ブエルタ・ア・エスパーニャ2010最終第21ステージは、タイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン・トランジションズ)が集団スプリントを制した。ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス)が65代ブエルタ王者の称号に輝いた。

スタート前にシャンペンで乾杯する総合トップ3スタート前にシャンペンで乾杯する総合トップ3 photo:Cor Vos激戦の様相を呈したブエルタ・ア・エスパーニャ2010も最終日。第21ステージはサンセバスティアン・デ・ロス・レジェス〜マドリード間の85kmで争われた。注目はスプリント賞トップのマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームHTC・コロンビア)と2位のタイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン・トランジションズ)の争い。両者のポイント差はわずか12ポイント。

総合上位の選手がシャンパンを乾杯しながらスタートしたステージはしばらくゆったりペースで進む。レースが動いたのは19km地点で、ドミニク・ローエルズ(ドイツ、チームミルラム)がアタックを決めると、ハビエル・ラミレス(スペイン、アンダルシア・カハスール)が追走。さらに時間をおいてオリヴィエ・カイセン(ベルギー、オメガファーマ・ロット)、ユルゲン・ファンホーレン(ベルギー、オメガファーマ・ロット)、ゴンサロ・ラブニャル(スペイン、シャコベオ・ガリシア)の3名が先頭に加わった。

5人はローテーションの連携よく逃げるが、平坦なマドリッドの周回コースでは思うように差が開かない。やがてメイン集団の主導権がリクイガス・ドイモからチームHTCコロンビアやガーミン・トランジションズに移るとタイム差は減少。50km地点では1分7秒差あったが、78km地点で逃げは吸収される。

集団内でマドリッドの周回コースを走るヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス)集団内でマドリッドの周回コースを走るヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス) photo:Cor Vos集団スプリントへ向けてスピードの上がる集団からフレフ・ファンアフェルマート(ベルギー、オメガファーマ・ロット)が飛び出す場面も見られたが成功せず。クイックステップがトレインを形成して残り1kmに。

残り500mで完璧なリードアウトを見せたのはこれまでカヴェンディッシュの勝利に貢献しているマシュー・ゴス(オーストラリア、チームHTCコロンビア)。緑のポイント賞ジャージを着るカヴを強力に引っ張り上げる。

万全の態勢でスプリントを開始したカヴェンディッシュだが、逆サイドから一気に上がってきたファラーの伸びについていけない。抜群の加速を見せたファラーが力のスプリントでカヴェンディッシュをねじ伏せた。ファラーは今ブエルタ区間2勝目。

マドリッドを制したのはタイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン・トランジションズ)マドリッドを制したのはタイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン・トランジションズ) photo:Unipublic/Graham Watson

敗れたものの、2位に入ったカヴェンディッシュはポイント賞ジャージを確定。ステージ3勝の活躍は最強スプリンターの名に恥じない結果だ。マイヨロホを着るヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス)は集団前方でガッツポーズでゴール。初のグランツール制覇を成し遂げた。

山岳賞は3年連続でダヴィ・モンクティエ(フランス、コフィディス)が獲得。これはブエルタ史上タイ記録。コンビネーション賞はニーバリ、チーム総合はカチューシャが栄冠に輝いた。

3年連続でブエルタの山岳賞に輝いたダヴィ・モンクティエ(フランス、コフィディス)3年連続でブエルタの山岳賞に輝いたダヴィ・モンクティエ(フランス、コフィディス) photo:Unipublic/Graham Watson総合表彰台。左から2位モスケラ、優勝のニーバリ、3位ベリトス総合表彰台。左から2位モスケラ、優勝のニーバリ、3位ベリトス photo:Unipublic/Graham Watson区間3勝を挙げポイント賞に輝いたマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームHTC・コロンビア)区間3勝を挙げポイント賞に輝いたマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームHTC・コロンビア) photo:Unipublic/Graham Watson


夏のツール・ド・フランスに続き、総合上位2名によるマッチレースが繰り広げられたブエルタ・ア・エスパーニャ2010。自転車ロードレースは世界選手権を挟んで秋のクラシックへと季節とともに移ろっていく。

タイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン・トランジションズ)
「ヴエルタで区間2勝、は想像していた以上の結果だ。驚くべきものだ。僕はジロでも今年区間2勝していたけど、チームが素晴らしい仕事をしてくれるんだ。カヴェンディッシュが3勝しているとしても、これ以上彼に勝てないんじゃないかとは疑いもしなかったし、それをこのマドリッドの栄誉あるステージで果たせたことに幸せを感じているよ。このブエルタをいいコンディションで終えた。自信を持って世界選手権に臨めるよ。」

エセキエル・モスケラ(スペイン、シャコベオ・ガリシア)
「このステージはたった85kmで、僕はストレスを感じるべきではなかったけど、ゴールラインを越えるまではほっとした気持ちになれなかった。ポディウムに登ることは僕にとってとても特別なことで、経験するべき何か美しいものであるけれど、そが何かを説明するのは難しい。これが僕にとってビッグレースでの初めての表彰台なんだ。ここれまでポルトガルでの小さなレースでしか経験したことがなかったから。ファンタスティックなことだ。」

ダヴィ・モンクティエ(フランス、コフィディス)
このブエルタは僕がセヴェーリャで望んだのと、まったく同じように終わった。山岳賞ジャージと区間1勝だ。なるべく早くポイントを集めて、その後でリードを守るという僕が描いていたシナリオは、まったく正しかったことが証明されたね。しかし争いは難儀なものだった。僕は2011年に唯一山岳賞4連覇を達成したレコードマンとして戻ってくることも可能だとは思うけど、まだそれはしばらく先の話。ジロ・ディ・ロンバルディアでシーズンを終えることをまずは考えなくては。」

ハビエル・ギジェン ブエルタ総合ディレクター
「我々は素晴らしいレースと、ボラ・デル・ムンドの美しい山岳最後のステージを経験した。我々オーガナイザーがコース図を決める時、2人の選手による総合優勝争いの決闘を夢見るものだが、それこそ今大会で起こったことだ。今日、誰もが幸せそうだった。」


ブエルタ・ア・エスパーニャ2010第20ステージ結果
1位 タイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン・トランジションズ)    2h02'24"
2位 マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームHTC・コロンビア)
3位 アラン・デーヴィス(オーストラリア、アスタナ)
4位 ワウテル・ウェイラント(ベルギー、クイックステップ)
5位 マシュー・ゴス(オーストラリア、チームHTCコロンビア)
6位 グレガ・ボーレ(スロベニア、ランプレ・ファルネーゼヴィーニ)
7位 マヌエル・カルドソ(ポルトガル、フットオン・セルヴェット)
8位 サミュエル・デュムラン(フランス、コフィディス)
9位 ファンホセ・アエド(アルゼンチン、サクソバンク)
10位 ダニーロ・ホンド(ドイツ、ランプレ・ファルネーゼヴィーニ)

個人総合成績(マイヨロホ)
1位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス)       87h18'31"
2位 エセキエル・モスケラ(スペイン、シャコベオ・ガリシア)        +43"
3位 ピーター・ベリトス(スロバキア、チームHTC・コロンビア)      +3'04"
4位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)           +4'22"
5位 フランク・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク)        +4'45"
6位 シャビエル・トンド(スペイン、サーヴェロ・テストチーム)     +4'54"
7位 ニコラス・ロッシュ(アイルランド、アージェードゥーゼル)     +5'05"
8位 カルロス・サストレ(スペイン、サーヴェロ・テストチーム)     +6'08"    
9位 トム・ダニエルソン(アメリカ、ガーミン・トランジションズ)    +6'18"
10位 ルイスレオン・サンチェス(スペイン、ケースデパーニュ)      +7'44"

ポイント賞(プントス)
1位 マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームHTC・コロンビア) 156pts
2位 タイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン・トランジションズ)   149pts
3位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス)       120pts

山岳賞(モンターニャ)
1位 ダヴィ・モンクティエ(フランス、コフィディス)        51pts
2位 セラフィン・マルティネス(スペイン、シャコベオ・ガリシア)  43pts
3位 エセキエル・モスケラ(スペイン、シャコベオ・ガリシア)    36pts

複合賞(コンビナーダ)
1位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス)       9pts
2位 エセキエル・モスケラ(スペイン、シャコベオ・ガリシア)     11pts
3位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)         12pts

チーム総合成績
1位 カチューシャ         261h48'04"
2位 ケースデパーニュ           +33"
3位 シャコベオ・ガリシア       +12'33"


text:Yufta Omata
photo:Unipublic/Graham Watson,Cor Vos

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