ロイター通信が伝えたところによると、UCI(国際自転車競技連合)のライセンス委員会は近日中に会合を開き、オランダのヴァカンソレイユ・DCMが保有するUCIプロチームライセンスについて議論する。所属するリカルド・リッコ(イタリア)の血液ドーピング疑惑が明らかになった今、チームがUCIプロチームライセンスを失う可能性が出て来た。

トレーニングキャンプに参加したヴァカンソレイユ・DCMの選手たちトレーニングキャンプに参加したヴァカンソレイユ・DCMの選手たち photo:Cor Vosヴァカンソレイユ・DCMは昨年までUCIプロコンチネンタルチームとして活動し、今年UCIプロチームライセンスを獲得してトップチーム入りを果たしたオランダチーム。UCIプロチームライセンスを保有するチームはジロ・デ・イタリアやツール・ド・フランスを始めとするUCIワールドツアーレースへの出場が保証されている。

チームメイトたちと走るリカルド・リッコ(イタリア、ヴァカンソレイユ・DCM)チームメイトたちと走るリカルド・リッコ(イタリア、ヴァカンソレイユ・DCM) photo:Cor VosUCIプロチームの選定に際し、UCIが今年から新たに基準に盛り込んだのは過去2年間の所属選手の成績をもとにしたチームランキングだ。そこでヴァカンソレイユ・DCMはUCIプロツアーチームに退けを取らない12位に入った。チームの好ランキングの背景には、ツアー・オブ・オーストリア総合優勝を始め、シーズン7勝を飾ったリッコの活躍があった。

2008年のツール・ド・フランスで禁止薬物CERA(第3世代EPO)陽性が発覚し、20ヶ月の出場停止処分を受けたリッコは、昨年イタリアのチェラミカフラミニアで復帰。しかしシーズン半ばの8月にヴァカンソレイユ・DCMに移籍した。

今シーズンすでに3勝を飾っているヴァカンソレイユ・DCM今シーズンすでに3勝を飾っているヴァカンソレイユ・DCM photo:Cor Vosチームマネジャーを務めるダーン・ルイクス氏は当時「スポンサーとチームはリッコを信じている。彼は処分を受けており、セカンドチャンスに値する」と、歓迎コメントを残している。リッコ本人も「再びレースで活躍してファンの心を掴みたい。復活に向けて正しい道を歩んでいるはずだ」とやる気を見せていた。

しかし今年の2月に入り、リッコはモデナの病院に担ぎ込まれた。リッコは杜撰な方法での自己輸血が原因であると医師に告げたとされている。所謂血液ドーピングの疑いが浮上したのだ。

リッコは規模の大きなバッジョヴァーラ病院に転院して治療に専念。主因とされる腎不全は肺疾患と心血管障害を引き起こしたが、その後は順調な回復を見せ、18日に無事退院している。血液ドーピング疑惑が浮上してすぐ、イタリア当局がドーピング捜査を開始しており、リッコは現在ヴァカンソレイユ・DCMにより暫定的な出場停止状態にある。

ヴァカンソレイユ・DCMの悩みの種はリッコだけではない。リッコと並んでチームの目玉になるはずだった新加入のエセキエル・モスケラ(スペイン)にもドーピング疑惑が浮上している。モスケラは昨年ブエルタ・ア・エスパーニャ(ニーバリに次いで総合2位)期間中のドーピング検査で、EPOの痕跡を隠すマスキング剤として知られるヒドロキシエチルスターチの陽性反応が検出された。なお、ヒドロキシエチルスターチがWADA(世界アンチドーピング機構)の禁止薬物リストに入っていないため、モスケラは処分を受けていない。

それらを踏まえ、UCIはヴァカンソレイユ・DCMのライセンスを見直す方向にある。プロチームライセンス選定の際に重視された、チームの倫理性と競技レベルが揺らいでいるためだ。仮にヴァカンソレイユ・DCMがプロチームライセンスを失った場合、現在プロコンチネンタルチームとして活動するジェオックス・TMCやコフィディスが昇格することも考えられる。

text:Gregor Brown
translation:Kei Tsuji