ロードレースでは新城幸也(Bboxブイグテレコム)に代表されるように、海外で結果を出す日本人選手たちが現れている。そしてMTBでも世界と戦う日本人の姿がある。その第一人者、山本幸平(チームブリヂストン・アンカー)に話を聞いた。

山本幸平(チームブリヂストン・アンカー) ワールドカップ第3戦ベルギー・Houffalize大会を走る山本幸平(チームブリヂストン・アンカー) ワールドカップ第3戦ベルギー・Houffalize大会を走る photo:Hoshi - K. Yoshida

山本幸平(チームブリヂストン・アンカー)山本幸平(チームブリヂストン・アンカー) photo:Akihiro.NAKAO山本は、北海道出身で兄の山本和弘(キャノンデール・ファクトリーレーシング)と共に世界を目指し、今までの選手に無いパワフルな走りが特徴の、日本のトップクロカンライダーだ。

今年はワールドカップに全て参戦し、世界を転戦してUCIランキングで現在24位と、日本人選手歴代最高位につける。

MTBのワールドカップに全て参戦した感想と北京五輪に続くロンドン五輪への抱負・世界と戦う術を聞いた。


― 海外遠征は一段落?

そうです。あとはアジア大会です。

― 今年ワールドカップにフル参戦されました。日本のレースとはどう違いますか?

違う競技ですね。ワールドカップは世界中からトップライダーが集まって競い合う場なので、全てにおいてタフじゃないとダメですね。

― 去年よりも順位は上がっている?

もちろんです。去年は2戦しか出ていないんです。今年は初めてのフル参戦で、この順位は結構いい。ベルギーの30位は良かったけど、他はあまりしっくりこなかった。前半2月の段階で足首を怪我して、気持ちもガタガタで3月はあまり乗れなかったけど、毎週やってくるUCIレースには出ていました。

レベルも高いしそれに堪えて徐々にコンディションを上げて、5月のベルギーで気持ちも入って、ここから自信がついた。
ベルギーのレースだとレベルも高いしエントリーは350人にもなる。ここで30位に入って『戦える』と感じたし、もっと前に行けると感じました。他はパッとしなかったけど、気にせずに狙っていた世界選に合わせてバッチリいけました」

― ワールドカップより下のクラスだと上位に行ける?

世界のトップ選手が来たり・来なかったりして、いなかったら表彰台は全然狙えるんです。

― 全日本選手権は調子が悪かった?

全然駄目でした。体調を世界選に合わせていたので、全日本は『遠征レース』でした。移動も多くて、月曜開催の次の週はスイスでワールドカップ、次週はイタリアで成績を出さないとランキングが上がらない...。頭がそっちに行っていたので、集中もできないし、日本の暑さとジメジメ感。時間も長いし、参ってしまった。

― ロンドン五輪出場のためのUCIポイントは?

来年の5月で一旦締め切られて、再来年の5月に最終的に決まるんです。大陸別ポイントになるので、各国の上位3名が対象になって、僕、平野星矢(ブリヂストン・アンカー)、竹之内悠(チームユーラシア・ウィリエール)でポイントを獲得していく。この3名がレースに出て効率よく獲得しないと意味がない。

しかしレースと言っても星矢だと今年のままの走り方ではワールドカップでの完走は難しいので、走り方を変えていかなければいけない。今は絞って下のクラスのUCIレースに出て、細かく稼いでいく。北京五輪は繰り上がり出場だったけど、ロンドン五輪は変な怪我をしない限りは大丈夫(※)。

― ロードは新城幸也を筆頭に海外で走る選手が多いですが、MTBでも海外で走りたい人がいたら?

海外に出たいならどんどん行った方がいいですね。レースだけで無くその環境を知る事が大事。じゃないとレースで戦えない。(好調な)星矢は海外で僕と同じ生活を真似してやる気もあるので、成長できた。伸びて当然です。

― フランスのコーチの練習メニューは?

日本人の考える事と全く違うんです。日本人が普通考えない事をやっている。

ワールドカップ第3戦ベルギー・Houffalize大会を走る山本幸平(チームブリヂストン・アンカー)ワールドカップ第3戦ベルギー・Houffalize大会を走る山本幸平(チームブリヂストン・アンカー) photo:Hoshi - K. Yoshida


― 日本で海外との差を埋めるには?

ヨーロッパで活動しているコーチとかを呼んで流れをつくるのが大事。日本の今の流れが自転車選手にとって良くない。海外・ヨーロッパの流れが自転車競技の流れがメインで、それを知っている人がいないと、どれだけトレーニングをしても難しい。
日本人だとレース会場に行くまでに知らない言葉と知らない食事に疲れちゃう。それを知っているコーチがいれば疲労は防げる。僕はそれを知っているから、どこに行っても変わらないでいられる。海外の選手は皆それを知っているからトレーニングもできるし、毎週レースもできる。頭を切り変えないとね。

基本ヨーロッパは待つ時間が長い。レストランでもご飯が出てくるまでが長くて夜遅くなるし、そこで慣れないと疲れ切っちゃう。

― 日本人でヨーロッパのMTB環境を知っている人は?

ロードはいるけどMTBではいないと思います。自分がヨーロッパでレースをしていて、日本人選手として未知の領域に入っています。

― 若い人たちにアドバイスは?

MTBを楽しんで続けてもらいたい。やる気があるならトップライダーに質問して行動したら、誰かが手助けしてくれる。
鈴木雷太さんや柳原康弘さんが切り拓いてくれた道を辿って、僕や星矢が最短でここまで来ている。雷太さんが知っている事を僕に教えてくれて、ここまで来れた。そこから雷太さんのできなかった事を僕がやろうとしている。

ロードだと福島兄弟がフランスに渡って若手を育てて、幸也さんみたいに世界選9位に行ける。それは良い形なので、MTBでもぜひそうなって欲しい。

― 来年の活動は?

今年と同じくワールドカップのフル参戦、世界選でTOP10を狙う。幸也さんも世界選で9位に入ったし、僕もロンドンでメダル、とも言えない。ワールドカップで成績を出して、いち早くTOP15に入ることですね。

今だとTOP15がイメージできる。そこから上に行くには、まだ違う事をしなくてはいけない。今年の世界選でも、もうちょっと踏めたらTOP15までいけた。ワールドカップでTOP15に入れたら、世界選でTOP10まで見えてくる。だから来年前半が勝負です。

日本・アジアのトップ選手として、MTBという素晴らしい競技をインターネットなどで積極的にアピールして盛り上げていきたいですね。


※ロンドン五輪出場のためには国別ランキングによる参加数割り振りのルールがあり、ランキング1位から5位までが各国3名、6位から13位までが2名、14位から24位までが各国1名の枠が与えられる。9月6日現在の日本の国別ランキングは23位で、今の状態でオリンピック出場資格は1名分仮で確保されている。



山本幸平(やまもと・こうへい)プロフィールと2010年度の主な戦績

生年月日 1985.8/20
出身 北海道  幕別町

UCIランキング24位(10/20現在)
7/19 全日本選手権 1位
9/4 世界選手権(カナダ) 28位
9/29 アジア選手権(韓国)1位

4/25 ワールドカップ#1 - Dalby Forest(イギリス)  56位
5/2 ワールドカップ#2 - Houffalize(ベルギー)  30位
5/23 ワールドカップ#3 - Offenburg(ドイツ) 71位
7/25 ワールドカップ#4 - Champery(スイス) 44位
7/31 ワールドカップ#5 - Val di Sole(イタリア) 70位
8/28 ワールドカップ#6 - Windham, NY(アメリカ) 37位

3/28 Cyprus Sunshine Cup #2 - Afxentia - Macheras Mountains(フランス) 13
4/4 Roc Laissagais(フランス) 2位
4/18 Gran Premio Massi #2 - Flix(スペイン) 1位
5/16 Tour de la Ville d'Aoste(イタリア) 15位
6/13 L'Hexagonal Tour de France VTT - Locmine - Paris(フランス) 12位
6/27 Tour de l'Ain VTT - Bellegarde-Bourg en Bresse(フランス) 17位
8/15 Sport Club Isd Cup - Donetsk(ウクライナ) 2位


text:Akihiro.NAKAO
photo:Hoshi - K. Yoshida

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