2011年2月24日、ジロ・ディ・サルデーニャ(UCI2.1)第3ステージが2級山岳頂上ゴールが設定された173kmで行なわれ、登りで絞られた集団によるスプリントでペーター・サガン(スロバキア、リクイガス・キャノンデール)が勝利。サガンはダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ・ISD)から総合首位を奪い返した。

スタート地点で子どもたちに囲まれる別府史之(日本、レディオシャック)スタート地点で子どもたちに囲まれる別府史之(日本、レディオシャック) photo:Cor Vos第3ステージはサルデーニャ島の内陸部に位置するオラーニから同島東部のラヌゼーイまでの173km。104km地点に1級山岳ジェンナ・シラーナ峠が設定されており、最後は2級山岳ラヌゼーイを駆け上がってゴールする。前日の頂上ゴールより勾配は緩く、難易度は低い。

気温15度のオラーニをスタート後、13km地点でアレッサンドロ・バッラン(イタリア、BMCレーシングチーム)のアタックが決まる。元世界王者バッランには、マキシム・イグリンスキー(カザフスタン、アスタナ)やマルコ・フラッポルティ(イタリア、コルナゴ・CSFイノックス)ら5名が合流した。

メイン集団を牽引するランプレ・ISDメイン集団を牽引するランプレ・ISD photo:Cor Vos1級山岳ジェンナ・シラーナ峠に差し掛かる頃にはタイム差は5分に。峠の頂上はアントニオ・サントーロ(イタリア、アンドローニ・ジョカトリ)が先頭通過。しかしこの登りでメイン集団とのタイム差は一気に縮まった。

ゴールまで50kmを残してタイム差は1分30秒。最後の2級山岳ラヌゼーイが近づき、タイム差が1分を切ると逃げグループは分裂する。バッランとサントーロが逃げ続けたが、リクイガス・キャノンデールとランプレ・ISDが牽引するメイン集団にラスト7km地点で吸収された。

サルデーニャ島内陸部の山岳地帯を進むサルデーニャ島内陸部の山岳地帯を進む photo:Cor Vos2級山岳の緩斜面でパオロ・ティラロンゴ(イタリア、アスタナ)やステファノ・ピラッツィ(イタリア、コルナゴ・CSFイノックス)がそれぞれ単独アタックを仕掛けたが、リクイガスとランプレの2チームが強力に牽引するメイン集団にラスト4kmで吸収。

数kmに渡って集団を引き続けたのは、昨年のブエルタ・ア・エスパーニャ覇者ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)。ラスト2km地点でのエマヌエーレ・セッラ(イタリア、アンドローニ・ジョカトリ)のアタックも、ニーバリに代わって集団先頭に立ったエロス・カペッキ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)によって封じ込められる。

肩を組むロビー・マキュアン(オーストラリア、レディオシャック)とアレッサンドロ・ペタッキ(イタリア、ランプレ・ISD)肩を組むロビー・マキュアン(オーストラリア、レディオシャック)とアレッサンドロ・ペタッキ(イタリア、ランプレ・ISD) photo:Cor Vosカペッキの後ろにはポイント賞ジャージを着るサガン。その後ろにリーダージャージを着るクネゴとダニーロ・ディルーカ(イタリア、カチューシャ)が続く。30名ほどに絞られたこの先頭集団の中には別府史之(レディオシャック)の姿も。

カペッキの強力なリードアウトはラスト1kmを切っても続き、丘の上に佇むラヌゼーイの街中に入ると、ラスト200mでサガンが強力なスパートを仕掛けた。

エロス・カペッキ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)がメイン集団を率いてラスト1kmエロス・カペッキ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)がメイン集団を率いてラスト1km photo:www.ilgirodisardegna.it勢いのあるダンシングで一気に先頭に立つサガン。リーダージャージのクネゴのスプリントは伸びず、10m近いリードをもってサガンがゴールに飛び込んだ。

第1ステージで優勝してリーダージャージを獲得しながら、前日の第2ステージの登りに苦戦し、総合2位に後退したサガン。僅か1日でリーダージャージをクネゴから取り返した。しかもステージ2勝目という文句無しの首位奪回だ。

クネゴらを引き離してゴールするペーター・サガン(スロバキア、リクイガス・キャノンデール)クネゴらを引き離してゴールするペーター・サガン(スロバキア、リクイガス・キャノンデール) photo:www.ilgirodisardegna.it「非常に満足している。」サガンは相変わらずの落ち着いた表情でインタビューに応える。「チームメイトの力があってこその勝利だった。ニーバリとアニョリが登りでリズムを作ってくれて、ラスト1.5kmを切ってからカペッキに牽かれて先頭に立った。僕はラスト200mで飛び出したんだ。」

昨年のパリ〜ニースでステージ2勝を飾ってブレイクし、トップ選手の仲間入りを果たしたサガンだが、まだ21歳になったばかりの、あどけなさの残る若者だ。2008年にはジュニアMTB世界チャンピオンに輝き、ジュニアシクロクロス世界選手権でも2位に入っている。

「僕にとって自転車は楽しみを与えてくれるもの。MTBで自転車競技を始めて、ロードレースを始める前にトラックやシクロクロスも経験した。これが生まれ持った力なのか分からないけど、もっともっと勝ちたい。昨シーズンよりももっと長い間勝ち続けたい。まだ学ぶことは沢山有る。そしてまだ伸び代があると思う。特に距離が長くて勾配のある登りでの走りは要改善だ。」

サガンの成長を支えているのはリクイガス・キャノンデールのサポート体制。じっくりと時間をかけて育てるために、チーム首脳陣が昨年プロ1年目のサガンをグランツールに送り込むことはなかった。サガンはチーム内の雰囲気の良さをこう語る。「いつもチームメイトに多くのことを教えてもらっている。バッソは『周りの人物のアドバイスを全て聞き入れる必要は無い』と教えてくれた。僕が道を見失ったとき、ニーバリの助言のおかげで自信を取り戻した。オスは進むべき道を示してくれるし、グアルニエーリはスタート前のバスの中でDJを務めてくれて、ロックで気分を高めてくれるんだ。」サガンは3月19日に開催されるミラノ〜サンレモをシーズン前半の目標に据えている。

この日、レース終盤まで先頭集団に食らいついた別府史之は、26秒遅れの27位でゴール。連日の好走により、総合24位に浮上している。フミは自身のTwitterで「毎日3000m近く登るタフステージ。今日の山岳ゴールフィニッシュは、良いところまで粘ったけれど、最後の1kmで遅れてしまった。だけど、イタリアンクライマーが集まる中、いい感じで登れると思う。今日は監督から『アタックせずに最後に備えるように』という指示があったので動かなかった」とコメントしている。

レース展開はレース公式テキストライブならびにレース映像、選手コメントはガゼッタ紙より。

ジロ・ディ・サルデーニャ2011第3ステージ結果
1位 ペーター・サガン(スロバキア、リクイガス・キャノンデール)   4h20'03"
2位 ホセ・セルパ(コロンビア、アンドローニ・ジョカトリ)
3位 ダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ・ISD)
4位 エマヌエーレ・セッラ(イタリア、アンドローニ・ジョカトリ)      +02"
5位 ベン・ヘルマンス(ベルギー、レディオシャック)
6位 ミケーレ・スカルポーニ(イタリア、ランプレ・ISD)
7位 ダニエーレ・ピエトロポッリ(イタリア、ランプレ・ISD)
8位 ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、コルナゴ・CSFイノックス)
9位 ロベルト・キセロフスキー(クロアチア、アスタナ)
10位 アンヘル・ビシオソ(スペイン、アンドローニ・ジョカトリ)
27位 別府史之(日本、レディオシャック)                +26"

個人総合成績
1位 ペーター・サガン(スロバキア、リクイガス・キャノンデール)  13h16'36"
2位 ダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ・ISD)           +04"
3位 ホセ・セルパ(コロンビア、アンドローニ・ジョカトリ)        +06"
4位 エマヌエーレ・セッラ(イタリア、アンドローニ・ジョカトリ)     +17"
5位 ベン・ヘルマンス(ベルギー、レディオシャック)           +22"
6位 ミケーレ・スカルポーニ(イタリア、ランプレ・ISD)         +28"
7位 エロス・カペッキ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)
8位 パヴェル・ブラット(ロシア、カチューシャ)             +32"
9位 ロベルト・キセロフスキー(クロアチア、アスタナ)          +33"
10位 マウロ・サンタンブロジオ(イタリア、BMCレーシングチーム)     +38"
24位 別府史之(日本、レディオシャック)               +1'57"

ポイント賞
ペーター・サガン(スロバキア、リクイガス・キャノンデール)

スプリント賞
アルキメデス・アルグエリエス(ロシア、カチューシャ)

山岳賞
ダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ・ISD)

チーム総合成績
アンドローニ・ジョカトリ

text:Kei Tsuji
photo:Cor Vos, www.ilgirodisardegna.it

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