ツール・ド・フランス覇者アルベルト・コンタドール(スペイン)のドーピング陽性が確定し、出場停止処分を受けた場合に備えて、サクソバンクのビャルヌ・リース監督はプランB(第2の手段)を用意していることを明らかにした。

ビャルヌ・リース監督ビャルヌ・リース監督 photo:Makoto Ayano「すでにプランBを練り始めている。だが今は詳細について語ることは出来ない」。リース監督はそう話す。

コンタドールは、9月30日、ツール・ド・フランス期間中のドーピング検査でクレンブテロールの陽性反応が出たことを発表。UCI(国際自転車競技連合)は即座にプレスリリースを出し、問題の陽性反応を精査するとともに、コンタドールを暫定的に出場停止状態にすると発表した。

ツール・ド・フランスを制したアルベルト・コンタドール(スペイン)ツール・ド・フランスを制したアルベルト・コンタドール(スペイン) photo:Cor Vosコンタドールは7月25日のツール・ド・フランス最終日を最後に、アスタナでのレース活動を終了している。仮にスペイン自転車競技連盟がコンタドールの出場停止処分を決めた場合、被害を受けるのは、来シーズンの移籍先であるサクソバンクのリース監督だ。

リース監督がコンタドールとの2年契約を発表したのは8月3日のこと。アンディとフランクのシュレク兄弟(ルクセンブルク)がチームを離れ、ルクセンブルクの新チームに移籍すると発表した1週間後のことだった。

リース監督のもとを去るシュレク兄弟(ルクセンブルク)リース監督のもとを去るシュレク兄弟(ルクセンブルク) photo:Cor Vosサクソバンクを離れるのはシュレク兄弟だけではない。すでにファビアン・カンチェラーラ(スイス)、スチュアート・オグレディ(オーストラリア)、マッティ・ブレシェル(デンマーク)、イェンス・フォイクト(ドイツ)、ヤコブ・フグルサング(デンマーク)の離脱が明らかになっている。リース監督はワンデークラシックでの戦力を何とか維持するため、ニック・ナイエンス(ベルギー)を獲得した。

「ナイエンスはダークホースとして高いポテンシャルを秘めている。過去のレベルを取り戻すことが出来れば、充分にエースとしてワンデークラシックで闘えるだろう」。リース監督はナイエンスに期待を込める。

しかしナイエンスはツール・ド・フランスでエースを張るような選手ではない。ではリース監督の言うプランBとは一体何なのか?コンタドールに代わる選手とは?

リース監督はグスタフエリック・ラーション(スウェーデン)やリッチー・ポルト(オーストラリア)、クリスアンケル・セレンセン(デンマーク)を軸に、新たに獲得したスペイン選手たち(本来コンタドールのアシスト役)とともにグランツールを闘う?

オーストラリアのポルトは今年のジロ・デ・イタリアで一気にブレイク。プロ1年目にも関わらず、総合7位という成績を残し、新人賞を獲得した。しかし、現実的に、5回グランツール制覇を成し遂げているコンタドールに対抗出来るほどのオールラウンダーは他にいない。

リース監督はコンタドールの一件に対するUCIの決断を待っている。しかし先週の金曜日、リース監督とコンタドールの耳に悪い知らせが飛び込んできた。イタリアのプロ選手アレッサンドロ・コロが、クレンブテロールの陽性により1年間の出場停止処分を受けた。しかもコロはコンタドールと同じく、汚染された牛肉を食べたと主張していた。コロの尿サンプル1ミリリットルの中から検出されたクレンブテロールは200ピコグラム。コンタドールの4倍の値だった。

「今はUCIの判断を待つのみだ。現状、それ以外に為す術が無い」。リース監督は歯がゆい表情でそう漏らす。

10月に入ってすぐ、リース監督は1ヶ月ぶりにコンタドールと話し合いの場を持った。そこで両者は意見を交わし、ドーピングへの関与がないことを確かめ合った。

「自分が彼を信じない理由が無い。今回の一件が、政治的なゲームに終わることを一番危惧している。ネガティブな印象しか残らないような最悪の結末を迎える可能性もある」。リース監督はデンマークのDR局のインタビューでそう語っている。

UCIは今週中にコンタドールに関する発表を行なうとしている。

text:Gregor Brown
translation:Kei Tsuji
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