2008年のツール・ド・フランスでドーピングスキャンダルを巻き起こしたリカルド・リッコ(イタリア)が、フランスのトップレースに戻ってくる。UCIプロチーム化を果たしたヴァカンソレイユのエースとして、リッコは3月のパリ〜ニースに出場する予定だ。

コッパ・サバティーニを制したリカルド・リッコ(イタリア、ヴァカンソレイユ)コッパ・サバティーニを制したリカルド・リッコ(イタリア、ヴァカンソレイユ) photo:Riccardo Scanferla今年まで第2ランクのUCIプロコンチネンタルチームとして活動していたオランダのヴァカンソレイユは、晴れて第1ランク(UCIプロチーム)18チームの仲間入りを果たした。

「UCIが発表した2011年度のチームランキングで、ヴァカンソレイユは12位だった。UCIプロチームライセンスも獲得したし、重要なレースに出場出来る可能性が高い。もちろんまだ確証はないけどね」。リッコはイタリアのガゼッタ・デッロ・スポルト紙の中でそう語っている。

ヴァカンソレイユと契約したリカルド・リッコ(イタリア)ヴァカンソレイユと契約したリカルド・リッコ(イタリア) photo:Vacansoreil pro cyclint team18のUCIプロチームは、全てのUCIワールドツアーレースに出場する権利と義務がある。UCIワールドツアーに含まれるのは、ツアー・ダウンアンダーやツール・ド・北京と言った新興レースから、全てのメジャークラシック、そして3つのグランツールまで。しかしグランツールに関しては、主催者が独自の判断でチームを選抜する可能性がある。

例を挙げると、ツール・ド・フランスの主催団体ASO(アモリー・スポルト・アルガニザシオン)は、ヴァカンソレイユをツールとパリ〜ニースに招待しない可能性がある。理由は、2008年ツールでドーピングスキャンダルを巻き起こしたリッコが所属しているから。

2008年のツール・ド・フランスでステージ2勝の活躍を見せたリカルド・リッコ(イタリア)2008年のツール・ド・フランスでステージ2勝の活躍を見せたリカルド・リッコ(イタリア) photo:Cor Vos同じような理由で、アルベルト・コンタドール(スペイン、アスタナ)は2008年のツール出場を逃した。2007年ツールでのアレクサンドル・ヴィノクロフ(カザフスタン)のドーピングスキャンダルの影響で、アスタナチームが2008年ツールに招待されなかったのだ。

リッコは2006年から2008年までの3年間、スペインのサウニエルドゥバルで走った。2008年にはジロ・デ・イタリアでステージ3勝を飾り、コンタドールに次いで総合2位に。2ヶ月後のツールでもステージ2勝を飾る活躍を見せたが、期間中にCERA(第3世代EPO)の陽性が発覚し、20ヶ月の出場停止処分を受けた。ツールのステージ2勝という成績はのちに剥奪されている。

2008年ツール期間中にドーピング陽性が発覚したリカルド・リッコ(イタリア)2008年ツール期間中にドーピング陽性が発覚したリカルド・リッコ(イタリア) photo:Cor Vosそして今年、リッコはレースに復帰した。当初はチェラミカ・フラミニアに所属し、セッティマーナ・ロンバルダとジロ・デル・トレンティーノ、そしてツアー・オブ・オーストリアでステージ優勝。8月には75000ユーロ(約810万円)の違約金を払ってチェラミカ・フラミニアを離れ、現在のヴァカンソレイユに合流した。リッコは直ぐさまコッパ・サバティーニで勝利し、チームに報いた。リッコが稼いだUCIポイントが、少なからずヴァカンソレイユのUCIプロチーム化を後押ししたと言っていい。

「来シーズンに向けてトレーニングを開始している。すでに20日間以上トレーニングに出かけているんだ」。例年より早い時期にトレーニングを開始したリッコ。2月9日から13日までフランスで開催されるツール・メディテラネアンでシーズンインする予定だ。

その後、ルタ・デル・ソル、パリ〜ニース、ミラノ〜サンレモ、ボルタ・ア・カタルーニャ、アルデンヌ・クラシックに出場。RCSスポルトがヴァカンソレイユを招待すれば、ジロ・デ・イタリアがリッコのセカンドキャリアのハイライトになる。

「彼(リッコ)はアルド・サッシという良き理解者を得た。正しい道を歩み始めたと思う」。ジロのレースディレクターを務めるアンジェロ・ゾメニャン氏はそう語る。「個人的には、彼は悪い人間じゃないと思っている。他の人間と違うだけだ。まだまだ多くのレースで結果を残せると思う。問題は、彼が心を入れ替えたのかどうかだ」。

リッコは10月からトレーナーのサッシ氏に指示を仰いでいる。マペイのトレーニングセンターを主宰するサッシ氏は、評判のトレーナーとしてカデル・エヴァンス(オーストラリア)やマイケル・ロジャース(オーストラリア)、イヴァン・バッソ(イタリア)の活躍を影で支えてきた。

「サッシとはよく話し合っているし、彼のスタッフたちもアドバイスをくれる。少しトレーニングメソッドを変更したんだ。新しいトレーニングも取り入れた」。リッコは新体制で第2のキャリアを歩み始めている。

text:Gregor Brown
translation:Kei Tsuji