KOBH60.1は端的に言ってドグマ60.1と同じカーボン素材を使ったピナレロのトップレンジモデルだ。名前に60.1と冠されているとおり、ドグマ同様に日本のトレカ製のNanoalloyテクノロジーを用いた弾性率60ton超という、最高品質のカーボン素材が用いられている。

ピナレロ KOBH60.1ピナレロ KOBH60.1 (c)Makoto.AYANO/cyclowired.jp

チェーンステイが大きくフレックス(湾曲)していることから分かるとおり、長く起伏の多い荒れたコースでも衝撃を吸収してライダーの疲労を軽減し快適さを提供できるように設計されたモデルだ。

Nanoalloyテクノロジーを用いたトレカ製の弾性率60ton超という最高品質のカーボン素材が用いられるNanoalloyテクノロジーを用いたトレカ製の弾性率60ton超という最高品質のカーボン素材が用いられる 大きく湾曲するシートステーは振動吸収性の向上を狙っていることが分かる大きく湾曲するシートステーは振動吸収性の向上を狙っていることが分かる


「KOBH」の名前の由来は、イタリア語のPave(パヴェ)にあたる、英語の「石畳」という意味の「Cobble」からの造語で、発音は「コブ」となる。

KOBH60.1はピナレロがスポンサードするチームスカイのリクエストにより2010年春のクラシックに向けて開発され、ロンド・ファン・フラーンデレンとパリ~ルーベにおいてデビューを飾った。
同じくピナレロに乗るケースデパーニュは、前年までシクロクロスバイクでパヴェ(石畳)のクラシックを走っていた。

しかし今年はチームスカイに移籍したフアンアントニオ・フレチャという優勝候補がいた。ならばシクロクロスバイクで間に合わせるのではなく、最高のバイクで闘いたいというのは当然のリクエストであろう。
かくしてKOBH60.1の、「ほとんど製品版に限りなく近いプロトタイプ」はロンドに間に合った。勝利こそ飾れなかったが、パヴェのレースで無事選手たちの走りを支えた。

流線形状のヘッド部はプリンスやドグマ譲りだ流線形状のヘッド部はプリンスやドグマ譲りだ 専用のKOBHオンダフォークは28mmタイヤ使用OKのワイドクリアランスを実現専用のKOBHオンダフォークは28mmタイヤ使用OKのワイドクリアランスを実現 フレックスステー先端のエンド部を見れば積極的にしならせる設計であることが見て取れるフレックスステー先端のエンド部を見れば積極的にしならせる設計であることが見て取れる


当時、チームスカイのエドヴァルド・ボアッソン(チームスカイ)はこう言った。「北のクラシックのために、我々はピナレロにドグマのSUVを作って欲しいと頼んだんだ。そうしたら彼らは本当に作ってきたんだよ」

そして7月のツール・ド・フランスにおいてもパヴェ区間が登場。第3ステージでは波乱が起きたが、チームスカイの選手たちはパヴェを無事乗り切り、ジェレイント・トーマスが4位に食い込み新人賞ジャージを長く着続けることになった。

つまり路面の悪いクラシックやセミクラシックレースなどで戦うために作られたのがこのKOBH60.1だ。新しいジオメトリーと、ドグマで効果を実証した左右非対称技術を用いた、ピナレロの新しいラインナップだ。

トップチューブは流麗なラインを見せる。リアブレーキケーブルは内蔵式トップチューブは流麗なラインを見せる。リアブレーキケーブルは内蔵式 上部に長く伸びたリアエンドの形状は可動することで振動吸収を高める狙いだろう上部に長く伸びたリアエンドの形状は可動することで振動吸収を高める狙いだろう


フィジカルにもメンタルにも想像を遙かに越えるストレスがかかる悪路で、最高のバイク。悪路のみならず、悪条件と置き換えてもよいだろう。長距離、長時間の走行で、路面の振動などから受けるストレスからライダーを護り、体力を温存する。それが結果として最高のパフォーマンスにつながるという考え方だ。

レースよりもやや上体の起きたポジション。『CenturyRide』と名付けられたその独自ジオメトリーは、KOBH60.1の性格をより鮮明にする。前傾はきつすぎず、しかしコンフォートすぎもしない。ピナレロが考える、起伏が多く荒れたコースをより速く走るために必要なものが詰まっているのだ。

KOBHのロゴは左側面のダウンチューブに入る。右側面はPINARELLOとなるKOBHのロゴは左側面のダウンチューブに入る。右側面はPINARELLOとなる ダウンチューブ裏にPINARELLOのロゴ。シャープさはレーシングフレームならではダウンチューブ裏にPINARELLOのロゴ。シャープさはレーシングフレームならでは 左右非対称のAFSデザインが採用されているのもドグマ譲りだ左右非対称のAFSデザインが採用されているのもドグマ譲りだ


フォークレークを増やし、シート&ヘッドチューブのアングルを寝かせたことで直進安定性と振動吸収性能を確保しつつ、ドグマ同様の横剛性も実現している。定評あるオンダフォークのカスタマイズ版「ONDA KOBHフォーク」が搭載される。

そしてホイールクリアランスには28mmの太さのタイヤを履くこともできるように十分なスペースが確保されている。

ウェーブ成型されたBB付近の造形もドグマやプリンス譲りだウェーブ成型されたBB付近の造形もドグマやプリンス譲りだ チェーンステイ接合部は大柄な造りでしなりを支える構造のようだチェーンステイ接合部は大柄な造りでしなりを支える構造のようだ


厳しい条件のもとで、より速く・快適に走るという明確な意思の下に生まれたKOBH60.1。コンセプト通りに、ドグマ並みの剛性に加えて直進安定性と優れた快適性能を有しているとしたならば、プロのみならずシリアスな一般ライダーにも有用なバイクだと言えるだろう。

シマノDi2仕様フレームも用意され、準備万端。ドグマそしてプリンスと三分するグレードにこのKOBH60.1を持ってきたところも、ピナレロの自信をうかがわせる。

さて、どんなインプレッションになるのか楽しみだ。






―インプレッション

「荒れた路面、一般路の様々な状況に対応する性能を持っている」西谷雅史(サイクルポイント・オーベスト)「荒れた路面、一般路の様々な状況に対応する性能を持っている」西谷雅史(サイクルポイント・オーベスト) 「もっと遠くに行きたくなる。そんな1台」
西谷雅史(オーベスト)


とにかくその安定性の高さと乗り心地のよさに舌を巻いた。これまで乗ったことのあるピナレロのバイクのなかで完成度の高さは随一だと感じた。

ただ、ドグマに乗ったことがないので、同じトップグレードでの比較ができなかったのが残念だ。しかしコブの完成度を見ると、セグメント違いの同じグレード、しかもブランドのフラグシップであるドグマへの期待も大きくなる。コブは同じブランドの他車種にまで興味がでてくるほど魅力のあるバイクとも言える。

そして乗り心地のよさは特筆すべきデキなのだが、それだけでは終わらない。跳ね返ってくるような感覚がない踏み心地も素晴らしい。

しっかりとしたボディを持っているので、ウィップ感はないのだが、それがまったく負担にならない。しなやかさがないのに踏み心地がソフト。なのに力が逃げているわけではない。すべての力を推進力に換えて進む感覚すらある。
硬さを感じさせない、とでも言うべきか、「こんなに軽く走るのか」と思わせるバイクになっている。


「荒れた路面を走ってその快適性を実感した」西谷雅史(サイクルポイント・オーベスト)「荒れた路面を走ってその快適性を実感した」西谷雅史(サイクルポイント・オーベスト) また、ダンシング時の振りの軽さも特徴的だ。ダンシングで振って軽く、ここまで走るバイクはなかなかお目にかかれない。
剛性とジオメトリが上手くマッチングしていないと、ダンシング時の振りの軽さと走りをここまで整えるのは難しかっただろう。

同時に操作面もよくできている。荒れた路面やコーナーでも安定していて、自分の狙ったラインを思うままに進む。ハンドルを切った方向に無理なく綺麗に回っていくハンドリングだ。

乗り心地のよさとあいまって、荒れた路面が楽しく感じてしまう。それに乗っているともっと遠くへ行きたくなる。……ピナレロの思惑通りといったところだろうか。

ツーリングからレースまで、何にでも対応できるバイクだ。使用用途はとくに決めなくていいだろう。“レースにはいいが、ツーリングには向かない”なんてバイクは多くあるが、コブのように何にでも使えるポテンシャルのバイクは本当に少ない。

私は普段、走り性能重視で乗り心地の良さは気にしないタイプなのだが、ここまで乗り心地も走りも良くできているバイクに乗ると「考え方を改めてもいいな」と思わせてくれる。そういうバイクに仕上がっている。


「あらゆるバランスが取れた、長距離を速く楽しく進むためのバイクだ」
三上和志(サイクルショップミカミ)


ピナレロのプリンスに普段乗っていることもあって、コブはとても興味のあったバイクだ。また発表当初はロングライドに適したバイクと聞いていたので「ピナレロもとうとうマッタリ系バイクを作ってしまったのか……」と思っていた。しかしコブに乗ってみて、それが見当違いだったことに気づかされた。

ダイレクトに、それでいて伸びやかに進む。ピナレロらしい造りは失われていない。下りも今までのピナレロ同様にオモシロイ。ステムを外してもフォークが抜けないほどガッチリと圧入して造ることで出せる一体感は、フロントフォークで受け止めた衝撃を、フレーム全体に伝えて「大きなバネで支える」ような感覚がある。

そして、気を抜いてハンドルにもたれかかっているときに、多少ハンドルが切れてもフラつくことがない安定感も印象深い。もちろんハンドリングが鈍いわけじゃない。操作すれば的確に曲がってくれるので、そこは心配に及ばない。

「ドグマをよりオールラウンドにした性能。レースにも十分対応する高性能だ」「ドグマをよりオールラウンドにした性能。レースにも十分対応する高性能だ」

先入観では、ブランドの個性が失われてまったく別のピナレロになるかとも思って心配していたが、ピナレロらしさを活かしつつ、荒れた路面でも弾かれない優れた直進安定性が加えてあるのだ。

積極的な走りも受け止めてくれる。そして優れた直進安定性と、そこからくる乗り心地の良さで疲れた身体でも乗りやすいよう仕上がっている。
「疲れたときにまだ頑張りたいと思えば、背中を押してくれる」そんな印象すら覚える。

また、高い直進安定性のおかげで、真っ直ぐ走るときに気を遣わなくていいのもポイントだ。たとえば集団の中で一定ペースを保って走る際など、細かいことを気にしなくていいので精神的に楽になる。これは疲れているときほどアドバンテージになってくれるだろう。

しかもアップチャージでシマノの電動シフト(Di2)仕様フレームも用意されている。電動デュラで組めばシフト操作の疲労さえも軽減できてしまう。ストレスを軽減するというコブのコンセプトどおりの用意がなされているのだ。

たしかにロードレースでゴール前のスプリントを果敢に攻めるような積極的な乗り方を求めるならばドグマを選ぶのがいいだろう。しかしスプリント勝負に参加することは少ないし、ロングライドでも峠をキビキビ上りたい、なんてライダーには、コブをオススメする。

コブは気楽に乗ることだけを主眼においたバイクではない。推進力を得るように積極的なペダリングをしながら長い距離を走ることのできるバイクだ。

これならば速く、そして楽しく積極性のあるロングライドを演出してくれるだろう。グランフォンドにはまさに打ってつけのバイクと言える。

ピナレロ KOBH60.1ピナレロ KOBH60.1 (c)Makoto.AYANO/cyclowired.jp


ピナレロ KOBH60.1 KOBHのロゴは左側面に入るが、右側面はPINARELLOロゴとなるピナレロ KOBH60.1 KOBHのロゴは左側面に入るが、右側面はPINARELLOロゴとなる (c)Makoto.AYANO/cyclowired.jpピナレロ KOBH60.1
フレーム TORAYCAR 60HM1Kハイモジュラスカーボンモノコック
カラー ホワイト、ブラックレッド、Team SKY
希望小売価格(税込み) 560,000円(フレームセット) 615,000円(Di2内蔵仕様フレームセット)










インプレライダーのプロフィール

西谷雅史(サイクルポイント・オーベスト)西谷雅史(サイクルポイント・オーベスト) 西谷雅史(サイクルポイント オーベスト)

東京都調布市にある「サイクルポイント オーベスト」店長。チームオーベストを率い、自らも積極的にレースに参戦。主なリザルトはツール・ド・おきなわ市民200km優勝、ジャパンカップアマチュアレース優勝など。2007年の実業団小川大会では、シマノの野寺秀徳、狩野智也を抑えて優勝している。まさに「日本最速の店長」だ!
サイクルポイント オーベスト



三上和志(サイクルハウスMIKAMI)三上和志(サイクルハウスMIKAMI) 三上和志(サイクルハウスMIKAMI)

埼玉県飯能市にある「サイクルハウスMIKAMI」店主。MTBクロスカントリー全日本シリーズ大会で活躍した経験を生かし、MTBに関してはハード・ソフトともに造詣が深い。トレーニングの一環としてロードバイクにも乗っており、使用目的に合った車種の選択や適正サイズに関するアドバイスなど、特に実走派のライダーに定評が高い。
サイクルハウスMIKAMI




ウェア協力:ルコック・スポルティフ



photo:Makoto.Ayano
text:Kiichi.Gotoda
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