古いロードレースファンなら、1987年のリエージュ〜バストーニュ〜リエージュでステファン・ロッシュ(アイルランド)を下し、3連覇を達成したモレーノ・アルジェンティン(イタリア)の姿を覚えているだろう。あれから23年、12月17日に50回目の誕生日を迎えたアルジェンティンは、まだ攻撃の手を緩めない。

モレーノ・アルジェンティン(イタリア)モレーノ・アルジェンティン(イタリア) (c)CorVos「今プロトンの中で走っている選手はみんな感傷的で、個性が無い。闘争心に欠けていると言える」イタリアのガゼッタ・デッロ・スポルト紙のインタビューで、アルジェンティンは批判的なコメントを残している。「そのおかげでレースは人間くささを失った。観客を興奮させ、魅了する選手がいない」

その言葉通り、アルジェンティンは闘争心溢れる選手だった。ベルギーのクラシック界において、アルジェンティンは最も成功したイタリア人選手だった。

リエージュ〜バストーニュ〜リエージュでは1985年から3連覇を達成し、1991年に4度目の優勝。1990年、1991年、1994年のフレーシュ・ワロンヌ、1990年のロンド・ファン・フラーンデレンでも優勝を果たした。

グランツールで総合優勝を果たしたことはないが、ジロ・デ・イタリアで区間13勝、ツール・ド・フランスで区間2勝の活躍。1986年には世界選手権を制し、アルカンシェルを手にしている。

アルジェンティンが考える“見ていて退屈な選手”の筆頭は、今年ツールで総合1位と総合2位を分け合ったアルベルト・コンタドール(スペイン)とアンディ・シュレク(ルクセンブルク)だ。

1986年世界選手権ロードを制したモレーノ・アルジェンティン(イタリア)1986年世界選手権ロードを制したモレーノ・アルジェンティン(イタリア) (c)CorVos「コンタドール。彼の走りは全て計算し尽くされている。ツールという1つのレースを走るためだけに作られた、ワンオフのレースカーのようなもの。彼がどんな性格かなんて走りには関係ない。シュレクも同様だ。どんなレースをするかも予想がつくし、互いを尊重して待つこともある。少なくとも、落車やパンクはレースの一部のはずだ」アルジェンティンの批判は痛烈だ。

「彼らは想像力に欠けていて、リスクを負わない。無線のイヤホンを耳に入れている限り、彼らは監督のジョイスティックで動かされている人形のようだ」

アルジェンティンの時代、それは“人間味のない”ミゲール・インデュライン(スペイン)がツールで5連覇を果たした時代でもあった。しかしリエージュではアルジェンティンに軍配。インデュラインを打ち破った秘訣を、アルジェンティンはこう説明する。「夏はロードレース、冬はスキーに没頭する」

1994年に現役を引退してはや16年、現在アルジェンティンはスポーツ複合施設の計画に尽力している。有名デザイナーのマッテーオ・トゥン氏と手を組み、北イタリアのベッルーノに、ヴェロドロームやスキー、ホテルを組み合わせた複合施設を建設する計画。スキーが得意なアルジェンティンらしい計画だ。

スキーに興じるモレーノ・アルジェンティンスキーに興じるモレーノ・アルジェンティン photo:Cor Vos

text:Gregor Brown
translation:Kei Tsuji