・ライズライド代表。バイシクルトライアル、シクロクロス、MTB-XCの3つで世界選手権日本代表となった経歴を持つ。元ブリヂストン MTBクロスカントリーチーム選手としても活躍した。2007年春、神奈川県橋本市にショップをオープン。クラブ員ともにバイクライドを楽しみながらショップを経営中。各種レースにも参戦中。セルフディスカバリー王滝100Km覇者。
サイクルショップ・ライズライド


ウェア協力:SUGOi

text:Yufta.OMATA
photo:Makoto.AYANO
フォトギャラリー 
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