昨年「北のクラシック」を席巻したファビアン・カンチェラーラ(スイス、レオパード・トレック)の独走力が再び火を噴いた。3月26日に開催された第54回E3プライス・フラーンデレン(UCI1.HC)でカンチェラーラが終盤17kmを独走する圧勝。ロンド・ファン・フラーンデレンやパリ〜ルーベに向けて弾みを付けた。

パヴェ区間を進むプロトンパヴェ区間を進むプロトン photo:Cor Vos今年で開催54回目を迎えるE3プライス・フラーンデレンは、その名の通りベルギー・フランドル地方を舞台にしたセミクラシック。ハーレルベーケを発着する202kmのコースには「オウデ・クワレモント」や「パテルベルグ」など、フランドルクラシックお馴染みの急坂が合計12カ所設定されている。

石畳の激坂が連続するコースは、ロンドに似る。選手には石畳を乗るテクニックと同時に、激坂を越えるパワーも要求される。北のセミクラシックらしいタフなコースレイアウトだ。

ワグナーのホイールを受け取ってスタートするファビアン・カンチェラーラ(スイス、レオパード・トレック)ワグナーのホイールを受け取ってスタートするファビアン・カンチェラーラ(スイス、レオパード・トレック) photo:Cor Vos無線禁止の影響もあり、レース序盤はアタックが決まらないハイスピードな展開が続いた。ようやく逃げが決まったのは100kmを過ぎてから。逃げたのはスチュアート・オグレディ(オーストラリア、レオパード・トレック)やセップ・ファンマルケ(ベルギー、ガーミン・サーヴェロ)ら7名。メイン集団はこの動きを見送った。

やがてゴールまで60kmを切り、「エイケンベルグ」を過ぎると、ガーミン・サーヴェロの集団ペースアップが始まる。レースが加熱し始めるちょうどその頃、カンチェラーラはパンクとメカトラで数度のバイク交換を強いられる。カンチェラーラはチームカーの最後尾まで下がったが、何とか勝負どころまでに集団前方に復帰した。

素早くバイク交換したファビアン・カンチェラーラ(スイス、レオパード・トレック)素早くバイク交換したファビアン・カンチェラーラ(スイス、レオパード・トレック) photo:Cor Vosゴールまで53kmを残し、「ターインベルグ」でハインリッヒ・ハウッスラー(オーストラリア、ガーミン・サーヴェロ)が動く。ハウッスラーにはユルゲン・ルーランズ(ベルギー、オメガファーマ・ロット)やニキ・テルプストラ(オランダ、クイックステップ)らが合流し、7名の追走グループが形成される。

ゴールまで40kmを残し、追走グループが40秒遅れ、メイン集団が1分40秒送れという展開。やがてゴールまで38kmを残した「パテルベルグ」でトル・フースホフト(ノルウェー、ガーミン・サーヴェロ)がペースを上げてメイン集団を絞り込む。一方、先頭グループはファンマルクのアタックをきっかけに2つに分裂した。

メイン集団内で走るファビアン・カンチェラーラ(スイス、レオパード・トレック)メイン集団内で走るファビアン・カンチェラーラ(スイス、レオパード・トレック) photo:Cor Vos「オウデ・クワレモント」通過後、ラスト33km地点でカンチェラーラが不意をついてメイン集団からアタック。前の追走グループに合流したカンチェラーラは、そのまま先頭固定でハイスピード巡航。逃げていたオグレディが下がり、カンチェラーラに手を差し伸べた。

やがてオグレディが牽引する追走グループは、ゴールまで20kmを残してファンヘッケやハウッスラーを含む先頭グループをキャッチ。15名ほどに膨れ上がった先頭グループから、ゴール17km手前でブラム・タンキンク(オランダ、ラボバンク)がアタックすると、これにカンチェラーラが反応する。タンキンクを追い抜いたカンチェラーラは、そのまま独走に持ち込んだ。

独走でゴールするファビアン・カンチェラーラ(スイス、レオパード・トレック)独走でゴールするファビアン・カンチェラーラ(スイス、レオパード・トレック) photo:Cor Vosハンドル上部に手首を乗せ、TTポジションで快走するカンチェラーラ。タイム差はぐんぐん広がり、ラスト10kmで50秒に。追走グループからはハウッスラーやテルプストラらがアタックを繰り返したが、爆走するカンチェラーラには追いつかない。結局カンチェラーラは後続を1分引き離す力走で勝利。圧勝だった。

「今日は『何としても勝つ』と意気込んで出場した。今年はパンクしたし、無線使用禁止だったので、昨年以上に特別な勝利に感じられる。(バイク交換後)集団に復帰するためにターインベルグを全力で駆け上がったよ」。セミクラシック連覇を達成したカンチェラーラは満足げな表情で語る。

1分遅れの追走グループはユルゲン・ルーランズ(ベルギー、オメガファーマ・ロット)を先頭にゴール1分遅れの追走グループはユルゲン・ルーランズ(ベルギー、オメガファーマ・ロット)を先頭にゴール photo:Cor Vos「この勝利はチームに大きな自信を与えてくれる。チーム一丸となったパーフェクトなレースだった。特にステューイ(オグレディ)の働きは素晴らしかったよ。彼が逃げグループの中にいたことで、リラックスして走ることができたんだ。これからも自分たちのレースをするだけだ。準備は整っている」。

昨年カンチェラーラはこのE3プライスを制し、ロンド・ファン・フラーンデレン、パリ〜ルーベを制した。カンチェラーラは翌日のヘント〜ウェベルヘムを欠場するが、それは連覇の懸かったロンドとパリ〜ルーベに集中するため。「北のクラシック」ダブル連覇に向けて完璧な仕上がりを見せた。

レース展開はライブストリーミング映像、選手コメントはレオパード・トレック公式サイトより。

E3プライス・フラーンデレン2011結果
1位 ファビアン・カンチェラーラ(スイス、レオパード・トレック)    4h34'49"
2位 ユルゲン・ルーランズ(ベルギー、オメガファーマ・ロット)      +1'00"
3位 ウラディミール・グセフ(ロシア、カチューシャ)
4位 セップ・ファンマルケ(ベルギー、ガーミン・サーヴェロ)
5位 ブラム・タンキンク(オランダ、ラボバンク)
6位 ウィリアム・ボネ(フランス、FDJ)                 +1'01"
7位 ハインリッヒ・ハウッスラー(オーストラリア、ガーミン・サーヴェロ) +1'06"
8位 セバスティアン・イノー(フランス、アージェードゥーゼル)
9位 スチュアート・オグレディ(オーストラリア、レオパード・トレック)
10位 セルゲイ・イワノフ(ロシア、カチューシャ)

text:Kei Tsuji
photo:Cor Vos