シクロクロス世界選手権、7周回で開催されたジュニアカテゴリーで沢田時(ENDLESS/ProRide)が、宮澤崇史のもつ日本人最高位の記録を塗り替え、トップから2分14秒遅れの16位でフィニッシュした。本人のコメントともに白熱のレースを振り返る。

コースを試走する沢田時(ENDRESS/ProRide)コースを試走する沢田時(ENDRESS/ProRide) photo:Sonoko Tanaka日本チームの初戦は、高校2年生の沢田時がエントリーした、大会初日のジュニアカテゴリーだ。近年、日本チームには該当選手がいなかったため、久しぶりのジュニアカテゴリー参戦となる。

レース開始の11時に合わせて、ホテルの出発時間は7時半。まだ辺りは真っ暗で、南の空に三日月が光っている。ずっと曇り空続きだったが、今日はようやく晴れそうだ。

スタートに向けて準備を整える沢田時(ENDRESS/ProRide)スタートに向けて準備を整える沢田時(ENDRESS/ProRide) photo:Sonoko Tanaka朝食をとって会場に到着したのは8時過ぎ。寒さ対策のために用意されたコンテナで沢田は着替えを
したり、アップをしたり。「早くコースを走りたいですね…あと20分……」と、オフィシャルトレーニングが開始となる9時が待ちきれない様子。

日が昇ると澄んだ青空が広がったが、そのぶん夜間の冷え込みは強かった。コースは昨日以上に固く凍りつき、さらにこれまでの試走で深く刻まれた轍は重機で均されていた。おそらく高速レースになるだろう。

スタート前にチェックを受ける沢田時(ENDRESS/ProRide)スタート前にチェックを受ける沢田時(ENDRESS/ProRide) photo:Sonoko Tanaka「すごく走りやすいです。とはいえ、この条件はどの選手にとっても同じことなんですけど」。試走を終えた沢田がはにかみながら話す。ビッグレースを控えながらもリラックスした笑顔は、どことなく頼もしい。

沢田のスタート位置は9列中4列目。中盤からのスタートだ。陸上競技場のトラックをほぼ1周してコースに入るレイアウトだが、スタート後、競技場の出口を通過したときはスタート位置同様、集団の中盤ほど、しかしコースを1周し競技場に戻ってきたときには順位を格段に上げ、トップから25秒差の16位で通過する。

スタートを待つ沢田時(ENDRESS/ProRide)スタートを待つ沢田時(ENDRESS/ProRide) photo:Sonoko Tanaka「スタートは集団の内側で我慢しながら走りました。そのあと、難しいキャンバーの登り付近で、下のラインで大きな落車が起こった。自分は上のラインを走っていたので、そこでたぶん15人くらい抜かしたと思います。そこからはレースがどんどん面白くなって、スタートラインでMCの興奮した声が自分の名前を呼ぶと、さらに興奮してきましたね」

その後も沢田は順位を上げ、2周回目は12位でフィニッシュラインを通過する。しかし5周回目の緩やかな登りで、前輪がパンクしてしまう。ピットでバイク交換をし、さほど順位に変動はなかったが、このあたりを反省点と本人は振り返る。

16位でゴールする沢田時(ENDRESS/ProRide)16位でゴールする沢田時(ENDRESS/ProRide) photo:Sonoko Tanaka「後半、疲れが出てくると走りが荒くなって、パンクなどにつながってしまった。さらに残り2周回で脚にきだして、最終周回では両脚がつってしまいました。日本ではこんなことないんですが。その分出し切ったってことなのかな?」

「強い選手は後半も速い。後半2周もっと頑張れるようになれば、もっと上に入れると思う。今日の結果はミスも実力のうち。持っている力をすべて出し切れたと思います」

16位でゴールすると、悔しさは残るものの、どこかホッとした表情を浮かべた沢田。「終わっちゃいましたね……」試走のためコースに来ていた辻浦圭一ら日本チームから大喜びで迎えられ、ローラー台でダウンをしていると色んな感情が入り交じる。

「世界との差はまだ大きいと感じました。でも外国人選手を怖いとは思わなかった。1ケタに入りたかったので、今日の結果には決して満足していません。ジュニア最後となる来年は優勝を狙いたい。レースは優勝を狙わないと面白くないですから」

「後半の弱さが今後の課題。春からのマウンテンバイクレースは競技時間が長いので、後半部分のトレーニングになると思っています。そこを克服して、また来年挑戦したいと思います」

先週のワールドカップでは後悔が多く残ったが、そこで味わった悔しさが今回の世界選手権では大きなバネとなり、トップとの差を大幅に縮めることができた。ジュニアカテゴリーは1年1年の成長が著しい時期。現に6位までの上位入賞者は沢田よりも1歳年上の選手が占める。憧れだった世界の舞台に立ったことで、夢がより現実味を帯びたものとなった。世界で戦う厳しさや面白さ。今日のわずか40分のレースが、今後の1年に大きく影響してくるのだろう。

レース中、終始13〜16番手あたりを走行した沢田時(ENDRESS/ProRide)レース中、終始13〜16番手あたりを走行した沢田時(ENDRESS/ProRide) photo:Sonoko Tanakaレース中、終始13〜16番手あたりを走行した沢田時(ENDRESS/ProRide)レース中、終始13〜16番手あたりを走行した沢田時(ENDRESS/ProRide) photo:Sonoko Tanaka16位で闘いを終えた沢田時(ENDRESS/ProRide)16位で闘いを終えた沢田時(ENDRESS/ProRide) photo:Sonoko Tanaka


text&photo:Sonoko Tanaka

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