超級山岳3つが詰め込まれた獲得標高差5,450mのクイーンステージで再びリチャル・カラパス(エクアドル、EFエデュケーション・イージーポスト)が逃げ切り、2日前に続くステージ優勝と山岳賞確定に成功。タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG)は自身5度目の総合優勝に王手をかけた。
7月25日(土)第20ステージ
ル・ブルグ・ドワザン〜アルプ・デュエズ 走行距離170.9km/獲得標高5,450m(山岳*)

ダメ押しの中間スプリントポイントを狙うマッズ・ピーダスン(デンマーク、リドル・トレック) photo:A.S.O. 
マイヨアポワ姿で現れたリチャル・カラパス(エクアドル、EFエデュケーション・イージーポスト) photo:A.S.O.

マイヨジョーヌのタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG)が登場 photo:A.S.O.
ついに2026年ツール・ド・フランスのクライマックスがやってきた。ル・ブルグ・ドワザンを出発する170.9kmには1級山岳1つ、超級山岳3つが詰め込まれた、獲得標高差は実に5,450mという無慈悲な超難関クイーンステージだ。
超級山岳クロワ・ド・フェール(距離24km/平均5.2%)、中間スプリントを経て、続いて1級山岳テレグラフ(距離11.9km/平均7.1%)を越え、立て続けに先頭で通過した選手に「アンリ・デグランジュ賞」と賞金5000ユーロがが贈られる、大会最高標高の2,642mを誇る超級山岳ガリビエ峠(距離17.7km/平均6.9%)を越え、さらに大会初登場となる超級山岳サレンヌ(距離12.8km/平均7.3%)を登坂してアルプ・デュエズのラスト4km地点に合流してフィニッシュ地点を目指す。

第20ステージ ル・ブルグ・ドワザン〜アルプ・デュエズ image:A.S.O.
前日にタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG)がステージ優勝を挙げていること、さらにそのアシスト陣営が未だ体調不良から回復しきっていないことから、総合成績で遅れ、ステージ優勝に目標を切り替えたクライマーにとってはステージ優勝のチャンスと言えなくもない。アクチュアルスタートと同時に飛び出した6名は1分リードを得たものの、じわじわと標高を上げる超級山岳クロワ・ド・フェールでメイン集団に捕まった。
淡々とペースメイクを行うUAEチームエミレーツXRGが逃げたいメンバーを見送ったことでメイン集団が分断し、13名が先行。その中ではステージ優勝を狙うセップ・クス(アメリカ、ヴィスマ・リースアバイク)や、総合7位フアン・アユソ(スペイン、リドル・トレック)、マイヨアポワ(山岳賞)のリチャル・カラパス(エクアドル、EFエデュケーション・イージーポスト)といった強力なメンバーが含まれる。

逃げグループ内で登坂をこなすリチャル・カラパス(エクアドル、EFエデュケーション・イージーポスト) photo:A.S.O.

マイヨアポワを奪還したいヴァランタン・パレパントル(フランス、スーダル・クイックステップ)だったが、カラパスの登坂力に敗北 photo:A.S.O. 
バーレーン・ヴィクトリアスがメイン集団を牽引して逃げとの差を調整する

超級山岳クロワ・ド・フェールでメイン集団を飛び出し、先頭グループにブリッジしたマッズ・ピーダスン(デンマーク、リドル・トレック) photo:A.S.O.
前日の焼き直しかのようにヴィスマ・リースアバイクのブリュノ・アルミライユ(フランス)が牽引するステージ前半戦で加熱したのがこの日最大70ポイントを獲得できるマイヨアポワ(山岳賞)争いだった。昨日の逃げでポガチャルから僅か1ポイント差の首位に立ったカラパスは頂上まで3kmを残してアタックし、逃げグループに入った同3位ヴァランタン・パレパントル(フランス、スーダル・クイックステップ)の追走を退けて20ポイントを獲得する。スタート前に「昨日は厳しい一日になったけど僕のマインドはまだポジティブ。2日間攻めたカラパスは特に疲れているだろうし、100%の力を出し切って戦いたい」と語っていたパレパントルにとっては(ポガチャルの繰り下がりで)数日間着用したマイヨアポワの奪還が徐々に遠いものとなってしまう。
UAEがコントロールするメイン集団からは、66km地点にある中間スプリント賞を目指してマイヨヴェール(ポイント賞)のマッズ・ピーダスン(デンマーク、リドル・トレック)が飛び出した。ダウンヒルをかっ飛ばしたポイントリーダーは逃げグループに合流し、先行していたカラパスとパレパントルも一旦下がり14名となった逃げグループは再びヴィスマ勢のコントロール下に戻る。ピーダスンは無事に中間スプリントを先頭通過(+25ポイント)し、ダメ押しでランキング2位のヤスペル・フィリプセン(ベルギー、アルペシン・プレミアテック)との差を83ポイントに。最終日を待たずにマイヨヴェール獲得を確実なものとした。
逃げグループは1級山岳テレグラフと、僅かなダウンヒルを経て続けざまに登る超級山岳ガリビエ峠に向けて4分リードでヒルクライムを開始した。テレグラフ頂上を先頭通過したのはやはりカラパスで、伝説のガリビエ峠でも共に逃げるべン・ヒーリー(アイルランド)のアシストを受けて順調に駒を進める。森林限界を突破したラスト5km区間では再びアタックして単独となったカラパスにはセップ・クス(アメリカ、ヴィスマ・リースアバイク)とジャイ・ヒンドレー(オーストラリア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)、そしてマシュー・リッチテッロ(アメリカ、デカトロンCMA CGM)が追いついてくる。こうして4人中3人がグランツール総合優勝経験者という超豪華な逃げグループが誕生した。

超級山岳ガリビエ峠を先頭グループが登る。牽引するのはカラパスのアシストを務めるべン・ヒーリー(アイルランド) photo:A.S.O.

標高2,642mの超級山岳ガリビエ峠(距離17.7km/平均6.9%)がスタート photo:A.S.O.

ガリビエ峠を駆け上がるリチャル・カラパス(エクアドル、EFエデュケーション・イージーポスト) photo:A.S.O.
5分半遅れで登るメイン集団では、マイヨブランを着るチームメイトで総合3位のイサーク・デルトロ(メキシコ)ではなく、マイヨジョーヌを着たポガチャルが自ら先頭を牽引して他チームのアシスト陣を木っ端微塵に粉砕。総合上位勢だけになったこのグループと逃げの距離はグッと縮まったものの、この日ポガチャルにステージ優勝を狙う意思はなかった。
標高2,642mのKOMを無事先頭通過し、マイヨアポワを手中に収めたカラパスを先頭に、40kmのダウンヒルをこなして超級山岳サレンヌ峠へとヒルクライム。ヒンドレーの加速を皮切りにステージ優勝狙いのアタック合戦が始まり、2023年ブエルタ覇者であるクスの独走がスタート。「この数週間調子が上がらなかったので今のコンディションには驚いていない。昨日のパフォーマンスにはフラストレーションを溜めてしまったけれど、耐えて自分が輝ける時を待ちたい」とスタート前に語っていたアユソは決定的に遅れ、総合ジャンプアップの夢はここで潰えてしまった。

超級山岳サレンヌ峠でカラパスを引き離したセップ・クス(アメリカ、ヴィスマ・リースアバイク) photo:A.S.O.

サレンヌ峠でメイン集団から千切れたポール・セクサス(フランス、デカトロンCMA CGM)やマティアス・スケルモース(デンマーク、リドル・トレック) photo:CorVos

サレンヌ峠の頂上を目指すタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG)やレムコ・エヴェネプール(ベルギー、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ) photo:CorVos

サレンヌ峠のダウンヒル。セクサスやアユソを振り切ったマイヨジョーヌグループが先を急ぐ photo:CorVos
長い下りでメンバーを増やしたメイン集団で加熱したのが、デルトロがポール・セクサス(フランス、デカトロンCMA CGM)を24秒差で抑えている状態のマイヨブラン(ヤングライダー賞)争いだった。最もアシスト数を残したデカトロンがペースを上げて揺さぶりをかけたものの、ポガチャルに守られたデルトロは綻びを見せず、逆に頂上付近でペースアップして攻撃に出た。たまらず総合6位マティアス・スケルモース(デンマーク、リドル・トレック)が遅れ、セクサスも頂上付近で千切れてしまう。19歳セクサスはここで付けられた40秒差を埋めることはできず、デルトロはマイヨブラン獲得のチャンスを引き寄せる。
ステージ優勝に向けて先頭で駒を進めていたクスだったが、サレンヌ峠頂上からアルプ・デュエズのラスト4km地点に合流する短い登坂区間で2度落車してしまう。最初はトンネル内のコーナーで、2回目は「下見していたけど思っていたよりコーナーが深かった」と切り立った崖の上のコーナーで落車し、落下防止のネットに助けられて事なきを得たクスだったものの、単騎追いかけていたカラパスに追い抜かれ、恐怖心からコーナーを攻めることができず距離を開けられてしまう。こうして期せずしてカラパスの独走が始まった。
ラスト3km地点の段階で、逃げるカラパスと追走クスの差は12秒で、ポガチャルグループとの差は1分強。ここまで息を潜めていた総合2位レムコ・エヴェネプール(ベルギー、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)がポガチャルたちから抜け出してステージ優勝を狙ったものの、闘志溢れる走りで逃げ続けるカラパスまでは届かない。アルプ・デュエズ終盤の緩斜面区間を40km/hオーバーで駆け抜けたカラパスが、逃げグループから唯一生き残ってフィニッシュラインに到達した。

今大会2度目のステージ優勝を掴んだリチャル・カラパス(エクアドル、EFエデュケーション・イージーポスト) photo:CorVos

3日連続で逃げたリチャル・カラパス(エクアドル、EFエデュケーション・イージーポスト) photo:A.S.O.

タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG)とイサーク・デルトロ(メキシコ、UAEチームエミレーツXRG)が並んでフィニッシュ photo:A.S.O.
東京五輪覇者のカラパスが、マイヨアポワを確実なものにするだけでなく、2日前に続いて難関山岳でのステージ優勝を達成した。カラパスが序盤の逃げからフィニッシュまで到達したのは第18ステージから第20ステージまで3日連続で、ステージ成績は1位→3位→1位。「自分でも何が起こっているのか信じられない瞬間があったよ。ステージが始まった時は山岳賞ジャージのことしか考えていなかったけれど、最初の2つの峠を越えたところでステージ優勝を狙い始めたんだ。相手はグランツール優勝経験のあるクスとヒンドレー。特にセップは手強くてずっと自分の限界まで追い込んでいた。今大会は本当に懸命に戦ってきたから、この勝利は当然だと思う」と言うカラパスは、南米出身選手としてはルイス・エレラに続いて2人目となるアルプ・デュエズ勝者となった。
追い上げ届かなかったエヴェネプールが2位、落車に泣いたクスが3位に入り、それぞれマイヨジョーヌとマイヨブランに王手をかけたポガチャルとデルトロは歓喜の表情で並びながらフィニッシュ。ステージ優勝と3つの特別ジャージを巡って複雑なドラマが詰め込まれた過酷な最終ステージが終幕した。

2度目のステージ優勝とマイヨアポワを決めたリチャル・カラパス(エクアドル、EFエデュケーション・イージーポスト) photo:A.S.O.

5回目の総合優勝に王手をかけたタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG) photo:A.S.O.

マイヨブラン争いを制したイサーク・デルトロ(メキシコ、UAEチームエミレーツXRG) photo:A.S.O. 
マイヨヴェールを決めたマッズ・ピーダスン(デンマーク、リドル・トレック) photo:A.S.O.

セップ・クス(アメリカ、ヴィスマ・リースアバイク)は敢闘賞を獲得 photo:A.S.O.
「レースの最後の1時間半、イサークのために走れたことは光栄だったよ。彼のために喜んで走ったし、他人のために働くことがどれほど大変なことかを実感した。彼と一緒にゴールラインを越えられたことは忘れられない思い出になるだろう」と、マイヨジョーヌ合計着用日数を70日に伸ばし、自身5回目の総合優勝に王手を掛けたポガチャルは言う。
「僕が彼のアシストを務めたことを話題にすると思うけど、それより先にマイヨジョーヌを獲得できたのは彼の働きのおかげなんだ。大会を通してチーム全員が僕を支えてくれたし、素晴らしいツールになった。明日は(昨年一緒に逃げ、スプリントで敗れた)ワウト・ファンアールトがいないので、シャンゼリゼで勝つ上でのライバルが一人いない。大きな目標ではないけれど、調子が良く、大きなリスクを負わずに済むなら勝利を目指したい」と、ステージ6勝目を狙う姿勢すら見せている。
7月25日(土)第20ステージ
ル・ブルグ・ドワザン〜アルプ・デュエズ 走行距離170.9km/獲得標高5,450m(山岳*)



ついに2026年ツール・ド・フランスのクライマックスがやってきた。ル・ブルグ・ドワザンを出発する170.9kmには1級山岳1つ、超級山岳3つが詰め込まれた、獲得標高差は実に5,450mという無慈悲な超難関クイーンステージだ。
超級山岳クロワ・ド・フェール(距離24km/平均5.2%)、中間スプリントを経て、続いて1級山岳テレグラフ(距離11.9km/平均7.1%)を越え、立て続けに先頭で通過した選手に「アンリ・デグランジュ賞」と賞金5000ユーロがが贈られる、大会最高標高の2,642mを誇る超級山岳ガリビエ峠(距離17.7km/平均6.9%)を越え、さらに大会初登場となる超級山岳サレンヌ(距離12.8km/平均7.3%)を登坂してアルプ・デュエズのラスト4km地点に合流してフィニッシュ地点を目指す。

前日にタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG)がステージ優勝を挙げていること、さらにそのアシスト陣営が未だ体調不良から回復しきっていないことから、総合成績で遅れ、ステージ優勝に目標を切り替えたクライマーにとってはステージ優勝のチャンスと言えなくもない。アクチュアルスタートと同時に飛び出した6名は1分リードを得たものの、じわじわと標高を上げる超級山岳クロワ・ド・フェールでメイン集団に捕まった。
淡々とペースメイクを行うUAEチームエミレーツXRGが逃げたいメンバーを見送ったことでメイン集団が分断し、13名が先行。その中ではステージ優勝を狙うセップ・クス(アメリカ、ヴィスマ・リースアバイク)や、総合7位フアン・アユソ(スペイン、リドル・トレック)、マイヨアポワ(山岳賞)のリチャル・カラパス(エクアドル、EFエデュケーション・イージーポスト)といった強力なメンバーが含まれる。




前日の焼き直しかのようにヴィスマ・リースアバイクのブリュノ・アルミライユ(フランス)が牽引するステージ前半戦で加熱したのがこの日最大70ポイントを獲得できるマイヨアポワ(山岳賞)争いだった。昨日の逃げでポガチャルから僅か1ポイント差の首位に立ったカラパスは頂上まで3kmを残してアタックし、逃げグループに入った同3位ヴァランタン・パレパントル(フランス、スーダル・クイックステップ)の追走を退けて20ポイントを獲得する。スタート前に「昨日は厳しい一日になったけど僕のマインドはまだポジティブ。2日間攻めたカラパスは特に疲れているだろうし、100%の力を出し切って戦いたい」と語っていたパレパントルにとっては(ポガチャルの繰り下がりで)数日間着用したマイヨアポワの奪還が徐々に遠いものとなってしまう。
UAEがコントロールするメイン集団からは、66km地点にある中間スプリント賞を目指してマイヨヴェール(ポイント賞)のマッズ・ピーダスン(デンマーク、リドル・トレック)が飛び出した。ダウンヒルをかっ飛ばしたポイントリーダーは逃げグループに合流し、先行していたカラパスとパレパントルも一旦下がり14名となった逃げグループは再びヴィスマ勢のコントロール下に戻る。ピーダスンは無事に中間スプリントを先頭通過(+25ポイント)し、ダメ押しでランキング2位のヤスペル・フィリプセン(ベルギー、アルペシン・プレミアテック)との差を83ポイントに。最終日を待たずにマイヨヴェール獲得を確実なものとした。
逃げグループは1級山岳テレグラフと、僅かなダウンヒルを経て続けざまに登る超級山岳ガリビエ峠に向けて4分リードでヒルクライムを開始した。テレグラフ頂上を先頭通過したのはやはりカラパスで、伝説のガリビエ峠でも共に逃げるべン・ヒーリー(アイルランド)のアシストを受けて順調に駒を進める。森林限界を突破したラスト5km区間では再びアタックして単独となったカラパスにはセップ・クス(アメリカ、ヴィスマ・リースアバイク)とジャイ・ヒンドレー(オーストラリア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)、そしてマシュー・リッチテッロ(アメリカ、デカトロンCMA CGM)が追いついてくる。こうして4人中3人がグランツール総合優勝経験者という超豪華な逃げグループが誕生した。



5分半遅れで登るメイン集団では、マイヨブランを着るチームメイトで総合3位のイサーク・デルトロ(メキシコ)ではなく、マイヨジョーヌを着たポガチャルが自ら先頭を牽引して他チームのアシスト陣を木っ端微塵に粉砕。総合上位勢だけになったこのグループと逃げの距離はグッと縮まったものの、この日ポガチャルにステージ優勝を狙う意思はなかった。
標高2,642mのKOMを無事先頭通過し、マイヨアポワを手中に収めたカラパスを先頭に、40kmのダウンヒルをこなして超級山岳サレンヌ峠へとヒルクライム。ヒンドレーの加速を皮切りにステージ優勝狙いのアタック合戦が始まり、2023年ブエルタ覇者であるクスの独走がスタート。「この数週間調子が上がらなかったので今のコンディションには驚いていない。昨日のパフォーマンスにはフラストレーションを溜めてしまったけれど、耐えて自分が輝ける時を待ちたい」とスタート前に語っていたアユソは決定的に遅れ、総合ジャンプアップの夢はここで潰えてしまった。




長い下りでメンバーを増やしたメイン集団で加熱したのが、デルトロがポール・セクサス(フランス、デカトロンCMA CGM)を24秒差で抑えている状態のマイヨブラン(ヤングライダー賞)争いだった。最もアシスト数を残したデカトロンがペースを上げて揺さぶりをかけたものの、ポガチャルに守られたデルトロは綻びを見せず、逆に頂上付近でペースアップして攻撃に出た。たまらず総合6位マティアス・スケルモース(デンマーク、リドル・トレック)が遅れ、セクサスも頂上付近で千切れてしまう。19歳セクサスはここで付けられた40秒差を埋めることはできず、デルトロはマイヨブラン獲得のチャンスを引き寄せる。
ステージ優勝に向けて先頭で駒を進めていたクスだったが、サレンヌ峠頂上からアルプ・デュエズのラスト4km地点に合流する短い登坂区間で2度落車してしまう。最初はトンネル内のコーナーで、2回目は「下見していたけど思っていたよりコーナーが深かった」と切り立った崖の上のコーナーで落車し、落下防止のネットに助けられて事なきを得たクスだったものの、単騎追いかけていたカラパスに追い抜かれ、恐怖心からコーナーを攻めることができず距離を開けられてしまう。こうして期せずしてカラパスの独走が始まった。
ラスト3km地点の段階で、逃げるカラパスと追走クスの差は12秒で、ポガチャルグループとの差は1分強。ここまで息を潜めていた総合2位レムコ・エヴェネプール(ベルギー、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)がポガチャルたちから抜け出してステージ優勝を狙ったものの、闘志溢れる走りで逃げ続けるカラパスまでは届かない。アルプ・デュエズ終盤の緩斜面区間を40km/hオーバーで駆け抜けたカラパスが、逃げグループから唯一生き残ってフィニッシュラインに到達した。



東京五輪覇者のカラパスが、マイヨアポワを確実なものにするだけでなく、2日前に続いて難関山岳でのステージ優勝を達成した。カラパスが序盤の逃げからフィニッシュまで到達したのは第18ステージから第20ステージまで3日連続で、ステージ成績は1位→3位→1位。「自分でも何が起こっているのか信じられない瞬間があったよ。ステージが始まった時は山岳賞ジャージのことしか考えていなかったけれど、最初の2つの峠を越えたところでステージ優勝を狙い始めたんだ。相手はグランツール優勝経験のあるクスとヒンドレー。特にセップは手強くてずっと自分の限界まで追い込んでいた。今大会は本当に懸命に戦ってきたから、この勝利は当然だと思う」と言うカラパスは、南米出身選手としてはルイス・エレラに続いて2人目となるアルプ・デュエズ勝者となった。
追い上げ届かなかったエヴェネプールが2位、落車に泣いたクスが3位に入り、それぞれマイヨジョーヌとマイヨブランに王手をかけたポガチャルとデルトロは歓喜の表情で並びながらフィニッシュ。ステージ優勝と3つの特別ジャージを巡って複雑なドラマが詰め込まれた過酷な最終ステージが終幕した。





「レースの最後の1時間半、イサークのために走れたことは光栄だったよ。彼のために喜んで走ったし、他人のために働くことがどれほど大変なことかを実感した。彼と一緒にゴールラインを越えられたことは忘れられない思い出になるだろう」と、マイヨジョーヌ合計着用日数を70日に伸ばし、自身5回目の総合優勝に王手を掛けたポガチャルは言う。
「僕が彼のアシストを務めたことを話題にすると思うけど、それより先にマイヨジョーヌを獲得できたのは彼の働きのおかげなんだ。大会を通してチーム全員が僕を支えてくれたし、素晴らしいツールになった。明日は(昨年一緒に逃げ、スプリントで敗れた)ワウト・ファンアールトがいないので、シャンゼリゼで勝つ上でのライバルが一人いない。大きな目標ではないけれど、調子が良く、大きなリスクを負わずに済むなら勝利を目指したい」と、ステージ6勝目を狙う姿勢すら見せている。
ツール・ド・フランス2026第20ステージ結果
| 1位 | リチャル・カラパス(エクアドル、EFエデュケーション・イージーポスト) | 4:59:39 |
| 2位 | レムコ・エヴェネプール(ベルギー、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ) | +0:26 |
| 3位 | セップ・クス(アメリカ、ヴィスマ・リースアバイク) | +0:31 |
| 4位 | タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG) | +1:05 |
| 5位 | イサーク・デルトロ(メキシコ、UAEチームエミレーツXRG) | |
| 6位 | レニー・マルティネス(フランス、バーレーン・ヴィクトリアス) | +1:07 |
| 7位 | ジャイ・ヒンドレー(オーストラリア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ) | +2:15 |
| 8位 | マティアス・スケルモース(デンマーク、リドル・トレック) | +2:55 |
| 9位 | フアン・アユソ(スペイン、リドル・トレック) | |
| 10位 | ポール・セクサス(フランス、デカトロンCMA CGM) |
マイヨジョーヌ(個人総合成績)
| 1位 | タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG) | 72:53:44 |
| 2位 | レムコ・エヴェネプール(ベルギー、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ) | +6:26 |
| 3位 | イサーク・デルトロ(メキシコ、UAEチームエミレーツXRG) | +9:42 |
| 4位 | ポール・セクサス(フランス、デカトロンCMA CGM) | +11:56 |
| 5位 | レニー・マルティネス(フランス、バーレーン・ヴィクトリアス) | +13:02 |
| 6位 | マティアス・スケルモース(デンマーク、リドル・トレック) | +14:59 |
| 7位 | フアン・アユソ(スペイン、リドル・トレック) | +17:48 |
| 8位 | リチャル・カラパス(エクアドル、EFエデュケーション・イージーポスト) | +20:00 |
| 9位 | トーマス・ピドコック(イギリス、ピナレロQ36.5プロサイクリング) | +29:28 |
| 10位 | ジョルダン・ジェガット(フランス、トタルエネルジー) | +33:21 |
マイヨヴェール(ポイント賞)
| 1位 | マッズ・ピーダスン(デンマーク、リドル・トレック) | 527pts |
| 2位 | ヤスペル・フィリプセン(ベルギー、アルペシン・プレミアテック) | 445pts |
| 3位 | ビニヤム・ギルマイ(エリトリア、NSNサイクリングチーム) | 361pts |
マイヨアポワ(山岳賞)
| 1位 | リチャル・カラパス(エクアドル、EFエデュケーション・イージーポスト) | 156pts |
| 2位 | タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG) | 100pts |
| 3位 | ヴァランタン・パレパントル(フランス、スーダル・クイックステップ) | 99pts |
マイヨブラン(ヤングライダー賞)
| 1位 | イサーク・デルトロ(メキシコ、UAEチームエミレーツXRG) | 73:03:26 |
| 2位 | ポール・セクサス(フランス、デカトロンCMA CGM) | +2:14 |
| 3位 | レニー・マルティネス(フランス、バーレーン・ヴィクトリアス) | +3:20 |
チーム総合成績
| 1位 | リドル・トレック | 219:01:16 |
| 2位 | UAEチームエミレーツXRG | +36:57 |
| 3位 | レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ | +1:06:22 |
text:So Isobe
photo:CorVos, A.S.O.
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