来るロード世界選手権でTT連覇を目指すファビアン・カンチェラーラ(スイス)が、正式にサクソバンクと決別して他チームへ移籍することを決めた。新天地で闘うグラディエーター(闘士)の頭の中にあるのは、ツール・ド・フランスで総合優勝を飾ること。カンチェラーラの争奪戦が今始まる。

圧倒的な走りで2009年ロード世界選手権TTを制したファビアン・カンチェラーラ(スイス)圧倒的な走りで2009年ロード世界選手権TTを制したファビアン・カンチェラーラ(スイス) photo:Cor Vosサクソバンクとの契約が2011年末まで残っていたカンチェラーラ。しかしビャルヌ・リース監督との話し合いの末、別々の道を歩むことが決まった。「アルベルト・コンタドールと同じチームで走っている限り、ツール・ド・フランスで総合優勝は狙えないだろう」。カンチェラーラはデンマークのBT紙とのインタビューの中でそう語っている。

2009年ロード世界選手権でエリートクラス3度目のアルカンシェルを獲得したファビアン・カンチェラーラ(スイス)2009年ロード世界選手権でエリートクラス3度目のアルカンシェルを獲得したファビアン・カンチェラーラ(スイス) photo:Cor Vosカンチェラーラの他、サクソバンクを離れるビッグネームは後を絶たない。チームの中心的存在であるシュレク兄弟(ルクセンブルク)は地元ルクセンブルクの新チームへの移籍が濃厚。カンチェラーラとタッグを組んで「北のクラシック」で活躍したマッティ・ブレシェル(デンマーク)はラボバンクへの移籍が決定。更にスチュアート・オグレディ(オーストラリア)とイェンス・フォイクト(ドイツ)もチームを去ることが決まっている。

今年のロンド・ファン・フラーンデレンやパリ〜ルーベで優勝したカンチェラーラ。その走りは電気モーターの使用を疑う人々が出るほど圧倒的なものだった。平坦なワンデークラシックで真価を発揮する体重80kgのグラディエーターがツール制覇?果たしてそれは可能なのか?

2010年ロンド・ファン・フラーンデレン ミュール・カペルミュールでボーネンを一気に突き放したファビアン・カンチェラーラ(スイス、サクソバンク)2010年ロンド・ファン・フラーンデレン ミュール・カペルミュールでボーネンを一気に突き放したファビアン・カンチェラーラ(スイス、サクソバンク) photo:Cor Vos「ツール制覇は途方も無い夢。でも絶対に達成出来ないとは思わない。ロード選手としての全盛期はまだまだこれから。チャンスは残されている」。

カンチェラーラがツールの総合成績について考え始めたきっかけ、それは4月のロンド・ファン・フラーンデレンの初優勝だ。すでにパリ〜ルーベとミラノ〜サンレモで優勝していた彼は、ロンドの優勝で3つのモニュメント(5大クラシックの総称)制覇を達成。当然、モニュメント全制覇に注目が集まった。

2010年パリ〜ルーベ 独走でゴールに向かって突進するファビアン・カンチェラーラ(スイス、サクソバンク)2010年パリ〜ルーベ 独走でゴールに向かって突進するファビアン・カンチェラーラ(スイス、サクソバンク) photo:Cor Vos「その時、頭に浮かんだのが5つのモニュメント制覇だった。数年後には、残りの2レース(リエージュとロンバルディア)で闘えるカラダに仕上げたい」。そうカンチェラーラは話す。

もしカンチェラーラがリエージュ〜バストーニュ〜リエージュ、もしくはジロ・ディ・ロンバルディアで勝つことが出来れば、ツールの総合成績を狙える状態に近いと言っていいだろう。比較的平坦なロンド、ルーベ、サンレモの3レースに対し、リエージュとロンバルディアはアップダウンが厳しく、高い登坂力が要求される。現在のチームメイトであるアンディ・シュレクは、昨年リエージュで優勝し、3ヶ月後のツールでコンタドールに次いで総合2位に入った。

しかし、カンチェラーラのツール制覇の前には高い壁がある。まずはその脚質。TT能力を維持しながら体重を落とし、登坂力を磨かなければならない。そして、その野望を支えてくれる所属チームを見つける必要がある。

現在カンチェラーラの獲得に名乗りを挙げているのは3チーム。地元スイスのチームであるBMCレーシングチームと、ルクセンブルクの新チーム、そしてオーストラリア初のプロツアーチームを目指すペガサス・レーシング(現フライVオーストラリア)だ。

ツールにおけるカンチェラーラの過去最高位は2008年の総合62位。しかしそれはカルロス・サストレ(スペイン)やシュレク兄弟のアシストに徹した結果だ。山岳ステージでは「機関車」の如くメイン集団を牽き続け、総合有力選手たちを苦しめたこともある。

2011年のツールで総合上位に絡むことは考えにくい。しかし数年後には、肉体改造したグラディエーターがコンタドールやシュレク兄弟を敵に回してマイヨジョーヌを着ている可能性も。それが決して不可能だと思わせないのがカンチェラーラの凄さだ。

text:Gregor Brown
translation:Kei Tsuji

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