リドレーの幅広いナインナップの中で、エアロモデルの「ノア」は、山岳用軽量モデルの「ヘリウム」とともにフルカーボンの最高峰に君臨するバイクだ。そのノアが、2009年モデルで大きく生まれ変わった。R-FLOWテクノロジーを採用し、空気抵抗の大幅な低減に成功したのだ。その効果のほどは?

リドレー NOAHリドレー NOAH (c)MakotoAYANO/cyclowired.jp

山岳もこなせる高速巡航バイク!


湾曲したトップチューブ湾曲したトップチューブ リドレー・ノアは、いわずと知れたプロユースのハイエンドモデルだ。2008年、サイレンス・ロットチームでは、このノアと軽量モデルのヘリウムがメインバイクとして使用された。

ノアの初登場は2006年だった。その魅力は、何といっても先鋭的なエアロフォルムだ。流行のインテグレーテッドシートポストをいち早く取り入れ、フォークからダウンチューブ、シートチューブ、シートステーに至るまで、徹底的なエアロ形状が採用されたのである。

そして、2006年のツール・ド・フランスで、ロビー・マキュアン(オーストラリア、ダヴィタモン・ロット、当時)がノアを駆ってマイヨヴェール(スプリント賞)を獲得。その実力の高さを証明したのであった。

また、カデル・エヴァンスを始めとするロットチームの多くの選手が山岳でもノアを使用。平坦の高速巡航だけでなく、山岳でも高い実力を持っているということを証明したのであった。

スリットの入ったフォーク。ホイールが生み出す空気の乱れを整流するスリットの入ったフォーク。ホイールが生み出す空気の乱れを整流する

R-FLOWテクノロジーを採用


以来、2008年までモデルチェンジすることなくロットチームで使われ続けてきたノアだが、ついに2009年にフルモデルチェンジを果たした。最大の変更点は、フォークとシートステーだ。オーヴァル・コンセプトとの共同開発によって「ジェットフォイル」と名づけられたスリットが入れられ、ホイールが作り出す空気の乱れを整流する効果を発揮するのである。

この新しい技術は、名づけて「R-FLOWテクノロジー」。その発想の原点となったのはライムトライアルバイク「ディーン」だ。集団を抜け出して単独で逃げている時、あるいは集団の中にあってもゴールまで脚を温存したい時、空気抵抗は常に選手の前に立ちはだかっている。そんな「選手の敵」である空気抵抗をタイムトライアルバイク並に減らしたい。そして、通常型のバイクに乗っているライバルよりも有利に走りたい。つまり、『空気抵抗を味方につけてしまおう』という発想がノアにはあるのだ。


ベント加工されたシートステー。空気抵抗の低減とショック吸収性の向上を同時に狙ったものだベント加工されたシートステー。空気抵抗の低減とショック吸収性の向上を同時に狙ったものだ また、トップチューブが湾曲した形状となった。エアロフォルムのバイクは縦に硬くなりがちだが、この湾曲したトップチューブが絶妙なショック吸収性を演出してくれるのだ。

2009年はカチューシャチームが駆る!


使用素材はもちろんハイモジュラスカーボンだが、50t、40t、30tの繊維を適材適所で使い分け、剛性感と振動吸収性とのバランスを見事に整えている。マッシブなエアロ形状ながら、フレーム単体重量は1100gという超軽量に抑えられ、2009年モデルもやはり山岳でも十分な実力が発揮できるようになっている。

2009年はカチューシャチームがリドレーを採用。もちろん、ノアとヘリウムをチームバイクとしている。「リドレー乗り」として有名なマキュアンもリドレーとともにカチューシャへ移籍。今年も派手なスプリントで勝利を量産するだろう。

さて、ウンチクはこのくらいにして、さっそくインプレライダー三上和志と佐藤正一のインプレッションをお届けしよう!


「のびやかに加速する点に好印象。走りに高級感がある」(三上和志)「のびやかに加速する点に好印象。走りに高級感がある」(三上和志)

「ゴールスプリントまで脚を残せる」


三上和志(サイクルハウスMIKAMI)

まずは、フォークとシートステーのエアロフィンのシャープなデザインがその気にさせてくれる。タイヤにエアーを入れるたびに、この攻撃的なフォルムが目に入るというのは、まさにオーナーだけが感じられる喜びだ。オーナーになった訳でもないのに、そんな事を想像してしまい、思わずうれしくなってしまった。

踏み味はその形状から想像したほど硬くなかった。エアロ形状のバイクは縦に硬くなりがちだが、ノアはレーシングバイクとしての適度な硬さを狙った感じである。振動吸収性も高く、コンフォートなバイクと言っても良いくらいだ。湾曲したトップチューブも、その乗り味に貢献しているのだろう。

この辺の味付けは、さすがプロチームに供給するブランドといったところだ。プロユースバイクだからといって、むやみに硬くすれば良い訳ではないのだ。ステージレースを走りきるためのバイクだから、カラダに負担をかけないことも大切なのである。

直進安定性はとても良い。まあ、そこを狙ったバイクであるから、当然と言えば当然か。反面、ハンドリングのクイック感はない。やはり、クリテリウムなどで使うよりも、長距離を緊張感を強いられることなく、最小限のエネルギーで走りきるためのバイクだ。

加速感もとても良いフィーリングだった。「のびやかに加速する」とでも表現したら良いのだろうか。グッと踏み込むと、しなやかにスーッと加速していく印象なのだ。

このようなハッキリとした特長を持ったバイクは、ユーザーとしてもありがたい。長距離のレースを走って、最終的にゴールスプリントになった時、しっかりと脚を残せるバイク。あるいは、単独で逃げ切るためのバイク。そんな線を狙っている感じがプンプンする。

「レースでアタックしたいならこの一台!」


佐藤正一(なるしまフレンド)

「使用用途はズバリ長距離ライド」(佐藤正一)「使用用途はズバリ長距離ライド」(佐藤正一) 剛性感は比較的高め。とてもガッチリとした印象で、どこまでも加速していけそう。そして直進性が高く、手放しのままでどこまでも走っていける。まっすぐな道を長時間走るのに、最高のハンドリングだ。逆に言えば、クイックな切り返しが連続するようなコースやクリテリウム的な走りはやや苦手とするか。

ブレーキングも安定していて、とても好印象だった。リドレーのバイクはフォークの根本がとてもしっかりとしているので、フルブレーキングでもよじれたりすることがないのだ。この点はさすが、プロチームが使用するレーシングバイクだ。

加速感もとても素晴らしい。見た目はボリュームがあって、加速感の良さは想像しにくいのに、乗ってみると実にスムースに加速してくれる。レースでアタックするのにも良いバイクだろう。アタックが決まれば、後はどこまでも一人で逃げていける。何と言っても、タイムトライアルバイク並のエアロ効果を持っているのであるから、逃げ切れる脚さえあれば「鬼に金棒」だ。

使用用途は、ズバリ「長距離ライド」。たとえば、沖縄市民200kmレースを一人で逃げ切ろうと思った時、あるいは週末のロングライドで200kmくらい一人で走ろうと思った時に、ノアは最高の相棒になってくれるはずだ。


リドレー・NOAHリドレー・NOAH (c)MakotoAYANO/cyclowired.jp
スペック
フレーム ハイモジュラスカーボン50t、40t、30tミックス、モノコック製法
フォーク ハイモジュラスカーボン30t
カラー 902A(ブラック×レッド)
サイズ XS, S, M
フレーム単体重量 1100g
希望小売価格(税込み) 430,500円(フレームセット)



インプレライダーのプロフィール

三上和志(サイクルハウスMIKAMI)

埼玉県飯能市にある「サイクルハウスMIKAMI」店主。MTBクロスカントリー全日本シリーズ大会で活躍した経験を生かし、MTBに関してはハード・ソフトともに造詣が深い。トレーニングの一環としてロードバイクにも乗っており、使用目的に合った車種の選択や適正サイズに関するアドバイスなど、特に実走派のライダーに定評が高い。
サイクルハウスMIKAMI
佐藤正一(なるしまフレンド)

東京・原宿にあるロードバイク系プロショップ「なるしまフレンド原宿店」店員。身長170cm、体重62kg。日本一のロードバイク販売量を誇るショップの店員だけに、その情報量の豊富さは右に出る者がいない。実業団チーム「なるしまフレンド」のレーサーとしても活躍しており、2008年は実業団石川大会BR-3で3位に食い込む好成績を収めている。
なるしまフレンド




edit:仲沢 隆
photo:綾野 真



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